企業が農村を救う!? 農水省の新プロジェクトで社員が農村支援

2025-01-15 配信|川上牧場 酪農データバンク

この回の要旨

農水省の「企業と農村の連携」プロジェクトを入り口に、リスキリングの実体験やスキマバイトで来たエンジニアの話まで、酪農家ならではの現場感覚で語られた回でした。制度の理想と現場の実感、その両方が聞ける内容です。

この回の要点

  • 農水省が企業と連携し、研修や副業を通じて社員を農村に派遣する仕組みを創設する
  • 狙いは農村の労働力確保、関係人口の増加、そして企業価値の向上の3点
  • 川上さんはこれを「リスキリングの農業版」と受け止めつつ、募集ゼロだった過去も率直に語る
  • スキルより「体を動かして牛を見るだけで楽しい」という体験に、可能性を見出している
  • スポットワークを農業に活かす動きも進んでおり、川上牧場も企業との連携を待っている

配信の全文(podyの記事より)

雨の水曜日、東京前の弾丸スケジュール

配信は1月15日水曜日の朝から。この日は雨で、最高気温7度という肌寒い牛舎からのスタートです。

川上さんの1日はかなりの詰め込みで、堆肥を運んだあとに酪農教育ファームの会議、午後はミーティングとウェビナー、そして翌日から東京という「弾丸」ぶりでした。

川上 結構詰め込みましたね。やっぱね、はい、そんな感じの1日になります。

注目したいのが、午前の会議のテーマです。これまで酪農教育ファーム ── 牧場での搾乳や餌やりなどを通じて、命や食の大切さを伝える食育活動。全国的な団体の枠組みがあるの食育活動は、基本的にボランティアで支えられてきました。

そのボランティアという構造を、島根県から変えていこうという会議だったといいます。牛乳の消費がなかなか伸びない中で、食育や普及・宣伝活動をする酪農家を改めて認識してもらい、活動を続けられる仕組みにしていこうという動きです。

そのボランティアっていう構造を変えていこうよ、島根県から ── 川上

牛乳で乾杯とメンバーシップのお知らせ

本題のニュースに入る前に、川上牧場のお知らせが続きます。まずはブログアプリのnoteで運営しているメンバーシップの紹介です。

メンバーシップに入ると、ZOOMをつないだ食育体験や、牧場に来ての餌やり・乳搾りなどが楽しめます。noteの有料記事も読み放題になるとのことです。

もう一つが、Instagramの「#未来の牛乳」という取り組みです。「こんな牛乳があったらいいな」というアイデアをAIアートにして、NFT ── ブロックチェーン上で発行される、デジタルデータの所有証明のようなもの。作品などを販売する形で使われるとして販売しています。

このNFTの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小中高での食育活動の活動費にあてる予定だといいます。お知らせのあとは、恒例の「牛乳で乾杯」です。

川上 今日も牛乳飲んでいただいてありがとうございます。

農水省が始める「企業と農村の連携」とは

ここからが今回のメインテーマ、AIがまとめたニュースの紹介です。取り上げたのは時事通信社ジジドットコムの「農村維持へ企業と連携、社員の副業促進も。農水省」という記事です。

内容は、人口減少や高齢化が進む農村地域の維持と活性化を目的に、農林水産省が企業と連携し、社員を農村に派遣する仕組みを作るというものです。「農山漁村経済生活環境創生プロジェクト」の一環と説明されています。

具体的には、企業研修や副業制度を活用して、繁忙期の収穫作業や地域イベントを支援することを想定しています。

記事では、この取り組みのポイントが整理されています。

農水省プロジェクトが目指すこと

企業研修・副業で農村支援

研修プログラムや副業制度を使い、農村とのマッチングを図る

↓

関係人口の増加

企業との連携を強め、農村に関わる人々を増やして地域を活性化する

↓

企業価値の向上

社員が農村での活動で経験を積み、会社の価値も上がる

川上さんは、最近は企業側も地域貢献や社会貢献の度合いが会社の価値として見られる時代だと補足します。今回の仕組みも、そうした流れに沿ったものではないかという見方です。

リスキリング農業版? 川上牧場は募集ゼロだった

川上さんは今回のニュースを、かつて話題になったリスキリング ── 働く人が新しいスキルや知識を学び直すこと。岸田政権下で、企業向けの補助金なども整備されたの農業版ではないかと受け止めています。

川上 昨年の前半とかにね、企業さんが別の会社に派遣して、別の業種を学んでいくみたいなのがありまして、それの農業バージョンじゃないかな

一方で、素朴な不安も口にします。農村に行ったことがない人が来て、本当に大丈夫なのかという点です。

じつは川上さん自身、リスキリングの補助金があった時期に、いち早く手を挙げていました。県を通じて「川上牧場でも研修できますよ」と伝えていたそうです。

川上 リスキリングしたい企業さん、全然川上牧場でも研修できますよみたいなのを県を通じてお伝えしてたんですけど、まあ0でしたね。

結果は募集ゼロ。デスクワーク中心の人が酪農を知っても、直接的なスキルにつながりにくいという現実も、川上さんは冷静に見ています。

デスクワークしている方たちが酪農のことを知ったとて、何かスキルが得られるかというと ── 川上

「見るだけで楽しい」タイミーで来たエンジニアの話

では、都市の人が農村に来る意味はどこにあるのでしょうか。川上さんは、地域の会社が地域の課題を見つけて解決する商品を売る、といった流れになれば話は違ってくるだろうと語ります。

そのうえで、印象に残っている体験談を紹介します。川上牧場ではタイミー ── スマホで空き時間に単発の仕事を探せるスキマバイトのサービスで人を受け入れており、そこにエンジニアの人が来たときのことです。

川上 いつもデスクワークで、こうやって体を動かして牛を見るだけで本当にありがたいですって言われたことがあった

「もう楽しくてしょうがないですね」とも言われたそうです。スキルの習得とは別の、体を動かして牛と接すること自体の価値が伝わったエピソードでした。

川上さんは、こういう感じだったらいいのかもしれないと、今回のプロジェクトの可能性をここに見出しています。

なお、このプロジェクトについては助成金や補助金が令和7年度につくのではないか、との見通しも語られました。

スポットワークで農業を盛り上げる動きも

関連する話題として、スキマバイトをめぐる別のニュースも紹介されました。スポットワーク研究所という組織に、元農林水産事務次官の末松广行さんが顧問に就任したという内容です。

記事によれば、末松さんは農林水産省や経済産業省、官邸、地方行政に関わりながら、日本農政の改革と地域発展に向けた政策を進めてきた人物です。スポットワーク ── 働きたい時間だけ単発で働く働き方。スキマバイトとも呼ばれるを活用して農業を盛り上げ、1次産業の課題を解決していこうという動きだといいます。

川上さんは、いろんな人が農業に参入して、いい意味でかき混ぜられることに期待をにじませます。

川上 いろんな人が農業に参入して、ぐちゃぐちゃになって、また新しいものが生まれたらいいなというのは個人的には思いますね。

そして、企業と牧場をつなぐ入り口として、川上牧場も待っていると呼びかけます。会社で1次産業を何かやってみたいという話が出たら、「島根県に川上牧場があるみたいですよ」と軽く伝えてほしい、という誘いです。

企業とZOOMをつないで牛の話をすることもできる、とのことでした。

福利厚生に農業体験? リスナーとのやりとり

配信の後半は、リスナーコメントとのやりとりです。「福利厚生としては面白いかもしれませんね」という声から、話は農業体験と福利厚生の関係へ広がります。

社宅や社員食堂といった一般的な福利厚生に加えて、農業体験や収穫作業、収穫したものがもらえる仕組みが福利厚生になり得るのか、という話題です。

コメントでは「イルカセラピー的」という表現も出ました。自然に触れることで精神を安定させる、という発想です。

これに対して川上さんは、酪農をずっとやっている当事者としての本音を、笑いを交えて返します。

川上 ずっとやられてるけど、本当に精神の安定ないけどね。

それでも、やったことがない人には特別感があるのも確か、と川上さんは付け加えます。結局はやってみないとわからないという着地でした。

一月の折り返し、後半戦も牛乳を飲んで

最後は、この日が1月15日、一月のちょうど折り返し点だという話でまとまります。

後半戦も頑張っていきましょう、と川上さんはリスナーに声をかけます。仕事や学校へ向かう人を、牛乳とともに送り出す締めくくりです。

配信のエンディングでは、川上牧場がリスナーからのお便りや、やってみたいこと・やってほしいことを募集していることも案内されました。

皆さんのご意見が新しい酪農を作っていきます。 ── 米粒元気

まとめ

農水省の「企業と農村の連携」プロジェクトを入り口に、リスキリングの実体験やスキマバイトで来たエンジニアの話まで、酪農家ならではの現場感覚で語られた回でした。制度の理想と現場の実感、その両方が聞ける内容です。

  • 農水省が企業と連携し、研修や副業を通じて社員を農村に派遣する仕組みを創設する
  • 狙いは農村の労働力確保、関係人口の増加、そして企業価値の向上の3点
  • 川上さんはこれを「リスキリングの農業版」と受け止めつつ、募集ゼロだった過去も率直に語る
  • スキルより「体を動かして牛を見るだけで楽しい」という体験に、可能性を見出している
  • スポットワークを農業に活かす動きも進んでおり、川上牧場も企業との連携を待っている