川上牧場研修【移動13カ月成績(牛群構成・検定日成績/搾乳牛1頭平均)】
2021-04-18 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
牛群検定成績の中段は、農家本人はあまり見ないものの、他の牧場や自分の過去を読み解くには欠かせない「結果」の欄です。数字の読み方から、つなぎ牛舎ならではの飼い方、そして次世代の受け入れやデータの残し方まで、話が大きく広がった回でした。
この回の要点
- 搾乳牛率は絶対数より推移で見て、85%あたりが乾乳・搾乳のサイクルの目安になる
- 検定乳量と出荷乳量のズレは、データの信頼性を疑う指標として使える
- つなぎ牛舎は個体ごとに餌を補い合うため、フリーストールなら出るはずの波が相殺されて見える
- 川上さんは1乳期より生涯乳量を重視し、副産物収入も含めて「牛でどう儲けるか」で考えている
- 数字だけでなく、そこに至った経緯や推理を「余白」として残すことが、次世代の学びになる
配信の全文(podyの記事より)
搾乳前の休憩に録る「研修生の質問に答える会」
この配信は、川上牧場の川上さんが研修生を受け入れながら、自身の考える酪農を伝えていく音声企画です。搾乳前の休憩にいつもやっている、研修生の質問に答える会話をそのまま録音するスタイルで進みます。
川上 研修生以外の酪農に興味がある人や酪農に従事している方にも、僕が思う酪農を伝えていけたらいいなと思い、noteに音声として残しています。
今回のテーマは、移動13ヶ月牛群検定成績表の中段です。成績表は牛群構成、検定日成績、体細胞情報、受精情報、管理状況などが1つにつながっていて、その推移を見ながら全体をつかんでいくものだと川上さんは説明します。
ただ全部を説明するととても長くなるので、この回では移動13ヶ月の牛群構成と、その隣にある検定入量・出荷入量にしぼって解説していきます。
牛群検定 乳牛1頭ごとの乳量や乳成分、体細胞数などを定期的に測定・記録して、牛群全体の状態を数値で把握する仕組みです。飼養管理や繁殖の改善に使われます。
経産牛頭数と搾乳牛率は「推移」で見る
牛群構成の見方は、左側の経産牛頭数の平均と前年成績から始まります。川上さんは、自分の牛舎が50頭入る規模なので、経産牛が50頭でないと施設をうまく使えていないと考えています。
ここで研修生が、成績表の分母がわからないと指摘します。たとえば経産牛42頭と書いてあっても、それが50頭中なのか100頭中なのかは、その牧場のキャパを知らないと判断できないという話です。
研修生 仮に今42(頭)経産牛ってなってるんですけど、100分の42なのか、50分の42なのか。その分母になる、それぞれの牧場のキャパは何頭か、あくまでオーナーさんに聞かないと。
そこで川上さんは、知らない人がパッと見るときは、頭数の絶対値より「推移が前後しないか」だけを見ればいいとアドバイスします。
川上 推移が前後しないかなっていうのだけでいいと思います。
研修生も、何頭に対してどうかよりも、減らしたいわけでもないのに減っていないか、増やしたいのに増えていないかを見ればいいと理解します。減っているなら理由を、増えているなら頑張りを、それぞれ個別に見ていくわけです。
次に見るのは、経産牛の中で搾乳牛が何頭いるかという搾乳牛率です。経産牛ばかりで搾乳牛が少ない状態は乾乳が多いということで、種付けがうまくいっていないなど、何かしらの理由があると読み取れます。
乾乳 次のお産に備えて搾乳を一時的に止め、乳牛を休ませる期間のことです。一般的に分娩前の約60日間とられ、この間の牛は搾乳牛には数えられません。
搾乳牛率85%はどこから出る数字か
搾乳牛率は85%くらいで推移するとよいと言われています。川上さんは、この数字がどこから出てくるのかを、50頭規模を例に一緒に計算していきます。
50頭で1年1産をめざすと、年間50頭の分娩が必要になります。12ヶ月で割ると、1ヶ月あたりおよそ4頭ずつ分娩する計算です。
搾乳牛率85%の計算
1
1年1産の分娩数
50頭規模なら年間約50頭が分娩する
2
月あたりの分娩
50÷12で、1ヶ月に約4頭が分娩する
3
乾乳牛の数
乾乳は約60日(2ヶ月)なので4×2で8頭
4
搾乳牛の数
50頭から乾乳8頭を引いて42頭
5
搾乳牛率
42÷50で約84%、おおよそ85%になる
乾乳は一般的に60日、つまり2ヶ月分とるので、月4頭ずつ分娩すると乾乳牛は常に8頭ほどいる計算になります。50頭から8頭を引くと搾乳牛は42頭、搾乳牛率はおよそ84%です。
だから搾乳牛率85%あたりで推移していれば、乾乳も搾乳もうまく回っていて、サイクルがうまくいっているとパッとわかる、というのが川上さんの見方です。
川上 85パーセントぐらいを維持するのが、乾乳もうまいこともあって、搾乳もうまいこともあってっていう、サイクルがうまくいってるなっていうのがパパパッとここですぐわかるわけです。
搾乳日数・分娩頭数から見える繁殖のリズム
続いて搾乳日数です。ここを見れば分娩間隔が一発でわかると川上さんは言います。分娩間隔が400日ほどで回っていれば、搾乳日数は160〜180日あたりで安定してくるそうです。
川上 ちゃんと種付けして、子牛生まれて、種付けしてっていうのが続くと、搾乳日数は160から180のとこ推移してやります。
分娩間隔 乳牛が前回の分娩から次の分娩までにかかる日数のことです。この間隔が短く安定しているほど、種付けや繁殖が計画どおりに回っているとされます。
次の分娩頭数を見ると、月4頭ずつ生まれていないと何かおかしいと気づけます。川上さんの牧場は明らかに夏場の分娩が多く、月ごとに偏りが出ています。
さらに、その中で初産が何頭上がってくるかを見ると、年間の初産率や更新率がわかります。あわせて生まれたメスの数も数えていて、これは次世代の頭数を示すものです。ホルスタインもF1も、メスは基本的に自分で飼うことが多いためです。
検定乳量と出荷乳量のズレはデータの信頼性
牛群構成の隣には、検定乳量と出荷乳量が並びます。出荷乳量はバルク(タンク)に入った量、検定乳量は1頭ずつ測った乳量を足したものです。
この2つに差があると、正確に測れていないことがわかります。ズレが大きい場合、ミルクメーターの整備不良や、検定員のサンプル取りの技術、あるいは記入を省いて前後の日の出荷量を書いているケースなどが疑われます。
川上 書くのが面倒だからつって、今日検定なんだけど、昨日の出荷乳量書いとけっていうところもあったりするから。まあ大体一緒でしょつって。
さらに川上さんは、体細胞の高い牛を検定で調べたくないなど、見栄で正確な数字を取ろうとしていない牧場も、この差から見えると話します。ここはデータの信頼性を疑うための指標として使っているそうです。
川上 データの信頼性を僕は疑ったりするところの指標にここは使います、僕は。
研修生は、130%だと信頼度が薄く、81%でもまずい、98〜99〜100あたりできっちり合っていればその人はすごい、と読み取れると整理します。ズレが大きいと、家畜改良事業団から問い合わせが来ることもあるそうです。
バルク 搾った生乳をためておく冷却タンクのことです。ここに入った量が出荷乳量となり、乳業メーカーへ出荷されます。
この中段、実は農家本人はあまり見ない
ここで研修生は、成績表を初めて見る人はどこから読めばいいのか、優先度を知りたいと質問します。写真を見るときのように視線をZに動かすような、見るポイントの順番があるのかという問いです。
Q
この牛群成績、初めて見る人はどこを優先して見ればいい?後で見てもいいところと、今すぐ見たいところの見分け方は?
A
回答
農家本人は自分の数字をだいたい把握しているので、牛群構成の中段はほとんど見ない、というのが川上さんの答えです。ただし他人の牧場の成績を読むときは、ここを見ないと状況がわからないため、初めての人ほど中段が手がかりになります。
川上 この中段はもう自分のところは見ないね、本当に。
研修生は、農家にとって中段は自分の身長のような感覚で、多少の増減はあっても「だいたい一緒だろう」で流せる部分だと理解します。一方で、経営している側からすれば、日々の作業では見えにくい推移が線として現れる場所でもあります。
研修生 普段はあんまり推移が見えないところをある意味気になると思うんですよ。乳量とか今日出たなとか、今日出てないなはある程度わかるけど、それじゃわからんところをやっぱり気になるがち。
つまり中段は、過去13ヶ月を振り返って「そういえばどうだったっけ」と流れを確認するための、結果を示す欄だという整理になりました。
どんなに頑張っても直らない、初産の種付けと夏場分娩
研修生が、川上さん自身は今の推移に満足しているのか、もっとこうしたい点はあるのかと尋ねます。川上さんは2つの課題を挙げます。
1つは初産の種付けです。育成の種付けが早いため、どんなに頑張ってもその影響が毎回成績に出てしまうといいます。もう1つは夏場に分娩が固まることで、暑熱対策とあわせて毎年の悩みになっています。
川上 育成の種付けが早いから、もうそれがもうここに確実に毎回毎回出てる。どんなに頑張ってもなんかね、出てしまってるので、それはちょっと直したいけどね。
夏に分娩が固まるのを本当は避けたいものの、夏前と秋口にドバっと種付けがついてしまうそうです。ただ川上さんは導入牛を入れず自家育成だけでやっているため、ある程度は仕方ないとも受け止めています。
この偏りは搾乳日数にも表れ、10月ごろに30〜40日ほど一気に短くなる動きが見えます。分娩が固まる以上こうなるしかない、というのが現状です。
初産 乳牛が初めて分娩することを指します。育成期の種付け時期が早すぎると、初産牛の乳量や繁殖成績に影響が出ることがあります。
標準乳量が語る「餌代をケチる」飼い方
続いて検定日成績、搾乳牛1頭当たり平均の欄に進みます。左から標準乳量、乳量、乳脂量、タンパク、無脂固形、MUN、PF、濃厚乳、飼料給与量が並びます。川上さんが一番大事だと考えるのは標準乳量です。
餌を変えず普通に飼っていて標準乳量が増えていれば、遺伝能力が上がってきたかもしれないと読めます。ただ川上さんは、上がった遺伝能力の分だけ餌代を節約する方針をとっています。
川上 40キロ出るやつに40キロの餌やったら43キロぐらい出るようになるんだよ。うちの場合だと、それに38キロぐらいの餌やって40キロ絞らせるみたいな。その飼料効率とか節約の方に力入れるんで、個体乳量自体が伸びない。
これは、1頭ずつ管理できるつなぎ牛舎ならではのメリットを活かした飼い方です。だから標準乳量も乳量も、13ヶ月を通してほとんど大きく上下しません。
つなぎ牛舎 牛を1頭ずつ所定の位置につないで飼う方式の牛舎です。餌の量を個体ごとに細かく調整できる一方、群れでまとめて管理するフリーストールとは飼い方が大きく異なります。
つなぎ牛舎だから「波が立たない」成績の謎
乳脂率や乳タンパクも、13ヶ月で見ると安定しているほうがよいものです。ただし本来は搾乳日数に引っ張られて波ができるはずだと川上さんは言います。
たとえば搾乳日数が短くなり乾乳前の牛が多い時期は、乳脂率が上がるのが普通です。ところが川上さんの牧場は、搾乳日数が40〜50日も前後しているのに標準乳量も乳量も乳脂量もほとんど動きません。
研修生 教科書で言ったらここ動いてたらここ動かな(いといけない)。
理由は、群れ全体を一律に飼うのではなく、個別に餌をこまめに調整しているからです。フリーストールなら群単位で同じ餌になるので波が出ますが、つなぎ牛舎では個体ごとに補い合うため、全体としては波が相殺されます。
波が立つ理由の違い
フリーストール
群れ単位で同じ餌を与えるため、搾乳日数の変化がそのまま乳量や乳成分の波として表れやすい
VS
つなぎ牛舎(川上牧場)
1頭ずつ餌を調整して補い合うため、搾乳日数が動いても全体の数字は波が立ちにくい
研修生は、この検定日成績と搾乳日数を見れば、口で説明しなくても、その牧場がつなぎかフリーか、どんな飼い方をしているかが読み取れると気づきます。
研修生 つなぎかフリーかみたいな感じだと思うんですけど、どういう飼い方してるかが、実際に喋らんでもわかる話になりますよね。
搾乳日数が短くなる時期の「引っ張り」テクニック
搾乳日数が短くなる時期は、ピークに向かう牛が増えるため乳量が出て、乳脂肪や乳タンパクは下がりがちになります。そこで川上さんは、後半の牛をなるべく引っ張って濃い牛乳を出させ、乳量と乳脂肪の両方を確保します。
川上 後半の牛たちをなるべく引っ張って濃い牛乳が入るようにして、乳量も乳脂肪も確保する。今の3月時期だとそういうことができる。夏場だとちょっとそういうことできなかったり。
逆に成分が濃くなって乳量が出にくい時期は、配合の給餌量をかけて乳量が出るよう引っ張ります。結果として乳脂率がずっと3.8のように安定しているなら、その調整に効果があったと言えます。
研修生は、こうしたコントロールは各牧場の秘伝レシピのような部分だとしつつ、どこを触ればどこがコントロールできるかという知見こそ、いい意味で継承したいと話します。
ここ触った時にここコントロールできるよっていうところは。 ── 研修生
1乳期より生涯乳量、牛でどう儲けるか
話は牛の泌乳曲線と使い方に広がります。川上さんは種付けを早めにして泌乳曲線をなだらかにし、乳量が下がったころにまた分娩が来る形を繰り返す作戦をとっています。導入牛でぐっと膨らむ曲線を狙うのとは対照的です。
川上 泌乳曲線をずっとなだらかにして、下がった時にはまた分娩があって、上がってって、また下がった時に分娩があってっていうのを繰り返すっていう作戦。
その背景には、牛を5年スパンで見る考え方があります。1乳期(搾乳から乾乳までの約305日)の乳量ではなく、生涯乳量をいかに絞るかしか考えていない、と川上さんは言い切ります。
1乳期 1回の分娩から次の乾乳までの搾乳期間のことで、一般的に約305日を指します。この1乳期ごとの乳量と、牛が一生で出す生涯乳量とは別の指標です。
さらに、生涯乳量に加えて子牛などの副産物収入も含めた「その牛でどう儲けるか」を重視しています。8000キロしか出ない牛でも、和牛を産ませれば1万2000キロ出る牛と同じ価値になる、というのが川上さんの見方です。
川上 8000キロしか出ない牛でも、1年に2、3で和牛産ませたら1万2000キロと同じ牛の価値だと僕は思ってるんで。
牛も人も「時給換算」で見えてくる働かせ方
研修生は、牛の飼い方を人の働き方にたとえます。短期間に酷使して高い時給を払うのと、長く無理なく働いてもらうのとでは寿命が変わる、それは牛も同じだという話です。
研修生 200時間ぶっ通しで働いてください、死にます、時給1万円でいいや、と、10年ぐらい700、800円でちょこちょこやるってなったら、その寿命間違いなくこう(変わる)。
そこから、牛群検定成績が「何時間働いた数字なのか」がわからないという指摘につながります。年商が高くても全員がブラックな働き方をしていれば人は来ない、という点で牛と経営は共通しています。
川上 年商何億です、すごい会社ですって言って全員ブラックな働き方してたらそれは誰も来ないよ。
研修生は、今すぐお金が欲しい人はそういう場所に行けばいいとしつつ、ホワイトともブラックとも言い切れない曖昧さのまま人を受け入れるのは、次の世代のためにならないと話します。
他の牧場の検定を見たいのに見られないもどかしさ
研修生は、酪農家だからこそ他の牧場の検定成績を見て学びたいと感じています。しかし他人の成績は個人情報であり、簡単には見られないのが現状です。
川上 他のとこ個人情報なんですよね。今厳しいね。だから見させてもらうことは、ありがたいことですよ。
そこで研修生が求めるのは、順位づけや「地区一番」のような話ではありません。現状の数字から「じゃあどうしようか」を一緒に考えられるような、良かれと思って情報を公開し合う場です。
この考え方は営業のあり方にも及びます。つなぎ牛舎の牧場に、それに合わない新商品を一律に配って回るのはお互いの時間の無駄で、本当に求めているものを言葉にして交換することが必要だと研修生は語ります。
いらんやん、そこに。だってつなぎやん。この人こうしてんねんからこの商品持ってくる必要ない。 ── 研修生
乳脂肪が下がる本当の原因は餌ではないかもしれない
営業の具体例として、乳脂肪が低いと乳脂肪を上げる商品を売りに来るケースが挙がります。しかし川上さんは、乳脂肪が下がった原因は餌以外にもたくさんあると指摘します。
川上 乳脂肪が低いから乳脂肪が高いものを営業に来たりするんだよね。でもその乳脂肪が下がった原因って他にやっぱいっぱいあるわけ。分娩間隔がうまいこといってなかったりとか。
その根本原因は、牛群検定の12〜13ヶ月の推移を見ればパッと読み取れることも多いといいます。だからこそ、成績表から本当のニーズを汲み取り合う関係が理想だという話になります。
研修生は、酪農家には「商品」がまだ言葉になっていないだけで、実は欲しいものがあると言います。「こんなものがあれば便利なのに」という具現化されていないニーズを出し合うことで、製品化につながったり、すでにあると気づけたりするというわけです。
体細胞・受精から見える衛生管理と繁殖
成績表の中段を読むと個性が捉えられるようになる、と研修生はまとめます。体細胞情報からは衛生管理がどうなっているか、受精状況からは繁殖の状態が見えてきます。
研修生 体細胞からは衛生管理はどうなってるのかなっていうのがまずわかる。
体細胞の推移を追えば、本当に頑張っているのか、頑張れていないのかまで見えてくると2人は確認し合います。体細胞と衛生面が直結しているためです。
ここから話は衛生管理の基準やマニュアルへと広がります。研修生は、農林水産省の衛生管理マニュアルのようなものを見たものの、グラフが古く、現実に即しているとは言えない部分があると感じたそうです。
体細胞 生乳に含まれる白血球などの細胞のことです。数が多いと乳房炎など乳牛の健康や衛生状態の問題を示すことがあり、生乳の品質評価の指標にもなります。
豚・鶏・牛を同じ法律でくくる無理
衛生管理の話で川上さんが指摘するのは、日本では豚・鶏・牛が畜産としてひとくくりにされ、同じ法律で扱われている点です。そのため実態に合わない無茶な部分が出てきます。
川上 畜産でひとくくりにされて、豚と鶏と牛ってそれを家畜としてやって、それを全部同じ法律でやってるんで、日本がね。なのでちょっと無茶なところがあったりする。
たとえば豚や鶏は、全部を出してから消毒し新しい群を入れる「オールインオールアウト」ができますが、牛では同じことが難しいといいます。サイズも動きも違う家畜を同じ枠で管理すること自体に無理があるという話です。
研修生は、特例を作れという話ではなく、牛を扱う側が実体験にもとづいて声を上げていく必要があると考えます。ただ現実には、そうしている間にも農家数は減り続けています。
オールインオールアウト 1つの畜舎の家畜をすべて同時期に出荷し、空になった畜舎を洗浄・消毒してから新しい群を一斉に入れる衛生管理の方式です。病原体の持ち越しを防ぎやすい一方、牛では実施が難しいとされます。
今の基準では次世代の牧場が建たない
研修生は、今の法律や基準のもとで新しく牧場を建てようとしても、次世代の牧場ができる気がしないと危機感を語ります。大きな資本がないと難しくなってきているためです。
研修生 次世代の牧場ができる気がしないんですよね。
新規で就農しようとする人は、40〜50年前の基準で建てた既存の牧場とは違い、今の厳しい基準を突きつけられます。しかも、それをこなしながら自分が持てる乳量を安定して出せるか、機械の故障などのイレギュラーに保証があるかは不透明です。
川上 今やってる人たちって、40年、50年ぐらい前の法律で牧場建てて、それからもう既存の人たちだから、まあまあまあみたいなんでやってたんですけど、そこで勉強した人がまた新たにやる時は今の法律を突きつけられるわけだから。
研修生は、そうした厳しさの中で入ってくる人たちを守るためにも、今まで気にしてこなかった数字や視点を、業界全体で気にするよう動く必要があると訴えます。助けに行った人まで溺れていくような連鎖を避けるためです。
新規就農者を受け入れる側に必要な準備
研修生は、酪農家に生まれたから継ぐという道だけが全てではなく、向いている人が就農できるようにすべきだと語ります。そのためには、受け入れる側も受け入れやすい体制を整える必要があります。
一方で、先輩が長靴の消毒などを雑に扱えば、入ってきた人も雑に扱うのが当たり前になります。過去に問題が起きたからこそ守るべきルールは守り、逆に必要以上のことはしない、その線引きを丁寧に共有することが大切だという話です。
研修生 消毒のことに関しても、長靴とか、僕がうんこつけてそのまま違うここに上げちゃって、うつって、したくないし。こういうことあってしまったから、こういうことはしたらあかんよねっていうのは、ほんまにいい意味で守らなあかんし。
そうしないと、新しく入る人が牧場主の機嫌をうかがうことばかりになり、牛だけが心のよりどころになるような状態になりかねない、と研修生は懸念します。川上さんも、そういうケースはあると認めます。
数字に「余白」を、経緯や推理を残していく
最後に研修生が語るのは、成績表というデータに「余白」がないという課題です。本には書き込める余白があり、それが読者に深く考えさせるスペースになりますが、日本が出すデータにはその余白がないと言います。
研修生 本ってこう余白あるから書き込めるみたいな。日本人だからってわけじゃないですけど、やっぱり本を深く読もうと思ったら余白が必要で、考えさせるスペースがあると思うんですよね。
研修生が残したいのは、数字そのものではなく、その数字にたどり着いた経緯や推理です。「ここはこうだと思ってこうしたが、結果は変わらなかった」といった試行錯誤を残していかないと、次の人がデータから意味を読み取れず、無駄になってしまうと考えています。
研修生 次の人たちがこのデータからあの意味読み取れんくなるというか、無駄になってしまうんで。
たとえば「ここは大丈夫か」と問いかけ、調べてみて違っていれば別の原因を探す。そうやって推理と検証を積み重ねた過程こそ、次世代への学びになるという主張で、この回は締めくくられます。
川上さんは時間になったことを告げ、配信が良ければサポートやおすすめを、質問はコメントやDM、各SNS、質問箱で受け付けていると案内しました。本業に支障が出ない程度に、継続して配信を続けていきたいと話しています。
まとめ
牛群検定成績の中段は、農家本人はあまり見ないものの、他の牧場や自分の過去を読み解くには欠かせない「結果」の欄です。数字の読み方から、つなぎ牛舎ならではの飼い方、そして次世代の受け入れやデータの残し方まで、話が大きく広がった回でした。
- 搾乳牛率は絶対数より推移で見て、85%あたりが乾乳・搾乳のサイクルの目安になる
- 検定乳量と出荷乳量のズレは、データの信頼性を疑う指標として使える
- つなぎ牛舎は個体ごとに餌を補い合うため、フリーストールなら出るはずの波が相殺されて見える
- 川上さんは1乳期より生涯乳量を重視し、副産物収入も含めて「牛でどう儲けるか」で考えている
- 数字だけでなく、そこに至った経緯や推理を「余白」として残すことが、次世代の学びになる