【牛のツノの中は空洞!?】血管や神経はどこまで通っているのか酪農家が解説

2026-06-11 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

おはようございます。

川上牧場の川上です。

今日は6月11日、木曜日。

最高気温は28度ほどで、昨日と同じく晴れ間のある天気です。

朝晩は本当に気持ちいいくらい涼しくて、牛たちもエサをしっかり食べてくれています。

このままの気候が続いてくれたら、牛にも人にもありがたいんですけどね。

今日の牧場仕事は、堆肥の切り返しや、書類仕事を少しずつ片付けていく予定です。

来週、再来週と予定も入っているので、できる仕事は早めに進めておきたいところです。

さて、今回のテーマは、リスナーさんからいただいた質問です。

「牛のツノには、どのあたりまで血管や神経が通っているんですか?」

これ、かなり面白い質問です。

牛のツノというと、みなさんはどんなイメージを持つでしょうか。

立派なツノ。

強そうなツノ。

牛らしさの象徴。

イラストや画像生成AIで牛を描くと、だいたいツノが生えがちです。

でも、酪農の現場にいると、ツノは単なる飾りではありません。

牛同士のケンカでケガにつながることもありますし、人に当たれば危険です。

そのため、酪農現場では子牛のうちに「除角」といって、ツノが大きく伸びる前に処置することがあります。

では、そのツノの中はどうなっているのか。

血管や神経はどこまで通っているのか。

そもそもツノの中は詰まっているのか、それとも空洞なのか。

今回は、酪農家の現場感覚も交えながら、できるだけわかりやすくお話ししていきます。

結論:ツノの根元には血管も神経も通っている

まず結論から言います。

牛のツノの根元には、血管も神経も通っています。

そして、根元に近いほど痛みを感じやすく、出血もしやすい構造になっています。

一方で、ツノの先端に行くほど、血管や神経は少なくなっていきます。

ただし、ここで勘違いしてはいけないのは、

「先端の方なら切っても平気」

「ツノは爪みたいなものだから痛くない」

という単純な話ではないということです。

牛のツノは、外側だけ見ると硬い角質のように見えます。

でも、実際には頭の骨と関係した、とても大事な体の一部です。

とくに大きく成長した牛のツノは、単なる硬い棒ではありません。

中には頭の骨とつながる空洞が入り込んでいる場合があります。

ここが、今回いちばん面白いところです。

牛のツノは、お腹の中にいる頃から作られ始める

牛のツノは、生まれてから急に作られるわけではありません。

実は、お母さんのお腹の中にいる胎児の頃から、ツノになる部分の準備が始まっています。

生まれたばかりの子牛を見ると、まだ立派なツノは見えません。

でも、頭をよく見ると、毛の流れが少し渦のようになっている部分があります。

そこが、将来ツノになる場所です。

酪農家は子牛の頭を触ると、

「あ、このあたりからツノが出てくるな」

というのがなんとなくわかります。

生後1週間くらい経つと、少しずつツノの赤ちゃんのようなものが盛り上がってきます。

まだ小さく、外から見ても目立たないこともありますが、触ると硬い部分がわかるようになります。

この段階では、ツノはまだ小さく、頭の骨や空洞との関係も大人の牛ほど複雑ではありません。

だからこそ、酪農現場では小さいうちに除角することが多いのです。

子牛のツノと、大人の牛のツノは中身が違う

ここがとても大事です。

牛のツノは、年齢によって中の構造が変わっていきます。

子牛の頃のツノは、まだ比較的「詰まった」構造に近い状態です。

しかし成長するにつれて、頭の骨の中にある「前頭洞」と呼ばれる空洞が発達してきます。

この前頭洞は、人間でいう副鼻腔のような空気の入るスペースに近いものです。

牛が成長していくと、この前頭洞がツノの中まで入り込んでいきます。

一般的には、生後数か月を過ぎる頃から、ツノの中に空洞が関係してくると考えられています。

つまり、大人の牛のツノは、完全に中身がぎっしり詰まっているわけではありません。

大人の牛のツノの中は、空洞になっている部分があります。

もちろん、ストローのように単純な空洞がスカスカに通っているというより、頭の骨の構造とつながった空間がツノの中へ広がっている、というイメージです。

だから、大人の牛のツノを根元近くで切ると、出血だけでなく、頭の空洞が露出してしまうことがあります。

これはかなり大きな問題です。

空洞が露出すると、そこから細菌が入るリスクがあります。

感染を起こす可能性もあります。

傷の管理も難しくなります。

つまり、大人の牛の除角は、ただツノを切るだけの作業ではありません。

処置の方法、止血、痛みの管理、感染予防。

いろいろな配慮が必要になります。

ツノの痛みはどこで感じるのか

では、痛みを感じる神経はどこにあるのでしょうか。

牛のツノの痛みには、主に根元側から入ってくる神経が関係しています。

獣医師が大きな牛の除角を行う場合、ツノの神経に麻酔をかけて処置することがあります。

ここからもわかるように、ツノは「痛みを感じない棒」ではありません。

とくに根元に近い部分には、神経も血管も関わっています。

そのため、根元に近い部分を処置するほど、痛みや出血への配慮が必要になります。

子牛のうちに除角する理由も、ここにあります。

小さいうちはツノもまだ発達しておらず、前頭洞もツノの中まで大きく入り込んでいません。

そのため、大人になってからツノを切るよりも、出血や感染のリスクを抑えやすくなります。

もちろん、子牛の除角でも痛みへの配慮は必要です。

最近では、動物福祉の観点からも、麻酔や鎮痛を使った除角が重視されています。

「昔からこうしているから」ではなく、牛にとって負担の少ない方法を選んでいくことが、これからの酪農にはますます求められると思います。

なぜ酪農現場では子牛のうちに除角するのか

酪農現場で子牛のうちに除角する理由は、大きく分けると三つあります。

一つ目は、牛同士のケガを防ぐためです。

牛は群れで生活する動物です。

エサ場、水場、寝床、移動のときなど、どうしても牛同士の接触があります。

そのとき、ツノがあると他の牛を傷つけてしまうことがあります。

お腹や乳房、目の周りに当たると、大きなケガにつながることもあります。

二つ目は、人への事故を防ぐためです。

牛はおとなしい動物に見えるかもしれませんが、体が大きく、力も強いです。

本人、いや本牛に悪気がなくても、頭を振っただけで人に当たると危険です。

酪農家、獣医師、人工授精師、削蹄師、飼料会社の人。

牧場にはいろいろな人が出入りします。

安全に作業するためにも、ツノの管理は大切です。

三つ目は、大きくなってから処置する方が牛への負担が大きいからです。

先ほどお話ししたように、大人の牛のツノは中に空洞が入り込み、血管や神経も関係しています。

そのため、大きくなってから切ると、出血、痛み、感染リスクが高くなります。

だから、酪農家は大きくなってから切るのではなく、まだ小さいうちに処置するという考え方をします。

これは、人間の都合だけでなく、牛の負担を少なくするためでもあります。

「除角はかわいそう」で終わらせていいのか

ツノの話をすると、必ず出てくるのが、

「除角はかわいそうではないのか」

という問いです。

これは、とても大事な問いです。

僕は酪農家として、ここを軽く扱いたくありません。

除角は、牛にとって何の負担もない作業ではありません。

痛みの問題もあります。

ストレスの問題もあります。

だからこそ、やるなら適切な時期に、適切な方法で、できるだけ負担を減らす必要があります。

一方で、ツノを残すことにもリスクがあります。

牛同士のケガ。

人への事故。

管理の難しさ。

群れの中で弱い牛が攻撃されるリスク。

「ツノがある自然な姿がいい」

という気持ちはわかります。

でも、牧場の中では、牛は野生動物ではありません。

人間が管理する環境で、群れとして生活しています。

その環境の中で、牛同士も人も安全に過ごせるようにする責任が、酪農家にはあります。

だから、除角を単純に

「かわいそう」

「必要だから仕方ない」

のどちらかで片付けるのではなく、

牛の痛みを減らしながら、安全な飼養環境をどう作るか

という視点で考えることが大切だと思います。

これからは「ツノが生えない牛」も増えていくかもしれない

ちなみに、最近は「無角遺伝子」を持つ牛も注目されています。

無角というのは、生まれつきツノが生えない性質のことです。

英語ではポールドと呼ばれることもあります。

もし、ツノが生えない牛が増えていけば、将来的には除角そのものを減らせる可能性があります。

これは、動物福祉の面でも大きな意味があります。

もちろん、遺伝改良には慎重さも必要です。

ツノがないことだけを優先して、乳量、繁殖、健康、体型、近親交配などを無視するわけにはいきません。

でも、

「処置でツノを取る」

から、

「そもそもツノが生えない牛を増やす」

という方向に進めるなら、それは牛にとっても人にとっても良い未来かもしれません。

酪農は、昔ながらの仕事に見えるかもしれませんが、実は遺伝改良やデータ活用、動物福祉の考え方など、少しずつ変化し続けています。

ツノの話ひとつ取っても、未来の酪農につながるテーマが隠れています。

牛のツノは、ただの飾りではない

今回の話をまとめると、こうなります。

牛のツノの根元には、血管も神経も通っています。

子牛の頃のツノは、まだ比較的中が詰まった構造です。

成長すると、頭の骨の中にある前頭洞という空洞がツノの中まで入り込んできます。

そのため、大人の牛のツノは空洞を含む構造になります。

大きくなってからツノを切ると、出血や感染のリスクが高くなります。

だから酪農現場では、できるだけ子牛のうちに除角することが多いです。

そして将来的には、無角遺伝子を持つ牛の活用によって、除角そのものを減らしていける可能性があります。

普段、牛のツノを見ると、

「かっこいい」

「強そう」

「牛らしい」

と思うかもしれません。

でも、その中には血管や神経が関わり、成長すれば頭の骨の空洞ともつながっていく。

そう考えると、ツノはただの飾りではなく、牛の体の一部なんだとわかります。

この視点を持つと、牛の見え方が少し変わるのではないでしょうか。

牛乳パックのイラストに描かれたツノ。

観光牧場で見るツノのある牛。

画像生成AIが描く、なぜかやたら立派なツノの牛。

そのツノの中にも、ちゃんと生き物としての構造があります。

牛は、知れば知るほど面白いです。

そして、牛の体のことを知ると、毎日飲んでいる牛乳も少し違って見えてきます。

牛乳は、ただの商品ではありません。

牛という生き物の体からいただいているものです。

だからこそ、僕たち酪農家は、牛の体のことを学び続けなければいけません。

そして、消費者の皆さんにも、少しずつ牛のことを知ってもらえたらうれしいです。

今日も牛乳を飲んでいただいて、ありがとうございます。

情報|川上牧場🐮メンバーシップ|川上哲也

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