哺乳はどれがいい?
2025-03-02 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
子牛の哺乳方法には哺乳ロボット、レールタイプ、ミルクタクシー、バケツなどがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。大事なのは「どれが一番いいか」ではなく、農場の規模や環境、管理体制に合わせて選ぶことだと川上さんは話していました。
この回の要点
- 哺乳ロボットはメーカーが実は1社で、型はほぼ共通。優劣は根本構造にはあまりない
- 群れ飼いは子牛が飲みたいときに飲め、社会性を身につけられるのが大きなメリット
- 一方で群れ飼いには感染症リスクがあり、清潔な環境と保菌管理が前提になる
- 哺乳ロボットは性能をフルに使うより、頭数を絞る方が病気を防げる場合がある
- バケツと哺乳瓶で効果はあまり変わらないが、冬場のバケツは温度低下と細菌に注意
配信の全文(podyの記事より)
研修4日目の配信、今日のテーマは「哺乳」
今回の配信は研修4日目。中四国酪農大学校の学生さんと一緒に、15分ほどのお勉強スタイルでお届けしています。
TikTokライブやスタンドFM、Instagram、YouTubeなど、いろいろなプラットフォームで配信されている番組です。
この日の学生さんからのお題は、子牛の哺乳のやり方について。世の中にはいろんな方法があるなかで、どれが一番いいと思うか、という素朴な疑問からトークが始まります。
研修生 哺乳のやり方っていっぱいあるじゃないですか。ミルクタクシーだったり哺乳ロボットあったり、レールでやるタイプとか。その中でどれが一番理想というか、いいと思いますか?
哺乳ロボットのメーカーは、実は1つだった
川上牧場では哺乳ロボット ── 子牛が自分のタイミングでミルクを飲めるように自動でミルクを調乳・給与する機械。1台で複数頭を管理できるを使っています。ここで川上さんから、意外な事実が明かされます。
川上 哺乳ロボットって、一つのメーカーなの知ってた?
コーンズ、オリオン、デラバルといった名前で日本に入っている哺乳ロボットは、実は同じ大手メーカーのものを各代理店が売っているだけなのだそう。型は全部同じだといいます。
川上 その大手メーカーの哺乳ロボットを代理店で売ってるだけなので、全部型一緒です。
学生さんも、学校で見た機械の銘板に見慣れないメーカー名があって不思議に思っていたとのこと。でも設計や形はどれも共通なのだと川上さんは説明します。
だから「このメーカーの哺乳ロボットがいい」という優劣はあまりなく、各社で違うのは中に入れているソフトくらいで、根本的な構造は全部同じなのだそうです。
レールタイプは何のためにある?
続いて話題は、オリオンのレールタイプの機械へ。カーフハッチにレールでミルクを運んでいくタイプのものです。
これはもともと、哺乳ロボットに入れる前の1〜2週間を哺乳させるために作られた商品なのだと川上さんは話します。
子牛を哺乳ロボットに慣らしていく期間、手作業でやると発育がバラバラになったり手間がかかったりします。とくに早く生まれた虚弱な子牛などを慣らすときに、このレールタイプが役立つのだそうです。
大規模な農場だと、1000頭2000頭という規模で、哺乳ロボットに移るまでの1〜2週間を手で哺乳するのは大変。その手間をなくすために出てきた仕組みだといいます。
Q
レールタイプの機械は、哺乳ロボットでやる期間も使えないんですか?
A
回答
両方できるとのこと。ただしコンセプト自体が、哺乳ロボットで群れ飼いするために慣らすものなので、個別でやると哺乳ロボットならではのメリットが失われてしまう、という注意点があります。
なぜ子牛を「群れ」で飼うのか
哺乳ロボットで群れ飼いすることには、大事な意味があると川上さんは強調します。
一つは、子牛が飲みたいときに飲めること。個別で飼うと、この哺乳ロボットのメリットがなくなってしまいます。
もう一つが社会性です。群れの中で育つことで、子牛は競い合って餌を食べることや、牛同士のコミュニケーションを自然に覚えていくといいます。
反対に、社会性を学ぶ時期に個別で育てて、いきなり群れに入れると、それだけでストレスになってしまうのだそうです。
川上さんは、目の見えない子猫が捨てられて育つと自分でネズミを取れなくなることがある、という例えも交えて説明します。子牛も同じで、本来の子牛らしい環境で育てないと、ミルクを口に入れてあげないと飲まない牛になってしまう、という話でした。
川上 子牛の時に本来の子牛らしい環境で飼うっていうのは、大事なんですよ。
群れ飼いのデメリット、感染症とどう向き合うか
一方で、群れ飼いには気になる点もあります。学生さんが指摘したのは感染症のリスクでした。
研修生 感染症はやっぱ結構リスクが高いじゃないですか。だったら、その哺乳期間はハッチで飼った方がいいのかなと思っちゃって。
これに対して川上さんの答えは「農場による」というもの。資機材が豊富にそろっていて、子牛のハッチを常に清潔にできるか、牛舎の保菌管理をしっかりできるか、といった条件をトータルで考えて設備を入れるべきだといいます。
注目したいのは、川上牧場の運用方法です。哺乳ロボットの性能は30頭まで見られるものの、最大でも10頭までしか入れないようにしているとのこと。
これは哺乳ロボットの奪い合いや、乳首の噛み継ぎを避けるための工夫です。性能をフルに使おうとして頭数を詰め込むと、機械が個々の子牛の発育に合わせてくれるわけではないので、かえって病気が出やすくなってしまうといいます。
哺乳ロボットでの群れ飼い
+
メリット
子牛が飲みたいときに飲める/群れの中で社会性を身につけられる
−
デメリット
群れ飼いによる感染症のリスクがある/清潔な環境と保菌管理が前提になる
なお、10頭を超えても30頭までは対応できるので、発育が十分だと判断した子牛から離乳させていくそうです。川上牧場ではホルスタインが年間で十数頭しか生まれず、月に1頭ほどの少数だという事情も語られました。
ミルクタクシーやバケツはどう?
最後に、ミルクタクシーやバケツについても意見が交わされました。
ミルクタクシー ── 調乳したミルクを入れて運び、複数の子牛に給与するための移動式の機器。哺乳作業の効率化に使われるについては、作業の効率化・省力化になると思うなら使ってもいい、という考え方でした。
バケツでの哺乳については、哺乳の研究をずっと続けている人によると、哺乳瓶で飲ませてもバケツで飲ませても効果はそんなに変わらないというデータもあるそうです。
ただし学生さんが指摘したように、冬場のバケツは空気に触れる面積が広く、温度が下がりやすいという弱点があります。
研修生 冬場だとバケツって、空気に触れる面積が多いじゃないですか。温度が下がりやすかったり。
川上 温度下がるし、細菌も入りやすくなるしね。
哺乳方法にはそれぞれ一長一短があり、農場の規模や環境に合わせて選ぶことが大切、というのが今回のまとめになりそうです。
まとめ
子牛の哺乳方法には哺乳ロボット、レールタイプ、ミルクタクシー、バケツなどがあり、それぞれにメリットとデメリットがあります。大事なのは「どれが一番いいか」ではなく、農場の規模や環境、管理体制に合わせて選ぶことだと川上さんは話していました。
- 哺乳ロボットはメーカーが実は1社で、型はほぼ共通。優劣は根本構造にはあまりない
- 群れ飼いは子牛が飲みたいときに飲め、社会性を身につけられるのが大きなメリット
- 一方で群れ飼いには感染症リスクがあり、清潔な環境と保菌管理が前提になる
- 哺乳ロボットは性能をフルに使うより、頭数を絞る方が病気を防げる場合がある
- バケツと哺乳瓶で効果はあまり変わらないが、冬場のバケツは温度低下と細菌に注意