世界の酪農は今どうなってる?米国、豪州、EU、南米、インドの最新事

2025-05-13 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

リスナーの質問をきっかけに、AIで調べた世界5地域の酪農情勢を見てきた回でした。国ごとに事情は違っても、限られた資源で人口を支えるという課題は共通していて、取り合いより支え合いの視点が大事、という川上さんの考えが印象に残ります。

この回の要点

  • アメリカはDMC(マージン保証制度)で乳価急落時の酪農家を支え、回復の兆しが見えている
  • オーストラリアは市場に任せつつ、研究や流通改善など「支えるところは支える」政策
  • EUはコスト高と環境規制で厳しく、日本と似た苦しさ。南米は政策次第で浮き沈みが大きい
  • インドは人口増と政府支援で世界最大級の乳業国へ成長し、世界の25パーセント以上を占める
  • どの国が好調かではなく全世界で人口を支える視点と、「もうかる産業」にする大切さが語られた

配信の全文(podyの記事より)

三百万円の見積もりと、今日のテーマは「世界の酪農」

配信の冒頭、川上さんはこの日の予定を語ります。近所の酒造会社から酒粕をもらいに行くことや、JAへ融資の相談に行くことなど、いつもの牧場の一日が紹介されました。

その融資については、300万円の見積もりが出ているとのこと。決して軽い金額ではありません。

川上 嫌です。嫌なんですけども、やるしかないんでやります。やります。

そのうえで、応援したい人はnoteのメンバーシップに入ってほしいと呼びかけます。そして今回のテーマは、リスナーから届いた「各国の酪農情勢」についての質問だと予告しました。

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レイニーさんの質問「海外の酪農はどうなってる?」

今回のお便りは、スプーンネームのレイニーさんから届いた質問です。

質問(レイニーさん) 日本では酪農が厳しい状況ですが、海外、アメリカ、オーストラリア、EU圏、南米、インドはそれぞれどうなんでしょうか?

先日インドの話をしたところ反響が大きかったそうで、川上さんは各国の情報をAIで調べてみたと話します。

ただし、実際に行ったこともないし詳しくもないので、うのみにしすぎないでほしい、と前置きを添えます。調べた範囲は直近3年ほどの情報とのことです。

記録的な高騰から一転、アメリカと自由化のオーストラリア

最初はアメリカです。ある年は記録的な乳価の高騰で酪農家が大きく利益を上げましたが、その後は乳価が下がり、飼料コストは高止まりして利益は一気にマイナスへ転じたといいます。

そんな時に活躍したのがDMCという制度でした。

DMC(マージン保証制度) 乳価と飼料価格の差(マージン)が一定を下回ると、自動で補填が受けられるアメリカの制度。差が縮まって経営が苦しくなったときに酪農家を支える仕組みとして紹介されています。

この制度が多くの酪農家を救い、今は少しずつ回復の兆しが見えているそうです。

続いてオーストラリア。自由化から長い年月が経ったこの国では、近年の乳価は好調です。ただし干ばつや洪水で生産量はなかなか伸びません。

それでも収益は過去最高水準で、政府は直接補助を出さず、研究や流通改善、公正な契約ルールの整備を支援していると紹介されました。

川上 市場に任せ、だけど支えるところはしっかり支える、そんな印象です。

EUは厳しく、南米は政策次第で浮き沈みが大きい

ヨーロッパEUは厳しい状況が続いています。エネルギーや飼料価格の高騰に加え、環境規制の強化でコストが急上昇。乳価が上がった時期もありましたが利益はほぼ出ず、再び赤字に転じた年もあったといいます。

EUの支援は所得補助にあたる直接支払いが中心ですが、それでも足りない農家が続出。持続可能性の名のもとに、中小酪農家が消えていく危機も見えていると語られました。

南米は国によって差があります。ブラジルはコスト減と政策支援で回復基調で、政府が粉ミルクを買い上げたり、輸入乳製品に高関税をかけたりして農家を守っています。

一方でアルゼンチンはインフレと干ばつで生産量が減少。しかし輸出重視に切り替え、乳製品の輸出税を引き下げるなど大胆な政策を打ち出していると紹介されました。

南米2か国の対照的なアプローチ

ブラジル

コスト減と政策支援で回復基調。粉ミルク買い上げや輸入乳製品への高関税で国内農家を守る

VS

アルゼンチン

インフレと干ばつで生産量が減少。輸出重視に切り替え、輸出税引き下げなど大胆な政策を打つ

世界で最も伸びるインド、国を挙げて牛乳を増やす

最後はインドです。今、世界で最も生乳生産が伸びている国だといいます。

生産量は2億4千トンを突破し、世界の25パーセント以上を占める巨大な乳業国になっているとのことです。

背景には人口増加と、中間層による牛乳消費の増加があります。政府も品種改良や冷却施設の整備、直接奨励金などで全面的に支援していると紹介されました。

川上 まさに国を挙げて牛乳を増やすぞという強い意志を感じます。

世界を見て感じたのは「取り合い」より「支え合い」

5つの地域を見終えた川上さんは、それぞれの印象を整理します。インドは政府支援を全面に打ち出した急成長国。アメリカやオーストラリアは、農家の生産意欲と政府の支援がうまくかみ合っているといいます。

そして日本と似ているのがEUだと感じたそうです。コスト高と厳しい規制で大変な状況になっている、という点が重なると話します。南米は政策次第で浮き沈みが大きい、という見立てです。

さらに川上さんは、ウクライナやロシアといった穀物生産国の戦争、原油価格などが世界全体に影響しているのではと推測します。世界各国がシェアを取り合っている状況は、みんな一緒なのかもしれない、と話します。

そのうえで、どの国が好調か不調かではなく、全世界で考えていかないと人口を支えられなくなってきているという見方を示しました。

限られた資源の中でどうやって人口を支えていくのか、そこをもうちょっと考えていかないと、どこも潰れていってしまうんじゃないか。 ── 川上

だからこそ日本でも、牛乳が余っている今の状況であっても生産量を伸ばす努力をして、足りない地域に輸出できる形になるといい、と川上さんは考えます。自国の生産を守るために関税がかかるかもしれないけれど、そこに暮らす人がいつでも乳製品を飲める環境のほうがいい、とも語ります。

一方で、酪農は国際情勢に振り回される産業でもある、と難しさもにじませました。

「赤字」ってどういう意味?儲かる産業にする大切さ

コメントでは、国ごとの話で出てきた「赤字」の意味について質問が寄せられました。国が不振だから赤字なのか、それなら個別の農家は黒字では、という趣旨です。

川上さんは、直接支援そのものが足りていないケースが多いと答えます。EUでは支援が足りず、暴動やストライキが起きたり、農水省にあたる役所へ堆肥や牛乳をばらまいたりする動きもあると紹介します。

つまり、農家さん自体がもう赤字なのではないか、というのが川上さんの見方です。あんなに怒っているのだから、と語ります。

ただし、儲かっているところは儲かっているとも付け加えます。カナダの酪農家がしっかり利益を出し、後継者がやる気満々で育っているという話をポッドキャストで聞いたそうです。

景気が良くないと担い手不足が解消されない。もうかる産業にしていくというのがやっぱり大事なんだなと思います。 ── 川上

関連して川上さんは、乳価の決め方についてのAIの試みも紹介します。今は年に一度、乳業会社と酪農家の話し合いで乳価が決まりますが、そこにデータを学習させたAIを使う実験をしているそうです。

川上 大体今の実質の手取りより20円ぐらい上げるところがベターじゃないですかね、みたいな結果が出てきましたね。

これくらいの水準なら、消費が多少落ちても持続性はあるのではないか、と川上さんは話します。

まとめ

リスナーの質問をきっかけに、AIで調べた世界5地域の酪農情勢を見てきた回でした。国ごとに事情は違っても、限られた資源で人口を支えるという課題は共通していて、取り合いより支え合いの視点が大事、という川上さんの考えが印象に残ります。

  • アメリカはDMC(マージン保証制度)で乳価急落時の酪農家を支え、回復の兆しが見えている
  • オーストラリアは市場に任せつつ、研究や流通改善など「支えるところは支える」政策
  • EUはコスト高と環境規制で厳しく、日本と似た苦しさ。南米は政策次第で浮き沈みが大きい
  • インドは人口増と政府支援で世界最大級の乳業国へ成長し、世界の25パーセント以上を占める
  • どの国が好調かではなく全世界で人口を支える視点と、「もうかる産業」にする大切さが語られた