中学生職場体験受入中🐮

2023-09-20 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

牧場での職場体験は、動物のお世話だけでなく「大人になる準備」を考える時間にもなりました。ライフプランやマンダラシートを通して、お金・仕事・勉強・AIといった現実を、中学生が自分の数字で体感していく回でした。

この回の要点

  • 動物好きと「命の勉強」への興味が、川上牧場を選んだ理由になっている
  • 時給1000円のバイトで稼げる額を計算すると、思い描いた金額と現実に大きな差があるとわかる
  • 一人暮らし・結婚・出産・葬儀まで、人生の節目ごとにまとまったお金がかかる
  • なぜ勉強するのかは、初任給や生活の自由度の差につながっている
  • 転職・外国人労働者・AIによる産業構造の変化を、採用側の視点から考えさせる授業だった
  • 「子供の夢を壊す」と敬遠されがちなお金の話を、あえて中学生に伝えたいという川上さんの思いが根底にある

配信の全文(podyの記事より)

なぜ牧場で職場体験?動物好きと「命の勉強」

配信は職場体験の休憩中に行われました。川上さんはまず、なぜ数ある職場の中から川上牧場を選んだのかを2人の中学生に聞いていきます。

中学生 動物が好きだから。

動物関係の職場体験は、うち以外にほとんどなかったと中学生は話します。動物病院はあっても、中学生の受け入れをしていないところが多いのだそうです。

川上さんによると、動物関係の仕事を目指す人が川上牧場を選ぶケースは多いといいます。もう1人の中学生は、別の動機を挙げました。

中学生 身近な動物の命の勉強をさせてもらおうと思って希望しました。

「命の勉強って何ですか?」という川上さんの問いに、中学生は少し戸惑いながら答えます。

中学生 普段生きてて感じれない貴重な体験をやらせてもらおうと。

将来そういう方向に進みたいのかという問いにも、中学生は「あります」とはっきり答えました。動物と命への興味が、この職場体験の出発点になっています。

「あと3年で大人」から始まるライフプラン授業

ここから話は一気に「大人になる準備」へ移ります。川上さんは、13歳から大人になると法律で決まっていると切り出しました。

成年年齢の引き下げ 2022年4月に民法が改正され、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。18歳になると親の同意なしに契約ができるようになります。配信中の「あと3年で大人」という言い方は、この18歳成年を指しています。

川上さんは、大人になる準備ができているか確認しつつ、毎回インターンシップの初日にやっているというシミュレーションを始めます。2人にノートを開いてもらいました。

まず今の年齢である14歳・15歳を書き、そこから線を伸ばして「何歳で働き始めるか」を書いていきます。1人は大学に行きつつ20歳ごろにバイトで働き始める、もう1人は専門学校に進むと決めていて、やはり20歳ごろと答えました。

この授業は「ライフプランシミュレーション」と呼ばれるものです。中学生の1人は、学校でも似たようなことをやったことがあると話しました。

中学生 なんか何歳で学校行って、結婚して、今後の人生(を書くやつ)。

働き始める年齢の次は、結婚、子供、子供の巣立ち、親が亡くなる年齢、自分が仕事を辞める年齢、そして寿命まで。人生の節目を、自分で数字を書き込んでいきます。

ライフプランシミュレーションで書き込む項目

1

働き始める年齢

何歳でどう働き始めるかを書く

2

結婚する年齢

何歳で結婚するかを想定する

3

子供の人数と年齢

1人目・2人目それぞれの年齢を書く

4

子供の巣立ち

子供が結婚して家を出る時期

5

仕事を辞める年齢

定年など仕事を完全にやめる年

6

寿命

何歳まで生きるかを書く

アルバイトで25万円?「時給1000円の現実」を計算する

最初に検証するのは、学生時代のアルバイト収入です。実家暮らしのまま、中学生は「毎月25万円もらいたい」と答えました。

川上さんは、どんなアルバイトで25万円稼ぐのかを一緒に考えます。中学生が挙げたのは「夜勤」。昼は学校、夜は深夜のアルバイトという想定です。

この地域で深夜営業しているアルバイトとしてコンビニが挙がり、時給はだいたい1000円ほど。ここから、25万円稼ぐのに何時間必要かを電卓で計算していきます。

時給1000円で15万円なら150時間、25万円なら250時間。1日3時間しか働けないとすると、1か月で50日や80日以上働くことになり、そもそも成立しません。

現実的に、毎日休まず1日3時間働いても月9万円ほど。週2日休むと16日勤務になり、4万8000円まで下がってしまうという結果が出ました。

中学生 え、少ない。もっと高いと思ってた。

学校のあとに深夜勤務を組み込むと、睡眠は2時間ほどしか取れない計算になります。川上さんは「倒れます」と、無理な働き方であることを示しました。

時給1000円のアルバイトで稼げる金額

9万円

毎日休まず1日3時間働いた場合の月収

4万8000円

週2日休んで1日3時間働いた場合の月収

結局、学業や遊びの時間も考えて、アルバイトの想定額は月2万円あたりが現実的だという話に落ち着きました。夢の金額と現実のギャップが、数字ではっきり見えてきます。

一人暮らしにかかるお金を実際に調べてみる

次のテーマは一人暮らしです。中学生は当初「親が死んだら」「イライラしたら出る」と、ずっと実家に住むイメージを持っていましたが、結婚するなら家を出ることになります。

そこで、一人暮らしにかかるお金を具体的に調べていきます。住みたいのは2部屋あるところ、つまり2DKで、駅近の出雲市駅周辺という条件です。

実際に賃貸情報を見ると、出雲市駅の2DKは家賃3万9000円から5万5000円ほど。ここでは家賃を毎月5〜6万円と設定しました。

敷金・礼金 賃貸契約を結ぶときに、入居前にまとめて払うお金です。家賃の2〜3か月分をまとめて用意する必要があり、初期費用が大きくふくらむ原因になります。

入居時には敷金・礼金として数か月分を先に払う必要があります。家賃だけでも初期費用で18万円ほどかかる計算です。

さらに、洗濯機・冷蔵庫・電子レンジ・炊飯器・お皿など、生活に必要な家具や家電もそろえなければなりません。一人暮らしの初期費用は、調べると平均でまとまった金額になることがわかりました。

月2万円のバイト収入で初期費用を貯めようとすると1年以上、まったく使わなくてもかなりの時間がかかります。その年齢で一人暮らしを始めるのは、実はかなり難しいという現実が見えてきました。

結婚・出産・親の葬儀までお金の話は続く

話は結婚式の費用に進みます。中学生の予想を超えて、結婚式の平均費用はまとまった金額がかかると示されました。

働き始めてから結婚するまでの年数で割ると、毎月かなりの額を貯金しなければ結婚式は挙げられません。夫婦で半分ずつ出すと考えても、負担は小さくないという話です。

就職後の初任給についても、中学生は「手取り30万」と答えましたが、川上さんは全国の初任給の平均を検索して見せ、現実との差を確認していきます。

結婚後は出産費用も必要になります。自然分娩の全国平均は53万8263円で、子供の人数分がかかります。さらに子供の結婚資金、親の葬儀費用と、お金の話は人生の終盤まで続きます。

葬儀費用 配信では、葬儀一式の費用の平均が119万1900円と紹介されました。誰が負担するかは家庭によって違いますが、人生の節目ごとにまとまったお金が必要になることを示す例として挙げられています。

一連のシミュレーションで、収入の想定のままでは節目ごとの費用をまかなえないことが次々と明らかになります。中学生の表情も、だんだん曇っていきました。

中学生 給料上がるって夢を持ったら(いいのかな)。

その一言から、川上さんは「どうやって給料を上げるか」という次の論点へ話を進めていきます。

「なぜ勉強するのか」と選挙・税金のつながり

一連のお金の話は、選挙や税金へとつながっていきます。川上さんは、これらの費用が自分の生活に直結するからこそ、自分の生活に密着していくのが投票だと説明します。

たとえば「集めた税金を若い人のために使う」「子育て支援に全額使う」といった政策なら投票するか、という具体的な問いを投げかけ、投票が自分ごとであることを伝えていきます。

そして「今、何をすべきか」という話になります。給料を上げるにはいい職場に就くこと、そのためにはいい大学、そのためには勉強、という流れです。

川上 先生もお父さんお母さんが勉強しなさいっていうのはここになってきますね。

小さいころから言われてきた「勉強しなさい」の意味が、初任給や生活の差につながっているとわかると、中学生は「理由がわかってきた」と反応しました。

初任給が17万円の人と30万円の人では、その後の生活が大きく変わる。結婚や出産、親の葬儀まで、選べる自由の幅が変わってくるという話です。

大谷翔平も使った「マンダラシート」で目標を分解する

現実を突きつけるだけでなく、川上さんは対処法も教えます。悩んだときに使えるツールとして紹介したのが、目標を書き出す「マンダラシート」です。

マンダラシート 9×9のマス目を使って目標を細かく分解する発想法です。中央に大きな目標を書き、その周囲に必要な要素を書き込んでいきます。野球選手の大谷翔平さんが高校時代に使っていたことで広く知られるようになりました。

まず四角を9個のマスに分け、真ん中に目標を書きます。「宇宙飛行士になる」といった大きな夢でも、「今日の昼ご飯」でもかまいません。中学生は「勉強3時間」「早く寝る」などを書きました。

次に、中央の目標を達成するために必要なことを4つ考え、四隅に書きます。残りのマスには「これも頑張れたらいい」という軽い目標を入れていきます。

川上さんは、書き出すこと自体に意味があると話します。頭の中でモヤモヤしていることを外に出すと、自分の考えや進め方を客観的に見られるからです。

川上 アウトプットして外に出してみると、自分がどういうことを考えているのかが客観的に見ることができる。

さらに、四隅に書いた目標をそれぞれまた9マスに分解していくと、シートはどんどん広がっていきます。一番外側の簡単なものから順に達成していけば、中央の大きな目標にたどり着ける仕組みです。これがマンダラ図法です。

中学生 (マンダラシートは)面白い。

一つの会社で一生働ける?転職と採用のリアル

話題は、就職後の働き方に移ります。「一つの会社で何年働くか」という問いに、中学生は「やりがいがあったら働く」と答えました。

中学生 やってて面白いし(働く)。

給料は上がるだろうと考える中学生に、川上さんは日本では給料がなかなか上がらない現実を突きつけます。1年で時給が50円上がるかどうか、という水準の話です。

川上 転職しないと給料上がんないんだ。

しかし、と川上さんは続けます。転職を前提にする人を、会社はすんなり採用するでしょうか。「一生この会社で働きます」という人と、数年で辞めそうな人、どちらを採るかという問いです。

さらに、日本で働く場所が少ない外国人労働者は「一生働きたい」と思いやすい。母国語も日本語も話せる人と日本人と、どちらを採用するか——そんな採用側の視点まで、中学生に考えさせていきます。

日本は先進国?経済の縮小と英語の必要性

川上さんは「日本を今も先進国だと思っているか」と2人に尋ねます。2人とも、内心ではそうは思っていないと答えました。

少子高齢化で働く人が減り、10年後には働く人の多くが高齢化する。稼ぐ資本家は儲かる海外へ会社を移すため、日本の経済はどんどん縮小していくという見立てです。

その結果、日本人向けにビジネスをする企業も減っていくと川上さんは話します。身近な例として挙げたのが、映画やミュージカルの日本語吹き替えです。

日本語吹き替え・翻訳の縮小 市場が縮小すると、日本人向けに翻訳や吹き替えをするコストが見合わなくなる、という文脈で語られています。あくまで川上さんの見立てで、実際の業界動向を断定したものではありません。

日本語でビジネスをする人が減るなら、ビジネスにも英語が必須になる。6か国語を話せる人と、日本語だけの人と、どちらを採用するか——ここでも採用側の視点が繰り返されます。英語が苦手だという中学生にとって、耳の痛い話です。

AIと産業革命——資格や仕事が奪われる未来

さらに川上さんは、AIによる仕事の変化に踏み込みます。中学生はスマホでYouTubeと翻訳しか使っていないとのことで、ここでAI活用の話が広がります。

中学生 (スマホでは)YouTubeと翻訳しか使ってない。

弁護士や公認会計士など「士」がつく職業について、川上さんはその多くがAIに奪われると言われていると話します。一生懸命勉強して資格を取っても、「君よりAIを使った方がいい」と言われる可能性がある、という厳しい見方です。

「一生この会社で働きます」と決めても、会社が翌日からAIやロボットでDX化を進め、解雇されるかもしれない。中学生は「きつ」と漏らしました。

この変化を、川上さんは社会科で習う産業革命になぞらえます。ミシンの登場で、30年裁縫をしてきた職人より、ミシンの使い方を覚えた子供の方が生産性が高くなり、雇用がひっくり返った出来事です。

川上 これが今AIで起こってることです。

だからこそ、AIを使える人と使えない人ならどちらが採用されるか、という話になります。中学生も「使える(方)」と答えました。プログラマーは稼げそうという意見にも、プログラミングもAIでできてしまうと返しています。

産業革命とAIの共通点

産業革命(ミシン)

熟練の裁縫職人より、ミシンを覚えた子供の方が生産性が高くなり雇用が逆転した

VS

AI

一生懸命取った資格や技能より、AIを使えることが評価される時代になりつつある

なぜ今この話を?「もっと早く知りたかった」大人たちの本音

一連の話を終え、川上さんは中学生に感想を聞きます。2人からは率直な言葉が返ってきました。

中学生 いろんな意味で心に残りました。

中学生 難しかった。

川上さんは、なぜこんな話をするのかを説明します。18歳成年になった今、大人になるまであと3年しかない。準備が必要だという思いからです。

学校の勉強についても触れます。AIやインターネットで答えがわかる時代に、なぜ勉強するのか。それは、世の中にないものを作る創造性のために知識が活きるからだと語ります。

川上 創造性って言って、世の中にないものを作っていかないといけない。そうなった時にその学校の勉強は活きます。

配信を見ていた大人たちからは、「もっと早くお金の勉強をしておけばよかった」というコメントが寄せられていたといいます。川上さん自身も、同じ思いを口にしました。

川上 僕も勉強しとけばよかったと思うもん、本当に。

こういう話は「子供の夢を壊す」と言われて嫌われがちだから、誰も教えてくれない。だからこそ自分は伝えたい、というのが川上さんの立場です。

川上 自営業して農業してやってるから、もっと早く知りたかったなって思ってるんで、中学生の力になればと思って。

職場体験は翌日・翌々日も続くとのこと。「現実を突きつけていく」と言いつつ、これは中学生に日本を明るくしてほしいという願いを込めた「夢の話」だと締めくくられました。

まとめ

牧場での職場体験は、動物のお世話だけでなく「大人になる準備」を考える時間にもなりました。ライフプランやマンダラシートを通して、お金・仕事・勉強・AIといった現実を、中学生が自分の数字で体感していく回でした。

  • 動物好きと「命の勉強」への興味が、川上牧場を選んだ理由になっている
  • 時給1000円のバイトで稼げる額を計算すると、思い描いた金額と現実に大きな差があるとわかる
  • 一人暮らし・結婚・出産・葬儀まで、人生の節目ごとにまとまったお金がかかる
  • なぜ勉強するのかは、初任給や生活の自由度の差につながっている
  • 転職・外国人労働者・AIによる産業構造の変化を、採用側の視点から考えさせる授業だった
  • 「子供の夢を壊す」と敬遠されがちなお金の話を、あえて中学生に伝えたいという川上さんの思いが根底にある