川上牧場研修 #41【日本における生乳計画生産を読んで】
2025-05-19 配信|川上牧場 酪農データバンク
配信の全文
こんにちは、川上牧場の川上です。
今回のNoteは「生乳計画生産」について、過去の資料をもとに研修生と話した内容をベースに、学びの多い構成にまとめ直しました。
◆ 生乳が余ったらどうする?
牛乳は毎日搾るもの。だから、需要と供給のバランスが少し崩れるだけでも大きな混乱が起きます。
例えば、牛乳が余るとバターや脱脂粉乳に加工して保管されますが、それも限界があります。1990年代の日本でも、脱脂粉乳やバターの在庫が積み上がりすぎて、出口がなくなるという事態が発生していました。
その中で登場したのが「生乳計画生産」、いわば牛乳の“生産調整”です。
◆ なぜ生乳計画生産が始まったのか?
昭和54年(1979年)に始まったこの制度。
きっかけは、飼料価格の高騰やオイルショックなど、外的要因で落農家が一斉に経営難に陥ったことでした。
結果、多くの酪農家が離農し、牛乳の供給も不安定に。
このままではいけないと、政府と生産者団体が協議し、価格の見直しや制度改革が行われました。
その中で、牛乳を“必要な分だけ計画的に生産する”という新しい取り組みが導入されたのです。
◆ 計画生産の仕組みとは?
この制度の特徴は、全国の生産者団体が年間の需要を見積もり、それに基づいて生産量を割り当てること。
たとえば北海道のような生産力が大きく、コストも安い地域と、東京近郊の消費地に近い地域とでは利害が異なります。
そのため、生産量の割り当ては毎年調整され、各農協→生産者へと割り振られる仕組みです。
超過生産にはペナルティがあり、受入拒否や低価格での処理(飼料用など)も行われました。
◆ 生産を抑える工夫と支援
抑制方法としては、
・牛乳を子牛の保育用に使用する「全乳保育」
・余った生乳を乳製品化して市場から隔離する「特別輸入処理」
などがありました。
こうした制度は、単に量を減らすだけでなく、農家が牛を減らす決断をしやすくするための支援(例えば乳牛のと蓄奨励金)も含まれていました。
◆ なぜ消費者にも関係あるのか?
計画生産は“生産者のための制度”だけではありません。
たとえば、バター不足でスーパーから商品が消えることがあると、輸入バターに頼らざるを得なくなります。
一度輸入に頼ると、次からは「また買ってよ」という圧力がかかり、日本の酪農基盤が脅かされる可能性があります。
つまり、牛乳を“安定的にスーパーに並べる”ための制度でもあるのです。
◆ じゃあ、今の若い担い手はどうする?
今回話していた研修生はJK(女子高生)。
彼女のような新規就農者の声をどう制度に反映していくかも大切なテーマです。
現状では制度の中で「潜在的な担い手」が十分に織り込まれているとは言えません。
若手の声が制度に反映されるには、地域の農協や団体に声を届けること、そして制度をよく理解することが重要です。
◆ 生産者間の対立ではなく、協力を
地域によって状況が異なるからこそ、割当の不満や対立が生まれがちです。
しかし、ある農家が減らした分を他が増やせばいいという発想ではなく、
「どうすれば全体としてバランスが取れるか」を地域で話し合うことが求められています。
SNSの活用なども含めて、情報交換の場が必要とされています。
◆ 最後に
昭和の頃から何度も繰り返されてきたこの“過剰と調整”のサイクル。
でもそれは、酪農家、団体、政府、そして消費者が一緒に作ってきた流れでもあります。
「もっと自由に搾りたい」という気持ちと、
「みんなが困らないために調整しよう」という気持ち。
このバランスが酪農には必要です。
このNoteが、酪農に関心のある方の学びや気づきに繋がれば嬉しいです。
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