AI導入で牛の死亡率67%減!日本でも進む酪農DX

2025-02-02 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

今回は、東京理科大学のマルチカメラ研究と、韓国のAI健康管理システムという2つのニュースを通して、酪農の現場で進むAI活用が語られました。担い手不足や技術継承という課題に、AIがどう寄り添えるのかが見えてくる回でした。

この回の要点

  • 東京理科大は、複数カメラと位置情報で牛舎全体の乳牛を一貫して追跡する手法を開発した
  • AIが牛そのものを認識し移動パターンを分析することで、病気や発情、餌の食いの変化に気づける
  • 韓国ではAIカメラとセンサーの導入で、牛の死亡率が年10.5%から3.4%へ約67%減り、乳量も1.8%増えた
  • 素人でも一定水準で牛を見られるようになれば、酪農への参入ハードルが下がる可能性がある
  • 日本で普及させるには、法律の整備が課題になると川上さんは指摘している

配信の全文(podyの記事より)

節分の朝、確定申告デーの牧場から

この日は2月2日の日曜日。牛乳を飲む番組「牛乳のむ?牧場配信」が、曇り空の島根から始まります。

今年は例年と少しずれて、2月3日ではなく2月2日が節分なのだそう。ちょっとした豆知識から配信はゆるやかにスタートします。

日曜日は2週間に一回のヘルパーを取っている日で、夕方は川上さんもお休み。とはいえ午前中は餌の準備や子牛の世話があり、休みといっても完全にフリーではありません。

川上 家でなんか映画でも見ながら、あの事務作業、確定申告ですね。

2月に入って、そろそろやらなければいけない確定申告。牧場の仕事の合間に事務作業も進める、そんな日曜日の過ごし方が語られます。

SUZURIのセールと「未来の牛乳」NFT

乾杯の前に、川上牧場からのお知らせが2つ紹介されます。まず1つ目は、グッズ販売サイト「SUZURI」のセールです。

Tシャツやスウェット、パーカーなどがセール中とのこと。川上牧場と、アーティストやイラストレーターがコラボしたグッズも展開されています。

SUZURI 画像やイラストをアップするだけでTシャツやグッズを作成・販売できるサービスです。個人でもオリジナルグッズを気軽に販売できる仕組みとして知られています。

もう1つは、Instagramの「#未来の牛乳」の取り組みです。こんな牛乳や乳製品があったらいいな、という声をAIでアートにして、NFTとして販売しています。

このNFTの売上は、こども食堂への牛乳支援や、小中高での食育活動の活動費に充てられるとのこと。みんなの応援が、子どもたちの未来の牛乳につながるという仕組みになっています。

NFT デジタルデータに「唯一のもの」という証明を付けられる仕組みです。アート作品などをデジタル上で販売・保有できるようにする技術として使われています。

複数カメラで牛を追う、東京理科大の新手法

乾杯のあとは、AIがまとめたニュースの紹介コーナーです。1本目は、PR TIMESからの記事で、東京理科大学の研究が取り上げられます。

内容は、マルチカメラシステムを使って複数の乳牛を一貫して追跡できる、位置情報ベースの手法を開発したというもの。複数のカメラで牛舎全体の乳牛を追跡する、初めての試みだと紹介されます。

乳牛の管理では、常に様子を観察して異常を早く見つけることが大切です。ただ、これまでは人の目で判断しており、酪農従事者の減少に加えて、信頼性の面でも課題が残されていました。

カメラを使った監視システムはこれまでもありましたが、牛の姿勢の変化や細かい動きで、十分な追跡精度が得られていなかったといいます。画像の特徴量に基づく複数カメラの方法にも、性能的な限界があったそうです。

そこで研究グループは、位置情報にもとづく新しい追跡方法を提案しました。複数のカメラを使っても、一頭ずつの乳牛を識別して牛舎全体で追い続けられる手法の開発に取り組んだ、という研究です。

川上さんの説明によると、このシステムのすごい点は、牛に付いている個体識別番号のような情報だけでなく、牛そのものを認識するところ。そのうえでAIが移動パターンを分析し、取り違えを防ぐのだそうです。

マルチカメラ追跡が見つけてくれること

牛舎を常時監視

複数カメラで牛の位置や行動をリアルタイムに記録する

↓

個体を認識・追跡

個体番号だけでなく牛自体を認識し、AIが移動パターンで取り違えを防ぐ

↓

異常の早期発見

病気の早期発見や発情、餌の食い具合の変化などに気づける

素人が来ても牛を見られる。参入ハードルを下げるAI

担い手不足や高齢化が進むなか、酪農業界では技術の継承がとても難しくなっています。牛の飼い方ひとつで牛の状態が変わり、環境も牧場ごとにまったく違うからです。

川上さん自身、酪農ヘルパーとしていろいろな牧場を回った経験があります。何事もなく終わったと思ったら、突然の怒鳴り声で叱られることもあったといいます。

川上 もうおきなり怒られ、あの怒鳴り声でですね、この牛の体調が悪いじゃないかみたいな、もう怒られたりもしちゃうこともあります。

一日だけ入ったヘルパーには、その牧場の牛の細かい状態まではわからない、というのが現場のリアルです。AIによる観察は、そこを補ってくれる可能性があります。

どんな素人が来ても、牛を見る技術がなくても一定の水準で牛を見られる。川上さんは、それが酪農に入ってくる参入のハードルを下げるのではないか、と期待を寄せます。

韓国の事例。AI導入で死亡率が67%減

2本目のニュースは、お隣の韓国から。朝鮮日報の記事で、「AIが牛を育てたら死亡率が67%も減った」という内容が紹介されます。

こちらもAIカメラとセンサーを活用した牛の健康管理システムです。導入前の死亡率は年間10.5%だったといいます。

川上さんによると、日本の酪農の事故率のようなものは5%ほど。それと比べると10.5%は倍以上で、かなり高い数字だと受け止められています。

川上 一割死んでるってちょっとやべえ牧場だと思ってるんですけど、

そのシステムを導入すると、死亡率は年間3.4%に下がり、約67%の減少になったとのこと。病気が減ると乳量も増えるため、平均で1.8%増加したそうです。

韓国のAI健康管理システムの効果

67%

牛の死亡率が減少(年10.5%→3.4%)

1.8%

平均の乳量が増加

仕組みとしては、AIが牛の行動・体温・食事量をリアルタイムでモニタリングします。異常があればすぐ通知し、病気の早い兆候を検知して、早期治療につなげるというものです。

日本で広げるなら、法律の整備がカギ

世界各地で、AIを活用した牛の飼い方や農業への応用が進んでいます。川上さんも、こうした流れがこれからどんどん入ってくるだろうと見ています。

ただ、日本で同じことをやろうとすると、法律の問題が壁になるといいます。そこが難しくなってくるので、そこら辺も整備してもらいたいと川上さんは語ります。

日本でやろうと思ったら、やっぱりあの法律の問題ですね。そこら辺も整備してもらいたいなと。 ── 川上

日曜日の朝、豆まきと牛乳で

ニュースのあとはコメント欄へ。日曜日の朝、たくさんのリスナーが聞いてくれたことへの感謝が語られます。

節分の日ということで、豆まきの話題も。豆はいいけれど、絞り汁だけは牛乳にしてほしい、という川上さんらしいひとことで締めくくられます。

日曜日でも仕事や学校の人がいます。「いってらっしゃい、みんな牛乳飲んでね」という見送りで、この日の配信は終わります。

まとめ

今回は、東京理科大学のマルチカメラ研究と、韓国のAI健康管理システムという2つのニュースを通して、酪農の現場で進むAI活用が語られました。担い手不足や技術継承という課題に、AIがどう寄り添えるのかが見えてくる回でした。

  • 東京理科大は、複数カメラと位置情報で牛舎全体の乳牛を一貫して追跡する手法を開発した
  • AIが牛そのものを認識し移動パターンを分析することで、病気や発情、餌の食いの変化に気づける
  • 韓国ではAIカメラとセンサーの導入で、牛の死亡率が年10.5%から3.4%へ約67%減り、乳量も1.8%増えた
  • 素人でも一定水準で牛を見られるようになれば、酪農への参入ハードルが下がる可能性がある
  • 日本で普及させるには、法律の整備が課題になると川上さんは指摘している