A2ミルクってどうですか?

2025-04-04 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

研修生の素朴な問いから始まったA2ミルクの話は、仕組みの成り立ちから業界の名乗り方の実情まで広がっていきました。話題の言葉の裏側を、酪農家の視点から具体的に知れる回でしたね。

この回の要点

  • A2・A1はβカゼインの型のちがいで、ゲノム検査でわかるようになった
  • A2は別品種で見つかり、その後ホルスタインでも同じ傾向が確認された
  • 乳糖不耐症はアジア人に多いとされ、A2ミルクはその解決策として広がった
  • A2ミルクをめぐっては特許や「本物」争いの裁判が今も続いている
  • 品種を根拠に名乗る例もあり、ゲノム検査で確かめているかがリアルな差になる

配信の全文(podyの記事より)

なぜ酪農家自身が「牛乳月間」を知らない?

配信は6月30日、雨で風の強い日曜日からスタートしました。研修11日目の学生さんが、この日も牧場にやってきています。

川上さんがまず投げかけたのは、6月が「牛乳月間」だったという話。研修生も知ってはいたものの、特に何かをしたわけではなかったようです。

牛乳月間 日本では6月1日が「牛乳の日」、6月が「牛乳月間」とされています。牛乳・乳製品への理解を広める期間として、業界団体などが各種の啓発活動を行っています。

川上さんが気になっているのは、酪農にはメーカーや餌会社などたくさんの関係者がいるのに、牛乳の日や牛乳月間を知らない人が多いこと。「牛乳飲んで」と言うのに、何もしないという業界の姿勢に、少しさびしさを感じているようです。

川上 だから僕はそれが嫌でね。その業界が、牛乳飲んでって言うけど何もしないでって思っちゃったりするから。皆さんで頑張りましょう、牛乳月間。

一方で研修生は、日にちに関係なく一年中牛乳をおすすめしているとのこと。ある意味、毎日が牛乳の日というスタンスです。

研修生 牛乳月間じゃなくても言ってます。年中牛乳の日だと思います。

研修生が投げかけた「A2ミルクって本当に変わるの?」

この日の学びのテーマとして、研修生が挙げたのが、最近話題になっているA2ミルクです。

研修生 最近ちょっと話題になってるA2ミルクについてなんですけど。

研修生の理解では、A2はβカゼインに関わるもので、お腹に優しく消化にいいとされているもの。学校にも情報が入ってくるし、取り組んでいる牧場もあると話します。

βカゼイン 牛乳に含まれるたんぱく質の一種です。その型のちがいがA1・A2という区別につながり、A2ミルクをうたう商品の根拠として語られています。

ただ、研修生自身は少し引っかかっている様子。というのも、自分や周りの人は、A1の牛乳でもそんなにお腹を下すわけではないからです。

研修生 お腹が弱い人とかは結構変わるのかもしれないですけど、僕とか周りの人はそんなにA1の牛乳でもお腹を下すというか、あんま効かないんで。

そのうえで、A2をブランド化して売り出している牧場について、川上さんがどう考えているのかを聞きたい、というのがこの日の相談です。

質問(研修生) A2をブランド化してやっているところについて、実際どう思っているのか、考えを聞かせてほしい。

A2とA1のちがいは、どう見つかった?

川上さんはまず、A2ミルクがどう見つかったのかから説明を始めます。牛のゲノム検査ができるようになったことで、βカゼインにA1とA2という種類があるとわかるようになったのだそうです。

ゲノム検査 生き物の遺伝情報を調べる検査のことです。牛では、A1・A2といったβカゼインの型を遺伝子レベルで判別するのに使われています。

おもしろいのは、これが最初からホルスタインで見つかったわけではないという点。別の品種で見つかり、その後ホルスタインを調べたら同じ傾向があった、という流れだったといいます。

川上 これ、ホルスタインで見つけたわけじゃなくて、別の品種で。ジャージーだったかブラウンスイスだったかで見つけて、ホルスタインの方で調べたら同じ傾向があった。

そしてポイントは、このカゼインの形が人間にとって吸収しやすい形になっている、とされていることです。

乳糖不耐症とA2ミルク、アジア人に多いって本当?

川上さんは、A2ミルクが注目される背景として、乳糖不耐症の人の存在を挙げます。牛乳をうまく消化できず、乳製品を取りたくても取れない人が世の中にたくさんいるのだそうです。

乳糖不耐症 牛乳に含まれる乳糖をうまく消化できず、飲むとお腹がゴロゴロしたり下したりしやすい体質のことです。アレルギーとは異なります。

これはアレルギーとは違い、あくまで体質的なもの。そして川上さんによれば、欧米人に比べてアジア人は乳糖不耐症の人が多いと言われているそうです。

川上 欧米人とかに比べると、日本人とかアジア人は乳糖不耐症の方が多かったりするって言われてて。

そうした悩みを持つ人への解決策として、A2ミルクが広がってきた、という流れになります。最初に登場したのはニュージーランドかオーストラリアのあたりだったといいます。

日本での広がりと、絶えない「本物」争い

A2ミルクが出てきたあとには、特許をめぐる動きもあったと川上さんは話します。ゲノム検査をするところやメーカーが権利を取るなどして、「A2ミルクとうたうな」といった裁判が今もずっと続いているのだそうです。

川上 私たちのA2ミルクは本物ですよみたいなのが、A2ミルクって謳うなみたいな、もうずっと裁判されてるんですよ、今も。

日本でもA2の遺伝子を調べられるようになり、いち早く取り組んだ人たちが商品化しています。北海道の中標津や広島県などが早くから「A2ミルクですよ」と販売してきた例として挙げられました。

個人でA2ミルクとして販売している例もある一方、川上さんが引っかかっているのが、島根県のある酪農乳業会社の名乗り方です。

川上 島根県の某酪農乳業会社も、A2ミルクだって言ってるんですけど。おい、お前ゲノム検査やってねーじゃん。

その理由は、A2ミルクがブラウンスイスやジャージーから見つかったという経緯にあります。「ブラウンスイスやジャージーの牛乳がA2ミルク」という情報が広まったことで、その牛乳を使っているからA2ミルクだ、と関連づけて名乗っているケースがある、というのが川上さんの指摘です。

つまり、実際にゲノム検査をしてA2だと確かめているかどうかが、名乗り方のリアルなちがいになっている、というわけです。ここでナレーションが入り、この日の配信は区切りを迎えます。

まとめ

研修生の素朴な問いから始まったA2ミルクの話は、仕組みの成り立ちから業界の名乗り方の実情まで広がっていきました。話題の言葉の裏側を、酪農家の視点から具体的に知れる回でしたね。

  • A2・A1はβカゼインの型のちがいで、ゲノム検査でわかるようになった
  • A2は別品種で見つかり、その後ホルスタインでも同じ傾向が確認された
  • 乳糖不耐症はアジア人に多いとされ、A2ミルクはその解決策として広がった
  • A2ミルクをめぐっては特許や「本物」争いの裁判が今も続いている
  • 品種を根拠に名乗る例もあり、ゲノム検査で確かめているかがリアルな差になる