和牛相場の構造と未来予測

2025-11-24 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

https://youtu.be/hIkAddShsG4?si=Px_2DSNkSburm_bq

三連休明けの火曜日。

雨が降ったり止んだりを繰り返す、少し気持ちも落ち着かない一日です。

最高気温は16度。いよいよ冬の入り口が見えてきました。

この日の牧場仕事は繁殖管理が中心です。

翌日の繁殖検診に向けて種付け対象の牛が多く、移植対応や個体管理に追われます。

あわせて、堆肥舎のコンクリート工事を控えているため、堆肥の移動も進めなければなりません。

分娩が近い牛もいるため、飼料設計を微調整し、溜まっていた事務作業にも手を付ける。

そんな、いつも通りだけれど気が抜けない一日です。

今回の音声配信では、TikTokに寄せられた質問をきっかけに

「和牛相場の構造と、これからの見通し」

について掘り下げてお話ししました。

「和牛価格の氷河期は、また定期的に来るのでしょうか?」

現場感覚としても、ここ最近は

「和牛が少し回復してきた」

「市場価格が持ち直している」

という声が聞こえてきます。

では、この回復は一時的なものなのか。

それとも本格的な転換点なのか。

その答えを考えるには、過去・現在・未来を一本の線で捉える必要があります。

和牛価格は「気まぐれ」ではない

まず大前提として知っておきたいのは、

和牛価格は決してランダムに動いているわけではない

ということです。

過去30年ほどを振り返ると、和牛相場にははっきりとした「波」があります。

・1991年:牛肉輸入自由化

・2001年:BSE発生による消費低迷

・2011年前後:東日本大震災による市場混乱

・2020年:コロナ禍による高級外食需要の消失

これらはすべて、消費者心理を一気に冷やした出来事でした。

結果として和牛価格は急落し、「氷河期」と呼ばれる状況が生まれます。

しかし重要なのは、その後です。

価格低迷期が続くと、

・増頭を控える

・繁殖農家が離農する

・供給量が減少する

という流れが起き、数年後には必ず価格回復期が訪れます。

実際、2016年前後には枝肉価格が過去最高水準を記録し、

「和牛バブル」と呼ばれる状況が生まれました。

つまり和牛市場は、

氷河期 → 回復期 → 高騰期 → 調整期

このサイクルを何度も繰り返してきたのです。

なぜ今、価格が下がったのか

現在の和牛相場を一言で表すなら、

構造的な供給過剰です。

2023年前後、和牛の出荷頭数は約50万頭と高水準にありました。

その背景には、2015年〜2021年の価格高騰期があります。

この時期、

「和牛は儲かる」

という期待のもと、繁殖農家が増頭に踏み切りました。

さらに見逃せないのが、受精卵移植の増加です。

酪農分野からの和牛子牛供給も拡大し、

結果として「産みすぎたわけではないが、産んだ牛が一斉に市場へ出た」

という状況が生まれました。

供給が増えれば、当然価格は下がります。

需要側の壁と、輸出という希望

では、需要がそれを吸収できたのかというと、答えは「十分ではなかった」です。

国内では物価高と節約志向が強まり、

和牛は「日常食」ではなく「特別な日の贅沢品」になりました。

スーパーから和牛が姿を消した地域もあります。

高級外食やインバウンド需要も、コロナ以降は完全回復とは言えません。

一方で、確実に伸びているのが輸出です。

和牛輸出量はこの10年で大きく拡大しました。

全体から見ればまだ一部ですが、市場の下支えにはなっています。

将来的に輸出比率が高まれば、

国内相場の見え方も大きく変わる可能性があります。

政策という「時間差リスク」

和牛相場を語る上で、政策の影響も無視できません。

増頭支援や価格補填制度は、短期的には経営を守ります。

しかし畜産は時間差の産業です。

数年前の政策判断が、今の供給過剰につながっているケースもあります。

現在、価格補填制度が発動されていること自体が、

市場が非常事態に近い状態だった

ことを示しています。

政策は善意で作られますが、

その効果が逆方向に出ることもある。

ここに畜産経営の難しさがあります。

これから何が起きるのか

短期的に見ると、

2024年〜2025年にかけては、厳しさが残る可能性があります。

ただし、中期的には変化の兆しも見えています。

・価格低迷による繁殖農家の離農

・増頭意欲の低下

・数年後の供給減少

これらは、将来的な価格回復要因です。

2026年〜2027年以降、

需給バランスが改善すれば、再び上昇局面に入る可能性は十分あります。

実際、現場感覚としても「回復が思ったより早い」と感じる部分はあります。

価格に依存しない経営へ

ここで一番大切なのは、

相場を待つだけの経営をしないことです。

これから求められるのは、

・繁殖基盤を守る

・分娩間隔を縮める

・子牛の質を高める

・付加価値やストーリーを持たせる

・輸出や多様な販路を意識する

つまり、価格一本足ではない和牛経営への進化です。

氷河期は確かに苦しい。

しかしそれは、次の回復期に向けた助走でもあります。

おわりに

和牛価格は、決して気まぐれではありません。

そこには歴史があり、構造があり、そして未来があります。

今は寒い冬の途中かもしれません。

しかし、この冬があるからこそ、春の価値が際立つ。

今日のお話が、

皆さんの経営判断や視点のヒントになれば幸いです。

厳しい時代ですが、

牛と向き合い、地に足をつけて、

一歩ずつ進んでいきましょう。

今日も牛乳を飲んで、いってらっしゃい。

https://note.com/kawakamifarm/membership/boards

https://note.com/kawakamifarm/n/n2c2f4763349b

https://note.com/kawakamifarm/n/nbf0a8d7a7a3e

🐄📚『川上牧場研修〜牛群検定の見方編〜』Kindleで絶賛発売中!📘

全ての酪農に興味がある方へ🐮数字で牛の声を聞こう!👇

https://www.amazon.co.jp/dp/B0FBQWGSK6

https://lit.link/kawakamifarm