石体質の人は牛乳を飲んでいい?酪農家が“カルシウム誤解”をほどく回

2026-05-09 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

こんにちは。川上牧場の川上です。

今日は、リスナーさんからいただいた質問に答えていきます。

質問はこちらです。

「カルシウムやマグネシウムを摂りたいけれど、石体質の方には何をおすすめしたらいいですか?お水をしっかり飲みましょう、が一番いいのでしょうか?」

この質問、かなり大事です。

僕は毎日の配信で「牛乳飲んでくださいね」と言っています。

それはもちろん、牛乳を作っている酪農家だからでもありますし、牛乳という食品が日々の食生活の中でとても優秀だと思っているからです。

ただ一方で、世の中には「飲みたいけど飲めない」「飲んでいいのか不安」という方もいます。

乳アレルギーの方。

乳糖不耐の方。

腎臓に不安がある方。

そして今回のように、尿路結石、いわゆる「石」ができやすい体質の方。

こういう方に対して、何も考えずに「とにかく牛乳を飲みましょう」と言ってしまうのは、少し乱暴だと思っています。

なので今日は、酪農家の立場からではありますが、できるだけ丁寧に、そして誤解をほどく形でお話ししていきます。

最初に結論から言います。

石体質だからといって、牛乳やカルシウムを極端に避ける必要がある、とは限りません。

むしろ、食事からのカルシウムは、適量を摂ることが大切だと考えられています。

そして、石の予防でまず基本になるのは、

水分をしっかり摂って、尿を濃くしないこと。

ここが大事です。

「石=カルシウムが悪い」は、少し単純すぎる

まず、多くの人が誤解しやすいところからいきます。

尿路結石にはいくつか種類がありますが、よく知られているものに

「シュウ酸カルシウム結石」があります。

名前に「カルシウム」と入っています。

そうすると、どうしてもこう思ってしまいます。

「石にカルシウムって書いてあるなら、カルシウムを減らせばいいんじゃないの?」

気持ちはわかります。

でも、ここがちょっとややこしいところです。

カルシウムを極端に減らせば、石ができにくくなる。

これは一見わかりやすい話に聞こえます。

でも実際には、食事中のカルシウムが少なすぎると、腸の中でシュウ酸と結びつくカルシウムが足りなくなることがあります。

すると、シュウ酸が体に吸収されやすくなり、尿の中に出てきやすくなる。

その結果、かえってシュウ酸カルシウム結石のリスクにつながる可能性があるわけです。

つまり、

カルシウムを減らせば石が減る、とは単純には言えない。

ここが今日の大事なポイントです。

牛乳を悪者にする前に、まずこの仕組みを知ってほしいです。

牛乳は「石の原因」なのか?

では、石体質の人に牛乳はダメなのか。

一般論としては、

牛乳だけを悪者にする必要はありません。

もちろん、医師から乳製品やカルシウム、タンパク質、リン、カリウムなどの制限を受けている方は別です。

腎機能に問題がある方、結石を何度も繰り返している方、薬を飲んでいる方は、必ず主治医や管理栄養士さんに確認してください。

ただ、一般的な健康情報として、

「石ができやすい人は牛乳をやめましょう」

と一言で片づけるのは、かなり雑です。

牛乳や乳製品は、食事由来のカルシウム源の一つです。

しかも食事と一緒に摂ることで、腸内でシュウ酸とカルシウムが結びつき、シュウ酸の吸収を抑える方向に働く可能性があります。

たとえば、ほうれん草のようなシュウ酸が多い食品を食べる時に、チーズや牛乳、ヨーグルトなどを食事の中に自然に組み合わせる。

これは、かなり理にかなった食べ方です。

ほうれん草にチーズ。

小松菜と牛乳を使ったスープ。

ヨーグルトを朝食に添える。

そういう形です。

牛乳を単独で大量に飲む、というより、食事の中に自然に入れる。

このくらいの感覚がいいのではないかと思います。

一番基本は、やっぱり水分

今回の質問にもありました。

「お水をしっかり飲みましょうが一番いいのでしょうか?」

これは、かなり大事です。

尿路結石の予防で基本になるのは、尿を濃くしないことです。

尿が濃くなると、石の材料になる成分が固まりやすくなります。

逆に、水分をしっかり摂って尿量を保てば、石の材料が薄まり、結晶になりにくくなります。

これは、牛舎で仕事をしている僕たちにもよくわかる話です。

夏場、汗をかく。

忙しくて水を飲むのを忘れる。

トイレに行く回数が減る。

尿の色が濃くなる。

こういう時、人間の体はかなり水分不足に傾いています。

酪農家、農家、外仕事の方、厨房で働く方、スポーツをする方、サウナ好きの方。

こういう人は特に注意した方がいいです。

「水を飲んでいるつもり」でも、汗で出ていく量が多ければ、尿は濃くなります。

夏場は牛も人も水が命です。

牛も水が足りないと、すぐに食いが落ちます。

食いが落ちれば乳量も落ちます。

体調も崩れやすくなります。

人間も同じです。

石体質の方にとって、水分をしっかり摂ることは、かなり基本の対策だと思ってください。

注意したいのは「シュウ酸」と「塩分」

石体質の食生活で気をつけたいものの一つが、シュウ酸です。

シュウ酸は、ほうれん草、ルバーブ、ナッツ類、チョコレート、ビーツ、紅茶などに多いとされます。

ここで大事なのは、

「ほうれん草は悪者です」

という話ではないことです。

ほうれん草は栄養のある野菜です。

ナッツも、食べ方によっては良い食品です。

問題は、体質や量、食べ合わせです。

ほうれん草なら、茹でる。

食べ過ぎない。

カルシウムを含む食品と一緒に摂る。

水分をしっかり摂る。

こういう工夫が大事になります。

そして、もう一つ大事なのが塩分です。

塩分を摂りすぎると、尿中のカルシウム排泄が増え、結石リスクに関わることがあります。

つまり、石体質の方にとっては、

「カルシウムを減らす」よりも、

「塩分を摂りすぎない」

方が大事な場合があります。

ここ、かなり誤解されやすいです。

牛乳よりも、しょっぱい食生活の方が問題になっていることもある。

ラーメンのスープを全部飲む。

漬物、加工食品、味の濃いおかずが多い。

外食が多い。

つまみ系のお菓子が多い。

こういう食生活の方が、石体質の人には気をつけたいポイントかもしれません。

マグネシウムはどう考える?

質問には、カルシウムだけでなくマグネシウムも出てきました。

マグネシウムは体に必要なミネラルです。

海藻、豆類、ナッツ、玄米、魚介類などに含まれます。

ただし、ここでも大事なのは、

サプリメントで自己判断しすぎないこと

です。

食事から自然に摂る分には問題になりにくいことが多いですが、サプリメントは別です。

腎機能、薬、持病、結石の種類によって、合う・合わないがあります。

「石に良いらしい」

「ミネラルだから体に良さそう」

「足りない気がする」

この感覚だけで、カルシウムやマグネシウムのサプリを増やすのは少し危ないです。

サプリは食品に近い顔をしていますが、体に与える影響は小さくありません。

不安がある方は、医師や管理栄養士さんに相談してください。

酪農家として伝えたい、牛乳との付き合い方

ここからは酪農家としての感覚も含めて話します。

石体質の方が牛乳と付き合うなら、僕はこう考えます。

まず、水分をしっかり摂る。

次に、塩分を控える。

シュウ酸の多い食品を食べすぎない。

そして、カルシウムは食事から適量を摂る。

この順番が大事です。

牛乳を飲むなら、無理に大量に飲む必要はありません。

朝食にコップ一杯。

ヨーグルトを少し。

料理にチーズを使う。

シチューやスープに牛乳を使う。

こんな自然な取り入れ方でいいと思います。

牛乳は薬ではありません。

でも、敵でもありません。

大事なのは、牛乳を「飲むか、やめるか」の二択にしないことです。

体質に合わせて、量やタイミング、食べ合わせを考える。

それでいいと思います。

「飲めない人」を置いていかない発信をしたい

僕は毎日、牛乳を飲んでくださいと伝えています。

でも、今回の質問をいただいて、あらためて思いました。

牛乳を飲むことに不安がある人もいる。

牛乳を飲みたいけど、体質的に迷っている人もいる。

家族に石ができやすい人がいて、何をすすめたらいいかわからない人もいる。

そういう人に対して、

「牛乳は体にいいから飲めばいい」

だけでは届かないんですよね。

食品の発信は、明るさも大事です。

でも同じくらい、丁寧さも大事です。

牛乳が好きな人には、楽しく飲んでほしい。

不安がある人には、正しい情報に触れながら、自分に合った飲み方を見つけてほしい。

飲めない人には、無理に飲まなくても、食の選択肢を一緒に考えたい。

そういう発信をしていきたいと思っています。

酪農家だからこそ、牛乳を押しつけるのではなく、牛乳との付き合い方を丁寧に伝えたい。

それが、これからの時代の酪農家の役割の一つなのかもしれません。

まとめ

今日の話をまとめます。

石体質だからといって、カルシウムを極端に避ける必要があるとは限りません。

尿路結石、特にシュウ酸カルシウム結石では、食事からのカルシウムを適量摂ることが大切だと考えられています。

一番基本になるのは、水分をしっかり摂って尿を濃くしないことです。

また、シュウ酸の多い食品、塩分の摂りすぎ、サプリメントの自己判断には注意が必要です。

牛乳だけが問題なのではありません。

むしろ牛乳や乳製品は、食事由来のカルシウム源として選択肢になります。

最後に一言で言うなら、

石対策は、牛乳をやめることではなく、食生活全体を整えること。

これだと思います。

もちろん、結石の種類や腎機能、持病によって必要な対応は変わります。

心配な方は、必ず医師や管理栄養士さんに相談してください。

そのうえで、飲める方は、無理なく、おいしく、楽しく。

今日も牛乳を暮らしの中に置いてもらえたら嬉しいです。

牛乳は、誰かに無理やり飲ませるものではありません。

でも、誤解だけで遠ざけられてしまうのは、少しもったいない。

正しく知って、自分の体に合った形で付き合っていく。

その選択肢の中に、牛乳が残ってくれたら、酪農家としてこんなに嬉しいことはありません。

今日も牛乳を飲んでくれて、ありがとうございます。

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