R7年研修生と配信 #21
2025-10-17 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
https://open.spotify.com/episode/6AZHeEA0ZqVCdS115WyJvE?si=VFo5SubPSm2s-zljQ5K1lg
10月11日。
この日も川上牧場には研修生が来ており、作業の合間、休憩時間を使って少しだけ「お勉強」の時間を取りました。
今回のテーマは、とてもシンプルで、でも実は一番大切な問いです。
「酪農の牧場で“働く”というのは、どういうことなのか?」
酪農に興味を持つ人は多いですが、
「実際の働き方」「給料」「休日」「将来設計」については、意外と情報がありません。
求人サイトはあっても、リアルな話はなかなか見えてこない。
だからこそ今回は、研修生とのやり取りを通して、
酪農の現場で“雇われて働く”という選択肢について、できるだけ正直に話してみました。
■ 酪農の牧場で働く=労働基準法の外、ではない
まず大前提として、誤解されがちですが、
酪農牧場で働く従業員も、基本的には労働基準法に準じた働き方になります。
・社会保険
・雇用保険
・残業代
・ボーナス
これらがきちんと整っている牧場も、今は珍しくありません。
いわゆる「普通の会社」と同じです。
ただし――
ここが大事なポイントですが、牧場ごとの差はとても大きいです。
休日が週2日のところもあれば、週1日のところもある。
繁忙期にはどうしても残業が増える牧場もある。
牛のトラブルがあれば、「はい終わり、定時なので帰ります」というわけにはいかない現場も多い。
特に、
・従業員が2〜3人
・飼養頭数が100〜200頭規模
こうした牧場では、仕事が「終わったら終わり」になりやすく、
結果的に残業になるケースもあります。
これは良い悪いではなく、牧場の規模と人員体制の問題です。
■ 「農繁期」がある牧場と、ない牧場
研修生との会話の中で出てきたのが「農繁期」という言葉でした。
牧草やトウモロコシを自給している牧場では、
・播種
・収穫
といった時期に、一気に仕事が増えます。
牛の世話に加えて、**牛が食べるエサを“作る仕事”**が重なるからです。
一方で、
・飼料をすべて購入している牧場
・コントラクター(収穫専門業者)に任せている牧場
こうしたところでは、納販期の忙しさはほとんどありません。
つまり、
「酪農」と一言で言っても、仕事内容は牧場ごとに全く違う
ということです。
■ 牧場選びで絶対に見てほしいポイント
研修生から出た、とても大切な質問がありました。
「牧場を選ぶとき、何を一番見たらいいですか?」
私が強くおすすめするのは、次の2つです。
① 牛がきれいかどうか
② 牛舎がきれいかどうか
なぜか。
酪農は、牛をきちんと管理できなければ、経営が成り立たない仕事です。
それなのに牛が汚れている、明らかに状態が悪い――
それは、どこかに無理や歪みがあるサインでもあります。
設備が古いか新しいかではありません。
「牛をどう扱っているか」が、そのまま牧場主の価値観です。
■ オンラインで良さそうでも、必ず一度は現地へ
最近は、
・オンライン面談
・SNSでの発信
で牧場を知ることができます。
それ自体はとても良いことですが、
それだけで判断するのは絶対におすすめしません。
「いいところだよ」という言葉ほど、信用できないものはありません。
“いい”の基準は、人によって全く違うからです。
できれば、
・実際に現地へ行く
・その地域で知り合いを作る
・生活環境を見る
ここまでやった上で決めてほしい。
酪農は仕事であると同時に、生活そのものです。
牛が好きでも、環境が合わなければ心が削られていきます。
■ 「牛がいれば幸せ」は、危険な思い込み
これは少し厳しい話ですが、大切なので書きます。
酪農が好き、牛が好き、牧場が好き。
その気持ちはとても尊い。
でも、
「牛がいれば幸せだから、給料や休みは気にしません」
この考え方は、長く続きません。
・給料
・休日
・人間関係
・周辺環境(スーパー、病院、遊ぶ場所)
これらが整っていないと、
体調を崩したとき、メンタルが落ちたとき、逃げ場がなくなります。
「好き」だけでは、生活は守れません。
これは現場を長く見てきたからこそ、強く伝えたいことです。
■ 酪農従業員の給料相場と、現実的なライフプラン
では、気になる収入面です。
一般的に、
酪農従業員の年収は300万〜400万円前後
と言われています。
・大規模牧場
・牧場長クラス
になると、800万〜1000万円を出せるところも、少しずつ出てきています。
ただし、それはあくまで一部です。
ここで大事なのは、
**「この収入で、どんな人生を送りたいか」**を考えること。
・マイホーム
・車
・家族
・趣味
従業員として一生働く場合、
300〜400万円をベースにしたライフプランを描く必要があります。
それで幸せなら、全く問題ありません。
一方で、もっと収入を伸ばしたいなら、
将来的に新規就農を目指すという選択肢もあります。
■ 牧場以外にも、酪農に関わる仕事はたくさんある
研修生との話の中で、酪農に関わる仕事を整理しました。
・酪農ヘルパー
・牧場従業員
・集乳車のドライバー
・飼料会社
・動物薬品会社
・資材会社
・乳業メーカー
・普及員
・牛群検定員
などなど。
普及員
県の職員で、
・牧場の課題整理
・技術指導
・研究成果の普及
を行います。
公務員なので、安定した収入と立場があります。
牛群検定員
月1回牧場を回り、
・乳量
・成分
・記録
を正確に測定する仕事です。
パートの方や、酪農家の家族が担っていることもあります。
「牛に直接触れる仕事」だけが、酪農ではありません。
■ それでも「牛と働きたい」なら、牧場が一番近い
とはいえ。
牛と毎日向き合いたい
現場で牛を見ていたい
そう思うなら、やはり牧場で働くのが一番です。
ただし、その場合に一番大切なのは、
牧場主と、牛に対する考え方が合うかどうか
ここが合わないと、本当にしんどい。
牧場正社員として働いたことがない私でも、
ヘルパーとして数多くの牧場を見てきた中で、
この「価値観の一致」がどれほど重要かは、痛いほど分かります。
合えば楽しい。
合わなければ、地獄です。
■ 情報が少ないからこそ、発信する意味がある
最後に。
酪農従業員の働き方は、
一般社会ではあまり知られていません。
だからこそ、この配信やこの記事が、
誰かの判断材料になればいいと思っています。
正解はありません。
大事なのは、知った上で選ぶことです。
もし、
「ここがもっと知りたい」
「これはどうなの?」
という点があれば、ぜひコメントで教えてください。
酪農に関わる道は、思っている以上にたくさんあります。
その中から、自分に合った道を選ぶ手助けができたら嬉しいです。
今日はここまで。
読んでいただき、ありがとうございました。
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