家でチーズ・ヨーグルトは作れる?市販牛乳での注意点(ホモとノンホモ)
2026-01-04 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
https://youtu.be/qavSpFIL_AU
おはようございます。
島根県出雲市で酪農をしている川上牧場の川上哲也です。
1月の朝って、牛舎に入るまでがいちばん寒いんですよね。外は雨で、空気が水っぽくて。長靴のゴムが少し冷たく感じる日でした。作業の合間に、いつも通り牛乳を一杯飲みながら、今日の配信のことを考えていました。
今日は午前中に「青年農業士」から「指導農業士」へ切り替える手続きがあって、作業を早めに片付けて事務仕事も進める予定です。40歳になると、役割が少しずつ変わっていきます。現場で汗をかく時間は変わらないんですけど、地域の後継者育成とか、農業を伝える側の仕事も増えてくる。そういうタイミングで、リスナーさんから届いた質問が、なんだかちょうどいい話題に思えました。
今日の問い:「家でモッツァレラ、作れますか?」
今回いただいたのは、TikTokからの質問です。
「家でモッツァレラチーズを作ってみたいのですが、チーズやヨーグルトなどを作ったことがありますか?」
たしかに、酪農家って聞くと「家に牛乳がある=チーズもヨーグルトも作り放題」みたいなイメージを持たれがちです。僕も気持ちは分かります。牛乳があるなら、やってみたくなりますよね。
でもこの質問、実は「料理の話」だけじゃないんです。
もう少し広く言うと、
・市販の牛乳って、どうして“いつも同じ味”なのか
・家で加工しようとすると、なぜうまくいかないことがあるのか
・牛乳って、どれだけ繊細な素材なのか
こういうところに繋がっていきます。
そして、いまのnoteのレコメンドが「一次情報」や「体験」を優先する流れになっている中で、こういう“やってみたくなる問い”を、現場側の感覚で整理して残しておくのは、長く役に立つ記事になる気がしています。
まず結論:ヨーグルトは作りやすい。チーズは牛乳選びで難易度が変わる
最初に整理しておきます。
・ヨーグルトは、比較的カンタンです(市販牛乳でも作れます)
・モッツァレラなどのフレッシュチーズは、牛乳の種類で難易度が大きく変わります
ここで出てくるのが、タイトルにもある
**「ホモ」と「ノンホモ」**です。
ヨーグルトが作りやすい理由
ヨーグルトは、基本的に「乳酸菌で酸性にして固める食品」です。
なので、ホモ(均質化)牛乳でもノンホモ牛乳でも、だいたい作れます。
やり方もシンプルで、
・市販の牛乳
・種になるヨーグルト(プレーン)
・40℃前後で保温(ヨーグルトメーカーが楽)
これで、ちゃんとヨーグルトになります。
ここは「料理として成功体験が得やすい」ので、まず最初の入口としておすすめです。
個人的には、家で作るヨーグルトって「味のため」より「体験のため」に向いていると思っています。牛乳が発酵で変わっていくのを見ると、牛乳への見方が変わります。
でも、モッツァレラは話が変わる
モッツァレラって、作り方をざっくり言うと、
・レンネット(凝乳酵素)で固めて
・pHを下げて
・温めて“伸ばす”
この「固める→伸ばす」のところで、牛乳の性質が効いてきます。
そこで大事になるのが、脂肪とたんぱく質の“構造”です。
そして、その構造を変えてしまう処理が、ホモゲナイズ(均質化)です。
ホモゲナイズ(ホモ牛乳)って何か
市販牛乳の多くは、脂肪球を機械で細かく砕いて、牛乳中に均一に分散させています。これがホモゲナイズ(均質化)です。
この処理のメリットは大きいです。
・分離しにくい
・味が安定する
・飲みやすい
・いつ飲んでも同じ品質に近づく
だから、普段飲むにはすごく良い。
「牛乳っていつも同じ味だよね」と感じるのは、こういう技術が裏で支えてくれているからです。
ただし、チーズ作りではデメリットになりやすい
ここからは、僕の体感も含めた話になりますが、ホモ牛乳でチーズを作ろうとすると、
・固まりが弱い
・水分が抜けすぎる
・伸びない
・ボロボロになりやすい
こういう失敗が起きやすくなります。
「作り方が下手だったのかな」と感じやすいんですけど、必ずしもそうじゃなくて、牛乳側の性質が原因になっていることがあります。
家でモッツァレラを作るなら「ノンホモ」がおすすめ
なので、家でモッツァレラやフレッシュチーズを作るなら、僕は基本的に
・ノンホモ牛乳(非均質化)
・できれば 低温殺菌
この条件が揃うと成功率が上がると思っています。
ノンホモ牛乳は脂肪球が自然な大きさのままなので、たんぱく質の網目構造が作られやすく、固まりやすい。結果として「チーズになった感」が分かりやすいです。
「酪農家は家でチーズ作るの?」への正直な答え
ここは、期待を少しだけ裏切る話かもしれません。
酪農家=チーズ職人、ではないです。
多くの酪農家は、
・牛を健康に飼う
・安全な生乳を安定して出荷する
ここまでが仕事の中心です。
加工(チーズ・ヨーグルトづくり)は別の専門性で、家庭内で分業しているケースもあります。
正直に言うと、僕の感覚では
市販のチーズやヨーグルトの方が、安くて美味しい
って場面も多いです。
これは「家で作るな」という意味ではなくて、加工品の価格って、ちゃんと理由があるよね、という話です。
やってみる価値は「牛乳の見え方が変わる」こと
ただ、それでも家で作ってみる価値は大きいと思っています。
一度やってみると、
・牛乳ってこんなに繊細なんだ
・温度と菌で、ここまで変わるんだ
・普段飲んでいる牛乳って、ものすごく“整っている”んだ
こういう気づきが出てきます。
これ、知識だけで理解するより、失敗込みで体験した方が早いです。
ここで感情の話を一回だけすると、
僕はたまに、牛乳が「当たり前」になりすぎているのが少し寂しいときがあります。飲み物として完成されすぎていて、裏側の手間とか繊細さが見えにくい。でも、家で作ると、その“見えにくい部分”が急に立ち上がってくるんですよね。
もう一つの現実:ホエー(乳清)の処理が地味に大変
家でチーズを作ると、残るのがホエーです。
チーズは脂肪分とたんぱく質の塊なので、牛乳の成分表示を見てもらうと分かりますが、牛乳のうち“固形として残る部分”って実は多くありません。
つまり、残りはだいたい水分です。
ホエーを捨てるのはもったいないし、かといって飲むのもきつい。
シチューやグラタンに混ぜるのはアリですが、日常で全部使い切るのは難易度が高いです。
この体験をすると、「市販チーズって安いな」じゃなくて、
「市販チーズ、よくこの値段で成立してるな」って気持ちになります。
川上のおすすめ手順(挫折しにくい順)
最後に、これからやる人向けに流れだけまとめます。
・市販牛乳でヨーグルトを作る(成功体験が得やすい)
・ノンホモ牛乳でフレッシュチーズに挑戦する(“固まる”が分かりやすい)
・モッツァレラに挑戦する(レンネット推奨、pHと温度が肝)
この順番が、いちばん楽しく続きやすいと思います。
まとめ:私は「作る体験」が牛乳を強くすると考えています
今日は「家でチーズ・ヨーグルトは作れる?」「ホモとノンホモの違い」という話を、酪農家の現場感覚で整理してみました。
私は今、こう考えています。
・家で作るのは、コスパ勝負じゃない
・うまくいかない時は、自分のせいだけじゃない(牛乳の性質もある)
・体験すると、牛乳の価値が“味”以外のところでも見えてくる
もしよかったら、まずはヨーグルトからでも試してみてください。
うまくいっても、失敗しても、牛乳の見え方が少し変わるはずです。
そして、そういう小さな体験が積み重なると、牛乳って「飲むだけのもの」じゃなくなる気がしています。
今日も、みんな牛乳飲んでね。
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