なぜ"ミルク"はヤギじゃなくてホルスタイン?ミルク界の王者の秘密!

2025-07-10 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

ホルスタインが牛乳界の王者でいられるのは、圧倒的な生産量に加えて、味の癖の少なさや規模の作りやすさ、そして流通が整っていることが理由でした。一方でヤギミルクにも消化のよさや高い付加価値という強みがあり、これからの伸びしろも感じられる回でしたね。

この回の要点

  • ホルスタインの最大の強みは年間10000L以上という圧倒的な生産量
  • ヤギミルクは消化しやすくアレルギーが出にくい一方、山羊臭という癖がある
  • 体の大きさと整った流通が、ホルスタインの大量供給を支えている
  • ヤギは根っこまで草を食べるため、放牧地の管理を誤ると砂漠化につながる
  • ヤギ乳は1リットル3000円ほどで売れる例もあり、付加価値としての可能性がある

配信の全文(podyの記事より)

七月の朝の牧場と、この日の質問テーマ

配信は「牛乳で乾杯」の掛け声から始まります。この日は7月10日の木曜日、天気は晴れで、湿度が上がってむわっとした暑さに牛たちも辛そうな様子でした。

前日に牛群検定があったこともあり、餌の配合を思いきって落として、粗飼料ベースで無理のないレベルに調整したそうです。

川上 乳量はガッツリ落ちますけどね。生きてるだけでありがたいので、これでちょっとこなしていこうかなと思います

この日の本題は、配信に届いた質問への回答です。テーマは、健康にいいと言われて生産量が伸びているヤギのお乳と、ホルスタインの牛乳の違いについてでした。

質問(あわねーむちゃんくりさん) 山羊でもミルクが取れるのに、ホルスタインが覇権を握っているのはなんでですか?

ラクダやロバ、モッツァレラチーズで有名な水牛 ── 世界の一部地域で乳用・役用に飼われる大型のウシ科動物。乳は脂肪分が高く、モッツァレラチーズなどに使われる。など、哺乳類からはいろんなミルクが取れます。そのなかで、なぜホルスタインが世界でも日本でも一番普及しているのかを、川上さんがひもといていきます。

ホルスタインが王者な最大の理由は「圧倒的な生産量」

まず川上さんが結論として挙げたのが、生産量の差です。ホルスタインは1日平均30Lから40L、年間だと10000L以上の牛乳を出してくれます。

一方のヤギは1日1Lから3Lほど。品種改良で10Lくらい出る個体も出てきているそうですが、年間ではだいたい500から1000Lくらいだといいます。

つまり、ホルスタイン1頭でヤギ10頭分以上のミルクが取れるという計算です。大量に安定して供給するインフラとしては、ホルスタインが圧倒的に向いている、というわけですね。

ホルスタインとヤギの1頭あたりの乳量

10000L以上

ホルスタイン1頭の年間乳量

500〜1000L

ヤギ1頭の年間乳量

牛乳をいつでもどこでも誰でも365日24時間好きな時に飲めるのは、ホルスタインの生産量が多いからです ── 川上

ヤギミルクの魅力と、避けて通れない「ヤギ臭」

もちろんヤギミルクにも良さはあります。脂肪球が小さくて消化しやすく、アレルギーが出にくいと言われているそうです。

ただ、味には少し癖があるんですよね。特に山羊臭と呼ばれる独特の匂いがあって、川上さん自身も飲んだときに正直な感想を持ったといいます。

川上 うちの牛乳、そのヤギのお乳は癖がないんですよって言われたけど、やっぱりクッスって思いましたね

飲んだ後にゲップが出ると、そこにヤギ臭を感じたそうです。この匂いは飼い方や個体差でも変わるものの、やっぱり苦手な人も多いところ。その点、ホルスタインの牛乳は癖が少なく、万人受けしやすいという特徴があります。

体の大きさと物流が生む、規模のメリット

理由は味だけではありません。ホルスタインは体も大きいので、搾乳機の導入や牛舎の規模拡大がしやすいという利点があります。

一方でヤギは個体が小さい分、1頭あたりの設備投資の効率が悪くなってしまいます。

さらに、日本の牛乳の流通はホルスタインの牛乳をベースに大規模に整えられているため、ヤギミルクを同じように大量に出荷・販売するのは、まだ難しいのが現状だといいます。

ただし最近では、ヤギミルクのチーズやベビー用品のミルクなど、特定のニーズで注目が集まっているそうです。多様性の一部として、これからの時代に活かされていくかもしれませんね。

放牧地の目線で見える、牛とヤギの決定的な違い

酪農家目線ならではの話として、放牧のときの草の食べ方の違いも紹介されました。

牛は前歯がないので、舌で草を絡め取るように食べ、根っこまでは食べません。ところがヤギは前歯があるので、根っこまでスカッと引っ張って食べてしまうそうです。

そのため、適切に放牧地を管理しないと、最終的にはその放牧地が砂漠化してしまうことがあるといいます。

実際に中国やモンゴルのような大規模放牧の地域では、ヤギや羊を飼いすぎて頭数が増え、放牧地がなくなって砂漠が広がっている場所もあるのだそうです。この点でも、牛のほうが優れている面があるという話でした。

放牧地での牛とヤギの草の食べ方

牛

前歯がなく、舌で草を絡め取るように食べる。根っこは残るので放牧地が荒れにくい。

VS

ヤギ

前歯で根っこまで引っ張って食べる。管理を誤ると放牧地の砂漠化につながる。

1リットル3000円?ヤギ乳のこれからと川上さんの本音

コメント欄とのやり取りでは、ヤギ乳の可能性も話題になりました。ヤギの体重は1頭80キロほどで、700キロほどある牛のおよそ10分の1。生産効率だけを見れば不利ですが、価格の面では別の顔があります。

知り合いの六次産業化している酪農家によると、今はヤギの乳がとても高く、1リットル3000円ほどで販売しているところもあるそうです。牛乳が150円ほどだとすると、およそ20倍の値段ということになります。

これだけの高値なら、事業として十分やっていけるのでは、と川上さんは話します。品種改良でヤギ臭が抑えられていけば、選択肢としてさらに現実味を帯びてきそうです。

川上 自分がこう酪農ちょっと難しいな、ヤギの乳の方が儲かるなって思ったら、ヤギ農家に転向することもあるかもしれませんね

まとめ

ホルスタインが牛乳界の王者でいられるのは、圧倒的な生産量に加えて、味の癖の少なさや規模の作りやすさ、そして流通が整っていることが理由でした。一方でヤギミルクにも消化のよさや高い付加価値という強みがあり、これからの伸びしろも感じられる回でしたね。

  • ホルスタインの最大の強みは年間10000L以上という圧倒的な生産量
  • ヤギミルクは消化しやすくアレルギーが出にくい一方、山羊臭という癖がある
  • 体の大きさと整った流通が、ホルスタインの大量供給を支えている
  • ヤギは根っこまで草を食べるため、放牧地の管理を誤ると砂漠化につながる
  • ヤギ乳は1リットル3000円ほどで売れる例もあり、付加価値としての可能性がある