日曜コメント返しと畜産の歴史|昔、家で牛を飼っていた話
2026-04-12 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
こんにちは。島根県出雲市で酪農をしている、川上牧場の川上です。
4月12日、日曜日。
最高気温は23度くらいまで上がる予報で、外に出るにはちょうどいい晴れの日でした。桜の季節は少し過ぎて、次の楽しみはゴールデンウィークかな、という頃ですね。
僕はこの日、2週間ぶりに酪農ヘルパーさんに来てもらえる日でした。
酪農家にとって「休み」といっても、まる一日仕事を忘れるというよりは、夕方は一緒に作業をしたり、牛の様子を見たりしながら、いつもより少しだけゆっくりできる日です。
Netflixで始まった新しいアニメを見たいなとか、買ったまま読めていない本を読みたいなとか、映画も見たいなとか、やりたいことはいろいろあります。
でも結局、牛のことを考えたり、配信のコメントを読んだりしているんですよね。
酪農家の休日、だいたいそんな感じです。
今日は日曜日恒例のコメント返しです。
各SNSや音声配信、YouTube、TikTok、Xなどに届いたコメントを読みながら、牛乳のこと、酪農のこと、そして今回は少しだけ「畜産の歴史」についても考えていきたいと思います。
ゆったりまったり、牛乳でも飲みながら読んでもらえたら嬉しいです。
今日も牛乳で乾杯
まずはいつものように、牛乳で乾杯です。
僕は毎日、牛乳をだいたい1リットル飲んでいます。最近はプロテインを牛乳で割って飲むことも多いんですが、たまに溶けきっていなくて、飲みにくいときがあります。
でも、それも含めてうまい。
牛乳って不思議な飲み物で、朝にも合うし、仕事終わりにも合うし、ちょっと疲れたときにも合います。
コーヒーに入れればカフェラテになるし、プロテインに混ぜれば栄養補給にもなるし、料理にも使える。
「ただの飲み物」と思われがちですが、酪農家から見ると、牛乳はかなり万能な食品です。
今日も牛乳を飲んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
世界の牛乳価格と、ウチモンゴルの話
最初に紹介したいのは、TikTokに届いたコメントです。
以前、世界の牛乳価格について配信したときに、
「牛乳が安いところは内モンゴルです」
というコメントをいただきました。
ありがとうございます。
僕はその配信の中で、インドなどの話をしたんですが、内モンゴルも牛乳が安い地域として挙げられるんですね。
正直に言うと、僕はモンゴルや内モンゴルの酪農について、まだ深く知っているわけではありません。
放牧が中心なのか。どんな品種の牛が多いのか。牛乳はどんな形で流通しているのか。家庭で飲まれている牛乳の味はどうなのか。
日本で酪農をしていると、どうしても日本の制度、日本の乳価、日本の流通の中で考えがちです。
でも、海外に住んだことがある方や、旅行で現地の牛乳を飲んだことがある方のリアルな声は、ものすごく貴重です。
牛乳は世界中で飲まれていますが、価格も、飲み方も、文化もまったく違います。
日本では冷蔵された紙パックの牛乳が当たり前ですが、国によっては常温保存の牛乳が普通だったり、発酵乳の方が身近だったりします。
こういう話を聞くたびに、牛乳って単なる食品ではなく、その国の暮らしや文化が見える入り口なんだなと思います。
モンゴルや内モンゴルの牛乳事情についても、また改めて調べてみたいですね。
OPU、初挑戦の結果
続いては、Xに届いたコメントです。
「OPU取れましたか?」
という質問をいただきました。
OPUというのは、簡単に言うと、牛の卵子を採取する技術です。優秀な遺伝子を持つ牛から卵子を採り、体外受精などにつなげて、牛群改良を進めるために使われます。
川上牧場でも初めてOPUに挑戦しました。
結果としては、ゼロではありませんでした。
初めてとしては、小さな一歩ですが、これは大きな一歩でもあります。
酪農の改良というと、一般の方には少し遠い話に聞こえるかもしれません。
でも僕たち酪農家にとって、牛群改良は未来の牧場づくりそのものです。
乳量だけを追いかけるのではなく、健康で、長く働いてくれて、暑さにも強く、足腰もしっかりしていて、乳房も管理しやすい牛を増やしていく。
それは、牛にとっても、人にとっても、牧場経営にとっても大切なことです。
夏が本格的に暑くなる前に、また挑戦していきたいと思っています。
牛乳は高いのか、安いのか
YouTubeには、牛乳の購入量が減っているという話に対して、
「食費を抑えるために、牛乳は購入の優先順位が下がっちゃうんですね」
というコメントをいただきました。
これは本当に大事な視点です。
たしかに、食費全体で見たとき、牛乳は安い買い物に感じないかもしれません。
毎日買うものですし、家族で飲めばすぐなくなります。学校給食でも、牛乳にかかるコストは決して小さくありません。
でも、ここで考えてほしいのは「価格」だけではなく「栄養のコスパ」です。
牛乳には、たんぱく質、カルシウム、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルが含まれています。
しかも、コップに注ぐだけで飲める。
調理しなくてもいい。洗い物も少ない。子どもから高齢の方まで取り入れやすい。
同じ栄養を他の食品だけでそろえようと思うと、意外と手間もお金もかかります。
もちろん、牛乳だけ飲んでいれば健康になるという話ではありません。
でも、毎日の食事の中に牛乳や乳製品をうまく組み合わせることで、食生活全体を支えてくれる存在になると思っています。
食費を抑えたい時代だからこそ、牛乳の価値を「高い・安い」だけで見ないでほしい。
そんなことを、酪農家として伝えていきたいです。
自分の牧場の牛乳を飲むということ
別のコメントでは、
「酪農家さんは自分のところの牛乳を飲むんですか?」
という話題にもつながりました。
僕は、自分の牧場の牛乳をおいしいなと思いながら飲んでいます。
ただし、ここは大切なところなので丁寧に書きます。
一般に流通している牛乳は、きちんと殺菌処理されたものです。食品として安全に届けるために、乳業メーカーや流通の仕組みがあり、法律や衛生管理の基準があります。
酪農家が日々生産しているのは、その原料となる生乳です。
だからこそ僕たちは、毎日の搾乳衛生、牛の健康管理、牛舎の清潔さ、乳房炎の予防、搾乳機器の洗浄などにものすごく気を使っています。
自分が口にできないようなものを、人に届けるわけにはいかない。
これは酪農家としての基本の感覚です。
牛乳は、牛の体から出てくる食品です。
だからこそ、牛の健康と、搾る人間の意識がそのまま品質につながります。
毎日同じように見える搾乳作業も、実は毎日が真剣勝負です。
乳糖不耐症と、ヨーグルト・チーズの使い分け
牛乳の代わりになる豆乳やアーモンドミルクについて配信したときには、
「乳糖不耐症にはヨーグルトがいいんですね。牛乳より乳糖が少ないということでしょうか」
というコメントもいただきました。
乳糖不耐症というのは、牛乳に含まれる乳糖をうまく分解できず、お腹がゴロゴロしやすい状態のことです。
ヨーグルトやチーズは、発酵の過程で乳糖の一部が分解されたり、乳酸菌の働きが関わったりするため、牛乳よりもお腹に合いやすい方がいます。
もちろん個人差はあります。
牛乳を飲むとお腹が張る方は、無理にたくさん飲む必要はありません。
ヨーグルトから始める。チーズを少し取り入れる。温めて飲んでみる。少量ずつ試してみる。
自分の体に合う形で乳製品を楽しんでもらえたらと思います。
そして、コーヒーにはやっぱり牛乳が合います。
これから暖かくなると、アイスカフェラテの季節です。
豆乳にも豆乳の良さがあり、アーモンドミルクにもアーモンドミルクの良さがあります。
でも牛乳には、牛乳にしか出せないコクと香りがあります。
それぞれの特徴を知ったうえで、楽しく選んでもらえたら、それが一番平和です。
牛のしっぽ、ペロペロ、そして距離感
Instagramのストーリーズでは、タイミーで川上牧場に来てくださった方が感想を投稿してくれました。
「楽しすぎた」
「うんちに平手打ち」
「しっぽでビシバシ」
「ペロペロ、ガブ」
「掃除したいけん足どけてって言ったらどけてくれた」
こういう感想、本当にありがたいです。
牧場の仕事は、きれいなところだけを見せる仕事ではありません。
うんちもあります。においもあります。しっぽで叩かれることもあります。牛に舐められることもあります。
初めて牛の近くで作業する方は、牛との距離感がわからないことが多いです。
牛は体が大きいですが、ものすごく繊細な動物です。
視野は広いけれど、距離感の取り方は人間とは違います。しっぽや耳、鼻、音、匂いなど、いろんな情報で周囲を感じています。
だから、こちらが近づきすぎると、しっぽが飛んでくることがあります。
しかもそのしっぽにうんちがついていることもあります。
これは牧場あるあるです。
「足どけて」と言ったらどけてくれた、という感想もありました。
たしかに、そう見えるんですよね。
でも実際には、毎日同じように掃除をしているので、牛も人の動きに慣れているんです。足を少し触ったら、どける。掃除が終わったら戻す。
そういう日々の積み重ねがあります。
牛が人の言葉を完全に理解している、というよりは、人と牛の間に毎日の習慣ができている。
でも、初めて来た方が「牛さん、言葉わかるんだ」と感じてくれるのは、すごくいいことだと思います。
そこから牛に興味を持ってもらえるなら、ちょっとくらい夢を見てもらってもいいかなと思います。
昔、家で牛や馬や豚を飼っていた話
今回、特に印象に残ったのが、YouTubeに届いた長文のコメントでした。
小さい頃、家族が牧場で働いていて、写真の後ろには牛や馬や犬が写っていたこと。
小学生になる頃には豚に変わり、朝5時に起こされて牧場に行き、出荷を手伝ってから学校に行っていたこと。
餌やり、掃除、消毒、分娩の手伝い、生まれた子豚のへその緒の処理、耕運機やトラクターの操作まで、小学生の頃から当たり前のようにやっていたこと。
最初は餌も糞の掃除も自動ではなく、とても大変だったけれど、10年ほど経つと餌が自動になり、すのこが設置され、かなり楽になったこと。
畜産は装置産業で、ゼロから始めるには大変だということ。
廃業した農場を買い集めて大規模化し、成功している人もいたこと。
そして、牛の時代の思い出として、切った牧草が小さな四角い塊になって、ひもで結ばれてポンと飛び出し、それをトラックで回収していたこと。
牛乳風呂に入った記憶があること。
当時飼っていた牛はヘレフォードで、好きな品種はジャージーだということ。
読んでいて、これはもう一つの畜産史だなと思いました。
教科書に載るような大きな歴史ではなく、家族の中に残っている畜産の記憶です。
子どもが労働力だった時代
今の感覚で見ると、小学生が朝5時に起きて牧場を手伝い、出荷をしてから学校へ行くというのは、かなり驚かれると思います。
でも、少し前の農家では珍しくなかった話です。
家族経営の農業や畜産では、家族全員が働き手でした。
子どもも、できる作業を任される。長男が家を継ぐ。次男、三男は外へ働きに出る。家の仕事と人生が直結している。
そういう時代がありました。
もちろん、今それをそのまま良いものとして戻すべきだとは思いません。
子どもには子どもの時間があります。教育もあります。安全面の考え方も、昔とはまったく違います。
でも、昔の農家の子どもたちが、家畜の世話や機械の操作、命の誕生や死を日常の中で見ていたことは、日本の農業や畜産を支えてきた大きな力だったと思います。
今の若い世代がロボット搾乳機や自動給餌機に憧れるのは自然なことです。
僕も機械化や省力化は大事だと思っています。
でも、その前に、人の手で餌をやり、糞を掃除し、牧草を運び、牛や豚の様子を見てきた時代がある。
そこを知っているかどうかで、今の技術のありがたみも変わってくると思います。
コンパクトベーラーと、牛舎の2階
コメントにあった「牧草が四角く結ばれてポンと飛ぶ」という話。
これはおそらく、コンパクトベーラーのことだと思います。
刈った牧草を乾かして、小さな四角いブロック状にして、ひもで縛る機械です。
昔の牛舎では、その牧草をトラックで運び、牛舎の2階に積み上げていました。
そして、必要なときに2階から下へ落として、牛に食べさせる。
今の大規模酪農やTMRセンター、自動給餌の感覚からすると、かなり手作業の多い世界です。
でも、そうやって牧草を作り、運び、積み、落とし、食べさせていた時代がありました。
川上牧場にも、昔の牛舎の名残として、上の方に牧草を置けるような構造があります。
建物を見ると、その牧場がどんな時代を通ってきたのかがわかります。
牛舎はただの建物ではありません。
そこには、働いてきた人の体の使い方や、牛との距離感や、その時代の技術が刻まれています。
ヘレフォードと、日本の牛の歴史
コメントの中で「当時飼っていた牛はヘレフォードだった」という話も、とても面白かったです。
日本の牛といえば、乳牛ならホルスタイン、肉牛なら黒毛和牛を思い浮かべる方が多いと思います。
でも、日本の畜産の歴史の中では、海外からさまざまな品種が入ってきました。
海外の先進的な農業に学び、体の大きな牛を取り入れ、肉量を増やし、乳量を増やし、日本の環境に合う形を模索してきた歴史があります。
黒毛和牛も、単純に「昔からそのままの日本古来の牛」というわけではありません。
改良の歴史があります。
在来の牛に海外品種の影響が入り、そこから日本の食文化や飼養管理に合う牛として選抜されてきました。
ヘレフォードのような海外品種が家庭や地域の畜産の中にいたという記憶は、その時代の日本が「海外に追いつこう」「もっと生産性を高めよう」としていた証でもあります。
品種の話は、単なる牛の見た目の違いではありません。
その時代の農業政策、食文化、経済、家族経営のあり方まで見えてきます。
コメントが、酪農の記録になる
今回改めて思ったのは、皆さんのコメントそのものが、酪農や畜産の記録になっているということです。
僕は今40歳です。
僕より上の世代の酪農家さんや畜産農家さんの話を聞くと、自分が経験していない時代のことを知ることができます。
昔はどうだったのか。
どんな牛舎だったのか。
どんな作業を子どもが手伝っていたのか。
どんな機械が入って、何が楽になったのか。
どんな品種の牛がいたのか。
こういう話は、誰かが残しておかないと消えていきます。
大きな統計や制度の歴史も大切です。
でも、家の写真の後ろに牛や馬や犬が写っていたとか、朝5時に起こされて出荷を手伝ったとか、牛乳風呂に入ったとか、そういう個人の記憶にも価値があります。
そこには、教科書には載らない畜産のリアルがあります。
僕の配信やNoteが、そういう記憶を集める場所になったら嬉しいです。
今週もコメントありがとうございました
今週も、たくさんのコメントをありがとうございました。
牛乳の価格、海外の牛乳事情、OPU、乳糖不耐症、豆乳やアーモンドミルクとの違い、牧場体験、そして昔の畜産の思い出。
一つひとつのコメントから、配信の話題が広がっていきます。
僕が一方的に話すだけではなく、皆さんの経験や疑問があるから、この配信は続いています。
酪農は、消費者から見えにくい仕事です。
でも、牛乳は毎日のように食卓に届きます。
見えにくいのに、身近にある。
だからこそ、その間をつなぐ言葉が必要だと思っています。
「昔、家で牛を飼っていた」
「学校給食で毎日飲んでいた」
「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする」
「コーヒーにはやっぱり牛乳が合う」
「牧場に行ったら牛にしっぽで叩かれた」
そんな何気ない話の中に、酪農と暮らしをつなぐ入り口があります。
これからも、各SNS、音声配信、YouTube、TikTok、Instagram、Xなどで、質問やコメントをお待ちしています。
スタンドFMのレター機能でも、DMでも、コメント欄でも大丈夫です。
酪農のこと、牛乳のこと、牛のこと、昔の畜産の思い出、なんでも送ってください。
日曜日のコメント返しで、まったりゆったり紹介していきます。
今日も牛乳を飲んでくださってありがとうございます。
お仕事の方も、学校の方も、お休みの方も、よい一日を。
みんな、牛乳飲んでね。
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