初乳の温度
2025-03-12 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
夏の牛乳談義から始まって、初乳の温度をめぐる常識のアップデートまで。現場で覆った固定概念の話は、酪農に限らず「アップデートし続けること」の大切さを感じさせてくれます。
この回の要点
- 温泉上がりの瓶牛乳を一気に飲むのが、研修生さんの夏の最高の楽しみ方
- 初乳の温度は、アメリカの研究で「下痢の直接の原因ではない」とされ、川上牧場でも数年前から扱いが変わった
- ただし冷たすぎるのは避け、冬場は体温維持のため温める配慮は残している
- 子牛が飲まない原因は温度より、分娩時の環境や虚弱さなど「活力」にあると考えられている
- Googleで世界の資料が読める時代になり、酪農の常識も日々アップデートされている
配信の全文(podyの記事より)
雨の朝、研修8日目のスタート
今日は6月28日金曜日。天気は雨で、梅雨真っ盛りのなか配信がはじまりました。ずっと雨で、少し涼しい朝です。
この日は中四国酪農大学校の学生さん、つまり研修生さんとの研修8日目。TikTokライブで配信しながら、stand.fmやSpoon、インスタグラム、YouTubeにもアーカイブやショートを上げているそうです。
さっそくSpoonから届いたコメントを紹介します。「ゴチゴチの酪農の話ありがとうございます」という声に、川上さんも「好きな人いますね、ゴチゴチの話がね」とうれしそうです。
夏の牛乳、いちばん美味しい飲み方は?
リスナーさんからの「研修生さんのおすすめの夏の牛乳の楽しみ方を聞いてみたい」というコメントに、研修生さんは即答でした。
夏は暑くて汗を流したくなる。だから温泉に行く。そして温泉上がりのキンキンに冷えた牛乳が格別だ、というのが研修生さんの答えです。
研修生 温泉上がりのキンキンに冷えた牛乳も格別っすね。夏ならではっすね、やっぱり。
一方の川上さんは、外ではあまり牛乳を買わない派。「家にあるしって思っちゃうから」と笑います。
でも研修生さんには、瓶であることが大事なんだそう。瓶がいいんすよ。雰囲気楽しむんですよと、あの一気飲みの瞬間を「最高」と語ります。
研修生 僕ビール飲まないんで、牛乳が最高ですね。
しかもこの牛乳好きは子供の頃からずっと。温泉に行ったら、コーヒー牛乳でもフルーツ牛乳でもなく、まず牛乳、という筋金入りです。
うわぁ、より牛乳ですよね。 ── 研修生
若い子が温泉好き?サウナと露天風呂の話
話は「今どきの若い子が温泉好き」という発見に広がります。研修生さんは露天風呂派で、寒い冬より夏の夕方の明るい感じが好きなんだとか。
川上さんは、自分が二十歳の頃は温泉の良さが全然わからなかったと振り返ります。それに対して研修生さんは「結構あれ多いですよ、温泉好き」ときっぱり。
背景にはサウナブームもあるようです。学校の近くにも歩いて10分ほどの温泉があって、みんなよく行っていたと話します。
中四国酪農大学校 中四国地方の酪農・畜産の担い手を育てる専門学校です。この回の研修生さんはここの学生で、川上牧場で実地研修をしています。
岡山の「湯婆婆」、24時間無料の混浴で
鳥取の農大時代の川上さんも、山を40分ほど越えて温泉に通っていたそうです。そこから、岡山にある「湯婆婆」と呼ばれる24時間無料の混浴露天風呂の話になりました。
研修生 24時間無料の混浴みたいな。
研修生さんには忘れられない体験があります。友達と閉館直前に着いてしまい、屋内は入れず、外の露天風呂へ。「どうせ女の人いないじゃん」と思って入ったら、人がいたのだそうです。
研修生 うおーと思って振り返ったらおばちゃんでした。
「そういうところが岡山県にあるんですよね」と川上さん。ぜひ行って、上がったら牛乳を飲んでほしい、とちゃっかり牛乳につなげます。
夏だけの凍らせるフルーチェ
夏のおすすめとして、川上さんは最近の商品を挙げます。凍らせて食べるタイプのフルーチェです。
シャリシャリのシャーベットみたいな食感で、普通のフルーチェのプルンプルン感とは別物。牛乳を入れて混ぜ、冷凍庫に入れて作るそうです。少し手間はかかりますが、川上さんは「美味しいですよ」とおすすめしています。
初乳の温度、実はそんなに関係ない?
ここからお勉強タイム。研修生さんが研修中にびっくりしたことを切り出します。初乳を絞ったものを、けっこう冷たいまま子牛に飲ませていた、という点です。
学校では初乳の温度をかなり意識していたそうです。子牛がなかなか飲まず、時間が経ってぬるくなったら、また温度を測って温め直す。そうしないと下痢をするのかな、と思っていたと話します。
質問(研修生) 冷たい初乳をそのまま飲ませて大丈夫なのでしょうか。温度が下がると下痢につながると習ってきたのですが。
川上さんも、以前は温度がとても大事だと考えていました。温度計で逐一測り、溶かすときは熱くしすぎないよう気をつけていたそうです。
回答
ところが、アメリカの研究で「温度はあまり関係ない」という結果が出たのだそう。温度そのものが下痢の直接の原因ではない、という話です。
温度はあんまり関係ないっていう結果が出た。 ── 川上
ただし、川上さんは温度がまったく無意味とは言いません。冷たいよりあたたかい方が、子牛の飲む活力は出やすい。冬場は体温を下げる要因にもなるので、そこは大事だと考えています。
では、生まれた子牛が初乳を飲まない本当の原因は何か。川上さんは、分娩時の補助の仕方や、お腹の中にいたときの環境を挙げます。
たとえば気管に羊水が入ってしまっていたり、生まれつき虚弱だったり。そういう活力の問題こそが、飲まない原因だと今は考えているそうです。
初乳 分娩後まもなく出る、通常より濃い乳のことです。子牛の免疫に関わる成分を多く含むため、生まれた子牛にできるだけ早く飲ませることが重視されます。
凍結初乳と人工初乳、そして情報のアップデート
温度の話に続けて、初乳の保存や殺菌の話にも触れます。川上牧場にはパスチャライザーがないため、凍結初乳は使っていないそうです。
パスチャライザー 牛乳や初乳を、成分を守りながら加熱殺菌するための装置です。凍結初乳を安全に扱ううえで役立ちます。
時間が経った初乳には細菌の心配もあるため、凍結初乳の代わりに粉末の人工初乳を使っているとのこと。搾乳のタイミングが合わないときは、これを普通に使うそうです。
こうした判断の背景には、日々のアップデートがあります。全世界の資料が簡単にGoogleで見られる時代になり、アメリカやカナダ、ヨーロッパの資料から飼い方の違いを学べるようになりました。
川上 全世界で牛飼われてるじゃないですか。全世界のその資料とかが簡単にGoogleで見れるから。
さらに、日本の獣医さんや飼料メーカーの獣医さんが情報を出してくれたり、薬品会社のZOOM勉強会があったり。参加できなかったときは、営業マンに頼んで資料をもらうこともあるそうです。
現場で覆った「固定概念」
最後に、研修生さん自身の体験に話が戻ります。研修中、初乳の器具を洗浄しているうちに時間が経ってしまい、初乳が冷たくなって「まずい」と焦ったのだそうです。
研修生 いや、もう焦ったんですけど。こんなもん冷たいの大丈夫なのかな。
でも結果は問題なし。牛は元気で、消化も変わらなかったといいます。学校で身につけた常識が、現場でくつがえった瞬間でした。
この「温度はそこまで関係ない」というアメリカの発表は、3年ほど前のこと。ただし川上さんは、キンキンに冷えたものはさすがにダメだと付け加えます。子牛へのケアとして、常識の範囲は残っているようです。
そこは結構固定概念が変わってきたな。 ── 研修生
まとめ
夏の牛乳談義から始まって、初乳の温度をめぐる常識のアップデートまで。現場で覆った固定概念の話は、酪農に限らず「アップデートし続けること」の大切さを感じさせてくれます。
- 温泉上がりの瓶牛乳を一気に飲むのが、研修生さんの夏の最高の楽しみ方
- 初乳の温度は、アメリカの研究で「下痢の直接の原因ではない」とされ、川上牧場でも数年前から扱いが変わった
- ただし冷たすぎるのは避け、冬場は体温維持のため温める配慮は残している
- 子牛が飲まない原因は温度より、分娩時の環境や虚弱さなど「活力」にあると考えられている
- Googleで世界の資料が読める時代になり、酪農の常識も日々アップデートされている