R7年研修生と配信 #25
2025-11-02 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
https://open.spotify.com/episode/04sG0VogRB0nBeRDBg6Z7R?si=z0QUQqnmT3uNu6NM1GWOGg
10月24日。この日も、いつも通り研修生と一緒に音声配信の収録を行いました。
今回のテーマはとてもシンプルで、同時にとても重いテーマです。
「酪農家として働く上での“身体の悩み”」
腰痛、怪我、疲労の蓄積、そしてメンタルの問題。
現場で働く人ほど避けて通れない話ですが、意外と表に出てこない話題でもあります。
今日は、研修生との対話を通じて、酪農という仕事と“身体”のリアルについて、じっくり考えてみました。
■ 酪農は「身体を壊したら終わる仕事」でもある
研修生から最初に出たのは、とても率直な言葉でした。
「腰をやってしまったら、何もできなくなりますよね」
まさにその通りで、酪農という仕事は身体が資本です。
しゃがむ、持ち上げる、引く、押す。
1個20kgを超える飼料を何度も持ち、前屈みの姿勢で搾乳を続ける。
どれも日常の作業ですが、腰や膝、肩への負担は確実に積み重なっていきます。
私はこれまで酪農ヘルパーとして、多くの牧場を回ってきました。
その中で、怪我や病気がきっかけで経営が傾いてしまったケースを、何度も見てきました。
・作業機に乗っていて骨折
・牛に蹴られて大怪我
・腰痛が悪化して動けなくなる
そして、あまり語られませんが、精神疾患も実際にあります。
■ 身体の不調は、経営の不調に直結する
特に深刻なのが、牧場主自身が体調を崩したケースです。
経営者が動けなくなる
↓
牛への給餌や管理が疎かになる
↓
乳量が落ちる
↓
売上が減る
↓
飼料を削る
↓
さらに牛の状態が悪化する
これは、典型的な負のスパイラルです。
そのスタート地点にあるのが、
「身体が動かなくなること」
である場合が、とても多いのです。
だからこそ私は、身体のケアを何よりも大事にしています。
■ 私自身がやっている身体のケア
私は毎週、整体に通っています。
長年、私の身体を見続けてくれている専門の先生がいて、定期的にメンテナンスをしています。
そして、本格的に身体を鍛え始めたのは、実はここ1年ほどです。
それまでは「太らない」「体重を維持する」くらいしか意識していませんでした。
ストレッチはしていましたが、筋トレはほとんどしていませんでした。
ですが、筋トレを始めてから、はっきり分かったことがあります。
筋肉がつくと、腰痛が明らかに減る。
酪農家は「常に動いている」仕事なので、
「これ以上、鍛える必要ある?」と思いがちです。
でも実際は、動いているのと、正しく身体を使える筋力があることは別物でした。
■ 酪農は想像以上に“運動量が多い仕事”
研修生からこんな質問もありました。
「1日、何歩くらい歩いているんですか?」
正確には分かりませんが、平均で1万2000歩前後。
ただし、これは単純な“歩数”だけの話です。
酪農の動きは、
・屈伸
・ねじり
・上下運動
・前屈
・中腰
いわば全身を使った有酸素運動の連続です。
しかも、長靴を履き、重い物を持ちながら。
それでも太っている酪農家がいるとしたら、
・機械作業が中心
・間食が多い
といった要因が重なっている場合が多いと思います。
■ 搾乳姿勢と腰痛の関係
腰痛の大きな原因の一つが、搾乳姿勢です。
腰痛持ちの酪農家さんの中には、
小さな椅子(お風呂用の椅子など)に座って搾乳している方もいます。
また、作業動線の工夫もとても重要です。
「1日5分しか短縮できない」と思っても、
それを365日積み重ねると、大きな差になります。
・無駄な動きを減らす
・同時にできる作業はまとめる
・本当に必要な動作かを疑う
こうした積み重ねが、身体への負担を確実に減らしてくれます。
■ 牛の動きと、自分の身体の使い方
私は少し変わった考え方をしています。
それは、古武術的な身体の使い方を意識していることです。
筋肉の力だけで動かすのではなく、
骨格、重心、体重移動を使って動く。
たとえば、
・膝だけを曲げない
・腰を落として回転する
・前傾姿勢を避ける
ミルカーを持ち上げるときも、
前屈みになると腰を痛めます。
重心を落とし、身体全体で動かす。
牛に押されても、蹴られても、
すぐ逃げられる体勢を取ることも大切です。
■ 足元と装備も、腰痛に直結する
意外と見落とされがちなのが、靴と靴下です。
長靴は足首が固定されるため、
それだけで腰痛の原因になることがあります。
最近は、
・ワークブーツ
・安全靴
・足袋タイプ
・5本指ソックス
などを使う酪農家さんも増えています。
海外では、長靴を履かない酪農家も珍しくありません。
日本人は「汚れ」を気にしすぎる傾向もあるかもしれません。
■ 手は“農家の手”に変わっていく
研修生から、手の異変についての相談もありました。
指の間が太くなる。
指先の形が変わる。
夜に痒くなる。
これは、搾乳による構造的な変化でもありますし、
洗剤やお湯による手荒れの可能性も高いです。
長年続けると、
指・前腕・肩・背中
すべてが連動して変わっていきます。
そして、
肩が丸まる → 猫背になる → 腰痛になる
という流れも、とても多い。
だからこそ、肩甲骨を動かすストレッチは本当に大切です。
■ 人件費が安い日本と、設備投資の遅れ
話は少し広がり、日本の農業構造の話にもなりました。
日本は人件費が安い。
だから「人を使う」選択がされやすい。
結果として、設備投資や機械化が遅れる。
一方、海外では最低時給が2000円を超える国もあります。
そうなると、人を雇うより機械を入れた方が合理的になります。
この違いが、日本の農業のしんどさにも繋がっています。
■ 自営業としての覚悟と現実
私の1日は、朝5時に始まり、
気がつけば13時までノンストップ。
そこから少し休憩を挟み、また仕事。
「それ、しんどくないですか?」
とよく言われます。
正直、楽ではありません。
でも、自営業とはそういうものだとも思っています。
労働基準法はありません。
働いた分だけ、自分に返ってくる。
だからこそ、身体を壊したら終わりなのです。
■ 新規就農を考える人へ
最後に、研修生との話の中で出た、新規就農の話。
私はよくこう伝えています。
「いきなり酪農の現場で低賃金で働くより、
一般職でしっかり稼いで、貯蓄を作った方が近道な場合もある」
貯蓄は、信用になります。
将来、借り入れをする際の大きな武器になります。
酪農が好きだからこそ、
現実的なルートを選んでほしいと思っています。
■ おわりに
酪農は、やりがいのある仕事です。
でも同時に、身体への負担が非常に大きい仕事でもあります。
だからこそ、
・身体の使い方
・装備
・作業動線
・ケア
・考え方
すべてが大切です。
もし、身体の使い方やケアについて気になることがあれば、
ぜひメッセージやコメントをください。
今日の話が、
誰かの「身体を守るきっかけ」になれば嬉しいです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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