R7年研修生と配信 #38
2026-01-15 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
https://youtu.be/40XXEV5mkPo
朝の牛舎は、まだ空気が冷たい時間でした。
1月7日、年が明けて少し経った頃の収録です。搾乳が終わり、牛たちが餌を食べて落ち着き始めた頃。今日は牧場に来ている研修生と一緒に、勉強をしながら配信をすることにしました。
酪農の仕事をしていると、毎日の作業はある程度決まっています。朝晩の搾乳、牛の体調の確認、餌の管理。そういう日常の合間に、こうして研修生と話をする時間があると、自分にとっても学び直しのような時間になります。
今日は「お肉の牛について」というテーマで話が始まりました。
乳牛と肉牛は、同じ牛でも役割が違う
牧場で働き始めたばかりの人にとって、牛の種類や役割の違いはなかなか分かりにくいものです。研修生からの質問も、そこから始まりました。
酪農の牧場では、基本的に朝と夕方の搾乳があります。乳牛は乳房にミルクが溜まるので、定期的に搾乳をしないと病気の原因になります。だから搾乳は、牛の健康管理でもある作業です。
一方で、お肉用の牛、つまり肉牛は搾乳をする必要がありません。
この違いだけでも、牧場の仕事の内容はかなり変わります。
肉牛の世界では、大きく分けると二つの役割があります。
一つは「繁殖和牛農家」。
もう一つは「肥育農家」です。
繁殖和牛農家は、母牛を飼い、子牛を産ませることが仕事です。生まれた子牛を育て、だいたい8ヶ月ほどで家畜市場に出荷します。
その子牛を買ってくるのが肥育農家です。
肥育農家は、8ヶ月の子牛を育てて、お肉として出荷できるまで育てます。つまり、牛を太らせて肉質を仕上げる役割です。
肥育は三段階で進んでいく
肉牛の肥育には、ある程度決まった流れがあります。
子牛を買ってきた直後は、まず環境に慣らす期間があります。いろいろな牧場から来た牛たちは、食べてきた餌も違うし、育ってきた環境も違います。そのため、最初の2ヶ月ほどは体を慣らす期間になります。
そこから、肥育の段階に入ります。
肥育は大きく分けて三つのステージがあります。
・肥育前期
・肥育中期
・肥育後期
前期は、体の大きさを作る段階です。
中期は、肉の質を整える準備の段階。
後期になると、いわゆる「サシ」が入ってくる段階になります。
サシというのは脂肪の入り方のことです。和牛の特徴でもあります。
この脂肪の入り方は、遺伝だけで決まるわけではありません。飼い方や餌の内容、肥育期間など、環境要因もかなり影響します。
だから、牧場ごとに肥育のやり方は違います。
赤身肉を売りにしている牧場もあれば、サシをしっかり入れるブランド牛を作る牧場もあります。どこに重点を置くかで、餌の配合や肥育期間が変わります。
牛を太らせるという仕事
ここは少し言葉が難しいところなのですが、肥育というのは「健康的に不健康にする仕事」とも言われます。
どういうことかというと、牛をできるだけ太らせる必要があるからです。
人間で例えると分かりやすいかもしれません。
サラダ中心の健康的な食事よりも、炭水化物や脂肪を多く摂る方が太りやすいですよね。肉牛の肥育も、ある意味それに近いところがあります。
ただし、やり過ぎると病気になります。
だから牧場では、牛の様子を見ながらギリギリのラインを探っていきます。どこまで食べさせるか、どこで調整するか。その判断が肥育農家の腕の見せどころになります。
牛を見る力と「目利き」
肥育農家には、もう一つ大事なスキルがあります。それが「目利き」です。
子牛は家畜市場で競りにかけられます。そこで、どの牛を買うかを判断します。
見た目のフレーム、足腰の強さ、体型、血統。そういう情報を総合して判断します。
乳牛でも血統は大事ですが、肉牛の世界ではさらに重要です。
生まれたときの体重や成長の傾向は、ある程度遺伝で決まります。例えば、生まれたときに20kgの子牛と30kgの子牛がいた場合、20kgの子牛が最終的に追い越すことはほとんどないと言われています。
だから、最初の段階でどんな牛を選ぶかが大事になります。
なぜ私は酪農を選んだのか
研修生から、こんな質問がありました。
「どうして肉牛じゃなくて乳牛を選んだんですか?」
正直なところ、はっきりした理由があったわけではありません。ただ、ホルスタインの方が面白いと思ったんです。
乳牛は、自分の体を削ってミルクを出します。ある意味アスリートのような存在です。
ルーメンの働き、乳量の変化、品種改良。そういう要素が絡み合っていて、酪農には奥深さがあります。
もちろん肉牛の世界にも魅力があります。ただ、自分は乳牛の方が面白いと感じました。
毎日搾乳があるというのも、大きいかもしれません。
牛肉の美味しさはどこで決まるのか
研修生からもう一つ質問がありました。
「牛肉の美味しさって何で決まるんですか?」
枝肉として評価されるときは、主に三つのポイントがあります。
・重量
・サシの入り方
・ロースの大きさ
ロースは高値で取引される部位なので、ここが大きいと価値が上がります。
ただ、消費者が感じる「美味しさ」はそれだけではありません。餌の内容や育て方、地域の品種改良の方向性なども影響します。
例えば、岐阜県の飛騨牛は赤身の旨味を重視する傾向があります。佐賀牛は脂の質が特徴です。
同じ和牛でも、地域によってかなり違います。
ブランド牛の少しややこしい話
ここはあまり知られていないことですが、ブランド牛の名前は「どこで一番長く飼われたか」で決まります。
例えば、海外で生まれた牛でも、日本で長く肥育されれば日本の牛として扱われます。これは食品表示のルールで決まっています。
消費者の立場からすると少し複雑な話ですが、こういう仕組みも牛肉の世界にはあります。
私が今考えていること
今日は研修生との会話をそのまま紹介するような形になりました。
こういう時間は、自分にとっても勉強になります。普段は当たり前にやっていることでも、説明しようとすると改めて考えることが多いからです。
酪農と肉牛は同じ牛でも世界が違います。役割も、仕事の内容も、経営の考え方も違います。
ただ、どちらも「牛を見ながら仕事をする」という点では同じです。
これから農業を目指す人が、こういう違いを少しずつ知っていくことは大事なのかもしれません。
私自身も、まだまだ勉強中です。
もしこの記事を読んでいる方で「この地域の牛肉は美味しい」というおすすめがあれば、ぜひ教えてください。
牧場で牛を見ながら、またゆっくり考えてみたいと思います。
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