日曜日恒例コメント返し!「牛に無理をさせてまで共進会をする意味は?」に答えます

2026-09-27 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

今回のコメント返しは、牛の体のしくみへの素朴な疑問から、乳価や共進会への批判まで幅広い内容でした。川上さんは賛同にも反論にも、現場の事実と自分の考えを分けて、ていねいに答えています。

この回の要点

  • 牛のしっぽは虫よけに欠かせず、使えない牛は体に餌をかけて代わりにしようとすることもある
  • 牛の角の中には前頭洞という空洞が入り込んでいて、肉ではないと川上さんは説明している
  • 乳価は酪農家の団体と乳業メーカーの交渉で決まり、変えたいなら酪農家が声を上げる必要がある
  • 10月からの飼料3円の値上げで、川上牧場では月16万円ほどの負担増が見込まれている
  • 共進会は品種改良を進めるための学び合いの場として始まり、数日の準備で勝てるものではないと語られた

配信の全文(podyの記事より)

雨続きの9月末、酪農家に迫る10月の値上げ

川上さんがこの回を収録したのは9月27日の日曜日です。最高気温27度で雨模様のなか、この日は育成舎の掃除や、移植を予定している牛への投薬、気温の変化で体調を崩した子牛の治療を予定していると話しています。

川上さんは関東の雨続きによる農作物への影響を気にかけつつ、酪農家にとっても厳しい時期だと話します。10月からは脱脂粉乳の在庫の積み上がりや配合飼料の値上がりが重なるため、国産の農産物や牛乳を、コップ1杯でいいので毎日飲み続けてほしいと呼びかけています。

乾杯の前には、配信を文字起こしして再構成したnoteの記事やメンバーシップ、Instagramの「#未来の牛乳」デジタルアート、週1回まとめ記事が届く公式LINEのお知らせもありました。デジタルアートの売り上げは、子ども食堂への牛乳の支援や、小中高の食育活動の費用にあてるそうです。

牛のしっぽとスリック牛、体のしくみに込められた役割

最初に紹介されたのは、YouTubeのメイプルさんから「牛のしっぽって何のためにある?」の回に届いたコメントです。

質問(メイプル) 虫を追い払う役割は大きいですよね。うちにしっぽの神経が損傷してうまく振り回せない牛がいて、いつの間にか体に餌をぶっかけるようになりました。おそらくしっぽを振って虫を追い払えないから、代わりに餌をぶっかけていると思うので。

川上さんもこの「体に餌をかける牛」には心当たりがあるようで、餌代の高さを思うと苦笑いしてしまうと話します。

川上 餌が高いんで、この餌の量を引いたら、こいつ全然稼いでねえんじゃねえかって思ったりする。

川上 それぐらいだから尻尾はね、役に立ってるということですよ。

そのうえで川上さんは、しっぽは牛に必要なものなので、断尾 ── 家畜のしっぽを短く切る処置。衛生管理などを理由に行われてきましたが、アニマルウェルフェアの観点から見直しが進んでいますはしないでほしいと話しています。

メイプルさんからは、スリック牛の回にも「YouTube登録者500人達成おめでとうございます」という祝福とともに、スリック牛は遺伝的に体温調整の仕組みそのものが違うという感想が届きました。

川上さんは、この回でスリック牛を「暑さに無敵な牛ではなく、暑熱に対して有利なカードを1枚持った牛」と表現したのはAIの言葉だと明かしています。最近参加した勉強会では、スリックの遺伝子を持つ牛を普通のホルスタインに掛け合わせた場合でも、暑さへの抵抗力が上がり、直腸の温度が下がるといった話があったそうです。

一方で川上さん自身は、近交係数 ── 血縁の近い個体どうしを交配した度合いを示す数値。高くなると、病気や繁殖成績の低下といった問題が出やすくなるとされますが気になるため、今のところスリック牛の種は使いにくいと感じているといいます。ただ、種牛を作る会社も需要を見込んで増やしていく方針なので、今後どんどん出てくるだろうと見ています。

Xのパリパリゴリラさんからは、飼料が3円上がると月20万円になるというnoteの記事に「どの品目が一番効く?」という質問が届きました。川上さんの牧場では配合飼料の給与量が記事の時点から変わっていて、10月からの値上げでは月16万円ほどの負担増になりそうだと話しています。

飼料が1kgあたり3円上がると

3円

配合飼料の値上がり幅(10月から)

月20万円

noteの記事で示した負担増

月16万円

給与量が変わった現在の川上牧場の見込み

現場の声と「美化しないで」への応答

Threadsでは、和牛の繁殖農家であるタカハシチクサンさんから、分娩予定日を過ぎた牛についての配信に現場の声が届きました。

質問(タカハシチクサン) 和牛繁殖農家です。自分も予定日から1週間から10日くらい見て、分娩兆候がなければ獣医師に相談して分娩誘起をしています。

川上さんは「獣医師に相談して」という一言が入っていたことを、配信をちゃんと聞いてくれている証拠だと喜んでいます。自分のやり方はあくまで一例で、自分も担当の獣医さんと相談して決めているので、勝手な判断で真似しないでほしいと念を押しています。

牛トピアさんからは、安い餌ばかり選ぶと損をするという投稿に「価格だけでなく健康や供給の安定まで考えて選ぶ姿勢が勉強になる」という感想が届きました。

川上さんの牧場がある地域は自給飼料を作れず、購入飼料だけに頼る、酪農がやりにくい土地です。コロナ禍を経て、都市近郊酪農 ── 都市の近くで営む酪農。消費地に近い利点がある一方、広い農地を確保しにくく、飼料を購入に頼りがちですの立地を生かして仕入れ先を分散するようになったといいます。大きな変化があっても、バランスよく分けておけば経営を維持しやすいという考えです。

Instagramでは、牛と豚の電殺についての投稿に、ハイビスカスさんから「美化しないでください」というコメントが届いていました。川上さんは、美化ではなく現場の事実を伝えているつもりなので、どこが美化に見えたのかを教えてほしかったと話します。

川上 その戦いたいわけじゃないんですよね。本当に。その理解していただいて、その考えを教えてほしいっていう気持ちだけしかないです。

牛の角の中身は空洞なのか、肉なのか

Instagramの「牛の角の中身は?」という投稿には、2つのコメントが届きました。1つ目はアラプショーさんからで、実家が酪農家で、子どものころに除角 ── 牛の角を取り除く処置。牛どうしのけがや人への危険を防ぐために行われますを何度も見てきたという内容です。

川上さんは、黒毛和牛は家畜市場では角があるほうが管理しやすいため除角されず、買ってきた後の肥育の段階で除角したり短くしたりする牧場もあったのではと話します。そして、子どものころに見た角の中身が空洞だったかをぜひ教えてほしいと呼びかけています。

2つ目は、ヨッシーケイさんからの反論です。

質問(ヨッシーケイ) 空洞ではないよね。先っちょの方は空洞と言えるかもしれないが、肉だよね。角はタンパク質でできていて、皮膚が盛り上がってきて、外側が硬くなったもの。誤解されないように正しい知識を広めよう。タンパク質でできているので、除角したものを犬にあげるとガリガリ食いつきます。

これに対して川上さんは、牛の角はやはり空洞だと答えています。角の中には前頭洞 ── 頭の骨の中にある空洞。牛では角の芯の部分までこの空洞がつながっていますという空洞が入り込んでいて、肉ではないという説明です。

牛の角の中身をめぐる2つの見方

ヨッシーケイさんのコメント

先端は空洞かもしれないが肉。皮膚が盛り上がって外側が硬くなったもの

VS

川上さんの答え

前頭洞という空洞が角の中に入っている。肉ではない

川上さんによると、角には皮膚が盛り上がってできるものや、毛のようなものが硬くなってできるものなど、生き物によっていろいろな種類があるそうです。詳しい内容はPodyやnoteで全文読めるように、コメント欄にリンクを付けたといいます。

同じ週には、白黒模様の投稿に牛トピアさんから「次に牛を見るとき注目してみます」という感想も届きました。川上さんは、牛を見る目や牛乳の味わい方が少し変わる体験をしてもらうために投稿しているので、こうした反応がうれしいと話しています。

乳価は誰が決めている?酪農家の手にある価格

安い餌の投稿には、中野昇一さんから「乳価も決められません」という短いコメントが届きました。川上さんはこの一言に、はっきりと反論します。

川上 乳価、酪農家が決めてんですよね。

川上さんの説明では、乳価は酪農家の団体である指定団体 ── 生乳の販売を酪農家に代わってまとめて行う団体。乳業メーカーとの価格交渉も担いますと乳業メーカーが、毎年交渉して決めています。メーカーから「この価格でないと引き取れない」と言われても、最終的にそれに納得して「はい」と言っているのは酪農家の側だ、という考えです。

乳価が決まるまでの流れ

交渉

酪農家の団体・指定団体と乳業メーカーが毎年話し合う

↓

提示

メーカーが引き取れる価格を示す

↓

合意

酪農家側が納得、あるいは妥協して了承する

↓

決定

その年の乳価として決まる

だからこそ川上さんは、「安い値段でかわいそう」と言われる状況を変えたいなら、酪農家自身が地区の組織の会議に出て発言し、みんなで声を合わせて価格を決めていく必要があると話します。余ったときにどうするかも含めて決めなければならないという指摘です。

乳価の決まり方は、牧場が運営する酪農データバンクでも「乳価」で検索すると解説が読めると紹介しています。

9万歩の日常と、去勢や命をめぐる対話

noteには、ヨシダマさんから続けていくつものコメントが届きました。1つ目は、FitBitとGoogleヘルスで作業量を記録した記事への「お体お大事に」という気づかいです。

川上さんは、無理をしているように見えたかもしれないが、あれは自分にとってただの日常だったと話します。いつもの作業をするときにFitBitを腕につけてみたら、衝撃的な数字が出たというだけで、本人はいたって元気だそうです。

2つ目は、雄牛の去勢についての記事へのコメントです。

質問(ヨシダマ) 犬や猫などの愛玩動物であっても、たとえ人であっても、必要に応じて去勢は必要だと考えます。母体保護と多胎や生育不良のことを思うと、今ある命を大切にする方がいいと思うからです。

川上さんは、動物と人を一緒にして考えるのは自分には難しい判断だと受け止めています。管理できないなら産まないようにすればいいという意見もあるけれど、環境やそれぞれの背景があるので簡単には言えない、と慎重に言葉を選んでいます。

川上 牛を飼ってるんですけど、牛に学ばせてもらってるっていう部分がやっぱ多々ありまして。

3つ目は、経済動物の命をどう判断するかというnoteの記事に寄せられた、ヨシダマさん自身の経験です。25年前、結婚前の夫と「寝たきりになっても一緒にいられるか」と話し合ったことや、臓器のドナー登録をしていることを家族に伝えている、という内容でした。

川上さんによると、この記事はもともと、家族や飼い猫の延命治療に後悔が残っている人からの質問に答えたものです。命の大切さを考えるきっかけになっていることが、うれしいと話しています。

さらに、畜産を学ぶ学生の質問に答えた記事には、畜産の仕事への尊敬と、ヨシダマさん自身の人生観をつづったコメントも届きました。川上さんは、人生まで考えてもらえたことを喜び、牛乳や肉を出すだけではないところが酪農の魅力だと語っています。

牛はどんな向きで食べる?ガンジー牛と牛の種類

「牛の餌箱はなぜ必要?」の投稿には、ヤギや羊を飼っていた経験をもとに、牛も背の高い草の中ならいろいろな向きに首を動かして食べるのでは、というコメントが届きました。

川上さんは、ヤギや羊は根っこまで食べるので除草には向く一方、放しすぎると草が生えなくなり、モンゴルや中国の砂漠化の一因になったとも言われると話します。メキシコではサボテンを牛の餌にする地域があり、首を上げて食べる動画を見たこともあるそうです。

ただ牛はもともと草を食べる生き物で、穀類を食べる動物ではありませんでした。そのため、下に草があるほうが食べやすいのではないか、というのが川上さんの見立てです。

TikTokでは、ガンジー牛の投稿にマリ姫さんから「牛にも種類があるんですね」という驚きの声が届きました。川上さんによると、血統登録されて固定された品種だけで約300種類、交雑種まで含めると約3000種類あると言われるそうです。

牛の種類はどれくらいある?

約300種類

血統登録されて固定された品種

約3000種類

交雑種などを含めた数

まゆさんからは、那須の南ヶ丘牧場の「ガンジーゴールデンミルク」がこの牛の牛乳で、濃厚でほんのり甘いという感想が届きました。川上さんは、日本では飼っている牧場が少なく希少だが、世界には多く飼っている地域もあり、加工に向いた牛だと説明します。日本でホルスタインが多いのは、生産性が高いからだそうです。

獣医のラジオ紹介と、中学生からのお礼の手紙

InstagramのDMでは、えいしんさんから「牛の獣医みたいな投稿もしてほしい」というリクエストが届きました。川上さんは獣医ではなく、酪農家の目線で発信しているため、このリクエストには応えにくいと正直に話しています。

その代わりに紹介したのが、獣医さんが配信しているPodcastです。酪畜ラジオと、Xでも人気の芦仲さんによるチックトークを挙げ、川上牧場をきっかけにいろいろな発信へ広がってほしいと話しています。

もーさんからは、牛舎で使っているカメラについての質問がありました。川上さんは、自身が所属するメタグリ研究所のニュースサイト「農業AI通信」に取材記事が載っているので、「AI通信 川上牧場」で検索してほしいと案内しています。

今回は、先週職場体験に来た中学生2人からのお礼の手紙も読み上げられました。1人目の手紙には、将来やりたいと思っていた酪農の仕事について学び、ふわふわしていたイメージがはっきりして考え直す機会になった、とつづられています。

2人目の手紙で特に心に残った体験として挙げられていたのは、子牛にミルクをあげる作業です。生まれて間もないのに自分で立って歩き、ミルクを飲む姿に感動したと書かれていました。

川上さんは、今年来た生徒は明るく動物好きで、自分も楽しく過ごせたと振り返ります。将来酪農を選ばなかったとしても、酪農を応援する人が増えてくれたらうれしいと話しています。

牛に無理をさせてまで共進会をする意味は?

最後に紹介されたのは、共進会の歴史についてのnote記事を引用したXの投稿に届いた、七面鳥さんからの厳しいコメントです。

質問(七面鳥) 乳頭の向きを変えたり、漏乳しないように止めたり、よく愛護団体から批判来ないなって思います。畜主の名誉のために無理させて偽装する共進会の何がいいのかわかりません。

川上さんは、共進会に否定的な人が一定数いることを認めています。勝っても牛乳や牛の価値が上がるわけではなく、畜主のエゴではないか、という声です。

そのうえで川上さんが強調するのは、共進会の成り立ちです。もともとは牛乳の品質や牛の体型の良さを測るために始まり、各地の自慢の牛が会場に集まって「ああやって育てるのか」「ああいう品種改良をするのか」と切磋琢磨したことで、日本の品種改良が進んできたといいます。

共進会はどう見られてきたか

BEFORE

牛乳の品質や体型を測り、生産者どうしが学び合って品種改良を進める場として始まった

↓

AFTER

乳頭の向きを整えるなどの準備が、牛に無理をさせる「偽装」だと批判されることもある

乳頭の向きを整えたり漏乳を止めたりする行為についても、川上さんは偽装ではなく、自分の牛をより良い形で見せる技術の1つだと説明します。経済動物である牛を活躍させることがこの子たちの使命だ、というのが川上さんの考えです。

川上 僕も牛好きですけど、それ以上に牛が好きな方々がこういうところに向かっていてやっているので。

ちょっと今日頑張ったから、今日数日頑張ったら一番取れるってわけじゃないんですよ。 ── 川上

川上さんは、そう思う人こそ一度自分の牛を出品して共進会に参加してみてほしい、と締めくくっています。結局この日も40分ほど話し、質問は各SNSや公式LINEの質問フォームから気軽に送ってほしいと呼びかけて配信を終えました。

まとめ

今回のコメント返しは、牛の体のしくみへの素朴な疑問から、乳価や共進会への批判まで幅広い内容でした。川上さんは賛同にも反論にも、現場の事実と自分の考えを分けて、ていねいに答えています。

  • 牛のしっぽは虫よけに欠かせず、使えない牛は体に餌をかけて代わりにしようとすることもある
  • 牛の角の中には前頭洞という空洞が入り込んでいて、肉ではないと川上さんは説明している
  • 乳価は酪農家の団体と乳業メーカーの交渉で決まり、変えたいなら酪農家が声を上げる必要がある
  • 10月からの飼料3円の値上げで、川上牧場では月16万円ほどの負担増が見込まれている
  • 共進会は品種改良を進めるための学び合いの場として始まり、数日の準備で勝てるものではないと語られた