牛乳のむ?牧場配信*͛🐮⋆͛R5/8/9

2023-08-09 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

この回は、酪農のニュースを紹介しながら、川上さんが乳価と消費応援の構図、そしてアニマルウェルフェアをめぐる誤解に、現場の目線で踏み込んだ内容でした。牛乳を飲んでほしいという願いの奥にある問いまで、率直に語られています。

この回の要点

  • 栃木や群馬など、生乳生産の盛んな地域でも酪農家の廃業が相次ぎ、「一滴でも多く飲んで」と訴えが続いている
  • 川上さんは、酪農家が納得して決めた乳価交渉のあとで「生活できない」と訴える構図に違和感があると語り、根本的な解決の必要性を問いかけた
  • 飲んでほしいと願うなら酪農家自身も発信し、団体も変わっていく必要がある、というのが川上さんの主張
  • 牛への焼きごてや除角の拡散動画は前後を切り取ったもので、アニマルウェルフェアの指針でも必要な行為と位置づけられている
  • 除角ペーストや無角因子の交配など新しい技術も進んでおり、消費者に理解される生産物づくりが求められている

配信の全文(podyの記事より)

台風の影響で蒸し蒸しする牧場の朝、今日の仕事は?

配信は、島根県の川上牧場の朝の様子から始まります。台風の影響で山陰地方にも雲が入ってきていて、気温は下がったものの、牛舎の湿度が高く蒸し蒸しした状態だと川上さんは話します。

気温が下がっても、湿度が高いと牛にはきついそうです。この日は繁殖検診をしたものの、暑さのせいで妊娠が確認できなかったとのこと。

川上 こんだけ暑いとね、妊娠なんてしないです、本当に。

そこで、暑さが続く中でも計画を進めるために、採卵する牛の卵の同期化をしようと考えているそうです。この後は餌の追加や子牛の哺乳ロボットの掃除、調子の悪い子牛の世話などが控えていると話します。

採卵・同期化 牛の卵子を採取して繁殖に使う技術や、複数の牛の発情や排卵のタイミングをそろえる「同期化」は、繁殖を計画的に進めるための管理手法です。暑さで自然な妊娠が難しい時期の対策としても使われます。

お昼には補助金申請のミーティングや、県への餌に関する助成金の申請書づくりといった事務仕事も予定されているとのこと。牧場の仕事が牛の世話だけではないことが伝わってきます。

牛乳で乾杯の前に、ドキュメンタリー映画や未来の牛乳の話題

乾杯の前に、川上さんからいくつかお知らせがありました。ベーシックインカムシネマズという映画制作会社からオファーを受け、川上牧場のドキュメンタリー映画を制作することになったそうです。

映画の進捗や裏話を共有するためのLINEオープンチャットも作られていて、川上さんが過去にどんなことをしてきたのかも話せたらと語っています。

もう一つ、SNSでの取り組みも紹介されました。「#未来の牛乳」と称して、みんなが飲んでみたい牛乳・食べてみたい牛乳を、画像生成AIやチャットGPTを使って作っていく試みです。

川上 私はこんな牛乳飲みたいよとかね、この牛乳美味しそうみたいなコメントいただけると嬉しいかなと思います。

各SNSのプロフィールにリットリンクをまとめてあるので、そこから見られるとのこと。お知らせのあと、川上さんはいつものように牛乳で乾杯します。

川上 乾杯。いただきます。おいしい。

なぜ酪農のニュースを紹介するのか

この配信では、川上さんが農業や酪農のニュースを紹介する時間があります。酪農でニュースを検索したことがある人は少ないから、というのがその理由です。

川上 なかなかそういう方が少ないので、川上牧場が牛乳の魅力とか酪農の魅力を発信するために、農業のニュースとか酪農のニュースを紹介する配信をさせていただいてるんです。

この日は、続いている猛暑に関連するニュースを中心に紹介していきます。最初に取り上げたのは、毎日新聞の記事でした。

生乳生産量全国2位の栃木でも、酪農家の廃業が相次ぐ

紹介されたのは、生乳生産量が全国2位の栃木県で酪農家の廃業が相次ぎ、県が消費拡大に苦慮しているという記事です。栃木県は消費が落ち込む8月と12月を県民牛乳消費拡大月間に制定したとのこと。

資材や生産コストの高騰で牛乳の価格が上がり、消費が伸び悩んでいるのが背景にあります。総務省の家計調査によると、宇都宮市の1世帯当たりの年間牛乳購入量は、過去5年間で減り続けているそうです。

宇都宮市1世帯当たりの年間牛乳購入量の推移

2018年

79.21リットル

2019年

71.31リットル

2020年

74.14リットル

2021年

70.49リットル

2022年

68.10リットル

栃木県の生乳生産量は1999年から北海道に次いで全国2位ですが、酪農家の経営は厳しく、昨年だけでも県内で約40戸が廃業したといいます。

今月1日からは、飲用向けの生乳価格がさらに1キロ当たり10円値上げされました。ただし、買い控えする消費者が増えると、取引価格の安い加工品用に牛乳が回ってしまうという難しさもあります。

川上 皆さんがたくさん飲めば消費はかなり拡大できる。通常よりももう一杯飲んでくださいと呼びかけているという記事です。

群馬でも「一滴でも多く飲んで」の訴え

続いて紹介されたのは、群馬県の酪農家についてのNHKニュースウェブの記事です。牛の餌代や光熱費の高騰などで廃業する酪農家が相次いでいて、「一滴でも多く牛乳を飲んで支援してほしい」と訴えているという内容でした。

群馬県は去年の生乳生産量が全国4位と酪農が盛んな地域です。関東生乳販連によると、今年6月までの1年間で取引のあった県内351軒のうち、1割以上の37軒が廃業したそうです。

関東生乳販連 関東生乳販売農業協同組合連合会の略。酪農家の生乳をメーカー側に代行して販売する組織で、生乳の取引価格(乳価)の交渉なども担っています。

記事では、高山村で80頭余りの乳牛を飼育する星野英一さん(62歳)の牧場が紹介されています。輸入飼料の価格が3年前と比べて1.5倍ほどに値上がりし、去年は200万円ほどの赤字だったそうです。

連日の暑さで搾乳量が減っていることもあり、牧場では大型の扇風機およそ20台を24時間稼働させていて、光熱費の高騰も経営を厳しくしています。

川上 餌代や電気代などすべてが値上がりする中、365日休まず頑張っているので、消費者には一滴でも多く牛乳を飲んで酪農家を支援してほしいと訴えていますという記事です。

「飲んでください」で終わらせていいのか、川上さんの疑問

ここから、川上さんは自身の考えを語り始めます。北海道や京都など、どの地域でも暑さで牛が死んでしまうニュースや、「一杯でも多く飲んでほしい」というニュースが続いているといいます。

消費者に訴えること自体は大事だと前置きしつつ、川上さんはこの構図に違和感があると話します。栃木や群馬は関東生乳販連が乳価の10円値上げを要望しましたが、他の地域では20円値上げしてほしいという要望もあったそうです。

結局、大手メーカーがある関東の交渉で決着し、全国一律で10円の値上げが決まったとのこと。ここで川上さんは、酪農家が納得して交渉した結果であることを強調します。

酪農家が納得して交渉してOKって出て、10円で値上げして、それで「厳しい、助けてください、消費者飲んでください」って、この構図を俯瞰して見てみると、なんかおかしいんじゃないかな。 ── 川上

川上さんは、「一杯でも多く飲んでください」という呼びかけがもう2年半から3年近く続いていることを指摘し、なぜ根本的な解決を行わないのかと問いかけます。

牛乳の価格決定を決める全国団体で動いていて、昔からの流れで変えにくい部分もある。それでも、生活できずに廃業してしまう水準で産業を動かすこと自体がおかしいのではないか、というのが川上さんの見方です。

生活できないような水準のレベルで産業を動かしていくっていうのは、そもそもおかしい。 ── 川上

さらに川上さんは、消費者に応援を求め、税金を使って支援を受けながら、自分たちが決着させた乳価交渉で「生活できません」と言うのは、よくわからない構図だと踏み込んで語ります。

川上 自分たちが決着したその乳価交渉で、生活できませんっていうのは、本当によくわからない構図だと思うのです。

自分自身も動かなきゃいけない、川上さんの現場感覚

川上さんは、川上牧場も10円の乳価値上げをしてもらってありがたい一方で、子牛の値段は下がり、他の資材費は高騰し、機械の更新も近づいていて、だましだまし直しながらギリギリでやっていると話します。

その上で川上さんが強調したのは、酪農家自身も動く必要があるということでした。飲んでほしいと願うなら、まず自分が動くべきではないか、という考えです。

いっぱい飲んでほしいっていうのって、まず自分が動いてやらなきゃいけないんじゃないかな。 ── 川上

今はSNSを使って自分で発信することが無料で簡単にできる時代です。一人一人も、酪農家団体も変わっていかなきゃいけないというのが川上さんのメッセージでした。

川上さんは、こうした構図について消費者の意見も聞いてみたいと呼びかけ、コメント欄やアンカーボックスで自由な意見を寄せてほしいと話しています。

牛の額に焼きごて、拡散動画をどう見るか

話題は、農水省から出されたアニマルウェルフェアの指針へと移ります。鶏のケージ飼いを減らす、豚の単独飼育をやめる、牛のつなぎ飼いでも運動させるなど、家畜の飼い方を変えていこうという動きです。

アニマルウェルフェア 家畜が感じる苦痛やストレスをできるだけ減らし、動物本来の行動ができるように配慮して飼育しようという考え方です。日本語では「動物福祉」とも訳されます。

川上さんは、以前SNSでバズった、島根県の牧場で従業員が牛を蹴る動画にも触れ、アニマルウェルフェアが広く知られるきっかけになったのではと話します。

この日紹介したのは、茨城県の畜産センターで牛を蹴ったり焼きごてを押し付けたりする内部動画が拡散し、物議を呼んでいるというYahoo!ニュースの記事です。

動画は国際的な動物権利団体が投稿したもので、1600件以上のリツイート、1400件を超えるいいねが集まり、「これはひどすぎる」「動物虐待以外の何物でもない」といった批判が上がっていました。

これに対し、茨城県畜産センターの担当者は文書で回答しています。以前に牛舎内で行われていた、牛を安全に移動させるための行為や、除角時に暴れて人や牛が怪我をしないよう実施していた行為の一部を切り取って編集したものと思われる、という説明でした。

除角 子牛のうちに牛の角を取り除く処置のことです。牛同士の突き合いによる怪我や、人への不慮の事故を防ぐために一般的に行われています。書き起こしでは「序角」と表記されていますが、正しくは「除角」です。

川上 以前に牛舎内で行われていた牛を安全に移動させるための行為や、除角時に暴れて人間、牛双方が怪我をしないように実施されている行為を撮影し、一部を切り取り編集されたものと思われます。

焼きごては虐待なのか、指針が定める「必要な行為」

記事では、焼きごてを使う理由についても説明されています。子牛のうちに角を取り除く除角のために使われていて、牛同士の突き合いや人への事故を防ぐために必要な処置だとされています。

環境省が発行するアニマルウェルフェアの指針でも、除角は牛の攻撃性を下げ、群れで飼う場合の怪我や流産を防ぐ有効な手段と位置づけられているそうです。

同時に指針は、手荒な扱いを避け丁寧に扱うこと、牛に不要なストレスを与えないことも定めています。除角を行う際も、可能な限り苦痛を生じさせない方法をとることとされています。

実施時期については、角の根元を触ってわかるようになる時期以降で、ストレスが少ないとされる焼きごてでの実施が可能な生後2ヶ月以内が推奨されていて、焼きごての使用が明記されているとのことです。

川上さんは、牛を蹴る動画が拡散されたときと同じで、これも前後の内容を知らないまま一部を切り取ったものだと指摘します。角が焼き切られて悲鳴を上げている、と見る人には見えてしまうといいます。

川上 アニマルウェルフェア、動物福祉という法律があって、それに遵守した形で飼養されているというのは県の回答で、全くその通りじゃないかなと思いますね。

切り取りへの違和感と、進歩する畜産技術

川上さんは、牛も普段切らない爪を切ったり角を切ったりすれば痛くて暴れると説明します。それを抑えるためにロープで縛ったり柵に入れたりする必要があることを、消費者に認識してほしいと語ります。

一方で川上さんは、畜産の側も「当たり前だ」で終わらせてはいけないとも言います。アニマルウェルフェアに沿った技術や医薬品も進歩しているからです。

昔は焚き火で焼いた鉄を使い、切れるハサミのような道具で角を切って、血が出るところを焼きごてで焼くのが一般的で、長年それが続いてきたそうです。

今は海外にホーンズアップという商品があり、小さく熱を発するガンのような機械で除角できるといいます。牛に麻酔を使って少し眠らせている間に処置する方法も、技術としてあるとのこと。

川上さんは、拡散された動画自体が古いものだったとも指摘し、費用はかかるものの、酪農家・畜産農家もこうした新しい技術や医薬品を取り入れていかなければいけない時代だと話します。

ゼロ百の考えじゃなくて、牛にも人にも楽だったら、僕はそれを使った方がいいんじゃないかって思う。 ── 川上

川上牧場では除角ペーストを使ったり、無角因子を持つ牛を交配して除角の行為自体をなくす方法もあると紹介します。より良い品質で、安全安心で、消費者に理解してもらえる生産物を作らないと飲んでもらえない時代になってきている、というのが川上さんの実感です。

和牛に角を残す理由と、聞かれれば何でも答える姿勢

川上さんは、以前YouTubeで「川上牧場では黒毛和牛の角を生やしたまま飼っているが、なぜか」という質問を受けたことを紹介します。

うちの和牛も別の牧場に行ったとき、角がないと飼いにくいことがあるそうです。群で飼う場合、牛を捕まえるときにロープを引っ掛けたり鼻繰りをつけたりするのに、角があると便利なことがあるといいます。

さらに、市場で牛を売るとき、どんなに良い牛でも角がないだけで買っていかない農家さんが一定数いるとのこと。そのため和牛には角を残す除角の仕方をしていこうと考えているそうです。

川上 そういう内情とかもあるっていうのをね、知ってもらって、なんか質問がありましたら、本当に何でも答えますんで、すぐ答えますんでね、ぜひぜひコメント欄とか質問ボックスで送っていただけたらと思います。

最後は明るい話題、野菜×ヨーグルトの新商品

暗いニュースが続いたので、最後は乳製品の新商品の紹介です。株式会社明治が8月8日から販売する「明治吸収サポート 赤黄緑の野菜ヨーグルト」が取り上げられました。

これは、野菜の栄養吸収を上手にサポートする乳酸菌を使ったヨーグルトに緑黄色野菜を配合したもので、脂肪の摂りすぎが気になる人にも続けやすい脂肪ゼロタイプとのことです。

赤黄緑の野菜ヨーグルト、それぞれの中身

用語

赤

トマトに、桃やリンゴなどの果肉・果汁を組み合わせ

用語

黄

ニンジンに、桃やマンゴーなどの果実・果汁ピューレを組み合わせ

用語

緑

小松菜とほうれん草に、キウイフルーツやリンゴなどの果肉・果汁を組み合わせ

野菜は意識していても十分な量を摂るのが難しいと感じる人が多い中で、明治は新しい栄養の摂り方を提案し、健康的な食生活に貢献していきたいとしています。

川上さんは、まだまだ暑い日が続くので、夏バテで食事が取りにくい人にこのヨーグルトを勧めます。牛乳や乳製品を上手に使って健康につなげてほしい、というのがこの日の締めくくりでした。

まとめ

この回は、酪農のニュースを紹介しながら、川上さんが乳価と消費応援の構図、そしてアニマルウェルフェアをめぐる誤解に、現場の目線で踏み込んだ内容でした。牛乳を飲んでほしいという願いの奥にある問いまで、率直に語られています。

  • 栃木や群馬など、生乳生産の盛んな地域でも酪農家の廃業が相次ぎ、「一滴でも多く飲んで」と訴えが続いている
  • 川上さんは、酪農家が納得して決めた乳価交渉のあとで「生活できない」と訴える構図に違和感があると語り、根本的な解決の必要性を問いかけた
  • 飲んでほしいと願うなら酪農家自身も発信し、団体も変わっていく必要がある、というのが川上さんの主張
  • 牛への焼きごてや除角の拡散動画は前後を切り取ったもので、アニマルウェルフェアの指針でも必要な行為と位置づけられている
  • 除角ペーストや無角因子の交配など新しい技術も進んでおり、消費者に理解される生産物づくりが求められている