【ホントに良いの⁉️】関税UP&消費税0%で農家はどうなる?🐄💥
2025-02-26 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
今回は、トランプ関税と食品の消費税0%案が酪農家にどう影響するのかを、川上さんが酪農家の目線で整理した回でした。安くなって嬉しい、で終わらせず、農家のキャッシュフローや和牛価格まで見通す話が印象的です。
この回の要点
- トランプ関税で和牛の輸出が減ると、酪農家が産ませるF1や黒毛和牛の値段も下がるおそれがある
- より怖いのは「安い農産物を輸入しろ」という圧力で、国内農家が価格面で圧迫されるリスク
- 消費税0%は消費者には嬉しい一方、仕入れ10%と販売0%の差額を農家が立て替えることになる
- 差額の還付は最長1年後で、月1000万円の売上なら年1200万円規模の資金繰り負担になりうる
- 値下げ分が食品以外に回れば農家の売上は伸びない。消費が本当に増えるかがカギになる
配信の全文(podyの記事より)
今日の牧場は春の気配、堆肥運びと確定申告の一日
配信は、川上さんの朝のあいさつから始まります。2月26日の水曜日、天気は晴れ。
昨日に続いて「ちょっと春見えてきたんじゃねえの」というくらいの暖かさだそうです。
この暖かさで水はけの悪い圃場にも入れそうなので、堆肥を運びたいと話されています。
この日の予定は、種子の販売会社の対応に、毎週恒例の整体で体をバキバキ直してもらうこと。そのあと確定申告の書類を税理士さんへ持っていくとのことです。
そんな日常の話から、今日の本題であるトランプ関税と酪農の話へと入っていきます。
リスナーの質問「トランプ関税ってどのくらい影響あるの?」
今回のテーマは、スプーンネームのマルコさんから届いた質問がきっかけです。
質問(マルコさん) 酪農業界でトランプ関税ってどのくらい影響がありそうですか?
川上さんはまず、アメリカの大統領がトランプさんに代わってから、大統領令にどんどんサインして物事を変えている状況にふれます。
川上 トランプさんに代わって、もう700、800、それぐらいバシバシ変えていってますね。
そのなかで日本に影響がありそうなのが、関税を引き上げるという話。ここから、それが酪農業にどう響くのかを解説していきます。
トランプ関税 トランプ大統領が「アメリカ第一主義」を掲げて打ち出した、輸入品に高い関税をかける方針の通称です。相手国の関税に合わせてアメリカ側も同じ水準の関税をかける、といった考え方が示されています。
和牛の輸出が減ると、酪農家の手取りまで下がる?
川上さんによると、トランプ大統領は再選後、アメリカ第一主義を掲げて、輸入品に一律10%から20%の関税を課す方針を示しているそうです。
各国の関税に合わせて「20%かけてるならアメリカも20%かけるぜ」というようなことを言っている、と説明されています。
日本の農産物の輸出は、昨年は2兆円を目標に1兆円を超えたと言われていました。アメリカにはお米や和牛が輸出されていて、ここに影響が出るのではないかと話します。
高い関税をかけられると、日本からの輸出が減ってしまう。そして和牛の輸出が減ると、意外なところにも影響が及ぶといいます。
川上 和牛の輸出が減れば、相対的に和牛の受精卵で産ませている酪農家の手取りも減ってしまうんじゃないかなというところがあります。
お肉がだぶついて値段が下がると、酪農家が産ませているF1や黒毛和牛の値段も下がってしまうかもしれない、という理屈です。
F1(エフワン) 乳牛の母牛に、黒毛和牛などの精液や受精卵をかけあわせて生ませた子牛のことです。酪農家にとっては、生まれた子牛を肉用として販売することが収入の一部になっています。
もっと怖いのは「安い農産物を輸入しろ」という圧力
川上さんが「それより怖い」と話すのは、輸出の減少よりも輸入をめぐる圧力です。
日本はアメリカから輸入している農産物の関税がもともと少ないのですが、そこに「もっと輸入しなさい」という圧力がかかる可能性を心配します。
川上 関税下げるからもっともっと輸入しろよ、みたいなことを言われたりすると、アメリカの安い農産物がどんどん日本の市場に入ってくる。
そうなると、国内の農家や酪農家が価格の面で追い込まれるリスクがあると指摘します。
消費者としては、やっぱり安い商品を選びたくなるもの。だからこそ、安いアメリカ産の農産物が入ってくると、国内の農家が価格面で圧迫されるという構図になりやすい、というわけです。
食品の消費税0%案、酪農家にとっては手放しで喜べない
関税の話と地続きの論点として、川上さんは食品の軽減税率の議論を取り上げます。
ある野党から、食品の税率を今の8%から0%まで下げましょう、という議論が出てきているそうです。
生活必需品だから、というのがその理由。消費者にとっては、税金が0%なら買い物のハードルが下がる、ありがたい話に見えます。
軽減税率 食料品など生活に欠かせないものについて、消費税を通常より低く抑えるしくみです。日本では現在、酒類や外食を除く飲食料品などに8%の軽減税率が適用されています。
インフレで物価がどんどん上がっている今、牛乳も「高い高い」と言われがち。だからこそ、値下げのインパクトは大きいと川上さんも言います。
川上 今の8%が0になったら、200円のやつだったら20円ぐらい下がることになるので、それはもう牛乳もめちゃめちゃ売れるんじゃないかな。
ところが、農家の立場に立つと話はそう単純ではありません。ここから、消費税0%の「もう一つの顔」が見えてきます。
消費税0%で農家を襲う「キャッシュフロー問題」
川上さんが問題にするのは、仕入れと販売で税率がズレることです。
農家は餌や資材を10%の消費税を払って仕入れます。一方で、牛乳などの食品を販売するときは0%になる。この差額の10%分が重くのしかかると説明します。
この差額は税金なので、あとから還付という形で返ってきます。ただし、返ってくるまでに時間がかかるのが問題だといいます。
川上 還付するまで、最長で一年後とかになったりするので。
川上さんは、月に1000万円の売上がある牧場を例にあげて、具体的な金額感を説明します。
消費税0%で起きるキャッシュフローのズレ
1
仕入れは10%
餌や資材を、10%の消費税を払って仕入れる
2
販売は0%
牛乳などの食品は、消費税0%で販売する
3
差額を立て替え
月の売上1000万円なら、差額はおよそ月100万円
4
還付は最長1年後
立て替え分が返ってくるまで最長で1年ほどかかる
この差額を1年分積み上げると、およそ1200万円にもなる計算だといいます。大きい牧場でも小さい牧場でも、資金繰りが本当に大変になるのではないか、と心配します。
大きい牧場も小さい牧場も、キャッシュフローが本当に大変になるんじゃないか。 ── 川上
だからこそ、消費税0%を実現するなら、農家のキャッシュフローに政府が手当てしないと難しいというのが川上さんの見立てです。
消費税が10%下がったら、みんなもっと食べる?
川上さんは、消費税0%の「いい面」と「不安な面」を並べて整理します。
食品が安くなって消費が伸びるといういい面がある一方で、細かく見ると農家のキャッシュフローという不安もある。どっちがいいのか、と消費者に問いかけます。
食品の消費税0%を酪農家目線で見ると
+
メリット
食品が安くなって、牛乳などの消費が伸びるかもしれない
−
デメリット
仕入れ10%と販売0%の差額を農家が立て替え、資金繰りが厳しくなる
ここで川上さんが投げかけるのが、値下げで本当に消費が増えるのか、という問いです。
川上 10%全部食料品が値下げしたとしたら、もっと食べますか?皆さん。
今、牛乳を1日1L飲んでいる人が、10%下がったからといって2本買うようになるのか。そこはコメント欄で教えてほしい、とリスナーに呼びかけます。
コメントでは「健康に良いので甘いジュースより牛乳を買います」という声もありました。ただ川上さんは、ジュースも同じように10%下がる点を指摘します。
川上 ジュースも10%下がったとして、ジュース買っちゃうでしょ。どれがどうとかじゃなくて、全体的な食費の話ですよね。
つまり注目すべきは、食費全体が10%下がったときに、食べる量がどれだけ増えるか。浮いたお金が食品ではなく家電や車、家に回ってしまえば、農家の売上は伸びないかもしれない、という視点です。
人口が減っていくなかで、消費がそこまで伸びるのか。川上さんは、値下げ分を上回る売上があれば農家も喜ぶけれど、と少し慎重な見方を示して締めくくります。
まとめ
今回は、トランプ関税と食品の消費税0%案が酪農家にどう影響するのかを、川上さんが酪農家の目線で整理した回でした。安くなって嬉しい、で終わらせず、農家のキャッシュフローや和牛価格まで見通す話が印象的です。
- トランプ関税で和牛の輸出が減ると、酪農家が産ませるF1や黒毛和牛の値段も下がるおそれがある
- より怖いのは「安い農産物を輸入しろ」という圧力で、国内農家が価格面で圧迫されるリスク
- 消費税0%は消費者には嬉しい一方、仕入れ10%と販売0%の差額を農家が立て替えることになる
- 差額の還付は最長1年後で、月1000万円の売上なら年1200万円規模の資金繰り負担になりうる
- 値下げ分が食品以外に回れば農家の売上は伸びない。消費が本当に増えるかがカギになる