昆虫食の未来:世界の成功事例と日本の消費者理解の課題

2025-05-20 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

はじめに:あの「コオロギせんべい」はなぜ消えたのか?

2022年頃、ファミリーマートや無印良品で販売され話題となった「コオロギせんべい」。あの時、社会に小さな驚きとともに訪れた“昆虫食ブーム”は、現在どのような立ち位置にあるのでしょうか。

最近、徳島大学発のスタートアップ「グリラス」が自己破産を申請したというニュースが報じられました。持続可能な未来の食として期待されていた昆虫食ビジネスの躓きには、さまざまな社会的要因が絡んでいました。

食用コオロギ会社、破産へ 徳島、消費者の忌避感強く(共同通信) - Yahoo!ニュース

食用コオロギの生産や商品開発を手がける徳島市のベンチャー企業「グリラス」が徳島地裁に自己破産を申請したことが21日、代理

news.yahoo.co.jp

グリラスの破産に見る、日本における“昆虫食アレルギー”

グリラスは、食用コオロギの養殖と商品開発、さらには学校給食への導入など、多角的な展開を行っていました。ところが、給食に昆虫食品を取り入れるという取り組みに対して、

・「子どもに虫を食べさせるのか?」

・「食の安全は大丈夫か?」

・「アレルギーリスクは?」

といった消費者の強い抵抗感やSNS上での誤情報の拡散により、企業イメージが大きく毀損。そのまま立て直すことができず、2024年11月、自己破産に至ったのです。

グリラスは誤情報に対する法的対応を控えたため、事態は悪化。消費者教育や情報発信の不足が、挑戦的なビジネスの命運を左右するという事例になりました。

世界の成功事例:昆虫はすでに社会インフラの一部

一方で、世界では昆虫食や昆虫飼料を持続可能な産業として確立しつつある事例がいくつも存在します。

タイ:食品廃棄物 × アメリカミズアブ

タイでは、食品廃棄物をアメリカミズアブに与えて育て、ペットフードや魚の飼料を製造する事業が展開されています。廃棄物問題とタンパク質供給の両面を解決する革新的な循環モデルです。

アフリカ:廃棄物 → 昆虫 → 有機肥料

アフリカの一部地域では、生ゴミや農業廃棄物を利用して昆虫を育て、その排泄物を有機肥料として活用することで、

・食料

・飼料

・肥料

の3つの供給を実現しています。持続可能性と自立的な食料安全保障の鍵として注目されています。

EU:タンパク質飼料の確保と投資促進

ヨーロッパでは、昆虫を飼料として活用する研究や投資が進行中です。牛や豚ではなく、まずは魚や家禽向けの飼料として昆虫パウダーが導入され、養殖業の持続可能性を高める試みが広がっています。

日本の可能性と課題:なぜ進まないのか?

日本でも、一部研究者や企業によって昆虫飼料の研究が進められています。例えば、

・アメリカミズアブを使った魚糞・魚油不使用の配合飼料でマダイの養殖に成功

という成果も報告されています。

しかし、消費者の心理的ハードルが高く、特に子ども向け給食への導入は極めてセンシティブな問題です。

また、昆虫は甲殻類アレルギーとの交差反応が指摘されており、給食現場では安全面の配慮も必要不可欠です。

「理解」の欠如がもたらす経済損失

昆虫食は決して“奇抜な話題づくり”ではありません。

・食品廃棄物の再活用

・家畜飼料の持久率向上

・タンパク質供給の多様化

・アレルギーリスクの管理技術

など、持続可能な食と農の未来を支える選択肢の一つなのです。

しかし、今回の事例から学べることは、「技術の正しさが、必ずしも社会に受け入れられるわけではない」という現実です。感情と信頼の設計が、次世代フードビジネスの成功要因になります。

最後に:応援する文化が未来の食をつくる

私自身、酪農家として日々の食料生産の現場に立ち、「将来的に日本が食料危機に直面する可能性」をリアルに感じています。昆虫食はその有力な解決策のひとつ。だからこそ、

・正しい知識

・偏見のない議論

・挑戦する企業への応援

が不可欠だと感じています。

「昆虫を食べるなんて気持ち悪い」から一歩踏み出して、「なぜ世界は取り組んでいるのか?」「自分たちにできることは何か?」を考えるきっかけになれば嬉しいです。

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おわりに

食の未来を形づくるのは、技術だけではなく、私たち一人ひとりの「理解」と「応援」です。

牛乳も、昆虫も、私たちの生活を豊かにする食材のひとつ。

ぜひこの機会に、“未来の食”について、一緒に考えてみませんか?

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