農家が肉を作る時代?ドイツ発・培養肉革命の衝撃と日本の課題
2025-01-11 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
今回は、農家自身が子牛のへその緒から培養肉を作れるドイツ・MeatSysの新技術を紹介しつつ、環境負荷や食料問題への可能性と、日本ならではの壁を酪農家の視点で語る回でした。
この回の要点
- ドイツのMeatSysは、農場の隣のコンテナで農家が培養肉を作れる仕組みを開発。生まれたての子牛のへその緒の細胞を使う
- 若い子牛の細胞は分化が早く生産性が高いため、成長を待たず短期間で肉を作れる可能性がある
- 家畜の飼育に依存しないため、ゲップや糞尿による環境負荷を抑え、食料問題やフードロス削減にもつながると期待される
- 日本では法規制や表示義務、安全性の証明、コスト、消費者の抵抗感など、普及への課題が多い
- 川上さんはMeatSysにChatGPTでドイツ語のメッセージを送っており、今後の反応が続報として期待される
配信の全文(podyの記事より)
111の土曜日、寒波明けの牧場から
この日は1月11日の土曜日。川上さんは「111ですね。特に何もないんですけど」と笑いながら配信を始めます。
前日はかなり寒くて、10日あたりが一番の寒波だと聞いていたそうですが、この日は少し気温が高めで風もなく、雪がちらつく程度。凍結もなく雪もすぐ解けて、ほっとひと安心といった様子です。
土曜日の仕事は、育成舎の掃除をして堆肥を動かすこと。世の中は3連休ということで、子どもが休みなのでお昼の準備をしたり、溜まった事務仕事をしたりする一日になりそうと話します。
川上 仕事したくないなと思いますけども。
SUZURIの新春セールと「未来の牛乳」の取り組み
乾杯の前に、まずはお知らせから。グッズ販売サイトのSUZURIで新春セールが開催中で、翌12日まで。この3連休にチェックしてほしい、と呼びかけます。
SUZURI 自分のイラストや写真をTシャツなどのグッズにして販売できる、GMOペパボが運営するオリジナルグッズ作成・販売サービスです。
前日もTシャツを買ってくれた人がいたそうで、川上さんは「誰ですか?」と何度も呼びかけつつ、感謝を伝えます。いろんなアーティストやイラストレーターとコラボした川上牧場のグッズになっているとのこと。
もう一つの取り組みが、Instagramのハッシュタグ「未来の牛乳」。こんな牛乳や乳製品があったらいいなというアイデアをAIアートにしてNFTとして販売しています。
NFT デジタルデータに「これは本物」という証明を付けられる仕組みです。ブロックチェーンという技術を使い、画像などの所有や取引を記録できます。
この売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小学校・中学校・高校での食育活動の活動費に充てるとのこと。牛乳を通じた地域への還元につなげる狙いです。
農家が自ら肉を作る?ドイツ・MeatSysの培養肉システム
乾杯を終えて、この日の本題へ。AIがまとめたニュースとして、Forbesの記事「ドイツのMeatSys、農家の培養肉生産を可能にするモジュール型コンテナを開発」を取り上げます。
培養肉 動物から取り出した細胞を培養して増やし、肉として作り出したものです。家畜を飼育して食肉にする従来の方法とは異なる、細胞性農業と呼ばれる分野の技術です。
記事によると、培養肉を広く供給するには工業規模の工場が必要になりますが、ドイツでは農場で培養肉を作れる新しい仕組みの開発が進んでいるといいます。
開発したのは2022年設立のドイツのスタートアップMeatSys。農家自身が培養肉を生産できる仕組みを提供することを目指しているそうです。
ホームページを見ると、農場の隣にコンテナハウスのようなものがあり、そこで生産する仕組み。生まれたばかりの子牛のへその緒の一部を使い、それを培養して培養肉にしていくのだといいます。
川上 子牛が生まれて、へその緒がお母さんと繋がってるんですけど、そのへその緒の一部を培養して培養肉にしていくということで。
なぜ「生まれたての子牛のへその緒」なのか
川上さんは以前から培養肉や細胞性農業に興味があり、日本でも早く普及しないかなと思って調べていたそうです。そのうえで、この技術のポイントを説明します。
年老いた牛よりも、若くて活きのいい子牛のほうが細胞の分裂が早い。だから子牛の細胞を使ったほうが分化が早くなり、生産性が良くなるといいます。
川上 若くて活きのいいね、子供も成長早いじゃないですか。そういうやつの細胞を使った方が、分化がね、細胞が分裂する分化が早くなって、生産性が良くなる。
その「最たるもの」が、生まれたての子牛のへその緒。これを使えば農家が培養肉を生産できるようになる、というのがこのシステムの核心だと川上さんは整理します。
環境負荷や食料問題に効く?培養肉のメリット
川上さんは、この技術が持つ意味を従来の畜産と比べて説明します。従来は牛に餌をあげて大きくし、子牛から育ててお肉になるまで、長いと数年かかることもあります。
一方、この仕組みなら家畜の飼育に依存せずに肉を作れます。牛のゲップが環境汚染だと言われたり、糞尿が適切に処理されず土地が使えなくなったりする問題も避けられる可能性がある、と話します。
牛のゲップと環境 牛が反すうする際に出すゲップには、温室効果ガスであるメタンが多く含まれます。畜産由来の温室効果ガス排出として、しばしば地球温暖化との関連で議論されます。
従来の畜産と農場型培養肉
従来の畜産
餌を与えて子牛から育て、食肉になるまで長いと数年。ゲップや糞尿による環境負荷が指摘される。
VS
農場型の培養肉
子牛のへその緒の細胞を培養。家畜の飼育に依存せず、短期間で生産できるとされる。
さらに、世界人口が80億人を突破すると予測されるなかで、食料問題やフードロスの削減にもつながるのではないか、と川上さんは期待を寄せます。
法規制に食の安全性、日本で普及する壁
すごい技術ではあるものの、日本でこれを普及させるとなると難しさがある、と川上さんは冷静に見ています。まず大きいのが法規制の問題です。
日本は食の安全性を重んじ、昔ながらの伝統的なものを好むイメージがあります。新しい技術は怖いと感じる消費者も多いのではないか、と川上さんは指摘します。
そのうえで、リスナーに問いかけます。培養肉と聞いて、食べたいと思うか、それとも人工的・遺伝子操作されているようなイメージを持たないか、と。
川上 培養肉って聞いてどうですか?皆さんのイメージは食べたいってなってます?それとも人工的だとか遺伝子操作されてるみたいなイメージとか持ったりしてません?
コスト面の懸念もあります。日本は原油や電気の燃料を輸入に頼っているため作るコストが高くなりそうで、ドイツの会社の技術を輸入するにも、円安の今はコストがかさむのではないか、と話します。
それでも川上さんは「日本だからできる」とも考えています。黒毛和牛は世界中で評価されていて、これがすぐ作れるようになると状況がガラッと変わるのではないか、と展望します。
「非動物由来の肉」という曖昧なカテゴリ
日本での法規制について、川上さんはさらに具体的に触れます。新技術に関する食品は、認可されるまでが長く、表示義務や安全性の証明も求められます。
記事では「非動物由来の肉というカテゴリが曖昧であり、新たなガイドライン整備が必要」と言われているそうです。川上さんはここに素朴な疑問を投げかけます。
川上 ただただ普通のお肉を培養しただけなんだけど、何が違うのかちょっと僕にもわからないですけど。
難しい議論はありつつも、川上さん自身の願いはシンプルです。おいしいお肉をお腹いっぱい、安く食べられるほうが幸せなんじゃないか、と率直に話します。
おいしいお肉がいっぱいお腹いっぱい食べれて安くて食べられる方が幸せじゃないか。 ── 川上
MeatSysに直接メッセージを送ってみた
MeatSysは、将来的にはかなりの数の酪農家に普及させたいという目標を掲げているそうです。川上さんはこの会社にとても興味を持ったといいます。
そこでなんと、ChatGPTで文章をドイツ語に翻訳し、MeatSysにメッセージを送ってみたとのこと。反応があって共有できることがあれば、また配信で話したいと語ります。
川上 チャットGPTであのドイツ語にね、翻訳してちょっとメッセージを送ってみたんで、反応があったらまた皆さんに共有できるところがあったらね、お話できたらいいなと。
培養肉について、食べてみたい、怖いといった意見をぜひコメントで聞かせてほしい、とリスナーに呼びかけて締めくくります。
国民全員が牛乳を飲む未来?リスナーからの熱いコメント
配信の終盤、リスナーからの熱いコメントが届きます。「国民全員が吐くまで牛乳飲んだらいいと思う。毎日億リットル飲もう日本」という、なかなか強めの内容です。
川上さんはこの数字を受けて計算します。人口約1億人が全員200ミリリットル飲むだけで、今の生産量の3倍が必要と言われているのだそう。
川上 全員人口200ミリリットル飲むだけで3倍必要だって言われてますからね。それの5倍ですからね。もうもうもうあふれんばかりですよ。
もっとも川上さんは、コメントは「ちょっと強めですけどね」と受け止めつつ、無理のない範囲で飲んで、美味しく食べてもらいたいのが本音だと付け加えます。
最後は、3連休でも仕事や学校がある人へ「いってらっしゃい。みんな牛乳飲んでね」と声をかけて配信を終えます。
まとめ
今回は、農家自身が子牛のへその緒から培養肉を作れるドイツ・MeatSysの新技術を紹介しつつ、環境負荷や食料問題への可能性と、日本ならではの壁を酪農家の視点で語る回でした。
- ドイツのMeatSysは、農場の隣のコンテナで農家が培養肉を作れる仕組みを開発。生まれたての子牛のへその緒の細胞を使う
- 若い子牛の細胞は分化が早く生産性が高いため、成長を待たず短期間で肉を作れる可能性がある
- 家畜の飼育に依存しないため、ゲップや糞尿による環境負荷を抑え、食料問題やフードロス削減にもつながると期待される
- 日本では法規制や表示義務、安全性の証明、コスト、消費者の抵抗感など、普及への課題が多い
- 川上さんはMeatSysにChatGPTでドイツ語のメッセージを送っており、今後の反応が続報として期待される