R7年研修生と配信⑧

2025-08-30 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

https://open.spotify.com/episode/1XTLgWfUuO25YaPGdbjwvz?si=JBuL2C2WR-6QMbs0qzDZ_g

こんにちは、川上牧場の川上です。

8月22日に行った音声配信「R7年研修生と配信⑧」の内容を、Note記事としてまとめてみました。今回は牧場で研修中の学生さんと一緒に、

「牛の飼料設計」や「原物・乾物の違い」、

さらに経済動物としての命の選択についても語り合いました。

牧場でのリアルな会話から、「飼料ってそもそも何?」

「牛ってどれくらい食べるの?」

「育てる・育てないの判断ってどこで決めるの?」など、酪農の根っこの部分に触れてもらえたらうれしいです。

飼料設計の基本:原物と乾物の違いとは?

まず研修生さんが関心をもっていたのが「牛の餌」=飼料について。

なかでもよく混同されやすいのが、「原物(げんぶつ)」と

「甘物(かんぶつ)」の違いです。

・原物:キャベツやサイレージなど、水分を含んだままの状態

・甘物:そこから水分を完全に除いた、乾いた状態の栄養換算ベース

飼料設計では、水分量を統一しないと正確な計算ができません。

だから基本的に乾物ベースで考えます。サイレージなら約半分が水分なので、10kg与えると乾物でいうと5kg。

牧草や配合飼料は水分がほとんどないので、そのまま乾物になります。

甘物摂取量と一日の給与設計

牛はどれだけ食べられるのか?これは牛の体重によってだいたい決まってきます。

・体重600〜700kgの乳牛なら、1日あたり乾物で20〜23kgほど摂取

例えば、牧草5kg・配合飼料10kgを給与したら、残りは5kg(乾物ベース)。サイレージなら水分があるので**10kg(原物)**までOKということになります。

これが分からないと、「食べてるはずなのに痩せる」

「餌を残す理由が分からない」などの誤解が生じてしまいます。

経験でわかる飼料の“本当のバランス”

設計ソフトで計算できても、実際に牛が食べるかどうかは別問題。

たとえば、酒かすなど水分が非常に多い飼料を与えると見かけ上の摂取量は多く見えても、乾物換算では栄養が足りないというケースも。

また、食べ残しが多くなると、牛によっては好きなものだけ選んで食べてしまう“選り食い”が起きます。つなぎ牛舎では分離給与(個別に与える)スタイルもあり、牧場によって時間のかけ方も違います。中には3時間もかけて、ゆっくり食べさせるスタイルの方もいます。

専門家と現場の協業:飼料設計は誰がやるのか?

川上牧場では、飼料設計ソフトと提携している専門の獣医師や飼料会社の担当者がプランを作成。それを元に、現場で微調整を加えながら餌を与えています。

でも重要なのは、「設計通りに食べるかどうか」。

どんなに栄養価が完璧な設計でも、食べなければ意味がない。食べさせる技術は、牧場経営者の経験にかかっていると改めて実感します。

餌の変遷と乳質の変化:親父さんと僕の違い

先代(父)の時代は、「とにかく太らせる」やり方でした。配合を多めに与え、乳脂肪は高かったけど、その脂肪は“体から”出ていた。

一方、自分は草を多めに、バランスよく。脂肪分は高くないけど、“飼料由来”の良質な乳脂肪が出ています。

・どちらが正解か? 正直、経営が成り立っていればどちらでも良いのかもしれません。

・でも牛の健康と寿命を考えるなら? やっぱり草を中心に、ちゃんと咀嚼して栄養を吸収してもらう設計が理想です。

混ざる牛乳、それでもやる意味

研修生さんからの鋭い問い。

「牛乳って、結局混ざるんですよね?川上さんの努力って評価されないのでは?」

たしかに、どんなに良い乳質でも混ざってしまう。

でも僕が乳質を保つことで、誰かが落としたときにカバーする。

逆もまた然り。これが酪農という共同体の本質だと思っています。

僕の理想は、いずれブランド化して直接売ること。

でも今は安定供給・リスク分散の方が大事。そのために、まだまだ規模を拡大したい。

子牛を殺す?生かす? 経営と感情のあいだで

今回の配信で一番深かったのは、「立てないまま生まれてきた子牛」をどうするかという話。

僕は生かす道を選びました。ミルクをやって、立てるようになって、自力で飲めるようになった。でもこれから先、他の牛たちに負けていく未来が見えている。

・それでも生かした方がいいのか?

・それとも最初から淘汰してしまった方がいいのか?

正解はありません。けれど、僕は経営者としては間違ってるかもしれない。でも酪農家として、命と向き合う者として、あえて育てたいという気持ちが強いです。

最後に:育てることでしか見えないものがある

飼料設計を理解するには、「自分の牛」を飼うしかありません。本を読んでも、机上の計算だけでは見えてこないリアルがあります。

「この牛、どんな餌を食べたら健康でいられるかな?」

「どんな餌を食べたら乳脂肪が上がるかな?」

そんな日々の試行錯誤が、牛への理解を深め、酪農家としての“感性”を磨いていくのだと思います。

川上牧場では、そうした学びを一緒に分かち合える仲間を常に歓迎しています。体験・研修・見学なども受け入れていますので、興味ある方はぜひご連絡ください。

この記事が、酪農のリアルや命との向き合い方に少しでも触れていただくきっかけになれば幸いです。

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