日曜恒例コメント返し|“命の授業”は学校でどこまでやるべきか?
2026-05-03 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
おはようございます。
川上牧場の川上です。
今日は5月3日、日曜日です。
ゴールデンウィークの真ん中あたりでしょうか。
長期休暇に入って、どこかへ出かけている方もおられるかもしれませんね。
皆さん、牛乳飲んでますか?
酪農家はゴールデンウィークでも、もちろん通常営業です。
牛たちは祝日を知りません。
日曜日も、連休も、お盆も、年末年始も、毎日ごはんを食べて、毎日牛乳を出してくれます。
そして、その牛乳を集める人、運ぶ人、工場で処理する人、パックに詰める人、お店に並べる人もいます。
だからこそ、休みの日でも、できれば1日コップ1杯。
200mlでいいので、牛乳を飲んでもらえたら嬉しいです。
今日の配信は、日曜日恒例のコメント返しです。
この1週間、YouTube、stand.fm、TikTok、Xなどにいただいたコメントを読みながら、牛乳のこと、酪農のこと、そして最後には少し深い「命の授業」の話までしていきます。
休日のお供に、牛乳を片手に、まったり読んでもらえたら嬉しいです。
食べ物は、敵同士じゃない
まず最初に紹介したいのは、牛乳についてのコメントです。
以前、
「牛乳を飲まなくても大丈夫?」
「カルシウムは他の食品でも取れるのでは?」
というテーマでお話ししました。
それに対して、こんなコメントをいただきました。
「食べ物は敵同士じゃありませんよね。それぞれに長所があるのに、なぜ牛乳と争う記事を書くのか」
これは、本当にその通りだと思います。
牛乳には牛乳の良さがあります。
豆乳には豆乳の良さがあります。
小魚にも、野菜にも、海藻にも、それぞれの良さがあります。
どれかを上げるために、どれかを下げる必要はありません。
でも、世の中にはどうしても
「牛乳は体に悪い」
「牛乳は飲まない方がいい」
「実は危険です」
というような記事が出てきます。
なぜか。
正直に言うと、そういう記事は読まれやすいからです。
不安をあおる言葉は、目に止まりやすい。
「実は危険」と言われると、つい読んでしまう。
そしてSNSでは、そういう強い言葉の方が広がりやすい。
牛乳は長い歴史の中で、多くの人の食生活を支えてきた食品です。
もちろん、体質によって合う合わないはあります。
乳糖不耐の方もいます。
アレルギーのある方もいます。
だから、誰にでも絶対に飲めと言うつもりはありません。
でも、牛乳そのものを悪者にする必要はないと思っています。
食品は敵同士ではありません。
「どちらが正しいか」ではなく、
「自分の体に合うものを、どう上手に取り入れるか」
を考える方が、ずっと健全です。
牛乳に疑問がある方は、ぜひ質問してください。
酪農家として答えられる範囲で、しっかりお答えしていきたいと思っています。
飲む人がいるから、牛乳は作れる
次に紹介したいのは、酪農の大変さに関するコメントです。
「酪農は大変なことがありますよね。でも、大変な中で一生懸命作った牛乳を飲んでくれる人がいなくなったら、もっと辛いですよね」
これも、本当にその通りです。
酪農は大変です。
朝は早い。
休みは取りにくい。
生き物相手なので、予定通りにいかないことばかりです。
牛が病気になることもあります。
分娩がうまくいかないこともあります。
餌代も上がる。
燃料代も上がる。
機械も壊れる。
でも、それでも続けられるのは、牛乳を飲んでくれる人がいるからです。
どれだけ酪農家が頑張って牛乳を生産しても、飲む人がいなければ、その牛乳は行き場を失います。
ここは、とても大事なところです。
牛乳は毎日出ます。
牛は「今日は売れないから、明日は搾らなくていいよね」とはなりません。
毎日搾る。
毎日出荷する。
毎日届ける。
だから牛乳は、生産と消費のバランスがとても大切な食品です。
日本の酪農には、指定団体制度や一元集荷・一元販売という仕組みがあります。
簡単に言うと、酪農家がそれぞれバラバラに好きなように売るのではなく、地域や団体でまとめて集め、安定的に販売する仕組みです。
この仕組みによって、消費者の皆さんは毎日安定して牛乳を買うことができます。
もし全員が好き勝手に売り始めたらどうなるか。
ある地域では余る。
別の地域では足りない。
価格が乱れる。
廃棄が増える。
欠品も起こる。
牛乳は長く保存できるものではありません。
だから需給のバランスが崩れると、とても大きな問題になります。
酪農は、酪農家だけで成り立っている仕事ではありません。
牛がいて、酪農家がいて、乳業メーカーがいて、流通があって、お店があって、そして飲んでくれる人がいる。
この全部がつながって、初めて牛乳は皆さんの食卓に届きます。
マクドナルドで牛乳を選ぶ人は、えらいのか
面白いコメントもありました。
「この間マクドナルドのセットメニューを頼んだときに、飲み物を牛乳にしました。えらいですか?」
えらいです。
めちゃくちゃえらいです。
でも、酪農家の本音を言うと、マクドナルドに行くと炭酸を飲みたくなる気持ちも、ものすごく分かります。
ハンバーガー。
ポテト。
そこにコーラ。
これはもう、完成されています。
酪農家でも、そこは分かります。笑
ジャンクフードを食べるときに、健康を意識してサラダを頼むかというと、なかなか難しいですよね。
「今日は食べる日だ」と思って行く人も多いと思います。
でも、その中で牛乳を選んでくれたことは、本当に嬉しいです。
炭酸飲料が悪いわけではありません。
牛乳だけが正義というわけでもありません。
その日の気分で選べばいい。
でも、その選択肢の中に牛乳があること。
そして、実際に選んでくれる人がいること。
これは酪農家にとって、大きな応援になります。
外食でも、コンビニでも、家庭でも、
「今日は牛乳にしてみようかな」
と思ってもらえる瞬間が増えると嬉しいです。
川上牧場に従業員はいるのか?
TikTokでは、
「従業員いるんですか?」
というコメントもいただきました。
川上牧場は、搾乳牛や育成牛を含めて80頭前後の牧場です。
家族経営から、従業員を1人雇うかどうか。
ちょうどその間くらいの規模です。
現在、固定の従業員はいません。
研修生を受け入れたり、タイミーのようなスキマバイトを活用したりしながら、なんとか日々の作業を回しています。
人がいてくれると助かる場面は、もちろんたくさんあります。
でも、従業員を雇うということは、その人の生活を支える責任を持つということです。
給料を払う。
休みを確保する。
働きやすい環境を整える。
将来も安心して働けるようにする。
これは、とても大きな責任です。
酪農経営が厳しく、規模拡大も簡単ではない中で、安易に人を雇うことはできません。
だから、研修制度や短期の働き方を組み合わせながら、牧場としても人材育成に関わっていく。
そんな形で続けています。
令和8年度の研修生も募集していますので、酪農に興味がある方は、ぜひ川上牧場のホームページも見ていただけたら嬉しいです。
川上牧場リクルートページ
島根県出雲市の都市型酪農場、川上牧場の研修生募集ページです。
kawakamibokuzyou.hp.peraichi.com
牛乳の流通は、自由に見えて自由ではない
Xでは、牛乳の流通についてのコメントもいただきました。
「牛という生き物の特性と人間の消費特性の関係で、生産が多い時期と需要が多い時期がほぼ真逆。さらにすぐ腐るので、みんなが好き勝手売ったら、余って捨てる、足りなくて欠品を繰り返すことになる。だから協力して安定させないといけない」
本当に、端的にまとめていただきました。
牛乳は、ただ作ればいいものではありません。
牛の調子が良い時期と、人間がたくさん牛乳を飲む時期は、必ずしも一致しません。
牛は暑さに弱いので、夏は乳量や乳成分が落ちやすくなります。
でも人間は、暑い夏に冷たい飲み物を多く飲みます。
逆に冬は、牛の調子が良く、牛乳の成分も良くなりやすい。
でも人間は、寒いので冷たい牛乳を飲む量が減りやすい。
つまり、生産と需要の山がずれやすいんです。
そのうえ牛乳は、すぐに傷みます。
長く置いておくことはできません。
だから、みんなが好き勝手に売ると、どこかで必ず無理が出ます。
今の仕組みは完璧ではありません。
長期的には変えていかなければならない部分もあると思っています。
でも、牛乳を安定的に届けるために、全体で支える仕組みが必要であることは間違いありません。
「自分だけ儲かればいい」
「自分の牧場だけ残ればいい」
そういう考え方だけでは、この産業は続きません。
飲む人がいるから作れる。
消費があるから生産できる。
ここを忘れてはいけないと思っています。
“命の授業”は学校でどこまでやるべきか?
そして今日、一番大事に読みたいコメントがありました。
以前、
「牛のいる学校」
についてお話しした配信に、追加でコメントをいただきました。
内容をまとめると、こういうことでした。
学校教育の中で、哺乳類や鳥類を飼育する機会が減っている。
生活科や理科では、主に昆虫を扱うことが多い。
カエルやフナの解剖も少なくなった。
以前は高校でニワトリやウサギの解剖があったが、それもなくなってきている。
子どもたちは、死と向き合う経験が減っているのではないか。
そして、スーパーでパック詰めされた食べ物を買うことと同じように、命の前の姿を知らないままになっているのではないか。
パックに入る前には、温度があり、匂いがあり、動きがあった。
そのことを、折に触れて子どもたちに伝えることが大事なのではないか。
そんなコメントでした。
これは、本当に難しいテーマです。
学校で動物を飼うこと。
命を扱うこと。
死を学ぶこと。
大切だと思います。
でも、簡単に「やった方がいい」とは言えません。
なぜなら、命にはリスクがあるからです。
動物は病気になります。
ケガもします。
思い通りに動いてくれません。
休日も世話が必要です。
そして、必ずいつか死にます。
その責任を誰が負うのか。
先生なのか。
学校なのか。
地域なのか。
保護者なのか。
専門家なのか。
ここを曖昧にしたまま、学校で動物を飼うのは、とても危険です。
「命の大切さを学ばせたい」という目的は素晴らしい。
でも、その命を守る技術や覚悟や環境がないまま始めてしまうと、動物にとっても、子どもたちにとっても、先生にとっても、苦しい結果になることがあります。
だから、学校だけで抱え込むべきではないと思っています。
命の授業は、地域で支えるもの
僕は、命の授業をするなら、学校だけではなく、地域全体で支える形が必要だと思っています。
地域に畜産農家がいるなら、協力してもらう。
獣医師さんに関わってもらう。
行政や教育委員会、農業関係機関と連携する。
牧場見学や出前授業の形にする。
専門的な知識を持った人たちが関わることで、初めて安全に学べる部分があります。
命の授業は、ただ動物を見せればいいわけではありません。
かわいいだけでもない。
かわいそうだけでもない。
怖がらせればいいわけでもない。
命には温度があります。
匂いがあります。
重さがあります。
思い通りにならない動きがあります。
そして、終わりがあります。
そこまで含めて、どう伝えるかが大切です。
スーパーに並んでいるお肉も、牛乳も、卵も、魚も、もともとは命や自然の営みの中にあったものです。
でも、今の暮らしでは、その過程が見えにくくなっています。
パックに入った状態で出会う。
きれいに加工された状態で出会う。
匂いも、温度も、動きもない状態で出会う。
それは便利で、衛生的で、とても大事なことです。
でも、その前に何があったのかを知らないままでいいのか。
これは、教育として考える価値があると思います。
かわいいだけでは終わらせない
牧場に来ると、子牛を見て「かわいい」と言ってもらえることがあります。
それはとても嬉しいです。
子牛はかわいいです。
本当にかわいい。
でも、牧場にいる牛たちは、かわいいだけの存在ではありません。
牛乳を出してくれる牛がいる。
病気になる牛がいる。
治療する牛がいる。
お肉になる牛がいる。
生まれてすぐに亡くなる命もある。
長く牧場を支えて、役目を終える牛もいる。
酪農は、命と毎日向き合う仕事です。
きれいごとだけではありません。
かわいいだけでもありません。
でも、冷たい仕事でもありません。
そこには技術があります。
覚悟があります。
愛情があります。
そして、経営もあります。
この全部が重なって、牛乳が生まれています。
だから子どもたちに伝えるなら、
「牛さんかわいいね」
だけで終わらせたくないんです。
かわいい。
でも、大変。
ありがたい。
でも、現実もある。
その両方を、少しずつ伝えていくことが大事だと思っています。
命の授業に、簡単な正解はない
“命の授業”は学校でどこまでやるべきか。
これに簡単な正解はありません。
やった方がいい。
でも、簡単にはできない。
やらない方が安全。
でも、何も触れないままでいいのかという不安もある。
この間で、ずっと考え続けるテーマだと思います。
僕自身も、動物の気持ちは少し分かるような気がしますが、人間の気持ちは難しいなと思うことがあります。
人間の方がよっぽど複雑です。笑
だから、動物と触れ合えば、必ず人に優しくなれる、とまでは言いません。
でも、命に触れる経験は、何かしら子どもたちの中に残ると思います。
それはすぐに言葉にはならないかもしれません。
でも、いつかスーパーで牛乳を手に取ったとき。
給食で牛乳を飲んだとき。
お肉を食べたとき。
動物を見たとき。
「あの時、牧場で見た牛も生きていたな」
「食べ物って、もともとは命なんだよな」
そんなふうに、少し立ち止まるきっかけになるかもしれません。
その小さな立ち止まりが、僕は大事だと思っています。
今日もコメントありがとうございます
今週もたくさんのコメントをいただきました。
牛乳のこと。
食品同士を争わせない話。
酪農の仕組み。
マクドナルドで牛乳を選んだ話。
従業員や研修生の話。
そして、命の授業の話。
どのコメントも、僕にとっては配信を続ける力になっています。
音声配信を聞いて、Noteを読んで、LINEで質問して、メルマガも読んでもらう。
そんなふうに、少しずつ牛乳や酪農のことを知ってもらえる場所を作っていきたいと思っています。
6月は牛乳月間です。
6月1日は世界牛乳の日。
川上牧場でも、牛乳をもっと楽しく、もっと身近に感じてもらえる企画を進めています。
牛乳は、ただの飲み物ではありません。
牛がいて、酪農家がいて、運ぶ人がいて、売る人がいて、飲む人がいて、初めて成り立つものです。
そしてその奥には、命があります。
今日も牛乳を飲んでいただいて、ありがとうございます。
お仕事の方も、学校の方も、お休みの方も、どうかよい一日を。
みんな、牛乳飲んでね。
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