加工用乳価3円アップ!消費者と酪農家にどんな影響が?
2025-02-08 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
今回は、北海道で決まった加工用乳価の引き上げニュースを、島根の酪農家である川上さんの視点でかみくだいた回でした。嬉しい値上げの裏側にある、消費への影響や国産を選ぶ大切さまで伝わってくる内容です。
この回の要点
- 加工用乳価は6月から3円アップ、バター・生クリーム向けはさらに7円加算で計10円の引き上げ
- 10円の引き上げは2023年4月と並ぶ過去最大の上げ幅で、飲用向けの道内乳価は141円40銭で据え置き
- 川上さんの試算ではバターは100円ほど値上がりする可能性があり、消費が落ちないかが心配される
- 値上げでマーガリンなどに流れず、消費者が国産バターを選び続けることが大事になる
- よつ葉乳業はロングライフ牛乳をインドネシアなどへ輸出、北海道の牛乳が海外にも広がっている
配信の全文(podyの記事より)
雪の朝、島根の牧場から今日の一杯
この日の島根県出雲市はあいにくの雪。最高気温3度という寒さの中、川上牧場の川上さんが朝の配信を始めます。
川上さんはこの日、子牛の牛舎を掃除して糞を堆肥にし、トウモロコシを育てる圃場にまく作業を予定していると話します。
川上 今日が2月の8日の土曜日でございます。今日の天気は雪ということで寒いです。
前日も吹雪の中、ホイールローダーで圃場まで十何往復もしたそうで、雪道を通るたびに「白い目で見られた」と、雪だけに、とちょっとした冗談も。10分から15分ほどの配信で、最後まで聞いてほしいと呼びかけます。
乾杯の牛乳は、最近分娩した牛のおかげで乳脂肪が4.2パーセントになったバルク乳。餌をよく食べてくれているそうで、濃い牛乳になっていると教えてくれます。
川上 最近ちょっと分娩した牛がいたんで、乳脂肪が4.2パーセントになりましたね。牛いいですね。
乳脂肪 牛乳に含まれる脂肪分の割合のこと。数値が高いほどコクのある濃い牛乳になります。牛の状態や餌によって変動します。
「乳価の値上げはどう?」という質問から
この日のニュースは、リスナーから届いた質問がきっかけでした。インスタグラムの質問ボックスに、やまさんから声が寄せられていたのです。
質問(やまさん(リスナー)) 乳価の値上げはどうしたらできますか?
川上さんはこれまで「乳価の値上げはなかなかできない」と話してきましたが、ちょうど前日にそれに答えるようなニュースが出たと切り出します。
川上 乳価の値上げなかなかできないできないと言っておりましたけれども、昨日ですか、ニュース上がっております。
加工用乳価3円アップ、バター・生クリームはさらに7円
紹介されたのは北海道新聞ウェブ版の記事です。ホクレンが6日、6月から飲用を除く加工用の乳価を1キロあたり3円引き上げると発表した、という内容でした。
さらにバターと生クリーム向けは7円が加算され、あわせて10円の引き上げになります。飼料高騰などの生産コスト上昇を踏まえ、大手中堅の乳業メーカー15社と合意したものです。
ホクレン 北海道の農業協同組合連合会。酪農家が搾った生乳を集め、乳業メーカーへの販売や価格交渉などを担う組織です。
この10円という上げ幅は、2023年4月に加工用を一律10円引き上げたときと並ぶ過去最大のもの。関係者によると、バター向けは101円46銭、生クリーム向けは107円50銭になるとされています。
一方で、飲用向けの道内乳価は141円40銭で据え置きとなりました。ホクレンの酪農部は、当初の要求通りとはいかなかったものの、一定の引き上げができたとコメントしています。
川上 本当に昨日でもですね、北海道の酪農家さんが本当にやっとかつって投稿しておりましたけども、嬉しいですね。
加工用と飲用の乳価 同じ生乳でも、そのまま飲む牛乳(飲用)と、バターやチーズなどに加工するもの(加工用)で価格が分けて決められています。今回上がったのは加工用です。
バターは100円くらい上がる?消費が落ちないか心配
嬉しいニュースの一方で、川上さんが気にかけるのが「値上げで消費が落ちないか」という点です。
川上さんの試算では、生乳1リットルからバター向けの乳が100グラムほどできるため、10円の引き上げが重なると、バターは100円くらい値上がりするのではないかと話します。今500円ほどのバターが600円ほどになるイメージです。
さらに気になるのが、値上げによって消費者がマーガリンや植物性クリームへ流れてしまうことだといいます。
川上 バターの値上げとかしたりするとですね、やっぱりマーガリンとか、植物性のクリームとかね、そういうものに逃げていきがち。
加えて川上さんは、貿易のゆくえも心配だと語ります。日本はTPPで乳製品の関税を段階的に下げていく途中ですが、アメリカがTPPを抜けたことで、トランプ政権下でのバター輸入や関税がどうなるか読みにくいというのです。
TPP(環太平洋パートナーシップ協定) 太平洋を囲む国々の間で関税を下げ、貿易を活発にする協定。乳製品も対象で、日本は関税を段階的に引き下げる途中にあります。
だからこそ、値上げの中でも消費者が国産のバターを選び続けてくれるかどうかが大事になる、というのが川上さんの見立てです。
川上 消費者がどういうふうに、それでも国産のバターを選んでくれるのかっていうのが大事になってきます。
飲用の牛乳の乳価は据え置きになったので、川上さんは牛乳の消費も伸ばしてほしいと呼びかけます。10月あたりに飲用も10円くらい値上げしてもらえると、ちょっと明るい兆しが見えてくると期待を語りました。
よつ葉乳業がインドネシアへ、海外に広がる北海道の牛乳
もう一つ、川上さんが乳業メーカーの頑張りが伝わるニュースとして紹介したのが、よつ葉乳業の海外輸出の話です。日本経済新聞の記事を引用しています。
記事によると、よつ葉乳業は牛乳の海外輸出を広げ、インドネシアへ新たに輸出するほか、マレーシア市場を本格的に開拓するとのこと。2024年の農林水産物・食品の輸出額が初めて1兆5000億円を超えるなど、日本食の輸出が伸びている流れに乗ったものです。
輸出するのは生乳ではなく、常温で保存できる超高温殺菌のロングライフ牛乳がメインだそうです。
ロングライフ牛乳 超高温で殺菌し、光や空気を通さない容器に詰めることで、常温で長期保存できるようにした牛乳。冷蔵が難しい輸出などに向いています。
川上さんは、こうして北海道の牛乳が海外へ流れるルートができれば、人口が減っていく日本でも生乳の生産が安定的に回るのではないか、と期待を寄せます。
もうひと踏ん張り、消費者と酪農家へのメッセージ
ニュースを紹介し終えた川上さんは、今回の10円値上げは全然違ってくると、あらためて手応えを口にします。
川上 本当マジで明るいニュース10円値上げは全然変わってくるでしょう。いや、苦しかったからなマジで。
令和7年の予算や補助事業も出てきていることに触れ、全国の酪農家に「もうひと踏ん張り」とエールを送ります。
消費者に向けては、牛乳はもちろん、乳製品も応援してほしいと呼びかけます。バターの生産が増えると脱脂粉乳も増えるため、ヨーグルトもしっかり食べてほしいと具体的にお願いしていました。
バターの生産が増えるとですね、脱脂粉乳が増えるので、ヨーグルトもしっかり食べてもらって。 ── 川上
最後は、寒い中でも仕事や学校に向かう人へ「いってらっしゃい、みんな牛乳飲んでね」と見送ります。配信の締めには、お便りやご感想を募集する案内も添えられました。
ヤマ 皆さんのご意見が新しい酪農を作っていきます。
まとめ
今回は、北海道で決まった加工用乳価の引き上げニュースを、島根の酪農家である川上さんの視点でかみくだいた回でした。嬉しい値上げの裏側にある、消費への影響や国産を選ぶ大切さまで伝わってくる内容です。
- 加工用乳価は6月から3円アップ、バター・生クリーム向けはさらに7円加算で計10円の引き上げ
- 10円の引き上げは2023年4月と並ぶ過去最大の上げ幅で、飲用向けの道内乳価は141円40銭で据え置き
- 川上さんの試算ではバターは100円ほど値上がりする可能性があり、消費が落ちないかが心配される
- 値上げでマーガリンなどに流れず、消費者が国産バターを選び続けることが大事になる
- よつ葉乳業はロングライフ牛乳をインドネシアなどへ輸出、北海道の牛乳が海外にも広がっている