酪農の6次産業化ってどう?
2025-03-03 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
6次産業化は魅力的に見えますが、強いブランドがひしめく市場でただ独自化しても難しい、というのが今回の率直な話でした。ポイントは、誰と戦わないかを決めて、自分の牧場を選んでくれる人に届けることです。
この回の要点
- コンビニスイーツや老舗ブランドとは正面から戦わない
- 「あなたのを飲みたい」というファン層に届ける売り方を考える
- 6次産業化は加工・営業・人事まで増え、一人では回りにくい
- 決定権のある商品が1本あると経営は安定しやすい
- 売上が大きくなれば、会社を分けて資産を分散する節税の視点もある
配信の全文(podyの記事より)
研修6日目、今日のテーマは「独自化」
この日は6月25日の火曜日、研修は6日目です。あっという間の1週間だったと二人は話しています。
配信はTikTokライブ、stand.fmのアーカイブ、スプーンキャストの3つに上げ、YouTubeとInstagramでショートバージョンを出す、という多媒体スタイルでやっています。
質問(研修生) これから独自化してブランド化していくとなった時に、どういうところに気をつけたらもっと独自化できて、ブランドが良くなっていくのか教えてほしいんですけど。
この問いに対して、川上さんはまず一つの厳しい問いを返します。
まず問うべきは「コンビニスイーツに勝てるか」
川上さんが独自化を考えるときの出発点は、コンビニスイーツに勝てますかという問いです。
川上 コンビニスイーツすごくない?っていう話です。簡単に買えるし、安いしうまい。あれに牛乳、乳製品を自社で作って勝てますか?って言ったら、絶対やめるってなる。
だからこそ、コンビニスイーツとは戦ってはいけない、というのが川上さんの考えです。敵が強すぎる、というわけですね。
川上 じゃなくて、じゃあどこだったら戦えるのか。牛乳、乳製品でどうかと言うと勝てると思うんですけど、大手が見えない、でもちっちゃい企業だったらできる。ここを考えてみようっていうところでしょうか。
原料表示の裏側と、老舗ブランドという壁
話は身近な商品の見分け方にも及びます。スーパーやコンビニ、ドラッグストアのプライベートブランドの牛乳・乳製品は、多くが海外産の乳製品を使っていると川上さんは指摘します。
見分けるポイントは、パッケージ裏の表示です。「国内製造」と書いてあるものは海外原料を使っていて、「国内原料使用」「北海道産」と書いてあるものは国産、という見方だそうです。
国内製造と国内原料の違い 食品表示では「国内製造」は日本国内で加工されたことを指し、原料の産地までは保証しません。原料の産地を示したい場合は「国産」「北海道産」などと表示されます。この違いを知ると原料の由来を読み取りやすくなります。
研修生 オリジナリティを出しておくのは結構難しいですね。
さらに川上さんは、六花亭のマルセイバターサンドを例に出します。マルセイバターサンド ── 北海道の菓子メーカー・六花亭の看板商品。ビスケットにレーズン入りのバタークリームをはさんだお菓子で、長年愛される定番土産です。
川上 あそこは何年も老舗中の老舗じゃないですか。あんなのに勝てるかっていうね。
自分のところでチーズやアイス、ジェラートを作っても、そうした商品は世の中にたくさんあります。しかも国内の牛乳消費量はどんどん落ちていて、食べてくれる「胃袋の数」は減っていく、という前提もあります。
だから、その市場でただ独自化をしても難しいのではないか、というのが川上さんの根本的な考えです。
「川上牧場のを飲みたい」人に届ける売り方
ただし、川上さんは独自化そのものを否定しているわけではありません。
川上牧場の牛乳を食べたい・飲みたい人という一定の層は確かにいる、と言います。だからこそ、そういう人たちに届く出し方を考えたい、というスタンスです。
実際に、近所の飲食店さんとコラボしたりして展開している、という具体例も挙げていました。
6次産業化のリアル、一人では回らない仕事量
自分で6次産業化までやろうとすると、やることが一気に増えます。
パッケージから加工、製造、営業、価格決め。しかも牛の健康を保ち、酪農経営を安定させながら、です。一人ではとても手が回らなくなります。
・パッケージ・加工・製造まで自分でやる
・営業して価格も自分で決める
・牛の健康と酪農経営を並行して守る
・人を雇えば育成や人事も必要になる
やっぱり6次産業化してる人はすごいなって思いますね。 ── 川上
一方で、川上さんは前向きな見方も添えています。
川上 でも、どっかで自分で決定権がある商品が1本あると、経営は安定するとは思ったりするけどね。
ケーキ屋・ジェラートで街と勝負する覚悟
研修生は、知っている牧場で奥さんがジェラートやケーキ屋さんを始めた例を挙げます。よくあるパターンだそうです。
研修生 今から街中にケーキ屋さんを出すとしても、もうある程度ケーキ屋さんもありますし、そこと本気で勝負するとなったら、ちょっと難しいところですね。
川上さんも、今はクリスマスケーキや誕生日ケーキもコンビニから予約できる時代だと指摘します。ありとあらゆるサービスがすでにやり尽くされている、というわけです。
川上 その人たちに勝てる熱量と営業力をつけていこうと思ったら、生半可な感じではちょっと難しい。でも、それで成功している人もいますしね。
無理とは言わないけれど、それなりの覚悟がいる、というのが二人の共通した見方でした。
節税の視点から見る「2つ目3つ目の会社」
最後に、川上さんは6次産業化のもう一つの動機として、節税の観点にも触れます。
酪農経営で売り上げが大きく上がると、所得税もたくさん払うことになります。その対策として、2つ目3つ目の会社を作り、資産を分散させるという考え方があるそうです。
資産分散による節税 売上や利益が集中すると税負担が重くなるため、別事業や別会社に事業を分けて所得を分散する手法があります。大手企業が別分野に進出する背景にこうした狙いが含まれることもあります。番組内での話は一般的な考え方の紹介です。
もともと全く別の分野の会社がアパレルなどに進出するのも、こうしたやり方の一例だといいます。
まとめ
6次産業化は魅力的に見えますが、強いブランドがひしめく市場でただ独自化しても難しい、というのが今回の率直な話でした。ポイントは、誰と戦わないかを決めて、自分の牧場を選んでくれる人に届けることです。
- コンビニスイーツや老舗ブランドとは正面から戦わない
- 「あなたのを飲みたい」というファン層に届ける売り方を考える
- 6次産業化は加工・営業・人事まで増え、一人では回りにくい
- 決定権のある商品が1本あると経営は安定しやすい
- 売上が大きくなれば、会社を分けて資産を分散する節税の視点もある