川上牧場研修【遺伝病、ハプロタイプと近親交配回避】
2021-05-09 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
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はじめに
こんにちは、川上牧場の川上です。
このnoteは、うちで受け入れている研修生との日々の会話や、現場でのやりとり、そして僕自身が大切にしている酪農の考え方を、誰でも学べる形でシェアするためのものです。
今回は、「遺伝病・ハプロタイプ・近親交配の回避」という一見とっつきにくいテーマについて。
でも、ここを無視してしまうと「牛が生まれない」「乳量が減る」「命が失われる」といった取り返しのつかない事態を招くことになります。
牛の命を預かるということは、知識と責任を持つということ。
そんな気持ちで読んでいただければ嬉しいです。
【1】遺伝病とは何か?
まず知っておきたいのが、以下のような劣性遺伝病の存在です。ホルスタイン種だけでなく、他の品種にもあります。
略号 | 遺伝病名 | 英語略称 | 主な影響 | 回避方法
TV | 牛複合神経形成不全症 | CVM | 胎児死亡、出生率低下 | キャリア牛との交配を避ける
TY | ブラキスパイナ | BY | 胎児奇形、死亡 | 同上
TL | 牛白血病粘着性血漿症 | BLAD | 出生後の早期死亡 | 同上これらは「キャリア牛(因子を持つ牛)同士の交配で発症」するため、ブルブックなどでしっかり確認することが重要です。
【2】ハプロタイプって何?
「ハプロタイプ」は、遺伝子の特定の組み合わせのこと。現時点でH1~H6まで確認されており、同じ型を持った牛同士を交配すると受精しなかったり、胎児が育たないといった問題が起こります。
ポイントは、
・キャリア牛同士の交配は避ける(1×1がNG)
・キャリア×ノンキャリアなら問題なし
・日本の検査では分からないことも多く、海外検査(例:Neogenなど)で調べると安心
【3】近親交配と近交係数
■ 近交係数とは?
血縁関係が近い牛同士を交配すると「近交係数」が上がり、それが生産性に悪影響を及ぼすことが研究でも明らかになっています。
均衡係数の上昇率 | 影響(例:北海道ホルスタインのデータより)
+1% | 乳量が平均で約31kg減少
6.25%(いとこ掛け) | 年間約14,000円の対価損失つまり、近親交配=目に見えない損失の蓄積なのです。
【4】どうやって避ける?血統登録と交配プログラムの活用
血統登録の重要性
血統登録をしていないと、**「近交係数が高いかどうかすら分からない」**という致命的な状況になります。
交配プログラムの活用
・GMS(遺伝的後輩プログラム)
→ ゲノム近交係数を考慮して、回避できる種牛を選んでくれるシステム。
・繁殖Webシステム(家畜改良事業団)
→ 牛群全体の近親交配回避率が一目で分かる。
・牛群近親交配回避率を50%以上に維持
→ これが将来的な生産性アップのカギ。
【5】近親交配回避の裏ワザ:レッドを使え!
ホルスタインには「ホルスタイン・レッド」という赤毛のタイプがあります。
「レッドを入れると、血が離れるので近交係数がガクンと下がる。」
レッド系統の種牛は、ホルスタイン系統とは遺伝的に離れているため、 一世代おいてから高能力の種をかけ直すことで、バランスよく改良ができます。
まるで畑に緑肥を植えて土を休ませるような考え方。
レッドの因子は劣性なので、赤くならずとも遺伝的リセットの役割を果たします。
【6】現場で起きている「知らずに起きる損失」
・種牛を「楽だから」「安いから」と1本に絞って使い続ける
・気づかずに親子・兄弟交配をしてしまい、牛群全体の乳量が落ちる
・死産や流産が続いているのに原因を「体調不良」や「運」で済ませている
→ これ、全て回避可能なことばかりです。
→ 血統登録・ゲノム検査・交配プログラムを使えば、回避できます。
【7】では、なぜそれが広まらないのか?
・「知識の格差」がある
・「コストがかかる」と敬遠されている
・「やってない人が多いから、まあいいか」という空気
でも、見えていない損失の方が、ずっと大きい。
しかもそれは、「未来に残すべき牛の命や能力」までをも削ってしまうのです。
【8】まとめ:未来の酪農を守るために、今できること
やること | 理由
血統登録 | 血の繋がりを把握するための前提条件
ゲノム検査(できれば海外検査) | 遺伝病・ハプロタイプの保因を知るため
GMSや均衡回避プログラムの活用 | 適切な種牛を選び、損失を回避する
レッドの導入 | 血統のリセットで近親交配を避ける
情報共有 | 自分だけでなく、次の世代へ正しい知識を残すためおわりに:牛の未来=自分たちの未来
今回のテーマは難しかったかもしれません。
でも、知らないからこそ損していることが山ほどあるのが酪農の世界です。
このnoteが、読んでくださったあなた自身の牧場、そして次世代の酪農の在り方を考えるきっかけになれば嬉しいです。
牛は言葉を喋らないけれど、結果を通して語ります。
良い結果を出すために、私たちが「知る」こと、「避ける」こと、それこそが最初の一歩です。
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研修生との実際の会話から生まれた知識と気づき、今後も定期的に発信していきます🐮
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