なぜ農道が崩れる?陥没事故の原因と対策
2025-03-02 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
埼玉の道路陥没事故をきっかけに、農道でも相次ぐ陥没事故の原因と影響を掘り下げた回でした。地盤の弱体化、排水設備の老朽化、機械の大型化という3つの原因が重なり、農家に重い負担がのしかかっている現実が語られました。
この回の要点
- 農道の陥没は、地盤の弱体化・排水設備の老朽化・農業機械の大型化が主な原因
- 陥没はトラクター転落など人身事故や、収穫・田植えの遅延につながる
- トラクターは小型でも作業機を含めると1000万〜2000万円と高額で、買い替えの負担は大きい
- 農家は大雨時に水を流すなど地域のインフラも支えている
- 個人での用水路修繕は割に合わず、支援と消費者の理解が求められている
配信の全文(podyの記事より)
雨の朝、牛も人も体調を崩しそうな一日
この日は3月2日の日曜日。あいにくの雨模様でしたが、気温は前日に続いて高めで、牛舎の中は蒸し暑くなっていたそうです。
急な気温の変化で、餌をあまり食べない牛も出てきていると川上さんは話します。人間もおかしくなりそうな天気だったとか。
この日の仕事は、先週注文が入っていた堆肥の配達。家から近いのでささっと終わらせて、あとは2週間おきの酪農ヘルパーの日ということで、子どもとどこかへ出かけようかな、とゆるく予定を立てていました。
埼玉の陥没事故から、なぜ農道の話に?
今回のメインは、埼玉県で起きた道路陥没事故のニュースです。運転していた70歳ほどの方が落ちてしまうという、不幸な事故でした。
この事故をきっかけに、実は農業界でも似た話が広がっていると川上さんは切り出します。紹介したのは、日本農業新聞の2月28日の記事です。
川上 先日埼玉県の方で道路陥没して運転手の方が落ちてしまった、ちょっと不幸な事故がありましたけれども、農業界でもそんな話になってますよっていうニュースを紹介したいなと思っております。
記事のタイトルは「陥没、農道でも相次ぎ発生 トラクター転落も」。農業用パイプラインや下水道の損壊による農道の陥没事故が、各地で相次いでいるという内容です。
農水省によると、漏水など農業用水利施設の事故は年間1000件を超え、老朽化対策が急務になっているとのこと。都会の道路の話だと思われがちな陥没が、農村でも深刻な問題になっているんですね。
農道が崩れる3つの原因とは?
なぜ農道で陥没が相次いでいるのか。川上さんは大きく3つの原因を挙げていきます。
農道の陥没が起きる3つの原因
地盤の弱体化
長雨や地下水の浸水で地盤が緩み、大雨で地面の下に空洞ができる
↓
排水設備の老朽化
側溝や排水管がひび割れ・詰まりで機能せず、水がたまって地盤が崩れる
↓
農業機械の大型化
大型トラクターやコンバインの重量が繰り返し加わり、地盤に負担がかかる
1つ目は地盤の弱体化です。長期間の雨や地下水の浸水で地盤が緩み、陥没が起きやすくなります。最近は短時間に大量の雨が降ることが増えているのも影響しているようです。
一見なんともないような道路でも、大雨で地面の下に空洞ができていることがあり、これが埼玉の事故の原因でもあったと川上さんは説明します。
2つ目は排水設備の老朽化。農道には排水用の側溝や排水管があることが多いのですが、これが老朽化すると水が流れず、地盤が崩れる原因になります。
田んぼの水路がひび割れたり、ゴミや泥が溜まって水が全然流れなくなっている場所が、今どんどん出てきているそうです。耕作放棄地の問題ともつながっています。
耕作放棄地 以前は農地として使われていたのに、今は作物が作られず放置されている土地のこと。管理する人が減ることで、水路の詰まりや周辺農地への影響など、さまざまな問題を引き起こすと言われています。
3つ目は農業機械の大型化による負荷の増大です。大型のトラクターやコンバインは相当な重量があり、何度も農道を通ることで地盤への負担が積み重なっていきます。
何億円の機械が道路を埋め尽くす、酪農の現実
機械の大型化について、川上さんは酪農ならではの具体例を挙げます。
トウモロコシを刈り取る専用の機械には、何億円もするものがあるそうです。6条刈り、8条刈りといった外車で、道路を埋め尽くすほどの大きさになることもあると言います。
川上 外車ですからね、もうマジで道路を埋め尽くすぐらいの大きさだったりしますんで、対向車が怖がるっていう。
さらに問題なのは、今ある農道が昔のトラクターのサイズに合わせて作られていて、現代の大型機械には合っていないこと。道路を傷めてしまう一因になっています。
そして陥没の一番怖いところは、人身事故のリスクです。目の前に突然落とし穴ができたら落ちてしまいますし、トラクターは視界が悪いため、重大な事故につながりやすいと川上さんは指摘します。
トラクターが落ちたら、農家はどうなる?
陥没事故は、その場の危険だけでは終わりません。川上さんは農作業への影響も語ります。
農道が使えなくなると、その人だけでなく周りの農家にも影響が出ます。収穫期や田植えの時期がずれれば、作業スケジュールが大きく狂ってしまいます。
さらに深刻なのが金銭的な負担です。トラクターは落ちてもすぐ買い替えられるものではありません。
川上 ちっちゃいトラクターでもね、それに作業機つけたりしたら1000万、2000万なんて簡単ですからね。そんなもん無理ですよ。
何千万円もするトラクターが一瞬でパーになったら、保険で適用できるといっても限界があります。こうした負担が積み重なれば、農業をする人がどんどん減っていくのではないかと川上さんは危惧しています。
対策はあるけれど「無理じゃね?」という本音
では、陥没事故を防ぐにはどうすればいいのか。記事にはいくつかの対策が挙げられていました。
・定期的に道路を点検し、ちょっとしたひびも早めに直す
・排水の詰まりを掃除し、必要なら新しい排水管を設置する
・重量制限を意識し、負荷を分散させるルートを考える
ただ、これらを聞いた川上さんの本音は「いや無理じゃね?」というもの。用水路の修繕を個人の農家がバックホウで直している姿も見たことがあるけれど、割に合わないと言います。
ただでさえ農産物の価格は安いのに、こんなところまで手をかけなければいけないのか。それが今後の農業の姿かと思うと、担い手はますます減ってしまうのではないか、と川上さんは語ります。
大雨洪水が起こった時にちゃんと水が流れるようなのを維持してくれてるのも農業だってところを、意識してもらえると嬉しいなと思います。 ── 川上
農家は地域のインフラも支えている。だからこそ支援がほしいのと同時に、消費者にもその役割を知ってほしい、というのがこの回のメッセージでした。
トマトミルクレモン再発売の声と、研修生のお知らせ
ニュースのあとは、お便りコーナー。栃木酪農協同組合が出していた「トマトミルクレモン」を再発売してほしい、というコメントが紹介されました。
以前この商品を教えてもらったという川上さん。美味しかったそうで、栃木の酪農関係者にも「消費者の声が届いていますよ」と呼びかけていました。
最後に、川上牧場で研修してみたいという高校生3人と面接したことも報告。とてもやる気がありそうな子たちで、まずはやってみようという話になったそうです。
いいなと思ったら、XやInstagramのアカウントを動かしてもらうかもしれないとのこと。「川上牧場研修生日誌」というアカウントをフォローして待っていてほしい、と締めくくりました。
まとめ
埼玉の道路陥没事故をきっかけに、農道でも相次ぐ陥没事故の原因と影響を掘り下げた回でした。地盤の弱体化、排水設備の老朽化、機械の大型化という3つの原因が重なり、農家に重い負担がのしかかっている現実が語られました。
- 農道の陥没は、地盤の弱体化・排水設備の老朽化・農業機械の大型化が主な原因
- 陥没はトラクター転落など人身事故や、収穫・田植えの遅延につながる
- トラクターは小型でも作業機を含めると1000万〜2000万円と高額で、買い替えの負担は大きい
- 農家は大雨時に水を流すなど地域のインフラも支えている
- 個人での用水路修繕は割に合わず、支援と消費者の理解が求められている