日曜日恒例コメント返し!「失敗した牧場」ではなく「未来に残る実験」

2026-08-16 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

日曜恒例のコメント返し回では、牛の角や無角因子といった技術の話から、社会に理解されることの難しさ、そして地域に根差した酪農の姿まで、リスナーの質問を入り口に幅広く語られました。技術より社会の理解のほうが難しい、という言葉が全体を貫いています。

この回の要点

  • 気温が下がり乳量が急増したが、急激な変化は牛への負担で「危ない」面もある
  • うまく除角できず残った角は「スカー」と呼ばれる
  • 無角因子を持つ牛の子として、角の生えないサンシャインちゃんが誕生した
  • 牛乳を搾ることより、酪農への社会の理解を醸成することが大事だと川上さんは考えている
  • 大量生産前提が崩れる今、地元で飲んでもらう規模の酪農が「あるべき姿」ではないかと語られた

配信の全文(podyの記事より)

涼しくなった夏と急に増えた乳量

この日は8月16日の日曜日、お盆休みの最終日。最高気温32度で、前の週より涼しくなったものの、湿度が高い曇り一時雨の天気だったそうです。

気温が下がったことで、牛さんの様子にも変化が出ていました。

川上 ちょっと暑かった時と比べて、乳量がもう100キロぐらい増えてるんで、個体乳量、1頭あたり3キロ4キロぐらいもう増えてますね。

ただ、急激に増えるのは手放しで喜べることではないようです。

川上 夏に無理させないと急激に乳量が増えるんですよね。危ないんですよ、これはちょっと。でも美味しい牛乳になってます。

除角して生えなかった角は「スカー」

最初のコメントは、牛の除角についての配信に寄せられたもの。うまく除角できず変な形で生えた角を「スカー」と呼ぶ、という話に反応がありました。

除角 牛の角を取り除く処置のこと。牛同士や作業者のケガを防ぐために行われます。角の芽の段階で処置すると生えてこなくなります。

酪農業界では、巻き角のように残ってしまった角を見かけることがあるそうです。その名前がスカーだと知って、リスナーから「ちゃんと呼び方があったとは」という声が届きました。

なお、同じコメントには「お盆休みはNASAの訓練に行かれたんですか?」という情報も。川上さんは笑いながら否定していました。

川上 NASAは全然行ってないです。普通に、子供を、親に孫を見せてきたっていう感じですかね。普通の一般の方と同じことをやってますよ。

技術より難しい「社会の理解」

続いては、オランダの水上酪農が閉鎖した件についての配信へのコメント。最新技術が社会に認められず罰金を求められた現実に、リスナーが「やるせない」と反応しました。

川上 牛を水に浮かべることより、その牧場を社会の中に浮かべ続けることの方が難しかった。

これはリスナーのメイプルさんが、AIが生成した川上さんの言葉として紹介したフレーズです。川上さん自身も気に入っていました。

牛を水に浮かべることより、その牧場を社会の中に浮かべ続けることの方が難しかった ── 川上

新規就農や第三者継承をしている人にとって、社会の理解を得る難しさは「あるある」だといいます。遠い国の話でも、悩みは同じだと感じたそうです。

そのうえで川上さんは、酪農の理解醸成の大切さを強調しました。

川上 酪農の理解醸成、これ本当にマジで大事なんですよ。牛乳を搾るより僕は大事になってきてるんじゃないかなと思ってるので。

人口が減り牛乳の消費量も減っていく日本では、搾るだけではない酪農の魅力を伝える努力が、これから酪農家に求められるのではないか、という考えでした。

宇宙の牛乳と、母牛の負担

「宇宙で牛乳は飲める?」という配信には、シルクロードならぬ「未来のミルキーウェイ」が形作られたら面白い、という夢のあるコメントが届きました。

ミルキーウェイ 英語で天の川のこと。ここでは、乳文化がシルクロードのように広がってきた歴史と、それが宇宙へつながる未来を重ねた言葉として使われています。

牛乳や乳製品は約1万年前から世界各地で作られてきた食文化。それが宇宙までつながったら素敵だ、という話に、川上さんも夢が広がると応じます。

川上 毎日同じ話ばっかりなんですよ、酪農業界いるとね。そっちに目を向けると、まだまだやれることいっぱいあるなと思ったりしますね。

一方で「乳牛は散歩しない?」という記事には、産後の女性や献血後の男性をイメージすると分かりやすい、という例えが寄せられました。

産後の牛は一番病気になりやすく、酪農家が特に気を配る存在です。その負担の大きさを、川上さんは数字で示しました。

川上 体重700キロの牛さんが、産後の泌乳ピークっていって一番乳量が出るときは50リットルとか60リットル出るんですよね。だから体重の1割の牛乳が出るわけですよ。

人間に置き換えると、体重60キロの人から6キロの血液が奪われるようなもの。「献血で6リットル取られると考えてみて」という例えに、川上さんは「本当に母は偉大ですね」と話していました。

高校生バイトと「牛の気持ち」

質問箱には、実用的な質問も届きました。「高校生でバイトできますか?」という問いには、川上牧場研修生という形で受け入れているとのこと。

アルバイトと研修の中間のようなイメージで、学業を優先し学校に支障がない形なら来てもらえるそうです。問い合わせは牧場のホームページのフォームか、各SNSのDMから可能です。

「牛の気持ちがわかるようになるには?」という質問には、川上さんらしい答えが返ってきました。

川上 人の気持ちもわからないのに、牛の気持ちなんてわかるわけがないじゃないか。

それでも、毛艶や耳・目の動き、行動のキビキビさや休めているかは観察できます。牛がのんびりでき、自分の能力を発揮できていれば、それでいいのではないか、というのが川上さんの考えです。

無角因子の子牛と「あるべき酪農の姿」

除角の配信には、山地酪農では除角せず飼育する例もある、というコメントが。牛の体を改変するより、除角しなくて済む環境に改善するのがあるべき姿ではないか、という問いかけでした。

無角因子 遺伝的に角が生えない性質を持たせる因子のこと。「P」で表され、この因子を持つ牛を交配に使うと、一定の確率で角のない子牛が生まれます。

これに対し川上さんは、角が生えない牛を生む「無角因子」という技術の存在を紹介しました。

川上 先日生まれたこのサンシャインちゃんはですね、エミリアンPという無角因子を持ってる牛で、それを種付けしたんで、サンシャインちゃん本当に角生えないですね。角の芽がないので。

アニマルウェルフェア的な試みとして、どんな牛が生まれるか試してみたのだといいます。

一方で川上さんは、角があること自体を良しとする見方には疑問も投げかけました。

川上 山地酪農が素晴らしいみたいな感じで言われてますけど、その牛同士傷ついたりとかしてますからね。搾乳する時に角で突かれたりした場合、そこはどう思ってるのか教えていただけたら。

失敗ではなく「未来に残る実験」

最後は、水に浮かぶ牧場の閉鎖についてのコメント。試行錯誤を続ければ半永久的な牧場も誕生するのでは、という前向きな声でした。

川上さんは、閉鎖したとしても運営の事実は残ると応じつつ、より根本的な視点を示します。酪農はそもそも地域に根差した営みで、今の資本主義的な考え方とはずれが出てきている、というのです。

もともと家族を養うために搾っていた牛乳が、飼養技術の向上で余るようになり、物々交換から酪農へと広がった。戦後は食料自給率を上げるため大量生産の形になりました。

ところが人口も消費者も減る今、大量生産すれば売れるという前提が崩れているのに、生産を伸ばそうとしている。そこにずれがある、というのが川上さんの見立てです。

川上 自分のとこの地元で飲んでもらう規模で、永久的にできるような形にするのが、昔ながらの、あるべき酪農の姿って言うんでしょうかね。

川上さんが続けたいのは、海外にあるような、搾りたての牛乳を自動販売機で地元の人に飲んでもらう形。ただ、既得権益やしがらみで日本ではまだ実現できていません。

川上 お米農家さんとか野菜農家さん、果樹農家さんがやってるようなことを酪農家でもできるようになれば、もっと変わってくるんじゃないかなと思います。

100パーセント一気にではなく、そういう酪農家が少しずつ増えていけば、また景色は変わってくるのではないか。そんな展望で、この日のコメント返しは締めくくられました。

まとめ

日曜恒例のコメント返し回では、牛の角や無角因子といった技術の話から、社会に理解されることの難しさ、そして地域に根差した酪農の姿まで、リスナーの質問を入り口に幅広く語られました。技術より社会の理解のほうが難しい、という言葉が全体を貫いています。

  • 気温が下がり乳量が急増したが、急激な変化は牛への負担で「危ない」面もある
  • うまく除角できず残った角は「スカー」と呼ばれる
  • 無角因子を持つ牛の子として、角の生えないサンシャインちゃんが誕生した
  • 牛乳を搾ることより、酪農への社会の理解を醸成することが大事だと川上さんは考えている
  • 大量生産前提が崩れる今、地元で飲んでもらう規模の酪農が「あるべき姿」ではないかと語られた