牛乳の概念が変わる?次世代代替乳の未来とは
2025-01-09 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
この回は、稲や紅花、納豆菌といった、牛を介さずにタンパク質を作る次世代フードテックの動きを、酪農家である川上さんの目線で紹介する内容でした。新しい技術への好奇心と、「牛乳」という名前への思いが同時ににじむ回になっています。
この回の要点
- キニッシュは植物分子農業で、稲や紅花から牛乳タンパク質を作る技術を進めている
- これらの技術は牛がいなくても牛乳タンパク質を作れる方向に向かっている
- アストラフードプランは食品の端材を粉末化してアップサイクルし、吉野家の玉ねぎ端材も活用している
- フェルメクテスは納豆菌そのものを食用にし、川上さんは自身の飼料経験からミーティングを申し込んだ
- 牛のお乳から出たものが牛乳という立場から、川上さんは代替乳の「名前」の大切さを語っている
配信の全文(podyの記事より)
寒波の朝、牛舎から始まる出張前の1日
この回は、1月9日木曜日の朝の配信からスタートします。気温は2度、雪がちらついたりパラついたりする、最大寒波が入った寒い日だったそうです。
川上さんは「牛舎で仕事したくないな」とこぼしながらも、この日の作業予定を紹介しています。翌週に東京へ出張する予定があり、その間に牛舎で使うおがくずやもみ殻が足りなくならないよう、まとめて取ってこようとしていました。
川上 おがくず取りともみ殻を2台運ぼうかなと思っております。
作業だけで1日、半日は潰れそうだといいます。寒いなか車で運ぶことになるため、安全運転と、眠らないように気をつけたいと話していました。
SUZURIの新春セールと「#未来の牛乳」の取り組み
乾杯の前に、川上さんはお知らせを2つ紹介しています。1つ目は、グッズ販売サイト「SUZURI」で行われている新春セールです。
SUZURI クリエイターが手軽にオリジナルグッズを作って販売できるサービスです。イラストなどのデータをアップすると、Tシャツやマグカップなどのグッズとして販売できます。
このセールは1月12日まで行われていて、川上牧場がアーティストやイラストレーターとコラボした作品がグッズ化されているとのこと。「いいね」や「ズッキュン」は押し放題になっているので、ぜひ見てほしいと呼びかけていました。
2つ目は、INSTAGRAMで展開している「#未来の牛乳」の取り組みです。飲んでみたい牛乳、こんな牛乳があったらいいなというアイデアをAIでイラスト化し、それをNFTとして販売しているそうです。
NFT ブロックチェーンという技術を使って、デジタルデータに「これは本物」という証明をつけたものです。イラストなどのデジタル作品を、唯一のものとして売買できます。
このNFTの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小学校・中学校、そして今度は高校でも行う食育活動の費用に充てるとのことです。そう説明したあと、川上さんは牛乳で乾杯し、この日の牛乳を味わっていました。
川上 寒い。美味しい。
稲から牛乳タンパク質?フードテックの最前線ニュース
ここからがこの回の本題です。川上さんは、CNET Japanの記事を引用して、いま注目されているフードテックの取り組みを紹介していきます。
フードテック 食(フード)とテクノロジー(技術)を掛け合わせた言葉です。植物由来の代替肉や代替乳、生産の効率化など、最新技術で食の課題を解決しようとする分野を指します。
紹介されたのは、2024年12月19日に開催された「フードテックベンチャーデイネオ」というイベントで登場したスタートアップの取り組みです。稲から牛乳タンパク質を作る技術や、納豆菌そのものを食用にする取り組みなどが取り上げられていました。
川上さんは、この動きの背景として、いまの牛乳売り場の変化に触れています。オーツミルクや豆乳といった、いわゆる「豆の絞り汁」が増え、店によっては牛乳売り場の半分近くを占めるところもあるといいます。
代替乳(植物性ミルク) 牛乳の代わりに飲まれる、植物由来の飲み物です。大豆から作る豆乳、オーツ麦から作るオーツミルク、米から作るライスミルクなどがあります。
海外では、米をすりつぶして牛乳に見立てて飲むライスミルクなどもあると紹介しつつ、川上さんはこれらを「米の絞り汁」と表現していました。
稲や紅花で牛乳を作る「植物分子農業」という技術
この回で川上さんがとくに注目したのが、「キニッシュ」という企業が紹介した、植物分子農業を使って牛乳タンパク質を作る技術です。
これは、稲そのものに牛乳のタンパク質を作らせる技術だといいます。川上さんは、お米を育てたらそれが牛乳になるという発想を、初めて聞いた人は驚くだろうと話していました。
川上 もう牛乳、牛が必要じゃなくなるんですよね。
海外ではすでに、米ではなく紅花の種子に牛乳の成分を作らせて絞り出す技術も出ているとのこと。つまり、牛がいなくても牛乳のタンパク質を作れる方向に進んでいる、というわけです。
キニッシュのサイトを見た川上さんによると、日本では遺伝子組み換えやゲノム編集を消費者が嫌がる傾向があるため、まずアメリカで販売を始め、そこから逆輸入する形で日本へ入れていく計画だそうです。
ゲノム編集 生き物の遺伝子を、狙った場所で書き換える技術です。従来の遺伝子組み換えとは仕組みが異なりますが、消費者の受け止め方には慎重な面もあると番組では語られています。
すでにサンフランシスコで試食会が行われ、評判は非常によかったとのこと。ホームページには、90%以上が満足したという結果が出ていたと紹介していました。
食品の端材をアップサイクルする「アストラフードプラン」
続いて川上さんが紹介したのが、「アストラフードプラン」という企業です。飲食店や食品工場から出る残渣を、加熱処理して粉末状にし、アップサイクルする取り組みだといいます。
アップサイクル 捨てられるはずだったものを、ただ再利用するだけでなく、より価値の高いものに作り変えることです。ここでは食品の端材を粉末食品などに生まれ変わらせることを指しています。
この技術では、加熱水蒸気を使うことで5〜10秒ほどで乾燥できるそうです。小さな工場でも手軽に導入でき、粉末をふりかけのように売ったり、他の食品に混ぜたりできるといいます。
具体例として、吉野家の牛丼チェーンの話が紹介されていました。1日に700kg、年間で約250トン出る玉ねぎの端材を「玉ねぎぐるり」として買い取り、別のメーカーに販売しているとのことです。
玉ねぎの端材アップサイクルの規模
700kg
吉野家の牛丼チェーンで1日に出る玉ねぎの端材
約250トン
年間で出る玉ねぎの端材の量
納豆菌そのものを食べる?酪農家が注目した取り組み
この回で川上さんが一番興味を持ったのが、「フェルメクテス」という企業の取り組みです。納豆ではなく、納豆菌そのものを食用にして、タンパク質クライシスの解決を目指すというものでした。
タンパク質クライシス 世界の人口が増えることで、タンパク質の供給が足りなくなると心配されている問題です。代替肉や昆虫食、微生物由来のタンパク質などが解決策として注目されています。
川上さんが注目した理由には、自身の経験があります。納豆菌は菌のなかでも最強とされ、牛に使うことで牛舎環境を整えたり、乳房炎や子牛の下痢といった菌による病気を抑えられないかと考えていたそうです。
以前は納豆菌を使った飼料を試したこともあったものの、コストが合わず、思ったほどの効果は見えなかったといいます。だからこそ、新しい技術には強い関心があるようです。
川上さんは早速この企業にメールを送り、翌週にはミーティングをする約束を取り付けたと話していました。共有できることがあれば、また配信で伝えたいとのことです。
新しいことが何でも大好きです。 ── 川上
「パチモンミルク」問題?名前をめぐるリスナーとのやりとり
川上さんは、こうしたフードテックについて、海外に遅れて日本でも出てきているという印象を語っています。代替肉や代替食品では、勢いよく登場して失敗した企業もあったため、日本で出てくる企業には上手にやってほしいと話していました。
ここでリスナーから届いたコメントに触れます。稲や紅花から作る牛乳タンパク質を「パチモンミルク」という名前で売ってほしい、という声でした。
川上 パチモンミルクっていう名前で売ってもらうととてもありがたいですけどもね。
川上さんは、名前の大切さを強調しています。牛のお乳から出たものが牛乳であり、そうでないものはこの名前でお願いしたい、という酪農家としての立場をやわらかく示していました。
さらに「お薬の原料とかでもいけるのでは」というリスナーの発想にも「面白い」と反応し、ニュースが出たらまた伝えたいと話していました。
寒い朝の見送りと、お便り募集のお知らせ
最後は、この日が木曜日で、明日を過ぎれば成人の日を含む3連休だという話に。川上さんは「休んでばっかりだな」と笑いつつ、成人を迎えた人へお祝いの言葉を送っていました。
寒い1日だったこともあり、川上さんは仕事や学校へ向かうリスナーを「気をつけて、いってらっしゃい」と見送っています。
配信の締めくくりには、ヤマさんからお便り募集のお知らせがありました。川上牧場とやってみたいこと、やってほしいことなどを、コメント欄やDMで気軽に寄せてほしいと呼びかけています。
ヤマ 皆さんのご意見が新しい酪農を作っていきます。
まとめ
この回は、稲や紅花、納豆菌といった、牛を介さずにタンパク質を作る次世代フードテックの動きを、酪農家である川上さんの目線で紹介する内容でした。新しい技術への好奇心と、「牛乳」という名前への思いが同時ににじむ回になっています。
- キニッシュは植物分子農業で、稲や紅花から牛乳タンパク質を作る技術を進めている
- これらの技術は牛がいなくても牛乳タンパク質を作れる方向に向かっている
- アストラフードプランは食品の端材を粉末化してアップサイクルし、吉野家の玉ねぎ端材も活用している
- フェルメクテスは納豆菌そのものを食用にし、川上さんは自身の飼料経験からミーティングを申し込んだ
- 牛のお乳から出たものが牛乳という立場から、川上さんは代替乳の「名前」の大切さを語っている