国内初のA2ミルク臨床研究と、世界に広がる“おなかにやさしい牛乳”の潮流

2025-11-03 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

https://open.spotify.com/episode/5MFzr9O4D5EhbCu2rp8NJV?si=nmCHNd01RA-RTAldPod9jA

11月4日、三連休明けの火曜日。

朝の空気は一気に冷え込み、最高気温はわずか4度。

牛舎では、冬支度がまだ追いつかない中で、早産気味に生まれた子牛のケアに気を配る一日が始まっていました。

そんな寒さが身にしみる朝に飲む一杯の牛乳は、正直言って格別です。

体の内側からじんわり温まる感覚は、酪農家でなくてもきっと共感してもらえるのではないでしょうか。

この日の配信では、久しぶりに「牛乳そのものの話題」を深掘りしました。

テーマは A2ミルク。

「今さら?」と思う方もいるかもしれませんが、実はここに来て、日本で非常に大きな動きがありました。

それが、国内初となるA2ミルクの臨床研究論文の発表です。

https://www.sankei.com/pressrelease/prtimes/K5OTEPWE35LZFPYKYAM23ZQ6N4/

A2ミルクとは何か?──“体にやさしい”の正体

まず、A2ミルクとは何なのか。

これは誤解されやすいのですが、特別な加工を施した牛乳ではありません。

牛乳に含まれる主要なたんぱく質「βカゼイン」には、

A1型とA2型という2種類があります。

一般的な牛乳には、このA1型とA2型の両方が含まれています。

一方、A2ミルクは A2型のβカゼインだけを持つ牛から搾った牛乳 です。

問題になるのは、A1型を消化する過程で生成される可能性がある

BCM-7(βカソモルフィン7) という物質です。

このBCM-7が、一部の人にとって

・お腹がゴロゴロする

・腹痛

・便がゆるくなる

といった不快症状に関与している可能性が、以前から指摘されてきました。

A2ミルクは、このBCM-7が生成されにくいとされており、

「牛乳は苦手だけど、A2ミルクなら飲める」

という人が一定数存在します。

重要なのは、

これは“添加”でも“除去”でもなく、牛の遺伝的な違いだけ

だという点です。

国内初、日本人を対象にした臨床研究

今回発表された研究は、

東京農業大学と日本A2ミルク協会によるものです。

2024年10月31日、PR TIMESおよび産経新聞Web版で報じられました。

研究方法は、いわゆるクロスオーバー試験。

・通常の牛乳を1週間飲む

・1週間の休止期間

・A2ミルクを1週間飲む

この順序で、日本人被験者を対象に比較が行われました。

対象となったのは、

「牛乳を飲むとお腹に不調が出やすい」と自覚している人たち。

結果は非常に明確でした。

全員において、A2ミルク摂取時に症状が改善。

具体的には、

・腹部のゴロゴロ感

・腹痛

・便の状態

といった指標で、統計的にも有意な改善が見られたと報告されています。

これは、日本人を対象とした研究としては初であり、

日本におけるA2ミルクの科学的根拠が、ようやく一歩前進した瞬間と言えます。

世界ではすでに“当たり前”になりつつあるA2ミルク

実はA2ミルク、海外ではすでに珍しい存在ではありません。

・オーストラリア

スーパーで普通に販売され、市場シェアは約10%。

プレミアムミルクとして定着しています。

・アメリカ

1万店舗以上で流通。

・イギリス

2012年から市場投入。

・中国

健康志向の高まりとともに需要が拡大。

海外では臨床研究も多数行われており、

「A2ミルクの方が消化にやさしい」という結果は、繰り返し示されています。

特に興味深いのは、

植物性ミルクに流れていた消費者が、A2ミルクによって牛乳に戻ってきている

という現象です。

これは、酪農業界にとって非常に重要なポイントです。

なぜ今、日本で注目され始めたのか

背景には、いくつかの社会的な流れがあります。

・健康志向の高まり

・腸内環境への関心

・乳製品を避ける人の増加

日本人の多くは「乳糖不耐症」と言われますが、

実際には 乳糖だけが原因ではない人も多い と考えられています。

つまり、

「牛乳は体に合わない」と思っていた人の中に、

A2ミルクなら問題なく飲める層が相当数いる可能性がある

ということです。

今回の国内研究は、まさにその仮説を裏付ける第一歩になりました。

酪農家の視点から見たA2ミルクの可能性

実は、私の牧場でも

完全ではありませんが、A2遺伝子を持つ牛が多数います。

特別にブランド化しているわけではありませんが、

毎日1リットルほど自家の牛乳を飲んでいても、

お腹がゴロゴロすることはほとんどありません。

もちろん個人差はあります。

しかし、「体質に合わせて牛乳を選べる」という考え方は、

これからの時代にとても大切だと感じています。

もしA2ミルクが日本で本格的に普及すれば、

・牛乳を諦めていた人が再び飲めるようになる

・酪農業界に新しい価値軸が生まれる

・健康志向の消費者ニーズと合致する

これは単なる“流行”ではなく、

牛乳の第二のスタンダードが生まれる可能性を秘めています。

まずは一度、試してみてほしい

最近では、高級スーパーやこだわり系の店舗で

A2ミルクを見かけることも増えてきました。

「牛乳は好きだけど、お腹が不安で…」

そんな経験がある方は、ぜひ一度試してみてください。

そして、もし体感として違いを感じたなら、

それはあなたの体が発している正直なサインです。

牛乳は一つじゃない。

体質に合わせて選べる時代が、少しずつ始まっています。

牛乳の未来は、まだまだ面白くなる

今回の研究はゴールではなく、スタート地点です。

これから日本人の体質に合わせた研究が進み、

「どう飲めばより効果的か」といった知見も積み重なっていくでしょう。

量を作る時代から、価値を届ける時代へ。

日本の酪農が次のステージへ進むための、大きな一歩だと感じています。

牛乳の未来は、まだまだ楽しみです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

質問や感想があれば、ぜひコメントで教えてください。

そして今日も一杯、牛乳を。

お仕事の方、学校の方、いってらっしゃい。

みんな、牛乳飲んでね。

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