『生乳使用』って本当?スーパーでよく見る表示の正しい意味

2026-07-07 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

スーパーやコンビニで、ヨーグルトやプリン、アイスを見ていると、よく目にする言葉があります。

「生乳使用」

「生乳100%使用」

「北海道産生乳使用」

なんとなく見ると、すごく新鮮そうで、おいしそうに感じますよね。

でも、あるリスナーさんから、こんな質問をいただきました。

「デザートなどに『生乳使用』と書いてありますが、これは牛乳使用と思っていいのでしょうか。生乳というのは、しぼりたてで、冷却していなくて、ホモジナイズもしていないものだと認識しています。さすがに大手メーカーでも、牧場からそのまま製造ラインに流しているわけではないと思うので、これはPR的な拡大解釈なのでしょうか?」

これは、かなり良い質問です。

普段なら「生乳使用って書いてある。おいしそう」で終わるところを、もう一歩踏み込んで、「その言葉、本当はどういう意味なの?」と考えている。

食品表示を見る目として、とても大事な視点だと思います。

結論から言うと、「生乳使用」という表示は、それ自体がグレーゾーンというわけではありません。

ただし、多くの人がイメージするような「牧場でしぼった牛乳を、そのまま商品にしている」という意味ではありません。

ここが、いちばん誤解されやすいところです。

まず「生乳」と「牛乳」は同じではありません

まず整理したいのは、「生乳」と「牛乳」は、似ているようで意味が違うということです。

生乳とは、牛からしぼったままのお乳のことです。まだ殺菌されておらず、ホモジナイズ、つまり脂肪球を細かく均一にする処理もされていません。

一方で、スーパーで売られている「牛乳」は、生乳を原料にして、殺菌などの処理を行い、飲める商品として整えられたものです。

ここで大事なのは、「生乳=冷えていないお乳」ではないということです。

酪農家は、牛からお乳をしぼったあと、そのまま常温で置いておくわけではありません。品質を守るために、できるだけ早くバルククーラーというタンクで冷やします。

つまり、冷やしたからといって「生乳」ではなくなるわけではありません。

現場の感覚で言えば、生乳は「まだ牛乳という商品になる前の、原料としてのお乳」です。

うちの牧場でも、しぼったお乳はすぐに冷やします。これは「鮮度を落とさないため」であって、「生乳ではなくすため」ではありません。

「牛乳」は、生乳100%で作られる商品

では、スーパーで売っている「牛乳」は何なのでしょうか。

一般的に「牛乳類」と呼ばれるものには、牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳、加工乳、乳飲料などがあります。これらは、使用原材料や成分規格によって「種類別」に分けて表示されます。種類別「牛乳」は、生乳100%、成分無調整で、水や他の原材料を混ぜてはいけないものです。

ここはかなり大事です。

「牛乳」と書いてあるものは、ただ白い飲み物という意味ではありません。

法律や表示のルール上、かなりきちんと定義されています。

だから、同じ白い飲み物でも、

・牛乳

・成分調整牛乳

・低脂肪牛乳

・加工乳

・乳飲料

では、意味が違います。

パッケージの表側だけを見ると似ていても、裏側の「種類別名称」を見ると、正体がわかります。

では「生乳使用」はどういう意味なのか

ここからが本題です。

ヨーグルトやプリン、アイスなどに書いてある「生乳使用」は、どう読めばいいのでしょうか。

これは基本的に、「原材料として生乳を使っています」という意味です。

「しぼりたての状態のまま、何も処理せずに商品になっています」という意味ではありません。

たとえば、「北海道産小麦使用」と書かれたパンを考えてみてください。

そのパンは、小麦を使って作られています。でも、パンそのものは小麦ではありません。小麦を粉にして、こねて、発酵させて、焼いて、パンになります。

「国産米使用」と書かれたせんべいも同じです。

せんべいは米を使っていますが、米そのものではありません。加工されて、別の商品になっています。

「生乳使用」もこれと同じです。

原料として生乳を使っている。

でも、完成した商品は生乳そのものではない。

ここを分けて考えると、かなりスッキリします。

ヨーグルトの「生乳使用」はどう見る?

ヨーグルトの場合は、もう少し具体的に見ることができます。

ヨーグルトなどの発酵乳・乳酸菌飲料は、乳等命令に基づき、さらに発酵乳・乳酸菌飲料の表示に関する公正競争規約で必要表示が定められています。その中で、生乳を使用した場合は、生乳の使用割合を表示することになっています。

つまり、ヨーグルトで「生乳使用」と書いてある場合は、ただ雰囲気で言っているのではなく、表示ルールの中で扱われている言葉です。

ただし、ここでも大切なのは、ヨーグルトはヨーグルトだということです。

生乳を使っていても、乳酸菌で発酵させれば、それはもう生乳ではありません。加工された発酵乳です。

だから、ヨーグルトの「生乳使用」を見るときは、

「これは生乳そのものなんだ」

ではなく、

「原材料として生乳を使っているんだな」

「どのくらい使っているのかな」

「他に脱脂粉乳やクリームなどは入っているのかな」

という見方をすると、商品の違いが見えてきます。

アイスの「生乳使用」も、種類別を見ると面白い

アイスも同じです。

アイスには、「アイスクリーム」「アイスミルク」「ラクトアイス」「氷菓」といった種類別があります。アイスクリーム類の公正競争規約では、アイスクリームは乳固形分15.0%以上・乳脂肪分8.0%以上、アイスミルクは乳固形分10.0%以上・乳脂肪分3.0%以上、ラクトアイスは乳固形分3.0%以上と定義されています。

ここを見ると、「生乳使用」と書いてあるから必ず乳脂肪が高い、というわけではないことがわかります。

アイスは、生乳だけで作るとは限りません。

クリーム、バター、脱脂粉乳、砂糖、植物油脂、卵、チョコレート、果汁など、いろいろな原材料の組み合わせで作られます。アイスクリーム類の表示では、原材料名は原材料に占める重量割合の高いものから順に表示することになっています。

だからアイスを見るときは、「生乳使用」という表の言葉だけで判断するより、裏側の表示を見ると面白いです。

・種類別はアイスクリームか

・アイスミルクか

・ラクトアイスか

・乳脂肪分はどのくらいか

・原材料の最初に何が書いてあるか

・生乳のほかに、クリームや脱脂粉乳が入っているか

このあたりを見ると、同じ「ミルクっぽいアイス」でも、作り方や中身が違うことがわかります。

「生乳100%」と「生乳使用」は、印象が違う

もうひとつ大切なのが、「生乳100%」と「生乳使用」は同じではないということです。

飲用乳の表示では、牛乳、特別牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳は「生乳100%」と表示されます。一方、加工乳や乳飲料では、生乳を使った場合に「生乳(50%以上)」または「生乳(50%未満)」のように表示するルールがあります。

ここで注意したいのは、この50%以上・50%未満の表示は、主に飲用乳の種類別表示の話です。

一方で、ヨーグルト、アイス、プリンなどは、それぞれの商品カテゴリごとに表示ルールや考え方が違います。

だから、全部を一律に「生乳使用と書いてあるなら何%以上」と見るのではなく、商品ごとに裏面表示を確認するのが大事です。

表の言葉は、入口です。

本当に見るべきなのは、裏側の一括表示です。

「これは消費者をだましているのか?」という問い

ここで気になるのは、「生乳使用」という言葉は、消費者をだましているのではないか、という点だと思います。

僕の考えでは、実際に原材料として生乳を使っていて、表示ルールに沿っているのであれば、「生乳使用」という表示そのものが悪いわけではありません。

ただし、消費者が「しぼりたてをそのまま使っている」と誤解しやすい言葉であることも事実です。

ここは、作る側・売る側にも丁寧さが必要だと思います。

「生乳使用」と書くなら、その商品で生乳がどう使われているのか。

どのくらい使われているのか。

他の乳原料とどう組み合わされているのか。

そういう情報が、もう少しわかりやすく伝わるといいなと思います。

消費者庁も、公正競争規約について、商品選択に必要な情報が正しく提供されること、一般消費者がより良い商品・サービスを安心して選べる環境づくりに役立つものだと説明しています。

食品表示は、企業を縛るためだけのものではありません。

消費者が、自分で選ぶための地図でもあります。

酪農家として思うこと

酪農家としては、「生乳使用」という言葉に、少しうれしさもあります。

なぜなら、そこにはちゃんと、牧場でしぼられたお乳が使われているからです。

牛が食べて、反すうして、体の中で栄養を牛乳に変えて、人間が搾乳して、冷やして、運んで、工場で加工されて、ようやく商品になります。

「生乳使用」という短い言葉の後ろには、その流れがあります。

ただ、同時にこうも思います。

「生乳使用」という言葉だけが一人歩きして、なんとなく新鮮そう、なんとなく高級そう、なんとなく体に良さそう、で終わってしまうのは少しもったいない。

せっかくなら、その表示を入口にして、

「生乳って何だろう?」

「牛乳とどう違うんだろう?」

「この商品はどんな乳原料で作られているんだろう?」

と、少しだけ見方を深めてもらえたらうれしいです。

スーパーで見るべきポイント

最後に、買い物のときに見てほしいポイントを整理します。

まず、飲み物なら「種類別名称」を見てください。

牛乳なのか、加工乳なのか、乳飲料なのか。ここを見るだけで、商品の性格がかなりわかります。

次に、原材料名を見てください。

原材料は、基本的に使われている重量の多い順に並んでいます。最初に何が書いてあるかを見ると、その商品の中心が見えてきます。

そして、「生乳使用」と書いてある場合は、割合表示や原材料の並びを見てください。

ヨーグルトなら生乳の使用割合。アイスなら種類別、乳脂肪分、原材料。プリンなら名称や原材料名。

表のキャッチコピーだけでなく、裏の表示を見る。

これだけで、スーパーの乳製品売り場はかなり面白くなります。

まとめ

「生乳使用」は、しぼりたてをそのまま商品にしているという意味ではありません。

原材料として、生乳を使っているという意味です。

生乳は、牛からしぼったままのお乳。

牛乳は、生乳を殺菌して飲める商品にしたもの。

ヨーグルトやアイスやプリンは、生乳などの乳原料を使って作られた加工食品。

この違いを知っているだけで、いつもの買い物の見え方が変わります。

「生乳使用」と書いてある商品を見つけたら、ぜひ裏面表示を見てみてください。

そこには、牛乳売り場や乳製品売り場を少し深く楽しむためのヒントが詰まっています。

僕たち酪農家が毎日しぼっている生乳は、そのまま飲まれるだけではありません。

ヨーグルトになり、アイスになり、プリンになり、チーズになり、いろいろな形で皆さんの食卓に届いています。

だからこそ、表示の言葉を少し知ってもらえると、牛乳や乳製品の見方が変わると思います。

今日スーパーに行ったら、ぜひ一度、パッケージの裏側を見てみてください。

「生乳使用」という短い言葉の向こうに、牧場から食卓までの長い道のりが見えてくるかもしれません。

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