農家の歴史と家族観の変遷〜お嫁さん・婿養子の立場を考える
2025-01-08 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
農家のお嫁さんや婿養子の立場が弱いのは事実としてあるものの、それは良い悪いではなく農業の歴史の流れであり、令和の今は世代交代やSNSで大きく変わってきている、というのが川上さんの整理でした。
この回の要点
- 農家のお嫁さんの立場が弱い風潮は、農業が主産業だった時代の「家族が会社」という歴史に由来する
- 令和の今は女性社長や女性起業の農家も珍しくなく、古い風潮は廃れてきている
- 婿養子の川上さん自身は「ガチガチある」としつつ、酪農ヘルパー等の経験で「郷に入れば郷に従え」の術を身につけた
- 福井県池田町の「池田暮らしの七か条」は、田舎暮らしの現実を正面から伝える取り組みとして紹介された
- 田舎ではインフラが町内そのものであり、相互扶助を理解した上で入ることが大切だと語られた
配信の全文(podyの記事より)
雪の朝の牛舎から、堆肥配達に事務仕事に大忙し
この日は1月8日の水曜日。川上さんによると、前の日から雪がポロポロ降っていて、雨も混じって寒い一日だったそうです。
川上 鼻水が止まりません、牛舎で動いてないと。完全防備でやっておりますけども、そんな天気でございます。
仕事の中身も盛りだくさんでした。冬場に入った堆肥の注文への感謝を口にしつつ、堆肥の配達、生まれたばかりの子牛へのミルクやり、そして牛群検定牛群検定 ── 牛1頭ごとの乳量や乳成分などを定期的に検査し、餌や飼養管理に活かす仕組み。データをもとに餌の調整などを行う。の結果を見ての餌の調整まで、次々にこなしていく様子が語られます。
さらに、確定申告の準備、家畜人工授精書の報告、農業センサスの書類まで重なっていて、事務仕事にはかなり参っている様子でした。
川上 事務仕事嫌です。本当に一律もう全部やって。チャットGPTなんとかなりませんかね。
今日はお便りコーナー。農家のお嫁さんの立場は弱い?
今回はニュースではなく、お便りコーナー。SpoonネームのみずみずしいさんからのSpoon経由の質問が紹介されました。
質問(みずみずしいさん) 農家の種というポッドキャストで、農家に嫁いだお嫁さんの立場が弱いことについて話している回がありました。酪農家さんでも同様なのでしょうか?また、川上さんは婿養子とおっしゃっていましたが、婿養子もやはり親族に気を使って大変みたいなことはありますか?
川上さんはまず、質問のもとになった「農家の種」というポッドキャストに触れます。配信者のツルちゃんさんは農業イベントに登壇したりSNSで発信したりしていて、農業系の配信者の中ではフォロワーがかなり多いのでは、と紹介しています。
その上で、お嫁さんの立場が弱いという話について、正直な実感を口にします。地域や家庭ごとの違いはあるとしつつ、伝統的な家族観が根強く残っている場合の話です。
川上 (お嫁さんの立場が弱いことは)まあ、あるかないかと言われましたら、まあありますわな、というところですね。
昔の農家は「家族が会社」だった
川上さんは、これは良い悪いの話ではなく、農業という仕事の歴史の流れなのだと説明します。かつて農業は主産業で、人口の半分以上が農業をやっていた時代があったといいます。
その時代の農家を、川上さんは「家族が会社」だったとたとえます。社長にあたるのが長男や家を守る家長で、その意見が一番強い。今とはまったく違う仕組みだったといいます。
お嫁さんとか女性とか子供とかは、もう労働力としか見られていないみたいな歴史があるわけですよ。 ── 川上
お嫁さんについても、家を大きくするため、家を守るためにお見合いで結婚するという面があり、家を守るための一つの手段として使われている部分もあったと話します。
外から来た人には新しいことをさせず、家のルールに従わせる。そういう風潮や歴史があったのだといいます。この歴史が、今の現代にも一部流れ込んでいるという整理でした。
農家の家族観の流れ
昔(農業が主産業)
人口の半数以上が農業。家族が会社で、家長の意見が最も強い
その中でのお嫁さん
家を守る手段としてお見合い結婚。女性や子供は労働力とみなされる面も
現代(令和)
世代交代やSNSでの価値観の変化により、古い風潮は廃れてきている
令和の農家はどう変わってきている?
一方で、今は令和。世代交代が進み、SNSで価値観の違いや変化が広がったことで、そうした古い風潮は廃れてきていると川上さんは話します。
具体例として、女性が社長を担っている農家や、女性一人で起業して農業をやっているケースが、もう珍しくなくなってきていることを挙げます。
川上 奥さんの方が経営が上手みたいなところもいっぱいあったりしますんで。
働き方もさまざまです。夫婦で協力して経営するスタイルもあれば、奥さんはまったく別の職業に就いて農業には触れないというケースもあると紹介し、世の中は変わってきていると話しました。
婿養子の川上さんは「ガチガチあります」
続いて、質問の後半である「婿養子の川上さん自身はどうだったか」に話が移ります。ここでの答えははっきりしていました。
(婿養子で気を使うことは)ガチガチあります。それはもうガチガチでありますね。 ── 川上
ただ川上さんは、自分はうまくやれている方だとも話します。理由は、農業に入る前の経験にありました。農業大学校で農家の後継ぎの先輩とたくさん過ごし、酪農ヘルパー酪農ヘルパー ── 酪農家に代わって搾乳や餌やりなどの作業を担う仕事。休みが取りにくい酪農家を支え、いろいろな牧場を回る。としていろいろな農家を訪ねた経験です。
その中で、奥さんの立場が弱い家もあれば、奥さんが牛の個体管理も帳簿も全部こなし、お父さんは酒を飲んで遊びに行っているような家もある、といった現実を見てきたといいます。
そうした場を見てきたことで、その家々でうまく暮らしていく術が、必然的に身についていたと振り返ります。
川上 郷に入れば郷に従えですよ。なので僕はまあ、うまいことやってる方ではないかなとは思ったりします。
もちろん、外面だけいいと言われることもあるそうです。それでも、義理の両親や親戚にしっかり挨拶し、運動会や消防、町内の行事に全部出ていく。それをやらないと、田舎の農業の家業は継げないのではないかと話します。
参考になる「池田暮らしの七か条」
川上さんは参考として、福井県の池田町が掲げている「池田暮らしの七か条」を紹介します。一時期ニュースやYouTubeでも話題になったものです。
七か条は、集落の一員としての自覚から始まり、地域行事の多さや面倒さ、支え合いの習慣、自分の価値観や都会暮らしを押し付けないこと、プライバシーのなさやお節介、濃い人間関係を楽しむ姿勢、そして大雪などの自然の脅威まで、田舎暮らしの現実を正面から並べたものです。
川上 これ、聞く人が聞いたらもう「うわっ」て思うかもしれませんけれども、これを大々的に伝えるっていうのは本当に優しさだと僕は思うので。
川上さんは、農家の人と付き合って結婚するということには、こうした歴史や地域のルールがあるのだと知ってもらいたいと話します。都会と違い、田舎ではコンビニやスーパーが遠く、頼れるのは町内そのものだからです。
インフラは村ですから、インフラは町内っていうのを覚えてもらって。 ── 川上
昔から築かれてきた相互扶助、助け合いの精神があることを知った上で入っていくのがいいのではないか。そう伝えて、川上さんはこの回のお便りへの答えを締めくくりました。
最後に、この配信を聞いている農家の人たちにもコメントを呼びかけます。「私のうちもこうなんですよ」という声が集まれば、消費者にとって農業がもっとクリアに、身近に理解されるはずだ、という思いからでした。
まとめ
農家のお嫁さんや婿養子の立場が弱いのは事実としてあるものの、それは良い悪いではなく農業の歴史の流れであり、令和の今は世代交代やSNSで大きく変わってきている、というのが川上さんの整理でした。
- 農家のお嫁さんの立場が弱い風潮は、農業が主産業だった時代の「家族が会社」という歴史に由来する
- 令和の今は女性社長や女性起業の農家も珍しくなく、古い風潮は廃れてきている
- 婿養子の川上さん自身は「ガチガチある」としつつ、酪農ヘルパー等の経験で「郷に入れば郷に従え」の術を身につけた
- 福井県池田町の「池田暮らしの七か条」は、田舎暮らしの現実を正面から伝える取り組みとして紹介された
- 田舎ではインフラが町内そのものであり、相互扶助を理解した上で入ることが大切だと語られた