川上牧場研修【フリー牛舎のカウコンフォート】

2021-08-22 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

フリー牛舎のカウコンフォートは、牛床・柵・通路・飼槽・飲水・音や光まで、すべて牛の目線で「無理なく寝て食べて飲めるか」を考えることが軸でした。そして良い設計と作業のしやすさを両立させるには、施工業者とのコミュニケーションが欠かせない、という現場感のある研修回です。

この回の要点

  • 牛床は前面を開放し、まっすぐ寝られる寸法と、突き出し用のスペース確保が基本
  • 1日平均の牛床横臥率80パーセント以上を目安にし、ベッド数と頭数はほぼ同じが理想
  • 通路はゴムマットとコンクリート縦溝でメリハリをつけ、牛床より快適にしすぎない
  • 飲水は「すぐ・安心して」飲めるかが大事で、いじめられる位置だと2台でも1台分になる
  • 牛に良い設計と作業のしやすさは一致しないことがあり、施工業者との対話がカギになる

配信の全文(podyの記事より)

そもそもフリー牛舎の3タイプって何が違う?

川上牧場では以前から研修生を受け入れていて、搾乳前の休憩時間にやっている研修生との会話をそのまま録音する、というスタイルで配信されています。

この回は前回の続きで、ネットで調べると出てくる「乳用牛の生産性を高めるカウコンフォートに配慮した牛舎構造」の後半を、女子高生の研修生と一緒に読んでいきます。

カウコンフォート 牛の快適性のこと。牛が無理なく寝たり立ったり食べたり飲んだりできる環境を整えることで、健康維持と乳量などの生産性向上につながるという考え方です。

放し飼い牛舎では、乳牛が自発的に動くことで、採食・飲水・横臥休息・搾乳がスムーズに進み、健康維持が図られます。そのタイプとして、フリーストール、フリーバーン、コンポストバーンなどが紹介されます。

フリーストール/フリーバーン/コンポストバーン フリーストールは牛ごとに区切った寝床(ストール)がある牛舎。フリーバーン(ルーズバーン)は区切りのない広い床に敷料を敷くタイプ。コンポストバーンは敷料の床を発酵させながら使うタイプで、上をロータリーで耕すものもあります。

川上さんは、上をロータリーで走らせるタイプや、敷料を足しっぱなしにするタイプなどいろいろあると説明します。ただ、敷料の量や飼養頭数など地域環境によって選び方が変わるので、その詳しい話は「またの勉強だな」と次回に回されます。

牛がまっすぐ寝られる牛床とは

フリーストールの牛床寸法は、つなぎ牛舎と同じく牛の大きさで推奨値が決まります。産地によって牛床は長くなる傾向で、前面が開放されている場合は250センチ、閉鎖されている場合は270〜280センチが目安とされます。

牛床の幅は、建築資材の寸法から120センチがよく使われ、最近は125センチが牛床幅になっているとのこと。牛床前面が開放されていると、乳牛はまっすぐ横になれます。

横方向にパイプや草があると、牛が横になったり立ち上がったりしにくくなり、斜めに寝る原因になりやすいそうです。前面を開放すると、まっすぐ寝るようになります。

川上 まっすぐ横臥してない乳牛見たことある?学校とかで。

川上さんは、大きい牛の牛床に小さい牛が入って斜めや逆向きに寝ていたり、ベッドに入らず通路で寝てしまったりする光景を「あるあるでしょ」と研修生に確認します。

そのうえで、牛床の中に自分が入って寝てみたことはあるか、と研修生に問いかけます。研修生は「ない」と答えます。

川上 そこに居って、じゃあ自分がそこに居ったとして、隣にめちゃくちゃ強いいじめっ子みたいなのがおった場合にどういう気分かなって考えとことか。

川上さん自身は、噴霧をしているときなどに通路の中で立ったり座ったりして牛の気持ちを確かめるといいます。立ったり座ったりするだけで空気の流れが違ったりするのだそうです。

さらに、横の柵をガシガシ動かして壊れやすさや怪我のしやすさを確かめたり、鉄パイプのネジの出っ張りが引っかからないかを見たりすると良いと勧めます。

牛床前面の開放と敷料の置き場所

向かい合わせの牛床の前面は完全に開放し、横パイプを設置しないことを必ず確認します。前面を開放するのは、牛が寝起きするときの「突き出し動作」をスムーズにするためです。

牛は横になったり立ち上がったりするとき、鼻先を床ギリギリの高さで前に動かします。そのため、牛床の前面に敷料を高く積んで置かないようにします。

川上 前が開放でも山積みにしてあったら意味ないじゃんね。壁だから意味ないじゃん。

学校では敷料をフリーストールの真ん中に置いている、と研修生。川上さんは、前面が開放でも敷料が山積みだと壁と同じで、なだらかにするだけでも牛が立ち上がりやすくなると説明します。

ただ、その前面のスペースは掃除や噴霧がしやすい場所なので、敷料を置きがちだとも言います。学校の敷料は戻し堆肥のようですが、まだ固い状態のようです。

戻し堆肥 牛のふん尿を発酵・乾燥処理して、再び牛の寝床の敷料として使うもの。敷料コストを抑えられる一方、しっかり乾かさないと硬さや衛生面が課題になります。

牛床を長く取っても、牛が突き出すスペースが前面になければ有効に使えず、実質的に短くなります。もしオガ屑や戻し堆肥を足すスペースが欲しいなら、その分さらに広い面積のベッドを取らないといけないということです。

ブリスケットボードと仕切り柵の役割

乳牛は寝て休むとき、前肢を前方に踏み出します。そのため、この前肢を怪我せず出せる素材のブリスケットボードが使われ、最近はプラスチック製のものが用いられています。

ブリスケットボード 牛床の前方に置く仕切り板。牛が寝る位置を決め、必要以上に前へ進めないようにする役割があります。ゴム製やプラスチック製の三角形のものなどがあります。

川上さんは、ブリスケットボードが高すぎると突き出しのときに鼻先がぶつかって障害物になるので、前足をぶつけても痛くない柔らかい素材を選んだほうがいいと補足します。設置していない牛舎も多いそうです。

仕切り柵の形状も年代によって大きく変わってきました。かつて広まったミシガン型は、短い牛床でも前方横に頭を突き出して無理なく立てるようにした柵です。

牛床が長くなり前面が開放されると、頭を横に突き出す必要がなくなります。基本は、左右の寝る位置を明確に示し、寝たときに腰が柵に当たらない形状が望まれます。

川上さんは、腰の骨が柵に当たって毎回痛い思いをすると、牛が「ここで寝るのは痛い」と覚えてベッドに寝なくなると説明します。だから腰が当たらない形の柵にしているわけです。

いじめと修理、腐食まで考える柵選び

仕切り柵は、いじめられた小さい牛が前面に逃げ場がないと、横から逃げようとします。逆に隙間が空きすぎると、牛が隣へ移動できてしまいます。

川上 逃げれるようにするのか、それとも逃げれないようにする大きさにするのかもまた考えないといけないかな。

さらに、牛が柵に入り込んでしまうと修理が難しいので、修理しやすい構造も大事だと言います。全部をロックする施工は作るときは簡単ですが、直すときに全体を直す必要が出てしまいます。

柵の下部に戻し堆肥がたまると腐食しやすいので、その部分を保護するために塩ビパイプを巻くこともあります。川上牧場の新しい間仕切りにも塩ビパイプが巻かれていて、腐食防止のためだと説明されます。

川上 寝てみてこうどこがぶつかるかというのがわかる。

ネックレールの高さを牛で測ってみる

ネックレールは、排糞や排尿のときに牛が牛床の後端まで下がるように設置する柵です。仕切り柵の上に付くことが多く、高さは牛床後端から一定の目安で設置します。

ネックレール 牛の首の高さあたりに渡す柵。牛が牛床の奥に入りすぎず、ふんや尿を通路側に落とせるように立ち位置を調整する役割があります。

ネックレールが低すぎたり手前すぎたりすると、牛が牛床に入るのに時間がかかり、床の上に立ったままになりがちです。牛が立った状態で首が当たらないよう調整します。

川上さんは、首が擦れている牛がいないかを見て、当たっていたらメジャーで測り、何センチかを調べるといいと勧めます。牛床の中に何頭くらいそういう牛がいるかも合わせて見ます。

そういう牛が多ければ、牛のサイズが大きすぎるので、乳牛を小型に改良するか、ネックレールの位置をずらします。縦は難しくても横なら比較的動かしやすいそうです。

最近は、当たっても大丈夫なように動くタイプのネックレールもあります。素材をチェーンにするとたわみでゆとりが出ますが、首を引っかける危険もあるため、あまり多くはないと注意されます。

牛床資材と横臥率という物差し

横になって休みやすい牛床にするには寸法や柵も大事ですが、直接的に寝起きを左右するのは牛床資材です。牛床の下はコンクリートなので、その上に資材を置いて衝撃を和らげます。

主な素材には、ゴムチップを詰めたゴムチップマットレス、中詰めした複合ゴムマット、EVAマット、表面加工のゴムマットなどがあります。

床資材の衝撃が少なくても、敷料を使わないとふんまみれの蹄で牛床に上がってしまい、牛が汚れて乳房炎の原因になります。スコップ1杯程度でも敷料を入れると、床を乾かしてふん尿を絡め取り、乳房の汚れを抑えられます。

乳房炎 牛の乳房が細菌などで炎症を起こす病気。牛床や蹄が汚れていると発生しやすく、乳量や乳質の低下につながるため、酪農では特に注意される疾病です。

牛床の快適性は、牛床にいる牛のうち何割が横になっているかを示す「牛床横臥率」で測れます。乳牛は横になることで乳房に流れる血液量が増えると言われ、横になる時間の確保が生産性向上につながります。

1日平均の牛床横臥率は80パーセント以上が目安とされます。横になる牛が少ない場合は、オガ屑などの敷料を多めにするといった手を入れます。

牛床横臥率の目安

80%以上

1日平均で牛床に横になっている牛の割合の目安

川上さんは、いつも立っている牛や、いつも同じベッドで寝ている牛を観察するといいと言います。餌が新鮮な餌やり直後やパーラーから出た直後に餌へ向かわない牛は、何か問題があるのかもしれないと話します。

ベッドの数と牛の数のバランス

研修生の学校では「まあまあ寝てる」印象とのこと。ここから川上さんは、ベッドの数と牛の頭数のバランスの話に進みます。

フリーストールでは、たくさん牛が入ると見込んでベッド数より多い頭数を入れる考え方もあります。ただ、それは餌やりや搾乳、分娩などの時間帯で人が介入して調整できる場合の話だといいます。

川上 あの人のところはいっぱい入ってて、それでうまく回してるから、うちもできるって言ってやって失敗する例はいっぱい見たことある。

川上さんは、牛床の数と入れる牛の数は同じくらいが本当はいいと話します。多くても5パーセント程度、たとえば100頭入る牛舎でベッド100個なら105頭くらいまでが目安だそうです。

通路は滑らず、でも寝床に負けない快適さで

通路はコンクリートに溝をつけて滑らないようにします。溝は縦溝で、横幅10ミリ、間隔40〜75ミリが目安です。古くて滑りやすくなった通路は、ゴムマットを敷いたり、ダイヤモンドカッターで溝を追加したりして改修します。

通路全面にゴムマットを敷いた牛舎も増えていますが、通路が快適になりすぎると牛床との差が小さくなり、通路で寝てしまう牛が増える原因になります。だから牛床をより快適にする必要があります。

採食時の負荷を減らすため、飼槽側や飲水器周辺にはゴムマットを敷き、他の通路はコンクリートの縦溝にする、というように快適さにメリハリをつけると良いとされます。

川上 ここは休むとこだよ、ここは餌を食べるとこだよ、水を飲むとこだよっていうメリハリをつけてあげる。

横断通路の段差は、牛の移動をスムーズにするためできるだけ低くします。ただし低くしすぎると、除糞時にふんが通路にあふれてしまうという悩みがあります。

川上さんは、段差を高くするとふんは流れやすくなるけれど牛は通りにくくなる、低くすると牛は通りやすいけれどふんがあふれやすい、と説明し、「どっちを取りますか」という話だとまとめます。

飼槽の傾斜とスタンチョンの角度

牛舎内の飼槽では、乳牛は前足を揃えて食べます。これは放牧時に前足を前後させて食べる姿勢とは違います。飼槽壁が厚かったり、飼料が前方へ移動したりすると、首を伸ばして前肢に負担がかかります。

飼槽(しそう) 牛に餌を与えるための餌箱・餌場のこと。壁の高さや傾斜、柵の位置しだいで牛の食べやすさや前肢への負担が変わります。

そのため飼槽壁は15センチ以下にし、上部に傾斜をつけます。育成牛は脚が長く胸垂の位置が高いので飼槽側を、成牛は胸垂が大きいので牛側を傾斜させます。

セルフロックスタンチョンの場合は前方に傾斜させます。川上さんは、学校のスタンチョンが横から見て傾斜しているか研修生に尋ね、研修生は「まっすぐ」と答えます。

スタンチョン 牛の首を固定する保定装置。セルフロックスタンチョンは牛が頭を入れると自動でロックされ、検査や処置のときに便利ですが、角度や下のコンクリートの形で食べやすさが変わります。

川上さんは、スタンチョンが縦だと牛が首を伸ばしたとき肩が当たると説明します。下のコンクリートに傾斜をつければ、牛が前に出たときも爪や足が当たらず良いといいます。

川上 スタンチョンはちょっと斜めにした方がやっぱ食べやすいと思いますね。

水は「すぐ・安心して」飲めるかが大事

フリーストール牛舎の飲水機は、横断通路に水槽型を置くことが多く、壁面側に通路があれば屋外に水槽やウォーターカップを置けます。水槽の適正高さは60〜80センチとされます。

水深は牛の口が2.5〜5センチ水に入るよう最低7.5センチとし、水槽は15〜20頭ごとに最低1台、または20頭あたり最低約60センチの水槽スペースを設けます。1群に少なくとも2か所の飲水場所が必要です。

研修生の学校では飲水場所は1つですが、頭数が20頭以下なので、みんなで仲良く飲めているとのこと。ウォーターカップはパーラーを出てすぐの奥にあるそうです。

ウォーターカップ/パーラー ウォーターカップは1頭ずつ水を飲める小型の給水器。パーラーは牛を並べて搾乳する専用の場所で、搾乳直後は牛が水を飲みたがるため、飲水機の位置が重要になります。

川上さんは、ウォーターカップが牛舎の外側にあって後ろが見えないと、いじめられた記憶のある牛が飲まなくなると指摘します。2つつけても、1つしか使われないなら1つと同じだという考え方です。

もし強い牛しか飲めないなら、それは強い牛専用と割り切って、別に水槽の数を確保するほうがいいと言います。飲めない牛が水を諦めると、餌の量も減って乳量が減る悪循環に入るからです。

パーラー出口に水を置くと渋滞する

搾乳後はすぐ水を飲みたくなるので、パーラーの出口に飲水機を置くと良いとよく言われます。ただ川上さんは、出口が渋滞してしまうため、個人的にはあまり推奨しないといいます。

むしろパーラーから少し離れた位置に飲水場を置けば、出たあとそこへ向かうといいます。ただし遠すぎると、水を飲む意欲が削がれて諦めてしまうので、ほどよい距離感が必要です。

川上 五十メーター以内ならいいとか言われたりするけど。わかんない。ケースバイケース。

川上さんは、ヘルパー時代に2人で搾乳に入ると牛の回転が普段より速く、パーラー出口のウォーターカップで一瞬で渋滞になった経験を語ります。喉が渇いたらすぐ満たせるほうが牛には良いという考えです。

酪農ヘルパー 酪農家が休みを取れるよう、搾乳などの作業を代わりに行う人。普段の作業者とペースが違うため、牛の流れや渋滞の起き方が変わることがあります。

音・色・明るさを牛の目線で整える

動物科学者のテンプル・グランディンによれば、牛が一番ストレスを感じるのは人間の存在で、金属がカチャカチャ鳴る音もストレスになります。だから怒鳴り声のない搾乳ロボット牛舎の牛は人懐っこいと知られています。

テンプル・グランディン 動物の行動や家畜施設の設計で知られる動物科学者。牛や豚がストレスを感じにくい取り扱い方や施設構造を研究し、家畜福祉の考え方に大きな影響を与えた人物です。

スタンチョンやゲートの金属音は、プラスチックやゴムを使って防いでほしい音とされます。色や明るさでは、明暗の差をなくすことが大切で、黒い部分は深い溝に、白い部分は壁のように牛に見えてしまうといいます。

そのため、影ができないよう照明を使い、通路に明暗を作る仕切り(ブレーキング)の使用をやめ、水たまりの反射を防ぐことが求められます。牛の目線で牛舎構造を考える必要がある、とまとめられます。

牛が一番ストレスを感じるのは人間の存在です。 ── 川上

川上さんは、スタンチョンのゴムが牛に全部取られてしまう例や、育成のときはフリーで育った牛を親牛になっていきなりスタンチョンに入れるとストレスになる例を挙げます。子牛のうちから音に慣れさせると良いそうです。

照明については、昔はLEDにすると明るすぎて影が増え、牛が見にくくなると言われていたそうです。今は蛍光灯に近い波長の牛舎専用照明も出てきて、明るいほうがいいと話されます。

水槽の位置は作業のじゃまにもなる

最後に、家畜の生産性向上のため、乳牛の行動を妨げず、作業者の管理も妨げない構造が大切だと締めくくられます。作業者が牛の行動を理解して丁寧に作業することで、快適性も生産性も上がるという理解が重要です。

ここで、配信を見ていたリスナーから「ロボットの近くに水槽がありますが、横断通路が狭いのでかえって撤去したいくらい。渋滞気味になります」というコメントが届きます。

川上 本当に牛舎作る人と作業する人って別物だから、牛にいい環境を作ってあげたんだと思うよ。

川上さんは、ロボット出口すぐに水を置くのは牛には良いと思っての設計だけれど、それが作業者の妨げになるという典型例だと解説します。牛に良い設計と作業のしやすさが必ずしも一致しないわけです。

海外には作業者に合わせた牛舎構造を設計する会社もあり、搾乳ロボットを牛舎に対して斜めに入れて、牛が入る通路を広く使いやすくする設計もあると紹介します。既存の型に凝り固まらない発想が面白いといいます。

牛舎づくりは結局コミュニケーション

川上さんは、自分の作業に合わせた牛舎構造や動線は、設計のときにちゃんと伝えたほうがいいと言います。ただ、施工業者は一度作った牛舎をもう1つ作るほうが楽なので、細かい注文を嫌がりがちだといいます。

親身になってくれる人でないと、設計図は正しくても施工でできていない、ということも起こると注意します。だから施工業者とコミュニケーションを取ることが大事だといいます。

国の補助金を使うと施工の期限が限られ、間に合わないと補助金がぐずついたり変更申請が必要になったりします。もし牛舎を建てる途中で長期の病気や入院をすると、一気に計画が崩れてしまうとも語ります。

さらに、補助金を使うと「入札」で施工業者を選ぶことになる、と川上さんは説明します。

入札 補助金などを使って工事を発注する際、複数の業者に見積もりを出させ、条件の良い業者を選ぶ仕組み。安く作れる業者が選ばれるため、望んだ相手と組めるとは限りません。

川上 自分が今までコミュニケーションを一生懸命取ってた人が、もし入札で負けたりすると、全く知らない人と牛舎を作らないといけないっていうことになったりするんで。

全部自己資金で建てれば思い通りの牛舎が作れて、最初はここまで、次に増築、と少しずつ規模拡大もできます。ただしその方法だと補助金は借りられなくなるので、これもまた難しいと話されます。

結局やっぱコミュニケーションが大切ね。 ── 川上

川上さんは、新規就農するなら、どんな牛舎でどんな頭数にするか、動線まで含めて図面に書くことをいずれやらなければならないと研修生に伝えます。牛が餌を食べる間に自分は噴霧する、といった作業まで考えるといいそうです。

研修生 でも失敗したっていう話が聞けると、すごいやっぱ研修生にはありがたいことです。

まとめ

フリー牛舎のカウコンフォートは、牛床・柵・通路・飼槽・飲水・音や光まで、すべて牛の目線で「無理なく寝て食べて飲めるか」を考えることが軸でした。そして良い設計と作業のしやすさを両立させるには、施工業者とのコミュニケーションが欠かせない、という現場感のある研修回です。

  • 牛床は前面を開放し、まっすぐ寝られる寸法と、突き出し用のスペース確保が基本
  • 1日平均の牛床横臥率80パーセント以上を目安にし、ベッド数と頭数はほぼ同じが理想
  • 通路はゴムマットとコンクリート縦溝でメリハリをつけ、牛床より快適にしすぎない
  • 飲水は「すぐ・安心して」飲めるかが大事で、いじめられる位置だと2台でも1台分になる
  • 牛に良い設計と作業のしやすさは一致しないことがあり、施工業者との対話がカギになる