農業高校出前授業の質問に答える🐮③

2025-02-09 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

今回は、乳価値上げのお便りに答えつつ、農業高校生からの質問を通じて、酪農家の健康管理や将来の目標が語られた回でした。消費者への感謝と、飲み手を増やしてから広げていくという考え方が印象に残ります。

この回の要点

  • 乳価は加工乳3円・バター等7円で合計10円上がるが、手数料などを引くと農家の手取りが増えるのは8円ほどの見込み
  • 現場の酪農家サイロさんのお便りから、値上げ交渉が6月に妥結した裏側や、消費者への感謝が語られた
  • 川上さんの健康管理の軸は、夜10時までの睡眠と昼寝、そして毎週の整体と筋トレによる予防
  • 規模拡大は「先に消費者を見つけてから」が方針で、1日約1290リットルの出荷に見合うファンづくりを進めている
  • 現在は40頭ほどで1日約1290リットルを搾り、2トンのバルクを満たす2000リットルを目標にしている

配信の全文(podyの記事より)

寒波の朝、日曜日の牧場から

今回の配信は、2月9日の日曜日の朝からスタートします。牧場のある島根県出雲市には寒波が入っていて、雪が降ったり止んだりの天気だそうです。

川上さんは前日に続いて、この日も残った堆肥を牧場に運ぶ予定だと話します。確定申告が終わり、ぼちぼち仕事を進めていく時期に入っているそうです。

川上 今日の天気はですね、寒波入っておりまして、今日までですかね、雪がちらついております。

川上 日曜日なんでね、あんまり仕事したくないと思いつつ、はい、明日からもやっぱ堆肥の配達とかがあったりしますし。

NOTEメンバーシップと「未来の牛乳」NFT

牛乳で乾杯する前に、川上さんは2つのお知らせを紹介します。1つ目は、ブログや記事を書けるアプリ「川上牧場NOTE」でのメンバーシップです。

メンバーシップでは、オンラインで牧場とつないだ体験や、実際に牧場へ来ての体験、過去の有料記事の読み放題などが用意されているそうです。

2つ目は、Instagramで展開している「#未来の牛乳」の取り組みです。こんな牛乳や乳製品があったらいいな、というアイデアをAIアートでNFTにして販売しています。

NFT デジタルデータに固有の証明をつけて、その持ち主を記録できる仕組みのこと。ここではAIで作った「未来の牛乳」のアート作品に使われています。

このNFTの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小中高での食育活動の費用に充てられるそうです。

川上 皆さんのご支援がですね、子供たちの未来の牛乳を作っていく、そんな特別なNFTとなっておりますので、ぜひよろしくお願いします。

北海道の酪農家サイロさんからのお便り

この日はまず、前回配信で扱った乳価値上げについてのお便りが紹介されます。加工牛乳が3円、バターや脱脂粉乳向けが7円、合わせて10円の値上げになったという内容でした。

お便りをくれたのは、北海道の十勝で酪農をやっているスタンドFMネーム「サイロさん」です。4月からの値上げを求めていたものの、ずれ込んで6月に妥結したという、交渉の裏側が語られていました。

川上 輸入バターがまだまだ高いこと、そして何より消費者さんが乳製品を買い求めていただいたこと、恐れていたほどの減少ではなかった。本当にありがとうございます。

川上さんは、現場の農家の声が直接聞けることこそポッドキャストのよさだと話します。

これがポッドキャストのいいところ。直接その現場にいる農家さんの声が聞けるっていうのは最高ですね。 ── 川上

川上さんは酪農家を代表するような気持ちで、牛乳を買い支えてくれる消費者に改めて感謝を伝えます。農家からの質問を代わりに聞くこともできると呼びかけていました。

乳価が上がると農家の手取りはどうなる?

続いて、配信アプリSpoonで質問をくれた「山さん」のお便りが紹介されます。乳価が上がると、酪農家さんの手取りも上がるのか、という質問です。

質問(山さん) 値上げおめでとうございます。酪農家さんの手取りも上がるんですかね?

川上さんによると、加工乳が3円、バターや生クリーム・脱脂粉乳向けがプラス7円で、合計10円の値上がりになるので、農家の手取りは確かに増えるそうです。

ただし、ここから手数料が引かれます。飲用向けや発酵乳向けなど、さまざまな仕向けの価格をならす「プール乳価」で計算すると、2円ほど引かれるのが通常だといいます。

プール乳価 飲用向けや加工向けなど、用途ごとに違う牛乳の販売価格をまとめてならし、平均した価格のこと。農家が実際に受け取る単価の目安になります。

そのため、10円上がっても、実際に上がるのは8円ぐらいになりそうだと川上さんは見込んでいます。

店頭の値段については、バターは500グラムで50円ほど、メーカーの判断によっては100円ほど上がるかもしれないと話します。牛乳になる加工乳は1リットルあたり20円ほどの値上げが予測されるそうです。

川上 来、今年の月ぐらいにはですね、全飲用向けで値段が上がるように今交渉してる最中なので、引き続きちょっと高いですけども、国産の牛乳を選んでいただけたら嬉しいなと思うところでございます。

体調管理で心がけていることは?

ここからは、農業高校生からの質問に答えていきます。最初の質問は、体調管理や健康維持のために心がけていることは何か、というものです。

川上さんがまず挙げたのは睡眠です。365日休みがない仕事なので、しっかり休むことを大事にしていて、夜10時までには寝るよう心がけているそうです。お昼寝の時間を取れるように仕事を段取りすることも意識しているといいます。

川上さんは酪農ヘルパーとして多くの酪農家を見てきた経験から、若いうちに無理をしたリスクを語ります。20代30代で無理をした人は、60代70代で肩や腰、足に不調が出ているケースが多かったそうです。

酪農ヘルパー 酪農家が休みや急な用事で搾乳などができないとき、代わりに牧場の作業を行う人のこと。川上さんはこの仕事を通じて、多くの牧場の様子を見てきました。

川上 二十代三十代とか、その働き盛りの時に無理した方はですね、やっぱり六十、七十になった時にですね、もう肩がガタガタになったりとか、あと腰がすごい曲がったりとかしたりとか。

そうならないための予防として、川上さんは毎週整体に通い、パーソナルトレーナーのもとで筋トレもしているそうです。体重を維持するために食生活にも気を配っています。

一人で牛舎を回しているので、いざという時に動けるように、体調管理には人一倍気をつけていると話します。

体が資本なんで、本当に三百六十五日休めないですし。 ── 川上

これからの目標は?消費者を見つけてから規模拡大

2つ目の質問は、これからの目標についてです。川上さんは10年以上前から「規模拡大したい」と言い続けていて、それが目標の一つだと答えます。

ただ、そのまま規模を大きくしても、消費が伸びなければ牛乳は搾れません。川上さんはコロナ禍でそれを実感したと話します。

そこで川上さんが決めているのは、先に消費者を見つけてから規模拡大するという順番です。現在の搾乳量は1日およそ1290リットル。1人が1日1リットル飲むとして、1290人ほどの継続的なファンが増えたら規模を広げられる、という考え方です。

川上牧場の規模拡大の考え方

消費者を見つける

継続的に牛乳を飲んでくれるファンを増やす

↓

需要を確認する

出荷乳量に見合う人数の応援を確保する

↓

規模拡大する

需要を確認してから牛の数を増やす

川上 初めにその消費者を見つけてから、規模拡大するっていうのをちょっと決めておりますんで。

そのために、配信アプリでアーティストと歌を作ったり、イラストやグッズを作ったり、いろんなコミュニティでゲームを作ったりと、新しい試みを重ねているそうです。

直近では、所属するコミュニティでお米からバイオエタノールを作る活動が動き始めたので、今年はそれを進めたいと話します。自給飼料としてのトウモロコシの増産も考えているそうです。

自給飼料 牧場が自分の農地で栽培してまかなう牛のエサのこと。トウモロコシなどが代表例で、輸入飼料に頼りすぎない経営につながります。

1日にどれくらい牛乳を絞ってる?

3つ目の質問は、1日にどれくらいの牛乳を搾っているか、というものです。川上さんの答えは、先ほども触れた通り1日およそ1290リットルです。

搾っている牛は全部で40頭ほど。産次数が伸びてきたことで、牛乳の量も少しずつ増えてきているといいます。

産次数 その牛が何回出産したかを表す数のこと。1回目の出産をした牛は1産、2回目なら2産と数え、一般に出産を重ねた牛ほど搾乳量が増える傾向があります。

川上さんは、牛をなるべく長く飼って処分しないようにしつつ、品種改良で群れを更新もしているそうです。来月ごろには能力ランキングの高い牛が生まれてくるのが楽しみだと話します。

目標としては、牧場にある2トンのバルクを満たすくらい、つまり1日2000リットルほど搾れたら嬉しいといいます。牛舎を少しずつ直しながら、そこを目指しているそうです。

バルク 搾った生乳を冷やして一時的にためておく大型のタンクのこと。ここでの2トン(2000リットル)は、その容量を表しています。

過去回が伸びる嬉しさと日曜のエール

最後に川上さんは、コメント欄に戻りながら、この日も多くのリスナーが来てくれたことへの感謝を伝えます。

最近は、SpotifyやAppleのポッドキャストで、直近ではなく過去の配信が伸びているそうです。おすすめにどう出ているのかはわからないけれど、聞いてくれた人はコメントやいいねをしてほしいと呼びかけます。

川上 お仕事の方、学校の方、いってらっしゃい。みんな牛乳飲んでね。バイバーイ。

まとめ

今回は、乳価値上げのお便りに答えつつ、農業高校生からの質問を通じて、酪農家の健康管理や将来の目標が語られた回でした。消費者への感謝と、飲み手を増やしてから広げていくという考え方が印象に残ります。

  • 乳価は加工乳3円・バター等7円で合計10円上がるが、手数料などを引くと農家の手取りが増えるのは8円ほどの見込み
  • 現場の酪農家サイロさんのお便りから、値上げ交渉が6月に妥結した裏側や、消費者への感謝が語られた
  • 川上さんの健康管理の軸は、夜10時までの睡眠と昼寝、そして毎週の整体と筋トレによる予防
  • 規模拡大は「先に消費者を見つけてから」が方針で、1日約1290リットルの出荷に見合うファンづくりを進めている
  • 現在は40頭ほどで1日約1290リットルを搾り、2トンのバルクを満たす2000リットルを目標にしている