畜産DX最前線:エプソンの新技術とは
2025-02-05 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
今回の配信は、エプソンが開発した牛の健康AI測定システムを入り口に、畜産の現場でデジタル化がどう進んでいるかを、島根の酪農家の目線で語る回でした。技術の話だけでなく、担い手づくりや雪の中の現場の姿まで、酪農の今がぎゅっと詰まっています。
この回の要点
- エプソンと長野県は、AIと深度カメラで牛のBCS(体型指標)を自動測定するシステムを開発した
- BCSは牛の太り・痩せを1から5で評価する指標で、適正は3から3.5とされる
- つなぎ牛舎でも使える点が、川上さんの見るこのシステムのメリット
- 川上さんは農業高校での出前授業などを通じて、酪農の担い手づくりに取り組んでいる
- 寒波の中、集乳車の手助けや地域の雪かきをする酪農家の姿も紹介された
配信の全文(podyの記事より)
雪の朝、農業高校で酪農の担い手を育てる一日
配信は、川上牧場の川上さんが2月5日水曜日の朝の様子を伝えるところから始まります。天気は雪で、最低気温はマイナス2度。牛の水道管が凍ったり解けたりする、寒い一日だそうです。
この日の午前中、川上さんは近所の農業高校へ講師として出かける予定を話します。地域の若手酪農家の団体で、高校生と酪農について話す活動です。
川上 酪農の担い手、酪農業界への担い手ですかね、そういうのをする活動にちょっと行ってきますんで。
午後はもみ殻を取りに行く準備をする予定とのこと。前日はカンナくずを寒い中取りに行き、子牛が生まれてミルクをやったりと、忙しい一日だったと振り返ります。
応援の形いろいろ、noteのメンバーシップと未来の牛乳NFT
牛乳で乾杯する前に、川上さんは番組のお知らせを2つ紹介します。1つ目は、noteで運営しているメンバーシップです。
メンバーシップでは、川上牧場とオンラインでつないだ牧場見学や、直接牧場に来ての見学ができるほか、過去の有料記事も読み放題になるそうです。
2つ目は、Instagramで展開している「#未来の牛乳」の取り組みです。飲んでみたい牛乳のアイデアをNFT ── デジタルデータに固有の証明をつけて売買できる仕組み。作品やアイテムの「持ち主」を記録できるのが特徴です。として販売しています。
このNFTの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小中高での食育活動の活動費に充てるとのこと。子どもたちの牛乳の未来を支える取り組みとして紹介されています。
エプソンが開発、カメラとAIで牛の健康を瞬時に測る
乾杯を終えて、この日のメインとなる農業ニュースの紹介に入ります。取り上げたのは、日本経済新聞に載ったエプソンの記事です。
記事によると、セイコーエプソンは牛の健康データを瞬時に自動測定できるシステムを開発しました。カメラで撮影した牛の画像をもとに、AIが解析して測る仕組みです。
川上 エプソン、牛の健康をAIで瞬時測定、畜産DX実用化へというそんな記事になっております。
多くの牛を飼育する場合、これまで難しかった全個体のデータを日ごとに手軽に取得できるのが特徴です。今後は大規模な実証実験を経て、畜産DX ── デジタル技術を使って畜産の作業や管理を効率化し、生産性を上げる取り組みのこと。DXはデジタルトランスフォーメーションの略です。のシステムとして実用化を目指すとされています。
痩せ・太りを1から5で見る、BCSとは何か
川上さんは、記事の内容をChatGPTでさらに調べた結果も共有します。エプソンは長野県との共同研究で、AIと深度カメラを使った牛の体型指標BCSの評価システムを開発したそうです。
BCS(ボディコンディションスコア)とは、牛が太っているか痩せているかを段階で測る指標のことです。川上さんは、簡易な健康診断表のようなものだと説明します。
川上 牛の太った痩せたっていうのをね、段階で1、2、3、4、5の段階で測定するような、そういう健康診断表みたいな、そんなのがあるんですよね。
牛の体脂肪の蓄積状態を1から5のスコアで評価し、適正は3から3.5とされています。牛の健康維持や繁殖能力に重要な指標です。
これまでこの評価は専門家の目視に頼っていて、判定のばらつきや、定期的に評価するのが難しいことが課題でした。
エプソン×長野県のBCS自動測定システム
連携協定
2022年11月、DX促進による畜産振興に向けてエプソンと長野県が締結
↓
深度カメラで撮影
牛の通路上に設置したカメラで牛を測定
↓
AIが画像を解析
個体識別とボディコンディションを自動で測定
↓
継続的な追跡
日々の健康状態の変化を専門家と同等の精度で追う
エプソンと長野県畜産試験場は、試験場と民間牧場で2年間にわたり実証実験を行い、システムの有効性を確認したそうです。今後も実証を続け、商品化を目指すとしています。
AIの進化は加速中、酪農の現場にどう入るか
川上さんは、このニュースを一昨日に紹介した韓国や国内のカメラを使った牛の管理システムと重ねて、こうした技術が続々と出てきていると話します。
話はAI全般の進化にも広がります。一昨日にChatGPTの新機能が出たことに触れ、AIがどんどん進化していると語ります。
川上 なんかもう人間の知能を超えたみたいなことになってまして、アインシュタインぐらいの知能のAIが24時間使い放題になるみたいな、そんな時代になってきましたよ。
先月までは「人間の知能程度」と言われていたものが、さらに加速しているとのこと。こうしたAIが畜産業に入り、データ解析などに活用されれば、生産性がまた上がるのではと期待を語ります。
気になる費用と、つなぎ牛舎でも使えるという強み
川上さんは、実用化にあたっての費用にも触れます。カメラの値段によりますが、安いもので1台10万円ほどか、と見積もりつつ、それを牛舎に何台つけるのかが課題だと話します。
一方で、このシステムのいいところとして、つなぎ牛舎でも使える点を挙げます。
つなぎ牛舎 牛を1頭ずつ決まった場所につないで飼育する牛舎のこと。牛が常に同じ位置にいるため、通路にカメラを設置する方式との相性がよいと考えられます。
川上 つなぎ牛舎っていって、牛がこう常に同じところにいるような牛舎なんですけども、それのところでも使えるっていうのがやっぱメリットじゃないかなと思ったりするところですね。
川上さんは、また新しい情報が出たら共有したいと締めくくります。
高校生への出前授業に文句?それでも担い手を育てたい
ニュースの後は、リスナーのコメントに答えます。冒頭で話した若手酪農家の団体について、「いつものメンバーですか?」という問いに、その通りだと答えます。
若手といっても平均年齢は50歳ほどで、川上さんより若いメンバーもいる、と笑いながら説明します。
高校生への出前授業のために、島根県の会議で予算の交渉をした際のエピソードも明かされます。年配の方から思わぬ言葉をかけられたそうです。
川上 本当にこんな情勢の中、高校生を騙すつもりかみたいなこと言われたんですよ。
川上さんは「いやいや、この時代作ったのあんたらやないか」と内心思いつつ、笑ってやり過ごしたと話します。それでも、若手に酪農業界を変えてもらいたいという思いは変わりません。
酪農業界も本当に頑張って、若手の皆さんに頑張ってもらって、革命を起こしていただきたい。 ── 川上
アインシュタイン級のAI、その意味は?
コメントでは、AIの話題にも反応があります。「アインシュタインってコミュニケーション取れない人でしたよね。AIがアインシュタインになったら困りますね」という声への回答です。
川上さんは、AIがアインシュタインそのものになるわけではなく、それくらいのIQがあるという意味だと補足します。
川上 東大の合格率がもう99パーセントみたいなね。一番最近の東大の受験のやつがそれぐらい通るよみたいなことですね。
そのうえで、リスナーにも気軽にAIを使ってみてほしいと呼びかけます。
雪かきする酪農家、気づかれない現場の一日
配信の締めくくりで、川上さんは寒波の影響にも触れます。各地で大雪となり、集乳車が来られなかったり、集乳車を助けるためにローダーで出動した酪農家もいるそうです。
さらに、地域の雪かきをしているのも酪農家だったりすると、川上さんは語ります。気づかれていないだけで、現場を支える人たちがいるのです。
川上 地域の雪かきしているのも酪農家さんだったりしますよ。皆さん、気づいてないだけで。
最後は、仕事や学校へ向かうリスナーに「いってらっしゃい。みんな牛乳飲んでね」と声をかけて配信を終えます。
まとめ
今回の配信は、エプソンが開発した牛の健康AI測定システムを入り口に、畜産の現場でデジタル化がどう進んでいるかを、島根の酪農家の目線で語る回でした。技術の話だけでなく、担い手づくりや雪の中の現場の姿まで、酪農の今がぎゅっと詰まっています。
- エプソンと長野県は、AIと深度カメラで牛のBCS(体型指標)を自動測定するシステムを開発した
- BCSは牛の太り・痩せを1から5で評価する指標で、適正は3から3.5とされる
- つなぎ牛舎でも使える点が、川上さんの見るこのシステムのメリット
- 川上さんは農業高校での出前授業などを通じて、酪農の担い手づくりに取り組んでいる
- 寒波の中、集乳車の手助けや地域の雪かきをする酪農家の姿も紹介された