食の安全はいつから意識され始めたのか?〜酪農家の視点から〜
2025-10-31 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
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11/01 🥛 食の安全はいつから意識され始めたのか?〜酪農家の視点から〜
11月に入り、いきなりの三連休。
土日月と続く休みを、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
牧場では昨日から雨が続き、思うように作業が進まない一日になっています。
本来なら堆肥を運んだり、補助金関係の書類を持って行ったりしたかったのですが、天候には逆らえません。今日は毎週土曜日恒例の育成舎の掃除を中心に、牛たちの様子を見ながら、少し調子の悪そうな牛を獣医さんに診てもらう予定です。
そんな11月最初の配信で取り上げたテーマは、「食の安全」。
リスナーさんから、とても本質的な質問をいただきました。
いつ頃から、食の安全って言われるようになったんでしょうか?
酪農家として日々「安全」を前提に仕事をしている立場から、この問いを少し深掘りしてみたいと思います。
「食の安全」は、最初から当たり前だったのか?
正直に言うと、私自身は39歳。
物心ついた頃には、すでに「食べ物は安全なもの」という感覚が当たり前にありました。
記憶に残っている食のトラブルといえば、
・カイワレ大根の食中毒事件
・カレーへの毒物混入事件
・BSE問題で吉野家の牛丼が話題になったこと
このあたりが、子どもの頃の記憶として残っています。
でも、「それ以前」はどうだったのか。
今回はあらためて調べ直しながら考えてみました。
食の安全が“言葉”として意識され始めた時代
実は「食の安全」という言葉が社会で強く意識され始めたのは、1970年代後半から1980年代だと言われています。
それ以前は、「食べ物は安全で当たり前」という感覚が主流でした。
ところが、その常識を大きく揺るがす出来事が起こります。
・1955年 森永ヒ素ミルク事件
・1968年 カネミ油症事件
これらはいわゆる食品公害事件です。
「信頼していた食品が、人の健康を深刻に害する」
この事実を、社会全体が突きつけられました。
ここが、食の安全意識の最初の大きな転換点だったと言えます。
高度経済成長と「安全」への不安
1970〜80年代は、日本が高度経済成長を遂げた時代でもあります。
食品は大量生産され、保存性や見た目の良さが重視されるようになりました。
その中で注目されたのが食品添加物です。
1973年頃から
・無添加
・自然食品
といった言葉が使われ始め、
1980年代に入ると「食の安全=添加物を避けること」という価値観が広がっていきます。
この頃の食の安全は、
「技術への信頼」と「自然回帰」
そのせめぎ合いの中で形づくられていったと言えるでしょう。
酪農業界で大きく変わった2000年代
酪農の世界で「食の安全」が構造的に変わったのは、2001年のBSE問題です。
それまで当たり前に使われていた肉骨粉飼料が禁止され、
「その牛が、何を食べ、どこで育ったのか」を説明できることが求められるようになりました。
ここで登場したのが、**トレーサビリティ(追跡可能性)**という考え方です。
・どの牧場で
・どんな飼料を使い
・どんな管理をされてきた牛なのか
これを消費者に示せること。
これが、現代の食の安全の土台になっています。
この時代から、
安全=感覚ではなく、科学と管理
というフェーズに入っていきました。
「安全」から「安心」へ
2000年代以降、もう一つ大きな変化がありました。
それが「安全」よりも「安心」という言葉が重視されるようになったことです。
科学的に安全だと説明されても、
・誰が作っているのかわからない
・どんな現場なのか見えない
そうした食品に、人は不安を感じるようになりました。
そこで求められ始めたのが、
・顔の見える生産者
・地産地消
・オーガニック
といった、「人とのつながり」を感じられる食です。
安全はデータで、安心は物語で伝える時代
今はSNSや音声メディアが当たり前の時代です。
安全性はデータや基準で示し、
安心感は、生産者の言葉や日々の発信で伝えられるようになりました。
私は、食の安全は制度ではなく文化だと思っています。
たとえば川上牧場では、
・もやし粕
・酒粕
・醤油粕
といった食品工場の副産物を飼料として活用しています。
これは廃棄物を減らし、資源を循環させる仕組みです。
もちろん、
・どこから来た原料なのか
・どんな管理をしているのか
すべてトレースできる状態で行っています。
健康・環境・信頼
この三つが揃って、初めて「食の安全」だと考えています。
「いつから安全を言い出したのか」という問いの奥にあるもの
今回の質問には、
「いつから人は食を信じられなくなったのか」
という、少し切ない背景も含まれているように感じました。
でも、私はこうも思います。
食の安全が話題になるということは、
誰かが真剣に考え始めた証拠だと。
時代によって形は変わっても、
根っこにあるのは「人の健康」と「作り手の誠実さ」。
それは昭和でも、令和でも、変わっていません。
まとめ:食の安全は、いつも食卓のそばにある
整理すると、こんな流れになります。
・社会的に意識され始めたのは1970年代(食品公害・添加物問題)
・酪農業界で大きく変わったのは2000年代(BSEとトレーサビリティ)
・現在は「安全」よりも「安心」、人とのつながりが重視される時代
そして、
食の安全は制度ではなく文化。
信頼は、日々の現場の積み重ねからしか生まれません。
今はSNSで、ちょっとしたことでも炎上する時代です。
基準が厳しくなりすぎて、食品ロスや生産性低下といった課題も出てきています。
ただ私は、
AIやブロックチェーン、情報技術によって、
これらは解決できる問題だとも思っています。
最終的に問われるのは、
「誰が作ったか」
その一点です。
「川上牧場の牛乳を飲みたい」
そう思ってくださる方を、一人でも増やしていけたら嬉しいです。
三連休の初日。
お仕事の方も、学校の方も、ゆっくり過ごされる方も。
どうか今日も、牛乳を飲んで元気にお過ごしください。
また次のNoteでお会いしましょう。
みんな、牛乳飲んでね。
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