川上牧場研修【AI師テキストⅥ章 繁殖生理(生殖ホルモン)】
2021-07-12 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
繁殖はホルモンで動きますが、そのホルモンを動かすのは牛の体です。この回は、生殖ホルモン6つと卵胞ウェーブの基礎を押さえたうえで、現場でホルモン処置とどう向き合うかまでを、川上さんと研修生の掛け合いで掘り下げた回でした。
この回の要点
- 覚えておきたい生殖ホルモンは、FSH・E2・インヒビン・LH・P4・GnRHの6つ。GnRHがFSHとLHを促す、という順番がポイント
- 発情周期21日の中で2〜3回の卵胞ウェーブが起こり、最後のウェーブでLHサージが起きて排卵・発情に至る
- ホルスタインでは、栄養は体の維持・乳量・子供・繁殖の順に使われ、繁殖は一番最後。体や餌が満たされないと繁殖は回らない
- 規模拡大で個別管理が難しくなり、オブシンクなどのホルモン処置が求められるようになった。ただし牛の状態を意識して使うかで効果は大きく変わる
- うまくいかないときは、ホルモンの量より手前の「体・乳量・繁殖」の順番を疑う。基礎を日々の牛の観察と結びつけることが大切
配信の全文(podyの記事より)
なぜ生殖ホルモンの説明はこんなに難しいのか
この回は、川上牧場の川上さんが搾乳前の休耕期に研修生の質問に答えるスタイルで、繁殖生理のホルモンについて話した回です。人工授精指導集会テキストの5章「生殖器解剖」は図が多く音声で伝えにくいため飛ばし、6章の繁殖生理に入っています。
テキストの繁殖生理は「繁殖機能に関わるホルモンおよび神経支配」という難しい説明から始まります。家畜の器官の発育や機能は、内分泌機構と神経機構の両方に調整されていて、繁殖機能も両者の支配下にあるという内容です。
川上さんはテキストの定義文をひととおり読み上げたあと、正直な感想を口にします。専門用語だらけで、教える側も戸惑うような文章だからです。
川上 意味がわかんないでしょ。だから説明したくないんですよ。
そのうえで川上さんは、難しい定義をざっくり噛み砕いて言い直します。神経の信号が血液や体液に流れ、血中のホルモン値が上がって、発情兆候が出たり妊娠する体になっていったりする、というのがさっきの難しい話の中身だと説明します。
内分泌機構と神経機構 内分泌機構はホルモンを血液などに乗せて離れた器官に届けるしくみ、神経機構は神経の終末から出る物質で標的細胞にすばやく情報を伝えるしくみです。この回では、この2つが複雑に絡み合って繁殖を調整していると説明されています。
さらにテキストは、この古典的な区別が今では通用しにくくなっていると続けます。神経組織である視床下部がGnRHなど多くのホルモンをつくって出すなど、神経と内分泌の境目をなくして考える「神経内分泌機構」という新しい見方に変わりつつある、というのが要点です。
繁殖より先に体の維持と乳量にエネルギーが回る
川上さんは、いろんな場所から複雑に絡み合ってホルモンが調整されている、という話を、栄養とのつながりに引き寄せて説明します。餌が足りないことが、そのまま繁殖に直結してくるからです。
ホルスタインの体では、エネルギーの使われる順番が決まっていると川上さんは言います。まず体の維持、次に乳量、その次に自分の子供、そして繁殖が一番最後という順番です。
繁殖に栄養が回るのはもう一番最後だよ。 ── 川上
だから繁殖はホルモンの話ではあるけれど、そのホルモンを動かすのは体だと川上さんは強調します。神経や体の状態が満たされていないと、繁殖にはエネルギーが使われないというわけです。
栄養が使われる優先順位(ホルスタイン)
最上位
体の維持。まずここに栄養が回る
中間
乳量、そして自分の子供
土台
繁殖。栄養が回るのは一番最後
体や神経が正常でないと、繁殖はうまく機能しません。ホルモンだけを見ても繁殖は回らない、というのがこのパートの核です。
最低限おさえたい生殖ホルモン6つ
難しいテキストはいったん脇に置いて、川上さんはホルモンの種類を大まかに整理していきます。ホルモンはたくさんありますが、まとめられている雪印種苗の畜産技術情報のページをもとに、まずは6つだけ覚えることを目標にします。
雪印種苗の畜産技術情報 「牛 ホルモン 生理」などで検索すると出てくる、繁殖生理のホルモンをまとめた資料です。この回では、テキストより読みやすいまとめとして紹介されています。
1つ目はFSH(卵胞刺激ホルモン)です。脳下垂体から分泌され、小さな卵胞の発育を促します。
2つ目はE2(エストラジオール)です。卵胞ホルモンであるエストロゲンの1つで、発育中の卵胞が排卵前に分泌し、発情を誘起させるホルモンです。
3つ目はインヒビンです。発育中の卵胞から分泌され、脳下垂体からのFSHの分泌を抑制します。FSHが抑えられると、小卵胞の発育を促す働きも抑えられる、という関係です。
おさえておきたい生殖ホルモン6つ
用語
FSH
卵胞刺激ホルモン。小卵胞の発育を促す
用語
E2(エストラジオール)
卵胞ホルモンの1つ。発情を誘起させる
用語
インヒビン
発育中の卵胞から出て、FSHの分泌を抑える
用語
LH
黄体形成ホルモン。卵胞を成熟させ排卵を誘起、黄体形成に関与
用語
P4(プロゲステロン)
黄体ホルモン。着床性増殖や妊娠維持に働く
用語
GnRH
性腺刺激ホルモン放出ホルモン。FSHとLHの分泌を促す
4つ目はLH(黄体形成ホルモン)です。発育卵胞に働いて卵胞を成熟させるとともに、排卵を誘起し、黄体の形成に関与します。E2が発情に作用するのに対し、LHは黄体の形成に関わるホルモンです。
5つ目はP4(プロゲステロン)です。黄体から分泌される代表的な黄体ホルモンで、子宮内膜の着床性増殖、子宮運動の抑制、妊娠の維持、性腺刺激ホルモンの分泌調整などの作用があります。
6つ目はGnRHです。脳下垂体に働きかけて、性腺刺激ホルモンであるFSHとLHの分泌を促します。GnRHが出ることで、FSHやLHの働きが起こる、という順番がある点がポイントです。
卵胞ウェーブとLHサージ、発情が起こるしくみ
ここから川上さんは、雪印種苗の資料の図を見ながら、卵胞ウェーブの動きを説明していきます。受精は、卵巣で十分に発育した卵胞から卵子が排卵されることで始まります。
牛の発情周期は約21日で、その間に2〜3つの卵胞発育ウェーブが起こり、最後のウェーブで排卵が起こると川上さんは説明します。図では、下の小さな丸が卵胞を表しています。
卵胞ウェーブ 発情周期の中で、小さな卵胞のグループがまとまって発育し、その多くが退行し、1つが優勢卵胞になる…という一連の波のことです。この波が周期中に2〜3回くり返されます。
まずFSHが高い値から下がると、小卵胞の発育が促されます。発育した卵胞からE2とインヒビンが分泌されて上がっていくと、多くの小卵胞は退行し、1つだけが大きくなって主席卵胞になります。
ただし第一ウェーブでは、排卵後にできた黄体からのP4によってLHの分泌が抑えられます。そのためLHサージが起こらず、主席卵胞はそれ以上発育せずに閉鎖退行します。
E2とインヒビンの分泌が消えると、再びFSHサージが起きて次のウェーブが始まります。第二、第三ウェーブと、同じような動きがくり返されていきます。
卵胞ウェーブから発情までの流れ
FSHサージ
小卵胞のグループが同時に発育を開始する
↓
E2・インヒビン上昇
多くの小卵胞は退行し、1つが優勢卵胞になる
↓
P4が高いと閉鎖退行
LHが抑えられ、そのウェーブでは排卵しない
↓
P4低下・LHサージ
黄体退行でLHが上がり、成熟卵胞から排卵に至る
一方、発情周期の後期に黄体が退行してP4濃度が下がると、LH分泌の頻度が上がり、優勢卵胞がさらに発育して成熟卵胞になります。ここで大量のE2が発情を発現させ、GnRHを介したフィードバックでLHサージが起こって排卵に至ります。
このLHがポーンと一過性に上がるところがLHサージで、これが起こることで発情が誘起されます。周期21日を3ウェーブで分ければ7日ごと、2ウェーブなら10日ごとに波が起こる計算です。
だからこのウェーブが起こるっていうのを覚えておいてください。 ── 川上
だから、種付けしてから10日目くらいなのにソワソワと発情兆候を見せる牛がいたりします。それは2ウェーブ目や1ウェーブ目の動きを見ているということで、日々こういう波が牛の体で起きているわけです。
妊娠の維持と、シダーを使ったホルモンの操作
発情が起こる仕組みがわかると、そこに種付けをして妊娠につながる流れも見えてきます。妊娠すると、代表的な黄体ホルモンであるP4が妊娠維持に働きます。
受精卵ができると、受精卵からも子宮からも「P4を出してください」という作用が起こります。するとP4がずっと高い値になり、発情のウェーブが抑えられてLHサージが起きなくなる、これが妊娠している状態です。
逆にP4が一過性に下がるとLHサージが起こります。P4がずっと高いままなら妊娠している、という見分け方になります。
この仕組みを人為的に使う道具として、川上さんはシダーを挙げます。膣内に入れるトンボのような形の器具で、ずっとP4が入っているため、妊娠を維持しているような状態を作れます。
シダー(子座) 膣内に留置してプロゲステロン(P4)を持続的に放出させる器具です。この回では、留置している間は妊娠維持のようにP4が高い状態を保ち、抜くと一過性にP4が下がってLHサージが起こる、と説明されています。
その子座を一過性に抜くとLHサージが起こる。 ── 川上
つまりシダーを抜くことで人為的にホルモンを操作できる、というわけです。ここまでで、発情から妊娠、そして人為的な操作の入口までが一通りつながります。
オブシンクとは?人為的に発情を起こすホルモンプログラム
難しい話をひとしきり終えたあと、川上さんは、フィードバックの説明を省きつつも現場で使うホルモン処置に話を進めます。研修生からは「日常の作業とホルモンの動きが合わないと分かりにくい」という声が出ています。
基本の形はテキスト通りでも、実際の牛は栄養状態や繁殖性でいろいろ変わると川上さんは言います。発情周期が17日で来る牛もいれば、23日や24日で来る牛もいて、直腸検査やエコーで見ると本当にいろんな牛がいるそうです。
現場で一般的に使われるホルモンプログラムとして、川上さんはオブシンクを挙げます。GnRHを打って一度排卵させ、その後P4が上がったところで黄体退行ホルモンを打ってP4を落とし、主席卵胞が上がったところで再びGnRHを打つ、という流れです。
オブシンク GnRHとプロスタグランジン(黄体退行ホルモン)を決まった間隔で投与し、人為的に排卵のタイミングをそろえる定時人工授精(タイムAI)のプログラムです。この回では、現在もっとも主流の発情プログラムとして紹介されています。
オブシンクの大まかな流れ
1
GnRHを打つ
そのとき卵巣にある卵胞を一度排卵させる
2
P4が上がる
排卵後、黄体からのP4が上昇してくる
3
黄体退行ホルモンを打つ
P4を落として、次の発情を来させる
4
再びGnRHを打つ
上がってきた主席卵胞に合わせて排卵させる
ただ、いつでも発情を起こせるホルモン処置ではあるものの、牛の状態を意識しながら使うのと、そうでないのとでは効果が全然違うと川上さんは言います。主席卵胞がある状態のタイミングで始めると、より効果的だからです。
「自然に無理やり」か「ほんまに無理やり」か
ここから研修生との掛け合いが深まっていきます。研修生は、ホルモン処置を人為的にやること自体をどう捉えるかを言葉にします。
研修生 まあその無理やりっちゃ無理やりなんですけど、自然に無理やりやるのか、ほんまに無理やりやるのか。
川上さんは、GnRHを打った以上、P4を打たずに自然に任せるわけにはいかない、と答えます。黄体退行がしっかり落ちきらないからです。
研修生は、勝手にホルモンを入れた分だけ下げる分も入れないと元に戻らないのか、と水にたとえて確認します。1リットル上げたら1リットル抜かないと同じ量に保てない、というイメージです。
これに対して川上さんは、少しちがう捉え方を示します。入れる量の問題というより、受け皿がちゃんとある状態かどうかが大事だという説明です。
川上 入れても受け側が受ける体勢になってないと、入れたとしてもこぼれちゃう、流れちゃう。
その受け皿がしっかりあるところに、無駄のない適正な量を入れてあげる。皿の中には、外から入れなくても自分の体から出すホルモンもある、というのが川上さんの考え方です。
川上さん自身は、ショートシンクやウルトラシンクといった方法で、エコーで子宮の状態を見てから適正なホルモン剤を選んで打っていると話します。だから、使うホルモン剤の回数はふつうの人より少ないそうです。
補助的な使い方なんだよね。僕の使い方はね。 ── 川上
なぜホルモン剤が求められるようになったのか
研修生は、そもそもなぜホルモンを人為的に打つやり方が広まったのかを尋ねます。川上さんは、その背景に規模の拡大があると説明します。
1軒あたりの飼養頭数が増え、フリーストールのような飼い方が広がると、個別管理がしにくくなります。ここで、繁殖のタイミングと牛の体の状態がぶつかる問題が出てきます。
分娩後、子宮が回復して種をつけたい時期、牛の体は牛乳を出そうとしていて、餌を食べたいのに食べきれずエネルギーが負のバランスになりがちです。この状況では、自然の発情が起こりにくくなります。
川上 でも自然の発情が起こらないんだけど、種つけないと次の赤ちゃん生まれないじゃん。
発情が分からないから使うのではなく、飼養管理の環境がホルモン剤を求めるようになってきた、というのが川上さんの見立てです。餌が揃い、牛の飼い方が揃っていれば自然発情もしっかり起こる、という前提とセットの話です。
研修生は、高速道路があるのに歩いて行く、というたとえで、便利なものを使うかどうかを言い換えます。家畜である以上、より良い効率のもとで動いてもらうことになる、という理解です。
さらに川上さんは、改良速度を上げて受精卵移植になると、7日目の凍結受精卵にぴったり合わせる必要が出てくると付け加えます。自然発情でぴったり7日目に合わせるのは難しいため、ホルモン処置でタイミングを合わせることになる、という流れです。
自然じゃないのに自然と言うのがいちばん嫌い
研修生は、ホルモン処置に対する自分のスタンスをはっきり言葉にします。人工物も自然な状態も、どちらも嫌いではないと前置きしたうえでの発言です。
一番嫌いなんが自然じゃないのに自然って言ってるところ。 ── 研修生
人為的にやるのなら、効率よく、ある意味やりきらないと中途半端になってしまう、というのが研修生の考えです。種をぶっ込めばいける、というやり方は無理があると言います。
研修生は、その状態をアスリートにたとえます。その時だけ本気を出すのではなく、寝る時間もご飯も決めて日々続けているからアスリートでいられる、というたとえです。
研修生 それの一端で考えると、なんかそこだけやれば、その種をぶっ込めばいけちゃうというのは無理やん。
この見方に川上さんも同意します。種をつけてもつかない、うちは一回でつくといった話し合いは、前提を共有しないまま行われる「空中戦」になってしまう、と表現します。
種つけてもつかないとか、うちは一回でつくよの話し合いって全く空中戦だよ。 ── 川上
川上さん自身は、繁殖検診のとき、分娩日、乳量、発情時の兆候、直腸検査の所見などを獣医に伝えたうえで「先生これどう思いますか」と相談し、治療方針を決めていると話します。前提を共有したうえでの話し合いです。
ところが今は、オブシンクが広まったことで、「先生このまま始めてください」と一言で終わり、それに向かって種をつけるやり方が一般的になってしまった、と川上さんは指摘します。
ホルモンの前に、その手前の三角形を疑う
話は、ホルモン処置とどう向き合うかという実践的な視点に移ります。研修生は、獣医としての感覚から、無駄なホルモン治療はやめた方がいいと述べます。
研修生 結局そのホルモンを打つための話じゃないところが問題の可能性が大いにある話だったりするから。
研修生は、繁殖には順番を疑う手順があるはずだと言います。まず自分の体、次に乳量、そして子供という三角形の順番で、うまくいかないときはまず土台を疑うべきなのに、そこがすっ飛ばされている、という指摘です。
うまくいかないときに疑う順番
まず自分の体
体の維持ができているか、栄養状態はどうか
↓
次に乳量
乳量を出す負荷とのバランスはどうか
↓
そして繁殖
体と乳量が満たされて初めて繁殖に回る
川上さんも実感を語ります。自給飼料の質が良くて餌がしっかりやれた年は発情もよく見つかるのに、餌が悪いと「何もできない、じゃあオブシンクしよう」と走ってしまい、結果として受胎率が悪くなる、という悪循環です。
餌が悪かった時に、何もできない、じゃあオブシンクしようかって走っちゃうんだよね。 ── 川上
ホルモン処置の量や品質を気にする前に、もうちょっと手前のことを考えたらという視点が、このパートの核になっています。ホルモンは後からついてくる、という捉え方です。
デバイス化しても、文句を言う相手が変わるだけ
研修生は、牧場ごとの経緯や流れをきちんと積み重ねて伝えることの大切さを、繰り返し訴えます。搾乳のやり方は取扱説明書ではなく現場で教わるのに、繁殖だけが教科書とホルモンの話に置き換わってしまう、という違和感です。
発情の兆候を起点に、ここでこう判断してホルモンを入れた、という流れがあるはずだと研修生は言います。ホルモンの一般論よりも、その牧場ごとの経緯こそが学びを難しくさせている要因ではないか、という見立てです。
川上さんは、デバイスでウェーブが分かるようになっても、アラートが鳴ったら種をつけるだけになってしまう懸念を口にします。研修生は、それは文句を言う相手が変わるだけだと切り返します。
研修生 今までは獣医さんに言ってたのが、デバイスになったからデバイスのところにお前ふざけんなよって言って。
デバイスの不具合や停電で使えないこともあり得るし、受胎率が下がれば別の会社に乗り換えて同じように文句を言う。根っこにあるのは、自分のところのやり方をみんなに教えていないことだ、というのが研修生の指摘です。
死産になったケースについても、研修生は冷静に切り分けます。ホルモンの動き自体は正常でも、結果として生まれた子が死んでしまうと、そこにばかり囚われてしまう、という話です。
研修生 ホルモン自体の動きとしては別に正ですよ。
経営者から見れば結果が全てでも、作業者や従事者からすれば、すべてをマイナスとして捉える必要はない。特に後から入ってくる人に、そうした切り分けも含めてバトンを渡してほしい、というのが研修生の願いです。
そうしないと、「獣医さんにこう言われたから」と、その理由を理解しないまま次の代に受け継がれてしまいます。それは危うい、と2人は口をそろえます。
川上 そのままやっちゃうね。
基礎は大事、けれど牛の観察と結びつけて
最後に川上さんは、改良が進むほど便利なホルモン治療が生まれてくるだろう、と見通しを語ります。だからこそ、その手前の飼い方や順番を考える必要がある、という流れです。
研修生は、その牧場ごとの流れ自体は変えなくていい、と整理します。大事なのは、そこからどう歩み寄っていけるかを考えることで、それを考えたときに初めてホルモンの動きが自分ごととして分かる、という考え方です。
川上さんは、この回で扱ったのは主要なホルモンだけだと断りつつ、基礎の大切さを改めて口にします。難しくて分かりにくい話だけれど、繁殖を回さないと妊娠せず、妊娠しないと赤ちゃんも牛乳もない、という現場の根っこにつながる話だからです。
これが本当に大事だし、繁殖回さないと妊娠しないし、妊娠しないと赤ちゃんできないし。 ── 川上
ホルモンの詳しいまとめは、後からリンクで共有するとのことです。基礎を押さえたうえで、日々の牛の観察と結びつけていくことが、この研修回の落としどころになっています。
まとめ
繁殖はホルモンで動きますが、そのホルモンを動かすのは牛の体です。この回は、生殖ホルモン6つと卵胞ウェーブの基礎を押さえたうえで、現場でホルモン処置とどう向き合うかまでを、川上さんと研修生の掛け合いで掘り下げた回でした。
- 覚えておきたい生殖ホルモンは、FSH・E2・インヒビン・LH・P4・GnRHの6つ。GnRHがFSHとLHを促す、という順番がポイント
- 発情周期21日の中で2〜3回の卵胞ウェーブが起こり、最後のウェーブでLHサージが起きて排卵・発情に至る
- ホルスタインでは、栄養は体の維持・乳量・子供・繁殖の順に使われ、繁殖は一番最後。体や餌が満たされないと繁殖は回らない
- 規模拡大で個別管理が難しくなり、オブシンクなどのホルモン処置が求められるようになった。ただし牛の状態を意識して使うかで効果は大きく変わる
- うまくいかないときは、ホルモンの量より手前の「体・乳量・繁殖」の順番を疑う。基礎を日々の牛の観察と結びつけることが大切