酪農の世界にも、企業と同じ“謎ルール”はあるのか?
2025-09-17 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
https://open.spotify.com/episode/5HYEQXUcdKlF7yvuU6gcd7?si=Y7WLy24YTq-jLBy62yx4bA
はじめに
「企業の謎ルール、農業にもあるんですか?」
そんな質問が届いたのは、ある秋の朝。涼しさが一気に増し、季節の変わり目を感じる今日。朝の搾乳を終えたタイミングで、配信アプリのリスナーさんからのメッセージに目を通しました。名前は“みずみずしい”さん。
「企業には非効率なルールが残っていることがありますが、酪農業界にも“変だな”と思うルールってありますか?」
結論から言います。あります。めちゃくちゃあります。
酪農という現場を支えるための制度や仕組みには、時に“企業以上”とも思える不思議なルールが残っていることがあります。
今回の記事では、現場の目線から「どんな謎ルールがあるのか」「なぜそうなってしまっているのか」「変えていくには何が必要なのか」を、解き明かしていきます。
酪農未経験者の方にも分かりやすく、内部の方には「うん、あるある」と思ってもらえるような構成でお届けします。
1. まだまだ現役!紙とFAX文化
ファックス文化という名の“伝統芸能”
まず一番の驚きポイントはこれです。
令和のこの時代に、FAXで投薬記録を送っています。
ポジティブリスト、投薬記録、個体管理記録、牛群検定…。全部手書きです。そして手書きした紙をFAXで送る。
行政や農協、各種協会が関わる部分はとくにデジタル化が進んでおらず、PDFですらない。ファイル共有サービス?クラウド?
もちろん「存在は知ってる」けど「使ってない」が現実です。
FAX送信ミスも多く、送ったはずが「届いていない」こともしばしば。確認の電話をかけたら「再送してください」と言われ、結局手間が2倍。
なぜ変わらない?その背景
・平均年齢が高い(60〜70代が中心)
・FAXしか通信手段がない家庭もある
・制度・補助金が紙ベースで設計されている
つまり「FAXはやめよう」と言った時点で、“排除”になってしまう現実があるんです。
2. 会議は“リアルで・紙で・長く”が基本
会議の中身より、開催が目的になっている
「この会議、いる?」と思うことが、しょっちゅうあります。
定例会議が月1〜四半期1で開催され、内容は前年と変わらない。
しかも「事前資料は当日配布」。資料はすべて紙、発言者は限られ、若手や新規就農者の意見が入りにくい空気感。
さらに役員だと本会と役員会のダブル開催。同じような内容を2回聞く。
だったら、1回Zoomで共有して、チャットで意見まとめた方が早いよね?
と思うけど、それが通じない空気がまだ残っています。
3. 地域ごとにルールがバラバラ
島根ではOK、鳥取ではNG?
酪農業界は全国組織が多い反面、地域によって運用ルールが異なります。
たとえば:
・牛群検定の申し込み方式(紙 vs アプリ)
・衛生記録の様式
・補助金の対象範囲(隣県では通ったのに自分の県ではダメ)
この「地域差」が新規参入者や若手にとって大きなハードルになります。SNSで「これやってみたい」と見つけたものが、自分の県では制度対象外ということも。
保健所やJAも“属人化”の罠
担当者によって対応が違う。これもよくある話です。
ある市町村では「生乳アイスは加熱処理でOK」と言われたのに、別の地域では「同じやり方ではダメ」とNGが出る。食品衛生法の解釈も地域差がある。
4. 監修がルール化し、誰も理由を知らない
「なんでこれやってるんですか?」
この質問に、誰も答えられないことがある。
「いや、昔からこうなんで」
つまり、慣例がルール化しているんです。
議事録は手書き→印鑑を押すだけの承認。都合の悪い議論は議事録に残らない。文書化されないから、次世代に引き継がれず、「なんでこれしてるのか分からないまま、やり続ける」ループに入ってしまいます。
5. 担当職員や若手が“犠牲”になる構造
農協職員や行政担当者の若手からも、よくこんな声を聞きます。
「FAXもメールも電話も求められて、二重対応が大変です」
「一つの変更を通すのに、3段階の承認と3つの会議が必要です」
「農家の希望と制度が合わない時、板挟みになります」
現場を変えたいという思いを持っている人ほど、消耗しやすい仕組みになってしまっている。
6. “酪農は年中無休”という構造的な壁
酪農は毎日朝晩の作業があり、農閑期がありません。
そのため、制度変更や仕組み改善を議論する「時間」が圧倒的に足りない。他の農産物の農家ならオフシーズンに集中して取り組めることも、酪農では「つねに片手間」で進めるしかない。
結果として「変えたいけど、変えられない」ことが多くなる。
7. 解決策はあるのか?
(1)世代交代とともに進む“静かな革命”
強制的な制度改革は難しくても、世代交代によって自然に変わっていく部分も出てきています。
・LINEで連絡を取り合う
・Googleフォームで集計
・SNSで情報発信
地道な実践が、周囲に波及しつつあります。
(2)制度の“穴”を活かす発想も必要
補助金や制度に縛られすぎると、自由な取り組みがしにくくなります。だからこそ「制度に縛られない部分」で自由に動けるスペースを見つける発想が大事。
たとえば、加工品の直販、クラウドファンディング、NFTによる支援など
“抜け道”ではなく“新しい道”として活用する工夫も問われます。
(3)情報共有と応援コミュニティの強化
制度の課題にぶつかった時、ひとりで抱えないことが何よりも大切です。
・noteなどで状況を発信する
・stand.fmや音声配信で業界の課題を共有する
・XやInstagramで意見交換する
メンバーシップやオンラインコミュニティを通じて、課題と向き合う仲間をつくっていくことが、ルールを変える一歩になります。
おわりに:謎ルールを“笑いに変える力”を
僕は今、非農家出身で、県を越えて酪農の世界に入りました。
だからこそ「なんでこうなってるの?」と思うことが山のようにあります。
でも、それを一つひとつ怒るのではなく、
「笑いに変えて共有していくこと」が、結果として最も現実的な解決法だと感じています。
「FAX、うちでは“伝説の神器”です」
「紙が多すぎて、牛よりも資料にまみれてる」
そんな風に笑いながらでも、一歩ずつ。
制度やルールはすぐには変わらない。でも、伝える言葉や届け方を変えることは、今すぐにでもできる。
みなさんの職場や業界にも、そんな“謎ルール”ありませんか?ぜひコメント欄で教えてください。
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