R8年中学生職場体験受入中⑥

2026-09-11 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

中学生の職場体験最終日は、牛のお尻に手を入れる体験から、貯金・投資・借金・消費のお金の授業まで、盛りだくさんの一日でした。川上さんは正解を押しつけるのではなく、問いを重ねて中学生自身に考えさせていきます。

この回の要点

  • インフレのもとでは、貯金は金額が同じでも買える量が減っていく。ただし「いざという時の安心感」という役割もある
  • 消費・投資・借金の違いは、未来の自分やお金にどうつながるかで見分けられる
  • 借金は悪いものではなく、計画性があれば時間を短縮する手段になり得る。悪い借金は「確実に勝てる」という思い込みから生まれる
  • いろいろな投資のなかで一番増える可能性があるのは、自分への投資だと川上さんは強調する
  • 貯金・投資・借金に100点の正解はなく、自分で考えて使い分けることが大切

配信の全文(podyの記事より)

最終日は「牛のお尻に手を入れる」体験からスタート

3日間の職場体験も水木金の最終日を迎えました。川上さんはまず、収録直前にA君に体験してもらったことを紹介します。

その体験とは、牛のお尻に手を入れるというもの。世の中の多くの人が経験したことのないことなので、感想を聞いていきます。

川上 皆さんにも伝えてください。世の中の皆さん、お尻に手を入れたことがない人ばっかりだから。

中学生A まず最初、なんかあったかかったですよね、やっぱ。どこにどう手を動かしても、こうムニムニして。柔らかいし、気持ちいいし。

川上さんは、牛のお尻に手を入れると触れるのは直腸だと説明します。人間の大腸のように動くもので、それが10倍ほど大きいイメージだそうです。

直腸検査 牛のお尻から直腸に手を入れて、子宮や卵巣の状態を触って確認する検査です。妊娠しているかどうかや繁殖のタイミングを見るために、酪農・畜産の現場で日常的に行われます。

中学生A (牛のお尻に手を入れる体験は)本当忘れられない体験。

100万円あったら、貯金・投資・使う、どれを選ぶ?

前日にはライフプランシミュレーションをやって、人生にどれだけお金がかかるかを学んだそう。中学生からは「もうとんでもない」という感想が出ました。

そこで川上さんは、お金の使い方をテーマにした問いを投げかけます。今100万円あったら、貯金するか、投資するか、使うか。A君が選んだのは貯金でした。

中学生A (投資は)まだよくわかんないから貯金。

続いて川上さんは、今の日本がインフレであることを確認します。物の値段が上がるのは、裏を返せばお金の価値が下がっているということです。

インフレ 物やサービスの値段が全体的に上がり続ける状態のことです。同じ100円で買えるものが減っていくため、お金の価値そのものは下がっていきます。

川上 今100円だったやつが、来年110円になってしまったとすると、同じ100円でも100円の価値が減ってしまってるっていうことですね。

つまり貯金をすると、100万円の金額はそのままでも、買える量はだんだん減っていくというわけです。それでもいいのか、と川上さんは問いかけます。

なんで貯金を選んだのか、その理由を掘り下げる

川上さんは、A君がなぜ貯金を選んだのか、その理由を丁寧に聞いていきます。

中学生A 投資のやり方の部分がまだよくわかんないから。貯金でいろいろ投資とかのを学んでから投資に回そうかな。

さらにA君は、今100万円を使ってしまうと機材代がとんでもないことになりそう、という現実的な感覚も持っていました。川上さんはそこに感心します。

中学生A まあ貯金しようとは心に決めるけど、多分使うんだろうな。

一方で川上さんは、貯金にも大事な役割があると話します。スマホが壊れたとき、貯金が0円と10万円ならどちらが選択肢が多いか、という身近な例です。

川上 貯金をすると、いざ困った時とか、お金が足りないなっていう時がないという安心感が得れるっていうのが貯金にはありますね。

つまり貯金は「安心感」を得られる一方で、価値は少しずつ減っていく。ここに貯金の良さと弱点があると整理されました。

消費・投資・借金の違いを、身近な例で整理する

ここから川上さんは、お金の使い方を「消費」と「投資」に分けて説明していきます。ゲームを買うのは消費、というのがわかりやすい例です。

では、1万円で勉強のテキストや本を買うのはどうでしょうか。A君は「投資になるんですかね」と答えます。

川上 これ1万円で勉強するっていうのは、未来の自分に投資して、未来の自分がお金を稼いでくれるっていうのを託してるっていう、これ投資ですね。

さらにパソコンの例も出ます。10万円のパソコンも、YouTubeに動画をアップするなど使い方次第で投資になり得ると話します。

中学生A (パソコンは)使い方によっては投資になりそう。

株式投資についても、A君なりの理解が語られました。会社にお金を出し、成功すれば戻ってくる仕組みだという説明です。

中学生A 会社がこういうことをしたいですって言ったら、それに対してお金を出す形なんで、成功したりしたら、お金が戻ってくる。

川上さんは、これを牧場に置き換えて説明します。100万円で親牛を買い、子牛が生まれたり牛乳が出たりすれば投資になる、というわけです。

ただし、その牛が夏場に熱中症で死んでしまえば、お金は減ってしまう。これが投資のリスクだと補足します。自分への投資も、活かせなければ無駄になり得ると話しました。

消費と投資の違い

消費

ゲームや欲しいものを買って、その場で楽しむための使い方。使ったお金は基本的に戻ってこない

VS

投資

勉強・パソコン・株・牛など、未来の自分やお金が増えることを期待する使い方。ただし増えず減るリスクもある

借金は悪いこと?計画性があれば怖くない

続いて川上さんは「借金」を話題にします。奨学金やマイカーローン、住宅ローンなど、借金にもいろいろな形があります。中学生の第一印象は「悪いイメージ」でした。

中学生A 増えるじゃないですか。借金。

川上さんは、確実に100万円以上稼げるものが200万円でできるとしたら、100万円借りるか、という問いを出します。すると、思わぬ答えが返ってきました。

中学生B 他のやり方がないか考える。

中学生A お前賢いな。

川上さんは、借金は「未来に稼ぐ予定のお金を今使わせてもらうこと」だと説明します。1000ヶ月かかるお金も、借りれば一瞬で手にできるという時間短縮の面があるからです。

川上 君たちの1000時間の時間を借金をすることで一瞬で短縮することができる。

もちろん利子はつきます。ただ、A君は借金する人がみんな悪いわけではない、と感じていました。その違いは「計画性」にあると言います。

中学生A 将来的にいくら稼げるから、これぐらいなら借りていつまでに返せるなみたいな。ちゃんと計画してる人は大丈夫だけど。

一方で、パチンコや競馬で「勝ったら全部返せる」と考える借金は悪い借金だ、という整理にも自分でたどり着きました。ギャンブルをする人も「確実に勝てる」と思い込んでいる、という川上さんの指摘が響きます。

牧場の高い機械で考える、貯めるか借りるか

川上さんは、借金の考え方を牧場の機械にあてはめます。牛の掃除や堆肥の配達に使うダンプは、今なら800万から1000万ほどするそうです。

そんな高い機械を、コツコツ貯めてから買うのか、それとも借金して先に買うのか。ダンプがあれば堆肥の配達もでき、その分だけ機械が働いてくれます。

川上 貯めるのと借金するのとどっちがいいですかって、これも実感を入れるとちょっと変わってくるんじゃない。

さらに川上さんは、お手伝いのお小遣いを使ったたとえ話を持ち出します。皿洗いで1回100円もらえるとして、5万円を何に使うか、という問いです。

5万円で食洗機を買い、その分もお小遣いがもらえるうえ、手洗いも続ければ1日200円になる。これが投資だと説明します。

川上 最初の初日の皿洗いでお小遣いがもらえますってなった時に、お父さんお母さんに5万円借金して、そこで食洗機買ってやったとしたら。

初日に借金して食洗機を買えば、稼ぐスピードが最初から2倍3倍になる。中学生Bも、そこまでいくと利子が気になる、と鋭く反応しました。

自分の1時間の価値は?おじいさんと若者、どちらが高い

川上さんは、中学生に自分の1時間の価値を聞きます。中学生Bはまず「5円」と答え、少し考えて「2000円」と言い直しました。

そこで川上さんは、その1時間を1000円で買わせてほしいと言われたらどうするか、と問いを重ねます。

中学生B (1時間を1000円で買われるなら)もうやります。やらせてください。

続いての問いは、おじいさんおばあさんの1時間と、若い自分たちの1時間では、どちらの価値が高いか、というものです。

中学生B 将来性がね。

川上さんは、若いうちの時間は何でもチャレンジできるから価値が高い、と考えていると話します。若い子が安く見られがちなことへの、川上さん自身の見方でもあります。

川上 若い子に1000円で時間買わせてもらって、めっちゃ優秀な勉強をその1000円でさせてもらったら、いきなり3000円とか5000円稼ぐ力が出るかもしれない。

だからこそ、貯金だけで若い時間を無駄にしてほしくない、というのが川上さんの思いです。借金も怖がらず、上手に付き合うのがいいのでは、という個人的な考えを添えました。

投資のなかで一番増える可能性があるのは「自分」

問いを重ねてきた川上さんは、改めて18歳の自分に100万円あったらどうするか、と聞きます。すると中学生の答えが変わってきました。

中学生B 70ぐらい貯金に回して、30ぐらい投資に回してみる。

川上さんは、最初は「全部貯金」だった答えが、分けて考えるように変わってきたことを喜びます。300万円の車を借金して買うか、という問いには「電動自転車で十分」という現実的な答えも出ました。

そして川上さんは、金や株式投資などいろいろな選択肢のなかで、一番お金が増える可能性があるものを伝えます。

いろんな投資の中で一番お金を稼ぐ可能性があるのは自分に投資することです。 ── 川上

自分は頑張り方次第で100万円にも1億円にもなり得る。だから自分に投資するのが一番だと、川上さんは強く言い切ります。

川上 誰にも負けないように努力してやれば、その100万円が1億円になるかもしれません。投資したやつが。

「1万円あったら何に使う?」で見えてきた変化

川上さんは、明日からお小遣いをもらったらどう使うか、という宿題のような問いを出します。最初、中学生Bはお小遣いを「あげる」とふざけて答え、川上さんは苦笑します。

川上 時間を返してくれ。川上さんに時間を返してくれ。君たちが成長すると思って話したのに。

それでもやり取りを続けるうちに、中学生Bの答えは変わっていきます。1万円あったら、本屋で参考書を見て、自分の苦手なところに使うかもしれない、というものです。

中学生B イオンとか本屋行って、参考書見て、自分に開くこともできるから。ここ自分が苦手なとこ結構載ってるなと思ったら。

貯金・投資・借金のどれが一番いいか、という最後の問いに、中学生Bは「全部」「使い分け方」と答えました。川上さんはこれを正解だと受け止めます。

川上 どれも正解。確実に100パーセントいいっていうのはないんですよ。

Aさんにとっての最適も、Bさんにとっての最適も、周りの誰にもわからない。だからこそ自分で考えて選ぶことが大事だ、と川上さんはまとめます。中学生2人も「勉強になった」「経験になった」と振り返りました。

まとめ

中学生の職場体験最終日は、牛のお尻に手を入れる体験から、貯金・投資・借金・消費のお金の授業まで、盛りだくさんの一日でした。川上さんは正解を押しつけるのではなく、問いを重ねて中学生自身に考えさせていきます。

  • インフレのもとでは、貯金は金額が同じでも買える量が減っていく。ただし「いざという時の安心感」という役割もある
  • 消費・投資・借金の違いは、未来の自分やお金にどうつながるかで見分けられる
  • 借金は悪いものではなく、計画性があれば時間を短縮する手段になり得る。悪い借金は「確実に勝てる」という思い込みから生まれる
  • いろいろな投資のなかで一番増える可能性があるのは、自分への投資だと川上さんは強調する
  • 貯金・投資・借金に100点の正解はなく、自分で考えて使い分けることが大切