生乳は足りてる?余ってる?最新の需給状況をチェック!

2025-01-31 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

今回は、島根の酪農家・川上さんが会議で得た最新の牛乳需給の話をシェアしてくれました。脱脂粉乳の在庫は解消した一方で、飲む牛乳の消費減や地域差、増産への不安など、これからの課題も見えてくる回でした。

この回の要点

  • 飲用向けの牛乳消費は前年比97.7%と減り、余った分は脱脂粉乳などの加工に回っている
  • 生産量は全国で見ればほぼ横ばいだが、北海道が増産し、その他の地域は軒並み減少している
  • 消費者がヨーグルトなどをよく食べたおかげで、脱脂粉乳の在庫はコロナ禍前ぐらい(約6か月分)まで戻った
  • 物価高の中でも牛乳の乳価は4月時点で据え置きとなり、川上さんはたくさん飲んでほしいと呼びかけている
  • 乳糖不耐症でもA2ミルクや乳糖フリー商品、ヨーグルトなどから乳製品を楽しめる

配信の全文(podyの記事より)

会議で聞いた牛乳需給の話をシェア

この日、川上さんは前日に参加した島根県の会議の話を切り出します。これは牛乳のこれからの価格を交渉していく大きな会議で、そこで得た情報のうち、消費者に伝えられる部分を話していきます。

テーマは牛乳の需給の状況です。コロナのときには脱脂粉乳が積み上がって「牛乳を捨てなきゃいけない」とまで言われていましたが、その後どうなったのかという近況が語られます。

脱脂粉乳 牛乳から脂肪分と水分を取り除いて粉末にしたもの。長期保存がきくため、消費されずに余った生乳の受け皿になります。コロナ禍では需要が落ち込み、在庫が積み上がったことが問題になりました。

飲む牛乳が減り、加工に回っている

まず牛乳には仕向け先の違いがあります。牛乳パックとして売られる「飲用向け」と、ヨーグルトや脱脂粉乳、バター、生クリームになる「加工向け」です。

その飲用向けが、前年対比で97.7%。つまり飲む牛乳の消費が3%ほど落ちているということです。

一方で加工向けを見ると、脱脂粉乳・バター向けが前年対比104%と伸びています。飲む牛乳として行き先を失った分が、長期保存できる加工へ回っている流れが数字に表れています。

仕向け先別の前年対比

97.7%

飲用向け(牛乳)

104%

脱脂粉乳・バター向け

99%

発酵乳向け(ヨーグルトなど)

発酵乳向けは99%、生クリーム向けは100%で前年とほぼ変わらず、チーズ向けは99%と若干下がっています。牛乳の価格が上がったことや世の中の物価高で、毎日牛乳を買っていた人が加工乳などに切り替えているのでは、と川上さんは見ています。

生産量は横ばい、でも地域差が大きい

次は全国の酪農家が搾った生乳の生産量です。全国で見ると前年対比99.9%と、ほとんど変わっていません。酪農家の戸数が1万戸を切ったというニュースが出ても、生産量そのものは保たれているのが現状です。

どこが支えているかというと北海道です。北海道は前年対比100.9%と、わずかに増えています。数字は小さく見えますが、北海道の規模で0.9%増えるということは、増産している牧場はしっかり増産しているということです。

一方でそれ以外の地域は軒並み生産量が落ちています。東北97.4%、関東99.8%、北陸95.8%、東海97.5%、近畿98.7%、四国96.9%、九州98.1%。北海道と中国地区以外はマイナスです。

中国地区の100.4%も、大きく規模拡大した牧場が頑張っているためで、地域全体が伸びているわけではないと川上さんは補足します。

県単位で見るとさらに厳しく、鹿児島県は93%、徳島県は90.5%で1割減、埼玉県と宮城県も93%まで落ち込んでいます。酪農家戸数は減っても、その分を北海道が搾っているという構図です。

北海道の「アウトサイダー」と需給のずれ

続いて川上さんは、北海道で起きていた「アウトサイダー」の話をします。これは需要と供給のバランスを崩す一因になっていた仕組みです。

指定団体 JAなどが中心となり、地域ごとに生乳の流通や需要と供給のバランスを調整する団体。ここを通すことで全国的な需給の安定が図られています。

指定団体を通すと牛乳の値段が安いため、生乳を高いところへ運んで売る民間の会社が出てきました。そこに出す酪農家が北海道から結構出てきていたといいます。

その差は流通に表れます。通常の北海道牛乳は島根県まで運ばれると運送料もあって300円ほどですが、アウトサイダーに出した牛乳は北海道から運んでも180円ほどで売られることもあったそうです。

川上 これはもうあの生産量が多い酪農家さんから特急でこう、どこも通さずに直通でね、下ろしたりすると、それぐらいの値段で売ってたりとかね、するんですけども。

こうした牛乳が出回ることで需要と供給のバランスがずれてしまうのが問題でした。これを直そうと、政府や指定団体、乳業会社、酪農家が話し合い、対策が進められました。

具体的には、乳業会社と酪農家が積み立てる基金のような拠出金の仕組みです。この基金に参加しないと国からの補助金を受けられないというルールをつくり、不公平感をなくす方向で話し合いが進んでいます。まだ決定ではないものの、ほぼ固まりつつあるといいます。

脱脂粉乳の在庫は解消、在庫は6か月分に

消費者からよく聞かれる「脱脂粉乳の積み上がりは解消されたのか」という疑問に、川上さんははっきり答えます。

川上 脱脂粉乳解消しました。ありがとうございます。

たくさんの人が牛乳や乳製品、とくにヨーグルトを食べてくれたおかげで、在庫はコロナ禍前ぐらいまで戻り、今は大体6か月分ほどになっているそうです。いろいろ試行錯誤してきた成果だといいます。

ここから牛乳の消費が伸びれば、酪農家の生乳の販売価格を上げることができます。ただ、4月からの値上げ交渉は行われたものの、4月時点での乳価は据え置きとなりました。

物価がどんどん上がり、いろんな食品が10%、20%と値上げする中で、牛乳だけは据え置きでやらせていただいていると川上さんは話します。だからこそ、たくさん飲んでほしいと呼びかけます。

在庫解消の裏にあった、みんなの努力

在庫が解消されたのは、いろんな立場の努力が重なった結果だと川上さんは振り返ります。「いつの間に」と思われがちですが、徐々に積み重ねられてきたものでした。

酪農家自身が生産量を減らしたり離農したりした部分、メーカーが脱脂粉乳を使った食品を数多く出した部分、酪農家が拠出金を出して在庫を減らす対策をした部分、そして国が助けてくれた部分。それらが合わさって在庫解消につながりました。

増産する北海道と、出口戦略への不安

ただ、川上さんは手放しでは喜べないと続けます。人口が減っていく中で、北海道は牛乳の生産量を大々的に増やす方向に動いているからです。

ホルスタインの品種を交配した場合に補助金をつける動きも出てきているといいます。人口が減るのに増産して大丈夫なのか、という不安を川上さんは口にします。

川上 ちょっと心配です。出口戦略まだ決まってないのに増産するのかと。これから人口が減るのに増産するのかっていう。

一方で、消費者に「足りない」という状況を作るのが一番よくない、とも考えています。去年バターが足りずにケーキ屋やパン屋が困るニュースが出たように、ああいう不足は対策したい。北海道には搾ってほしい気持ちと、出口戦略への心配が入り混じっているといいます。

出口戦略 増産した生乳をどう消費・販売しきるかという計画のこと。売り先の見通しがないまま生産量だけ増やすと、また在庫が余る事態につながりかねません。

お便りコーナー:蘇づくりと冷凍牛乳

ここからはお便りコーナーです。スプーンのモグラキキセンさんから、以前話題になった「蘇」を作ってみたい、冷凍牛乳もストックしておきたい、というコメントが届きました。

蘇(そ) 牛乳を長時間煮詰めて水分を飛ばして作る古代の乳製品。江戸時代などには滋養強壮の薬になるほど高級な食材で、朝廷への献上品にもされていました。

川上さんによると、蘇は40分ほど煮詰めて作れますが、牛乳の水分はほぼ90%あるため、100mlからは10gほどしか残らないそうです。焦げやすくてフライパンを1つダメにするかもしれない、時間をかけたぶん美味しいとも限らない、というのが正直なところだと話します。

牛乳をストックしておきたい人には、常温保存できる超高温殺菌牛乳がおすすめだといいます。Amazonなどで「超高温殺菌牛乳」と検索すると出てくるので、常備しておくと便利です。

乳糖不耐症でも飲める牛乳と、ヨーグルトの習慣

続いて、Xでstand.fmの配信を聞いてくれたミラさんからのコメントです。乳糖不耐症の自分にとってはA2ミルクが気になる、という内容でした。

乳糖不耐症 牛乳に含まれる乳糖をうまく分解できず、飲むとお腹がゴロゴロしたり下したりする体質のこと。日本人にも多く見られます。

川目上さんは、お腹がゴロゴロする人向けの商品が増えていると紹介します。A2ミルクのほか、乳糖を取り除いた乳糖フリーの商品も他メーカーから出てきています。

さらにおすすめなのがヨーグルトやチーズです。発酵によって乳酸菌が乳糖を分解してくれるため、お腹がゴロゴロしやすい人でも取り入れやすいといいます。

川上 毎日習慣にしてもらうとね、お腹の中の微生物がこう乳製品に合うように変わってきて、あのいつか食べれるようになりますんでね。

乳製品を毎日の習慣にすることで、少しずつ体が慣れて飲めるようになることもある。そんなふうに楽しんでほしい、と川上さんは締めくくります。

物価がどんどん上がる中、牛乳だけは据え置きでやらせていただいておりますので、ぜひたくさん飲んでもらえたら嬉しいなと思います。 ── 川上

まとめ

今回は、島根の酪農家・川上さんが会議で得た最新の牛乳需給の話をシェアしてくれました。脱脂粉乳の在庫は解消した一方で、飲む牛乳の消費減や地域差、増産への不安など、これからの課題も見えてくる回でした。

  • 飲用向けの牛乳消費は前年比97.7%と減り、余った分は脱脂粉乳などの加工に回っている
  • 生産量は全国で見ればほぼ横ばいだが、北海道が増産し、その他の地域は軒並み減少している
  • 消費者がヨーグルトなどをよく食べたおかげで、脱脂粉乳の在庫はコロナ禍前ぐらい(約6か月分)まで戻った
  • 物価高の中でも牛乳の乳価は4月時点で据え置きとなり、川上さんはたくさん飲んでほしいと呼びかけている
  • 乳糖不耐症でもA2ミルクや乳糖フリー商品、ヨーグルトなどから乳製品を楽しめる