キャベツ価格高騰の背景と乳価の未来を考える
2025-01-23 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
キャベツが高いのに乳価が上がらない、という素朴な疑問から、酪農が置かれた状況が見えてくる回でした。値段の裏側と、飲む以外の応援の仕方を考えるきっかけになりそうです。
この回の要点
- キャベツやお米の高騰は、猛暑による生産減や産地の一極集中、原油高や物流の変化が背景にある
- 牛乳の店頭価格は地域差があるが、酪農家が受け取る乳価は据え置きで変わっていない
- 脱脂粉乳の在庫や、少子化・団塊世代の減少による消費減が、乳価交渉が進みにくい要因になっている
- 島根県では今月末に乳価交渉が予定され、50円の値上げを求める見方も出ている
- 1頭200万円のクラファンを例に、牛乳を搾るだけでない収益や応援の形を川上さんは前向きに捉えている
配信の全文(podyの記事より)
晴れ続きで春の気配、確定申告に追われる牧場の1日
冒頭は川上牧場のいつもの朝の風景から始まります。この日は1月23日の木曜日で、天気は晴れ。前日も晴れていて、作業していると汗ばむくらいの陽気だったそうです。
川上さんは「若干春を感じてます」と話しつつ、「ちょっとまだ早いか」と自分でツッコミを入れています。気温が中途半端で、服選びが難しい時期でもあるようです。
この日の予定は、堆肥を運び、お昼に液体窒素を取りに行くこと。さらに、参加したセミナーの講師とオンラインでミーティングをする予定も入っていました。
そして避けて通れないのが確定申告です。実質はまだ1月ですが、期限が近づいてきているので、この日のうちにどんどん進めていくと話していました。
川上 確定申告がもう来るよ。もう実質2月、いや1月ですけど。
オープニングのナレーションが美琴さんに変わりました
配信本編に入る前に、川上さんからお知らせがありました。この日からオープニングのナレーションが、いろんな配信者の方によるものに変わったそうです。
今回のオープニングを担当したのは、AWAやSpoonで活動されている美琴さん。「牛乳で乾杯」の歌を歌ったり、ハロンギルという団体のメンバーとしても活動している方だと紹介されています。
川上さんは、配信を一度止めてオープニングをもう一度聞いてほしいと呼びかけていました。感想もぜひコメントで送ってほしいとのことです。
子ども食堂につながる「未来の牛乳」NFTの取り組み
お知らせでは、川上牧場の応援の仕方についても触れられています。ブログを書くアプリ「note」では、メンバーシップを運営しているそうです。
このメンバーシップでは、川上牧場とオンラインでつないで牧場体験をしたり、実際に牧場を訪れて体験したりできると案内されています。
さらにInstagramでは、#未来の牛乳という取り組みも進めています。「こんな牛乳があったらいいな」というアイデアをAIアートにして、NFT ── デジタルデータに固有の証明を付けて所有・売買できる仕組み。ブロックチェーンという改ざんしにくい記録技術を使うとして販売しているそうです。
このNFTの売上は、川上牧場が子ども食堂に牛乳を支援したり、小中高での食育活動の活動費にあてるとのこと。支援がブロックチェーンに刻まれていく、という体験ができる取り組みだと説明されています。
お便り「牛乳の値段は今後どれくらい上がる?」
ここからが本編のお便りコーナーです。この日はSpoonネーム「山さん」からのお便りが紹介されました。
質問(山さん) キャベツが高いのは東京だけかと思ったら地方でも高いんですね。物価高がお給金の上がり方を完全に超えてしまった感覚です。牛乳の値段は今後どれくらい上がる見込みですか?
川上さんはまず余談として、キャベツの状況に触れます。来週ぐらいから生産がぐっと上がって、一玉100円くらいになるそうだと話していました。
川上 来週ぐらいからキャベツの生産がググッと上がるそうなんで、一玉100円とかになるそうですよ。
これはX(旧Twitter)で野菜農家さんが発信していた情報とのこと。値段が上がると一気に生産していくのは農家あるあるで、前回話したお米と同じだと語られています。
キャベツやお米が高くなった背景にあるもの
キャベツの価格高騰の原因について、川上さんは天候不順を挙げます。去年の夏がとても暑かったことで、キャベツの主産地の生産が落ちてしまったそうです。
お米も同じで、暑すぎて生産量が少し落ち、いつものバランスが崩れてしまったとのこと。台風や雨の影響で収穫量が落ちることもあると話しています。
もう一つの原因として挙げられたのが、産地の一極集中です。昔はいろんな地域のいろんな農家さんが生産していたのに、大きい農家さんが増えて産地が固まってしまったことが影響しているといいます。
さらに、原油高による輸送コストの上昇や、2024年問題 ── 2024年4月からトラックドライバーの残業時間に上限が設けられ、物流の輸送能力が下がると懸念された問題で運送会社の働き方が変わったことも重なっているそうです。産地から運ぶのが遅くなっているところもあると説明されています。
牛乳の販売価格は上がっても「乳価」は据え置き
では肝心の牛乳の値段はどうなのか。川上さんによれば、酪農家が受け取るお金は変わっていないそうです。
川上さんはリスナーから各地の牛乳の値段を定期的に送ってもらっているそうで、180円くらいで売られている地域もあれば、九州では1本500円近くになるところもあると紹介しています。
ただ、こうした販売価格の違いと、酪農家がもらうお金は別の話です。酪農家が受け取る乳価は据え置きで変わっていない、と川上さんははっきり話しています。
乳価 酪農家が生乳を出荷したときに受け取る、生乳1kgあたりの取引価格のこと。スーパーで消費者が払う牛乳の販売価格とは別に決まる。
川上 牛乳の販売価格、酪農家がもらっているお金ですね、は変わってません。乳価は据え置きでやらせていただいております。
では販売価格が上がっているのはなぜか。川上さんは、輸送コストや牛乳パックの印刷代の値上がり、そしてスーパー側の判断を理由に挙げます。「値上げしてもまだ買ってもらえる」と判断すれば値上がりする、というわけです。
牛乳の販売価格が上がっても乳価が上がらない仕組み
輸送コスト・印刷代の上昇
原油高や資材の値上がりでコストが増える
↓
スーパーの判断
値上げしても買ってもらえると判断すれば販売価格を上げる
↓
店頭価格が上がる
地域によって180円〜500円近くと差が出る
↓
乳価は据え置き
酪農家が受け取るお金は変わっていない
乳価が上がらない理由と、見えている消費の未来
川上さんは、酪農家の団体と乳業団体のあいだで続いている乳価交渉についても説明します。背景にあるのが、コロナ禍で起きた脱脂粉乳 ── 牛乳から脂肪分と水分を取り除いて粉末にしたもの。生乳が余ったときに保存用に加工されるが、在庫が積み上がると需給の重しになるの在庫の積み上がりです。
この在庫は解消しつつあるものの、根本的な対応策があったわけではないと川上さんは言います。ここが解決しないと生産量を増やせず、それができないと乳価も上がらないという構図です。
さらに深刻なのが、消費が減っていく未来がすでに見えていることです。団塊の世代がいなくなり、子どもが減って学校給食の消費も減っていく。そうした先行きがあるため、値上げ交渉が進みにくいのが現実だと語られています。
それでも今月末に島根県でも乳価交渉が行われる予定で、「50円ぐらい値上げしてもらわないとやっていけないのでは」という見方も出ているそうです。地域によっては10円から20円の値上げ要望が出ているとのことです。
乳価も上がらないっていうところがありますね。 ── 川上
1頭200万円のクラファンから考える、酪農の新しい稼ぎ方
話は、最近話題になった別の酪農家のクラウドファンディングに移ります。経営が厳しいなかで、値段がつかず殺されてしまうジャージー ── 乳牛の品種の一つ。乳脂肪分が高く濃厚な牛乳を出すが、雄は肉としての価値がつきにくいことがあるの雄を支援してほしい、という内容だったそうです。
このクラファンは200万円を超え、一部の酪農家からは「詐欺だ」「消費者を騙している」といった批判のコメントもあったといいます。
ただ川上さんの見方は逆でした。牛1頭に対して200万円の売上を出せる手段ができたのだから、前向きなニュースだと受け止めていると語ります。
川上 全国の酪農家が牛1頭に対して200万の売上出せる、その手段ができてるんですよって思うと、前向きなニュースだと僕はめちゃめちゃ思ってた。
そのうえで川上さんは、今まで通りのやり方では潰れていくだけだと消費者にも呼びかけます。牛乳を搾るだけでなく、牛を生産して地域を維持したり、牛という生き物の魅力を収益につなげたりする形が広がればいい、という考えです。
消費者の皆さんも、牛乳を飲むだけじゃない応援の仕方っていっぱいありますから。 ── 川上
どんどん壊れる牧場の設備、リアルな見積もり
コメントコーナーでは「今一番拡充したい牧場の設備は何ですか?」という質問が来ました。川上さんは壊れそうな設備を次々に挙げていきます。
まず一番壊れそうなのがバーンクリーナー ── 牛舎の床にたまった牛のふんを、チェーンなどで運び出す掃除用の機械のチェーンで、これが180万円。自動で餌をやる給餌機は600万円だそうです。
・バーンクリーナーのチェーン 180万円
・自動給餌機 600万円
・ミルカーの自動洗浄機の更新 80万円
・ホイルローダーのタイヤ 1本10万円
トラクターも整備はしているものの、かなり厳しい状態だと話しています。設備の見積もりを並べていくと、「新しく牛舎を建てた方がいいな」という気持ちになってしまうそうです。
川上 ぜひ50円値上げよろしくお願いします。本当に死んじゃう。
最後に川上さんは、消費者に応援してもらって飲む人を増やしてから、新しい牛舎を建てられたらいいと締めくくります。この日はコメントがたくさん寄せられ、いつもより長めの配信になりました。
まとめ
キャベツが高いのに乳価が上がらない、という素朴な疑問から、酪農が置かれた状況が見えてくる回でした。値段の裏側と、飲む以外の応援の仕方を考えるきっかけになりそうです。
- キャベツやお米の高騰は、猛暑による生産減や産地の一極集中、原油高や物流の変化が背景にある
- 牛乳の店頭価格は地域差があるが、酪農家が受け取る乳価は据え置きで変わっていない
- 脱脂粉乳の在庫や、少子化・団塊世代の減少による消費減が、乳価交渉が進みにくい要因になっている
- 島根県では今月末に乳価交渉が予定され、50円の値上げを求める見方も出ている
- 1頭200万円のクラファンを例に、牛乳を搾るだけでない収益や応援の形を川上さんは前向きに捉えている