培養技術の最前線!ジャガイモから作る新しい乳製品

2025-02-15 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

ジャガイモから乳製品を作る新技術を入り口に、AIとの付き合い方や酪農の歴史、そして「牛が必要ない牛乳」という問いまでを、朝のゆるやかなトーンで巡った回でした。技術の話も語源の話も、根っこには「知るともっと楽しい」という川上さんの姿勢が流れています。

この回の要点

  • イスラエルの企業が、AI遺伝子解析でジャガイモからカゼインを作ることに成功した
  • この技術は環境面のメリットや、乳糖不耐症の人向けの選択肢として期待されている
  • 代替食品の広がりは「牛の存在価値」を問い直すきっかけになると川上さんは考えている
  • 「デイリーファーム」の語源をたどると、乳製品を扱う女性や賃貸地の意味にさかのぼれる
  • AIの答えは鵜呑みにせず、調べるきっかけとして使うと歴史を知る楽しさが広がる

配信の全文(podyの記事より)

今日の天気と土曜日の忙しい一日

配信は2月15日の土曜日。この日の出雲は晴れで、最高気温は13度まで上がる予報でした。

川上 昼間のちょっと上着着てたらちょっと暑いぐらいですね。もう春じゃないですか?春かな。

ただ、寒気も入ってくるという話もあり、川上さんは体調管理に気をつけたいと話します。

土曜日は種付けの日。育成舎の掃除や堆肥の注文への対応もあり、この日はバタバタと忙しい一日になりそうだと語られました。

SUZURIのグッズと「未来の牛乳」NFT

乾杯の前に、川上牧場からのお知らせが続きます。

まずはグッズ販売サイトのSUZURIについて。いまスマホケースのセールをやっていて、アーティストやイラストレーター、デザイナーとコラボした川上牧場の作品が増えているとのことです。

川上 ズッキュンいいね、これ押し放題となっておりますので、バシバシって押してもらって。

もう一つが、Instagramで展開している「未来の牛乳」の取り組みです。「こんな牛乳あったらいいな」という声をAIアートでNFTにして販売しています。

NFT デジタルデータに「唯一のもの」という証明をつけて売買できる仕組みです。ここではAIアート作品にその仕組みを使い、購入を通じた支援ができる形にしています。

このNFTの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小中高の食育活動の活動費として使われる予定だと説明されました。皆さんのご支援が子どもたちの未来の牛乳を作っていくという、つながりを意識した取り組みです。

AIで作ったX投稿が伸びて「乗っ取り」を心配された話

AIがまとめたニュースの前に、川上さんはちょっとした失敗談を明かします。

いつもはStandFMの更新をリンクだけつけてXに投稿していたそうですが、この日は「Xのインプレッションが伸びる投稿にしてください」とAImにお願いして作ってもらったといいます。

すると投稿のインプレッションが普段の倍ほどに伸び、いいねやリツイート、音声配信の再生数まで増えたとのこと。川上さんはXのアルゴリズムをよく理解しているAIの実力に感心します。

ところが、その反応の変化を見た人からは思わぬ声が届きました。

川上 (Xが)乗っ取られました?とか、なんかそうやって言われて。大丈夫ですよ。乗っ取られてないですよ。

AIがどれくらいできるのかを試してみたかっただけ、というのが川上さんの説明でした。ちょっとお騒がせしたなと振り返ります。

ジャガイモからチーズができる?イスラエル発の新技術

この日のニュースは、ネット記事「からパイヤ」で紹介されていた、ジャガイモから乳製品を作る技術の話題です。

開発したのはイスラエルの分子農業企業。AIを活用した遺伝子解析を使って、ジャガイモから乳製品に欠かせないカゼインタンパク質を生み出すことに成功したといいます。

カゼイン 牛乳に多く含まれるタンパク質で、チーズやヨーグルトを作るうえで欠かせない成分です。これを植物側で作れれば、牛を介さずに乳製品に近いものが作れる可能性が出てきます。

この技術が広がれば、牛に頼らずヨーグルトやチーズが作れるようになる、というのがポイントです。温室効果ガスの排出を大幅に減らせる、という環境面のメリットも語られました。

記事では実際の事例も紹介されています。カゼインを使った植物由来のチーズは、試験的にヨーロッパの高級レストランで提供され、すでに好評を得ているとのことです。

また、乳糖不耐症の人でも楽しめる乳製品として注目されていて、消化の負担が少ないA2ミルクに代わる選択肢としても期待されていると紹介されました。

乳糖不耐症 牛乳に含まれる乳糖をうまく消化できず、お腹がゆるくなったりする体質のことです。植物由来の乳製品は、この体質の人でも楽しめる選択肢として期待されています。

ジャガイモから乳製品ができるまでの流れ

AI遺伝子解析

ジャガイモでカゼインを作る仕組みを設計する

↓

カゼイン生成

乳製品に欠かせないタンパク質をジャガイモから生み出す

↓

乳製品化

牛に頼らずチーズやヨーグルトを作る

↓

提供・期待

高級レストランで提供され、乳糖不耐症の人にも期待される

「牛乳を出さない牛」を高校生に問いかけたら

川上さんは以前、この配信でも紅マナギ(ベニマナギ)のゲノム編集でカゼインを作る話を紹介していたと振り返ります。今回はそれがジャガイモでできた、というわけです。

ジャガイモは土地が痩せていても作りやすく、いろんな地域で作れるという特徴があります。生産性が伸びれば、牛乳や乳製品の代替食品の市場が変わってくるかもしれない、と川上さんは見ています。

ここで思い出されたのが、農業高校への出前授業でのやり取りです。「これからの農業の課題はどうだと思いますか」という質問を高校生から受けたときのことでした。

川上さんは逆に、こうした代替食品が出てくる状況を高校生に投げかけたといいます。

川上 牛乳を出さない牛、お肉を産まない牛、これを見て、(高校生は)どう思うか。

高校生はポカンとしていたそうですが、それぐらい価値観がガラッと変わる話なのかもしれません。

牛の存在価値みたいなのが、脅かされてくるんじゃないかな。 ── 川上

AIに仕事を奪われるという話はよくありますが、酪農も技術の進歩と無縁ではありません。その中で酪農の立ち位置をどうするのか、考えないといけない時期になってきたのかも、と川上さんは語ります。

川上 牛が必要じゃない牛乳、それって牛乳なの?みたいな。ちょっとわけわかんなくなっちゃってる?

答えを出すのではなく、リスナーに「私はこう思うぜ」という声を寄せてほしい、という問いかけで締めくくられました。

「デイリーファーム」ってなぜ酪農なの?語源をたどる

続いてはお便りコーナー。Spoonネームのレインリンさんから、「なぜ酪農はデイリーファームと呼ばれるんですか」という質問が届きました。

川上さん自身も「川上デイリーファーム」と書きがちだそうですが、由来までは意識していなかったといい、これもAIに聞いてみたと話します。

AIの回答によると、「デイリー」は中英語を経て古英語の「デイエ」という単語に由来し、これはパンをこねたり家事をする女性、特に乳製品を扱う女性を指していたそうです。そこから「乳製品を扱う場所」という意味に派生したといいます。

一方の「ファーム」は、中世ラテン語の「固定された支払い」を意味する言葉に由来し、古フランス語の「賃貸地・農地」を経て、英語のファームへ変化したとのこと。初期は土地を借りて農業を営むことを指し、やがて農場そのものを指すようになったと説明されました。

デイリーファームの語源

用語

デイリー

古英語の「乳製品を扱う女性」から、乳製品を作る場所という意味へ

用語

ファーム

「固定された支払い」「賃貸地」を経て、農場そのものを指す語へ

この2つが組み合わさり、19世紀頃に「デイリーファーム」という表現が一般化して、牛を飼い乳を生産する農場を指すようになった、というのが調べた結果でした。

川上 語源まで調べるとマジで歴史の流れができておもしれって思った。

十数年で「本来の酪農」を語らないために

川上さんは、酪農歴十何年でも語源のような話は知らなかったと明かします。そして、ベテランでも知らない人は多いと続けます。

気になるのは、そうした背景を知らないまま「昔ながらの酪農」「これが酪農の本来の姿だ」と語ってしまう人がいることだといいます。

一万年ぐらいある歴史の中の、本当に数年、十数年、牛飼っただけで、そういうことを言ってる人たちがいる。 ── 川上

歴史を知ると、より農業が楽しくなるというのが、この回で川上さんが伝えたかったことです。語源をたどるだけでも、自分の仕事の見え方が変わってくる、というわけですね。

AIは調べるきっかけに最高、というリスナーとのやり取り

最後はコメントへの返信です。「X怖かった、心身に影響あったかと思った」という心配の声には、全然元気だと改めて答えます。

リスナーからは、紅花とカゼインをかけた即興の一句や、映画「戦火の馬」で地主と農業者の上下関係が見られたという情報も寄せられました。

川上 歴史全然知らないから知りたいんですよね。こういうAIの使い方も最高ですよ。

川上さんは、AIの回答はハルシネーションの可能性もあると断ったうえで、それをきっかけにソースを調べていくと、いろいろ出てきてありがたいと話します。

ハルシネーション AIがもっともらしいけれど事実とは違う内容を、あたかも正しいかのように答えてしまう現象のことです。だからこそ、答えを鵜呑みにせず自分で確かめる姿勢が大切になります。

もっと酪農のことを知っていきたい、という前向きな言葉で本編は締めくくられ、エンディングではヤマさんからお便り募集の案内が流れました。

まとめ

ジャガイモから乳製品を作る新技術を入り口に、AIとの付き合い方や酪農の歴史、そして「牛が必要ない牛乳」という問いまでを、朝のゆるやかなトーンで巡った回でした。技術の話も語源の話も、根っこには「知るともっと楽しい」という川上さんの姿勢が流れています。

  • イスラエルの企業が、AI遺伝子解析でジャガイモからカゼインを作ることに成功した
  • この技術は環境面のメリットや、乳糖不耐症の人向けの選択肢として期待されている
  • 代替食品の広がりは「牛の存在価値」を問い直すきっかけになると川上さんは考えている
  • 「デイリーファーム」の語源をたどると、乳製品を扱う女性や賃貸地の意味にさかのぼれる
  • AIの答えは鵜呑みにせず、調べるきっかけとして使うと歴史を知る楽しさが広がる