A2ミルクの機能性とは?消費者が知るべきポイント!
2025-02-21 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
A2ミルクは認証制度が整い、遺伝子検査から混入防止まで厳しくチェックされている一方で、機能性の科学的根拠はまだ議論の途中。だからこそ「味」や「お腹に優しい」という売り方になっている、という酪農家目線の解説回でした。
この回の要点
- A2ミルクは日本でも2024年に認証制度が始まり、パックのロゴで認証の有無を判断できる
- 認証には牛の遺伝子検査や、搾乳・輸送・加工での混入防止など多くの手間がかかっている
- 海外ではA2ミルクの健康効果の科学的根拠が十分でないと評価され、議論になっている
- 科学的根拠が確立していないため、機能性を大きく打ち出せず「味」中心の売り方になっている
- 日本では乳糖を減らす技術や機能性ヨーグルトも多く、酪農家は売り方に複雑な思いを抱いている
配信の全文(podyの記事より)
一日じゅう会議づくめの金曜日と今日のテーマ
配信は2月21日の金曜日。天気は雪時々雨ですが、そんなに降っていない穏やかな一日からスタートします。
この日の川上さんの予定は、昼間に来年度の事業を決める会議、その帰りに税理士さんへの書類提出、さらに夜には町内の認定農業者の総会。会議、会議、会議ばっかりのそんな一日になりそうだと話します。
川上 今日の配信は昨日来た質問に答えるおたよりのコーナー、今話題のA2ミルクの話についてちょっとしていこうかなと思います。
皆さんもお近くのスーパーで見かけるようになったA2ミルクをテーマに、10分から15分ほどの配信をしていくと予告します。
牛乳で乾杯、そしてお知らせタイム
この番組ではおなじみの「牛乳で乾杯」。実はここに、川上さんなりの願いが込められています。
川上 一日コップ一杯200ミリリットル、国民の皆さん全員が飲んだら、今の生産量の3倍ぐらい必要になるという計算になってます。
牛乳を飲む人や習慣で飲んでくれる人が一人でも増えたら、という思いから毎回乾杯しているそうです。川上さんが冷たい牛乳をウーッと言って飲むだけでなく、聞いている人にも一緒に飲んでほしい、という呼びかけですね。
乾杯の前にはお知らせも。グッズ販売サイト「SUZURI」でマグカップやサーモタンブラー、バッグ類など全9アイテムを対象にしたセールが、21日12時から24日23時59分まで開催されると案内します。
SUZURI 自分のイラストやデザインをTシャツやマグカップなどのグッズにして販売できる、GMOペパボが運営するオンラインサービスです。クリエイターとのコラボ商品も作れます。
さらにInstagramの「#未来の牛乳」の取り組みも紹介。「こんな牛乳あったらいいな」という声をAIアートでNFTにして販売し、その売り上げを子ども食堂への牛乳支援や、小中高での食育活動の活動費に充てているそうです。
A2ミルクってそもそも何?認証制度が始まった
ここからが本題のお便りコーナー。スプーンネーム「マリトッツォラリアット」さんからのお便りが読まれます。
質問(マリトッツォラリアットさん) 最近都内でA2ミルクを見ますが、すごく美味しいとか味のことばかり書いてあります。機能をぜひ打ち出すパッケージであってほしいですね。価格に納得するためにも。
川上さんはまず、A2ミルクをめぐる制度の話から入ります。2024年1月ごろに認証制度が始まり、その前段として日本A2ミルク協会が2020年に設立されているそうです。
この協会はA2ミルクの普及と正しい情報提供を目的に作られ、生産者、乳業メーカー、消費者、研究機関、大学などさまざまな関係者が集まって情報交換や研究を行っていると説明します。
A2ミルク 牛乳に含まれるカゼインというたんぱく質のうち、A2β-カゼインだけを持つ牛から搾った牛乳のこと。一般的な牛乳に多いA1型と区別され、お腹がゴロゴロしにくいとされる商品として販売されています。
日本で売られているA2ミルクには、協会の認証を受けたものと受けていないものがあるとのこと。牛乳パックに認証のロゴがついているかどうかで判断できると教えてくれます。
認証マークがつくまでの厳しいチェック
なぜ厳格な認証が必要なのか。その背景には海外での苦い事例があります。
海外ではA2ミルクと称しながら、実際にはA1カゼインを含む食品が流通していた事例が報告されていたそうです。こうした販売から消費者が安心して手に取れるよう、厳しい認証制度が求められているといいます。
認証制度は生産から輸送・加工まで一貫した品質管理基準を設け、トレーサビリティを確保することを目的にしています。具体的にどんなチェックがあるのか、川上さんが挙げていきます。
A2ミルク認証で行われるチェック
1
遺伝子検査
乳牛の体毛や体組織を使い、A2型の遺伝子を持つ牛であることを確認する
2
製品の検査
生乳や製品にA1β-カゼインが混入していないかを検査する
3
継続的な検査
一度きりではなく、定期的に検査を実施する
4
混入防止
輸送や加工の各段階で混ざっていないかを検査する
牧場にはA2遺伝子を持つ牛とA1遺伝子を持つ牛がいて、同じ搾乳機で搾ると混ざってしまいます。そのため別々の牛舎や搾乳設備を使い分ける必要があるそうです。
乳業メーカーで牛乳パックに詰める際も、ラインをきちんと洗って混ざらないようにしないと認証マークはつかないとのこと。それだけの手間ひまがかけられているんですね。
この認証制度は2024年2月から試験運用を開始し、3月上旬から正式運用が予定されていると紹介します。運用を支えるため、独立性や公平性を担保した認証監査委員会も設立されているそうです。
海外では「科学的根拠」が問題に
一方で、A2ミルクをめぐっては海外で議論も起きています。川上さんはAIにまとめてもらった海外のニュースも紹介します。
アメリカではA2ミルクの広告が連邦取引委員会に送付され、調査が行われているとのこと。A2ミルクが通常のミルクよりも健康に良いとする主張に科学的根拠があるかが問題視されているためだといいます。
従来の牛乳に比べてお腹がゴロゴロしないという効果はいくつか報告されている一方、欧州食品安全機関はA2ミルクの優位性を示す根拠は十分でないと評価しているそうです。韓国やニュージーランドでも議論になっているといいます。
日本でも研究は進んでいるものの、日本人が飲んだときにお腹がゴロゴロしにくいのかどうかは、まだ調査段階だと川上さんは話します。
川上 実際皆さん飲んでみて、お腹がゴロゴロしないという方はぜひ飲み続けていただけたらと思います。
なぜ機能性を大きく打ち出せないのか
ここでお便りへの答えに戻ります。マリトッツォラリアットさんの「機能性を打ち出すパッケージにしてほしい」という声。川上さんも、本当は大きく打ち出したいところだと言います。
川上 機能性をぜひ打ち出すパッケージで、ドーンともうお腹ゴロゴロしないでどうしょ、ってやりたいところですけども。
ただ、そこに買う根拠となる確かな科学的裏付けがないため、打ち出しにくいのが現状だそうです。だからこそ「美味しいですよ」「お腹に優しいですよ」といった売り方になっているのだと説明します。
買う根拠がないから打ち出しにくい。だから美味しいですよ、お腹に優しいですよ、みたいな売り方しかできない。 ── 川上
日本ならではの事情と、酪農家の思い
最後は少し脱線しながら、日本の牛乳・乳製品事情に話が広がります。
日本ではA2ミルクとは別に、乳糖を分解したり少なくする技術がすでに出始めていて、乳業メーカーが加工乳や乳飲料でそうした商品を出しているとのこと。世界に比べてヨーグルトの機能性食品も多いそうです。
乳糖 牛乳に含まれる糖の一種。これを分解する酵素の働きが弱い人が牛乳を飲むと、お腹がゴロゴロしやすくなるとされています。あらかじめ乳糖を分解・低減した商品も市販されています。
多様な食品を作ることは大事、と前置きしつつも、川上さんはA2ミルクの売り方について複雑な思いをのぞかせます。
川上 いやいや、頑張って生産してるんですよ、酪農家。やっと上手いことなると思ったところだったんですけど、売り方がちょっとどうだったのかなって思ったりしますね。
5年ほど前の配信でもこのあたりの話をしているそうで、気になる人は遡って聞いてみてほしい、と川上さん。翌日は会議続きで配信を休み、日曜日に再開する予定だと伝えて、この日の配信を締めくくります。
まとめ
A2ミルクは認証制度が整い、遺伝子検査から混入防止まで厳しくチェックされている一方で、機能性の科学的根拠はまだ議論の途中。だからこそ「味」や「お腹に優しい」という売り方になっている、という酪農家目線の解説回でした。
- A2ミルクは日本でも2024年に認証制度が始まり、パックのロゴで認証の有無を判断できる
- 認証には牛の遺伝子検査や、搾乳・輸送・加工での混入防止など多くの手間がかかっている
- 海外ではA2ミルクの健康効果の科学的根拠が十分でないと評価され、議論になっている
- 科学的根拠が確立していないため、機能性を大きく打ち出せず「味」中心の売り方になっている
- 日本では乳糖を減らす技術や機能性ヨーグルトも多く、酪農家は売り方に複雑な思いを抱いている