国際ニュースと牛の現場〜中国規制から見る酪農の未来〜
2025-11-25 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
https://youtu.be/mxync_mqKaA?si=mViym0f2bBvbv8mg
おはようございます。
11月26日、水曜日。外は雨のち曇り。朝からしとしとと雨が降り、昨日は雷も鳴っていました。いわゆる「雪起こしの雷」。ああ、いよいよ冬が来るな、と牛舎の空気を感じながら思います。あられが降った地域もあったと聞き、カレンダー以上に季節の移ろいを実感する朝です。
今日の仕事は、堆肥の長距離配達と繁殖検診。遠方への堆肥運搬は正直なところ体力的にも気持ち的にも楽ではありません。ここだけの話、
「あまり嬉しくないお客さん」だったりもします。
それでも、堆肥を買っていただいていること自体には感謝しています。酪農という仕事は、こうした割り切れない感情と日々向き合いながら続いていくものです。
そんな日常の中で、今日はリスナーさんから届いた少し大きなテーマの質問にお答えしようと思います。
テーマは「中国の輸出・輸入規制と、それが酪農にどう影響するのか」。
ニュースでは外交問題、国際摩擦として語られる話題ですが、私たち酪農家にとっては「明日の餌代」「来月の経営」に直結する、極めて現実的な問題です。
牛乳で乾杯、その前に少しだけ
本題に入る前に、いつものお知らせです。
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それでは、今日も牛乳で乾杯。
いただきます。……しみる。うまい。
今日も牛乳を飲んでくださってありがとうございます。
中国の規制は「牛乳」を止めているのではない
今回の質問は、配信アプリAWAのリスナー、YAMAさんからです。
「中国が日本に対して行っている生産物の輸出規制について、酪農家目線で話してください」
まず結論からお伝えします。
中国の規制は、牛乳や乳製品そのものを直接止めているわけではありません。
しかし、「牛乳が生まれる環境」を確実に揺さぶっています。ここが本質です。
中国はここ数年、国内情勢が不安定になると、外交カードとして輸出規制・輸入制限を使う傾向を強めています。2021年頃からは、肥料原料の輸出を厳しく制限しました。尿素、リン酸肥料、窒素肥料など、農業に欠かせない資材です。
理由はシンプルで、自国の農業と食料安全保障を守るため。
ですが、日本はこれらの資材を中国に大きく依存してきました。
その結果、どうなったか。
肥料価格が高騰し、飼料作物の生産コストが上昇。
さらに配合飼料の価格も跳ね上がり、一時は1トンあたり1万円以上の値上げが起きました。
これはもう、「経営努力で吸収できるレベル」ではありません。
牛乳を搾るほど苦しくなる構造
酪農は、牛に餌を与え、健康を管理し、牛乳を安定的に供給する仕事です。
ところが今は、牛乳を搾れば搾るほど、経費が積み上がっていく構造になりつつあります。
・飼料代
・電気代
・燃料代
・資材費
これらが同時に上がる「同時攻撃」。
しかも原因は国内ではなく、国際情勢。現場の努力だけではどうにもならない圧力です。
さらに忘れてはいけないのが、中国が日本の水産物を政治的判断で輸入禁止にした事例です。
「気に入らなければ止める」。
この選択が、現実に行われたという事実は非常に重い。
これは水産業だけの話ではありません。
資材は輸出で止められ、製品は輸入で止められる。
輸出と輸入、両方のリスクが存在する時代に、私たちは入っています。
なぜ中国はこうした政策を取るのか
中国の動きは感情論ではなく、国家戦略です。理由は大きく3つあります。
1つ目は、自国の食料安全保障。
2つ目は、国際政治における交渉カード。
3つ目は、資源の戦略的管理。
肥料も、飼料も、農産物も、すべてが「交渉材料」になります。
だからこそ、この問題を「中国が悪い」で終わらせてはいけないと思っています。
むしろこれは、日本の農業・酪農の在り方を見直すきっかけです。
・輸入飼料への過度な依存
・化学肥料への依存
・海外資材に頼り切った構造
これらをどう減らしていくか。
自給飼料、堆肥循環、地域資源の活用。
以前は「理想論」と言われていたものが、今は生き残るための現実的な戦略になりつつあります。
牛乳の値段は、世界情勢の結果でもある
牛乳の価格は、生産者のわがままで決まっているわけではありません。
その背景には、国際情勢、資源価格、物流、政治判断があります。
「安さ」だけを求める時代から、
「どうやって守られているか」を考える時代へ。
今は、まさにその転換点です。
これからは、中国依存からの脱却、資材調達先の多角化、地産地消の強化が進んでいくでしょう。
酪農は、単なる一次産業ではなく、戦略産業としての位置づけに変わっていくはずです。
中国市場とどう向き合うのか
コメントの中で、「中国依存から脱却すべきでは?」という声もありました。私も基本的には同意です。
黒毛和牛や乳製品は、中国市場に輸出できれば大きな利益になります。富裕層の人口規模は日本の何倍もありますから、魅力的なのは事実です。
ただし、「今、売れそうだから売る」という短期目線は危険です。
国際情勢が一気に変われば、日本国内の需給バランスにも大きな影響が出ます。
だからこそ、中国“だけ”を見るのではなく、複数の国・複数の市場に分散する。
長期目線でのリスク分散が、これからの農業には欠かせません。
おわりに 〜国際ニュースを「自分ごと」にする〜
今回のテーマは、中国の輸出規制・輸入制限が酪農にどう影響するか、という話でした。
ニュースとして眺めるだけでは見えてこない、「牛の現場」とのつながりを感じてもらえたら嬉しいです。
国際ニュースは、遠い世界の話ではありません。
牛舎の中で、餌を食べる牛の姿と、確実につながっています。
もしこの文章が、少しでも「考えるきっかけ」になったなら、それ以上に嬉しいことはありません。
外は相変わらず激しい雨。
今日も安全第一で、仕事に向かいたいと思います。
最後にもう一度お知らせです。
川上牧場のKindle本『酪農未経験者のために』は好評発売中。
SUZURIでは明日からブラックフライデーセールも始まります。
それでは、
お仕事の方も、学校の方も、行ってらっしゃい。
今日も牛乳飲んでくださいね。
また次の配信、次の記事でお会いしましょう。
バイバイ。
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