デンマークは導入!NZは撤回!“牛のゲップ税”の行方
2025-03-06 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
同じ「牛のゲップ税」でも、ニュージーランドは撤回、デンマークは導入と、各国の動きは真っ二つ。手本だったヨーロッパの戦略が揺らぐなか、川上さんは「技術で減らしつつ、政策に振り回されすぎない」という酪農家なりの落としどころを示した回でした。
この回の要点
- ヨーロッパの緑の食料戦略(F2F)が撤回の方向となり、それを見習ってきた日本の政策の行方に不安が語られた
- ニュージーランドは農家の反発と選挙結果を受けて牛のゲップ税を撤回し、ワクチンや飼料開発への投資に方針転換した
- デンマークは逆に2030年から牛のゲップ税を導入予定で、税収は農家の技術転換支援に充てられる
- オーストラリアは課税ではなく、低メタン飼料や品種改良などの技術開発でカーボンニュートラルを目指している
- 川上牧場では高校生研修生の日誌や「未来の牛乳」NFTなど、消費者と一緒に未来の農業を育てる取り組みも進んでいる
配信の全文(podyの記事より)
堆肥と会議で一日が潰れる、酪農家の朝
この日は3月6日の木曜日。天気は曇りで、最高気温は7度と、前日とほとんど変わらないどんよりした朝からのスタートです。
今日の仕事は堆肥の注文への対応。「最近堆肥の話ばっかりしてるな」と自分でつっこみつつ、牛の餌やりや乳搾りもこなしながら堆肥を運ぶ日々だと話します。
ただ、この堆肥のお客さんはちょっと癖のある方らしく、本音では行きたくないそう。それでも午後には会議もあり、この日は一日仕事で潰れそうだと苦笑いです。
川上 この堆肥のお客さんがですね、ちょっと癖のある方なんで、本当は行きたくないんですけどね。でも、行きます。
天気が良くならないと堆肥をもっと持っていけないので、来週の出張のためにも動かないといけない。そんな段取りに追われる朝の様子が語られます。
今日のテーマは「緑の食料戦略」とその撤回
今日の配信のテーマは、ヨーロッパの農業をめぐる大きな方針転換です。ヨーロッパには「F2F(ファーム・トゥ・フォーク)」という、農場から食卓までをつなぐ持続可能な農業を目指す取り決めがありました。
F2F(ファーム・トゥ・フォーク) 欧州連合が掲げた「農場から食卓まで」を意味する食料・農業戦略。有機農業の拡大や農薬・化学肥料の削減などを通じて、持続可能な食料システムを目指す方針として知られます。
日本もこのヨーロッパの戦略を見習う形で「緑の食料戦略(みどりの食料システム戦略)」を進めてきました。ところが、そのお手本だったヨーロッパ側が方針を撤回する動きが出てきた、というのが今日のニュースです。
「ここの時点で難しいって思わないで、最後まで聞いてほしい」と前置きして、川上さんは各国の動きを紹介していきます。
高校生研修生と「未来の牛乳」プロジェクト
本題の前にお知らせがふたつ。ひとつは、川上牧場に高校生の研修生が来るようになり、XとInstagramで「川上牧場研修生日誌」というアカウントが動き始めたことです。
研修の様子や農業の悩み・不安を高校生自身が投稿していくとのこと。未来の農業を担う人材を、消費者のみんなと一緒に育てていくという思いが語られます。
川上 これからね、未来の農業を担っていく人材を皆さんでこう育てていく、消費者の皆さんと一緒に作っていくみたいなところができたらいいなと思ってます。
もうひとつは、Instagramのハッシュタグ「未来の牛乳」を使った取り組み。こんな牛乳・乳製品があったらいいなというアイデアをAIアートでNFTにして販売しています。
NFT ブロックチェーン技術を使って、デジタルデータに「これは唯一のもの」という証明をつけた資産のこと。ここではAIで作った牛乳のイメージ画像を、その仕組みで販売しています。
このNFTの売上は、子ども食堂への牛乳支援や、小中高の食育活動の活動費に充てられるとのこと。皆さんのご支援が、子どもたちの未来の牛乳を作っていくという位置づけです。
ニュージーランドが「牛のゲップ税」を撤回した理由
ここから本題のニュース。まずヨーロッパのF2Fは2020年ごろに取り決められ、有機農法を自国農業の25%にするといった目標や、食料の安定供給の議論が盛り込まれた政策でした。それが今回撤回の方向になったと紹介します。
日本もこの影響を受けた「緑の食料戦略」ができ、今まさに議論の最中。手本にしていたヨーロッパが撤回するなかで、日本がこれに合わせて大丈夫なのか、と川上さんは不安を口にします。
話は酪農に移り、ニュージーランドの「牛のゲップ税」へ。牛が草を消化・分解するときに出すゲップにはメタンが含まれ、温室効果ガスとしてCO2の40倍ほどの影響があるとされます。
牛のゲップ税 牛のゲップに含まれるメタンなどの温室効果ガスに課税する制度の通称。牛の飼育頭数が多い国では排出量も大きくなるため、削減の手段として議論されてきました。
ニュージーランドは牛の飼養頭数が多く、削減費用に充てるためこの税を導入しようとしていました。ところが2025年からの実施予定だったこの制度は撤回されます。
理由は、農家からの猛反発で選挙に負けてしまったこと。新しく政権を取ったラクソン首相が、制度の撤回を発表したと説明されます。
川上 農家からもうめちゃめちゃ大反発があってですね、選挙で負けちゃったんですよね。新しく政権を取ったラクソン首相は、この制度を撤回すると発表しました。
代わりに、メタンを抑えるワクチンや飼料の開発に投資する方針を打ち出し、これが農家の賛同を得て進んでいるといいます。
課税か、技術開発か。豪州とデンマークの対照的な道
お隣のオーストラリアは、課税ではなく自主的な技術開発支援の道を選んでいます。海藻を使った低メタン飼料や添加物、品種改良でメタンを減らし、2030年までにカーボンニュートラルを目指す方向です。
カーボンニュートラル 温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにすること。ここでは、牛の飼育で出るメタンなどを技術で抑え、実質的に排出ゼロを目指すという意味で使われています。
その一方で、デンマークは逆に「牛のゲップ税」を新たに導入しました。2024年6月に発表され、2030年からCO2換算1トンあたりの課税を行い、年間で約1万6000円ほどの税金がかかる計算だといいます。
この税収は農家の技術転換支援に使われる予定で、ニュージーランドがやろうとしていた形とよく似た仕組みです。撤回する国あり、新しく導入する国あり、と世の中が大きく動いていることが伝わります。
同じゲップ税でも真逆の動き
ニュージーランド
農家の大反発で撤回。代わりにワクチンや飼料開発への投資へ
VS
デンマーク
2030年からゲップ税を導入。税収は農家の技術転換支援に充てる
さらにアメリカでは、トランプ大統領がカナダへの関税を10%から20%に上げるといった動きもあり、牛肉が高騰して食べられないような状況にもなっていると触れられます。
振り回されず、技術で減らす。酪農家の落としどころ
各国がスピード感を持って政策を動かすなか、川上さんは改めて日本の農業政策で大丈夫なのかと不安を口にします。ただ、農家それぞれができることは限られている、とも言います。
そのうえでの落としどころは、メタンやCO2を減らす技術は活用して減らしていく一方で、政策そのものに振り回されすぎないこと。技術で減らすのはいいけど、そこに振り回されたらやばいというバランス感覚が語られます。
技術の革新も活用しながらメタンガスとかCO2とかを減らしていく方がいい。でもそこに振り回されたらやべえなって思う。 ── 川上
この情報はチャットGPTのディープリサーチというサービスで調べたもので、詳しい内容はnoteにまとめて概要欄に貼っておくとのことです。
リスナーとのやりとりと過去回の楽しみ方
後半はコメントへの返信コーナー。「今日はシチューです」という声に、寒くなったのであったかいシチューは美味しそうと応じ、溶けやすい顆粒タイプのシチューの素の話でひと盛り上がりします。
エガリム法や牛のゲップ税は、過去の配信でも取り上げていたテーマ。リスナーから「3ヶ月前」「約1年前の4月頃」と指摘があり、過去回もぜひ聞いてほしいと呼びかけます。
エガリム法 フランスの法律で、給食や高齢者介護施設などの公共調達で、有機農産物などの一定割合の使用を促す仕組みを含みます。日本の政策議論でも参照されてきました。
過去の配信はYouTubeでも公開されていて、先月は8万ビューほどと伸びているとのこと。「見たならチャンネル登録してほしい」と、少し照れながらお願いしていました。
リスナーからの「財源のアテにしてたドイツの製造業がガタ落ちなんで余裕ない」というコメントには、結局はエネルギー政策次第だと反応します。農業も電力・エネルギーに依存しているので、そこが不安定になると難しくなる、という視点が語られます。
まとめ
同じ「牛のゲップ税」でも、ニュージーランドは撤回、デンマークは導入と、各国の動きは真っ二つ。手本だったヨーロッパの戦略が揺らぐなか、川上さんは「技術で減らしつつ、政策に振り回されすぎない」という酪農家なりの落としどころを示した回でした。
- ヨーロッパの緑の食料戦略(F2F)が撤回の方向となり、それを見習ってきた日本の政策の行方に不安が語られた
- ニュージーランドは農家の反発と選挙結果を受けて牛のゲップ税を撤回し、ワクチンや飼料開発への投資に方針転換した
- デンマークは逆に2030年から牛のゲップ税を導入予定で、税収は農家の技術転換支援に充てられる
- オーストラリアは課税ではなく、低メタン飼料や品種改良などの技術開発でカーボンニュートラルを目指している
- 川上牧場では高校生研修生の日誌や「未来の牛乳」NFTなど、消費者と一緒に未来の農業を育てる取り組みも進んでいる