なぜSNSで議論しないのか。コメントは音声で返す理由

2026-07-31 配信|川上牧場 酪農データバンク

配信の全文

今日は、 牛の話ではありません。

こんな質問をいただきました。

「SNSを見ていると、 動物愛護の方や、ビーガンの方、

プラカードを持って抗議している方の投稿が 流れてくることがあります」

「そういう意見の違いに、 川上さんはどう向き合っていますか?」

アルゴリズムに乗って、 僕のところにもときどき流れてきます。

なので今日は、 そのあたりの話をしてみます。

7月最後の日の牧場から

今日は7月31日。 7月最後の金曜日です。

最初、配信で「8月31日」と言ってしまって、 コメントで指摘してもらいました。

ちょっと疲れているみたいです。

最高気温は35度。 一日晴れの予報です。

本当に雨が降りません。

今日は毎週恒例の整体に行きます。 バキバキの体を整えて、夏を乗り切ります。

その前に、 餌の調整と、来週の出張の準備。

仕事を残さないように、 片付けていきます。

熊本の地震で、牛乳は一滴も捨てられなかった

本題の前に、 どうしても話したいニュースがあります。

熊本で大きな地震がありました。

それでも、 牛乳は廃棄されなかった。

そういう記事が出ていました。

これ、本当にすごいことなんです。

東日本大震災。 能登の地震。

いろいろな災害を経験するなかで、 業界が積み上げてきたものがあるんだと思います。

少しだけ、仕組みの話をさせてください。

西日本で牛乳が余ったとき、 どうしているか。

九州まで運んで、 そこで脱脂粉乳やバターに加工してもらっています。

もし今回、 熊本の乳業さんが動けなくなっていたら。

今年の12月や1月に、 牛乳の廃棄が起きていたかもしれません。

それくらい、 綱渡りなんです。

加工の拠点が一か所に集中していて、 自然災害にも、国際情勢にも振り回される。

本当に、脆い業界になっています。

それと、 生乳の検査所の話もあります。

牛乳を出荷するたびに、 必ず検査をする場所があります。

そこの職員さんも、 ご家族が被災されていたと思います。

そんな中で、 検査施設を元通りにして、すぐに動けるようにした。

すごい話だと思いました。

一滴も捨てずに、全部商品になっている。

その裏に、 どれだけの人の努力があるのか。

それを知りながら、 今日もコップ一杯飲んでもらえたら嬉しいです。

僕は、そもそも議論が好きではありません

では、質問への答えです。

正直に言います。

僕はもともと、 人と話したいとか、人と議論したいとか、

そういうタイプではありません。

人が嫌いなわけではないんです。

面白い人や、変わった人は、 むしろ好きです。

でも、 毎日誰かと言い合うより、

牛と向き合っているほうが、 性に合っている。

酪農という仕事が自分に合っていると思うのは、 たぶんそういう理由です。

世の中には、いろんな考え方がある

まず、前提として思っていることがあります。

世の中には、 いろんな考え方があります。

牛乳が好きな人もいれば、 苦手な人もいる。

酪農に興味がある人もいれば、 まったく興味がない人もいる。

それは、当たり前のことです。

だから僕の発信の目的は、 全員に賛成してもらうことではありません。

「こういう考え方もあるんだ」

と、知ってもらうこと。

それだけです。

話し合いが成立する、たったひとつの条件

僕が誰かと話し合うのは、

相手が意見を押し付けてきたときや、 一方的に攻撃してきたときに、

反論として、です。

実は、これは酪農業界の中でも同じです。

業界の中には、 「今まではこうしていた」という考え方が強くあって、

変わることへの抵抗が大きい。

だから、会議でも 意見がぶつかることがあります。

そういう経験から、 ひとつ確信していることがあります。

話し合いが成立するかどうかは、

相手が話を聞く姿勢を持っているかどうか。

これに尽きます。

自分の意見だけを言う。 相手の話を聞かない。 最初から結論が決まっている。

これは、 話し合いとは言えないと思います。

話し合いは、 お互いが理解しようとする姿勢があって、 はじめて成立するものです。

その姿勢がなければ、 ただ意見をぶつけ合っているだけ。

そう判断したら、 僕はそれ以上は話しません。

業界の中でも、同じことが起きています

実は、 SNSの外でも同じことを感じています。

酪農業界の会議です。

新しいやり方を提案すると、 よく返ってくる言葉があります。

「今まではこうしてきた」

この言葉が出ると、 話がそこで止まってしまうことがあります。

もちろん、 今までのやり方には理由があります。

長く続いてきたものには、 それなりの知恵が詰まっています。

でも、 理由を確かめずに守っているだけなら、

それは話し合いではなく、 結論を先に決めている状態です。

牛も変わっています。 餌も変わっています。 気候も変わっています。

だから業界の中でも、 話を聞く姿勢があるかどうかで、

変われるかどうかが決まると思っています。

SNSで議論をしないのは、 逃げているからではありません。

話が成立する場所を、 選んでいるだけなんです。

SNSが、議論に向かない理由

では、なぜSNSでは議論しないのか。

SNSには、 根本的な限界があると思っています。

文字だけでは、伝わらない

SNSの文章は、 いろいろな状態で読まれます。

寝る前の眠いとき。 仕事の合間の忙しいとき。 流し読みしているとき。

同じ一文でも、 読む人の状態で、意味がまったく変わります。

声のトーンも、表情も、人となりも見えない

冗談なのか、本気なのか。 怒っているのか、心配しているのか。

文字だけでは、分かりません。

前後の文脈が、切り取られる

長い説明の一部分だけが、 引用されて広がっていく。

だから、 SNSは誤解がものすごく起きやすい場所なんです。

音声なら、伝えられるものがある

それに比べて、 音声配信には伝えられるものがあります。

言葉の選び方だけではなく、 話の間。 抑揚。

「ここは大事だから、少しゆっくり話そう」

ということができる。

それに、 一つのコメントに対して、

その背景や理由まで 時間をかけて説明できます。

だから僕にとって音声配信は、 SNSよりずっと誤解が少ないコミュニケーションです。

毎週日曜日にコメント返しをしているのも、 そういう理由です。

日曜日にまとめて答えている理由

毎週日曜日に、 一週間分のコメントにまとめて答えています。

これにも、理由があります。

コメントが来たその場で返すと、 どうしても反射的になります。

言葉を選ぶ前に、 指が動いてしまう。

でも、一週間置いておくと、

「この人は、本当は何を聞きたかったんだろう」

と考える時間ができます。

少し調べ直すこともできます。

自分の考えが 変わっていることもあります。

それから話すと、 同じ答えでも、

ずっと落ち着いた言葉になるんです。

日曜日のコメント返しは、 僕にとって、

一週間分の対話を ゆっくり受け止め直す時間でもあります。

押し付けるつもりは、まったくありません

発信で一番大切にしていることは、 正しく伝わることです。

聞いた人が、

「そういう考え方もあるのか」

と、一度立ち止まって考えてくれる。

それで十分だと思っています。

勝ち負けの意識は、ありません。

「勉強になりました」 「考え方が変わりました」

そういうコメントをいただくこともあります。

ありがたいです。

でも正直に言うと、 「変わってくれてありがとう」という気持ちは あまりないんです。

なぜかというと、 押し付けるつもりがまったくないから。

僕はこう思っています、 と言っているだけなんです。

むしろ、僕のほうが学んでいます

逆に、面白いことがあります。

酪農業界は、 考え方がかなり凝り固まっています。

だから、消費者の方から言葉をもらうと、

「そういう考え方があるのか」 「そういう見方もあるのか」

と、発見があるんです。

それが本当に楽しくて、 めちゃくちゃテンションが上がります。

だから、コメントは どしどし送ってほしいと思っています。

僕の話を、全部正しいと思わないでください

もうひとつ、大事なことを書いておきます。

僕の話が、 全部正しいと受け取ってほしくはありません。

新しい研究は、毎日出ています。

牛も、改良されています。

酪農業界も、アップデートされ続けています。

現場は、日々変わっています。

だから僕は、 自分が絶対に正しいとは思っていません。

相手の話を聞いて、 「それは確かにそうだな」と思ったら、

考え方をどんどん修正していきます。

話し合いは、 相手を変えるための場ではないと思っています。

自分も変わるかもしれない場です。

生産者が黙っていると、何が起きるか

少しだけ、 発信する側の話もさせてください。

さっき、熊本の地震の話をしました。

牛乳を一滴も捨てなかった。

その裏には、 乳業さんや検査所の人たちの努力がありました。

でも、 こういう話はほとんど表に出てきません。

現場の人は、 わざわざ言わないからです。

言わないまま働いている。

その結果、 何が起きるか。

外から見た断片だけが、 SNSで広がっていきます。

「かわいそう」 「不要だ」 「環境に悪い」

その一部は、 事実とずれていることもあります。

でも、 中の人が何も言わなければ、

そのずれは誰にも直されません。

だから僕は、 議論はしないけれど、発信はします。

言い合うためではなく、 中で何が起きているかを、

そのまま伝えるために。

こんなコメントが、うれしいです

最後に、 どんなコメントがうれしいか、 書いておきます。

「これってどういうこと?」 という質問。

「ここがちょっと引っかかった」 という違和感。

「うちではこうしている」 という別のやり方。

どれも、大歓迎です。

特に、 違和感を書いてもらえるのはありがたいです。

僕の説明が足りなかったのか、 考え方がずれているのか。

そこに気づくきっかけになるので。

逆に、 一言だけの否定は、

どう受け止めていいか分からないので、 そっとしておくことが多いです。

理由を一行でも添えてもらえると、 ちゃんと考えて、日曜日にお答えします。

強い言葉の投稿を見たときに

消費者の方に、 ひとつだけお願いがあります。

「牛乳は体に悪い」 「酪農は動物虐待だ」 「牛は環境を壊している」

そういう強い言葉の投稿を見たとき。

すぐに信じるのでも、 すぐに怒るのでもなく、

少しだけ確かめてみてほしいんです。

誰が言っているのか。 どこに根拠があるのか。 現場の人は、何と言っているのか。

出典までたどれない話は、 いったん保留でいいと思います。

そして、もし気になったら、 僕に聞いてください。

分かる範囲で、現場から答えます。

分からないことは、 分からないと言います。

それでも、反論するときはします

ただし、線引きはあります。

牛乳に反対する考え方も、 酪農に否定的な考え方も、

考え方そのものは、あっていいと思います。

でも、 酪農業界を全否定したり、

頑張っている人たちを否定するようなことを しようとしているなら、

それは違うよ、と反論します。

たとえば、 メタンガスの話。

「だから酪農は不要だ」

という議論には、

「いやいや、それはちょっと違いますよ」

と、対話を続けていきます。

黙っていることが、 いつも正しいとは限らないので。

今回のポイント

・熊本の地震でも牛乳は一滴も廃棄されなかった。ただし西日本の余った牛乳は九州で加工しており、業界は綱渡りの一極集中

・僕の発信の目的は全員に賛成してもらうことではなく、「こういう考え方もある」と知ってもらうこと

・話し合いが成立する条件は、相手が話を聞く姿勢を持っているかどうか

・SNSは、読む人の状態で意味が変わり、声も表情も伝わらず、文脈が切り取られる。誤解がものすごく起きやすい場所

・音声なら、間や抑揚が伝わり、背景や理由まで説明できる

・押し付けるつもりはない。「僕はこう思っています」と言っているだけ

・自分が絶対に正しいとは思っていない。聞いて納得したら考え方を修正する

・ただし、酪農業界や頑張っている人を全否定する議論には、反論する

最後に、あなたに質問です。

あなたが最近、 誰かの話を聞いて 考え方が変わったことはありますか。

それは、文字で読んだときでしたか。 それとも、声で聞いたときでしたか。

コメントで教えてください。

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原価はいくら? なぜバターだけ高い? 雄の子牛はどうなる? 出雲の酪農家が毎朝の配信で答えてきた832回を、読める形にまと

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