菌が地球を救う?!納豆菌から生まれた未来の食材
2025-01-16 配信|川上牧場 酪農データバンク
この回の要旨
島根の酪農家・川上さんが、納豆菌を粉末化した高タンパク食材「菌粉」を紹介した回でした。食料危機という深刻な話題を、酪農との共通点や身近な食べ物にたとえながら、ワクワクした語り口で届けてくれます。
この回の要点
- 菌粉は納豆菌を粉末化した食材で、100gあたり73.8gという高いタンパク質を含む
- 納豆菌は60分で倍増、24時間で1600万倍に増え、少ない資源で大量のタンパク質を作れる
- 米ぬかや酒粕など人が食べられないものから食品を作る点で、川上さんは畜産と菌粉は同じだと語る
- パンや唐揚げ、プロテインバーなどに使え、将来的には家畜の餌としての活用も相談中
- 昆虫食に抵抗があっても、キノコと同じ菌だと思えば菌粉は受け入れやすい、と川上さんは投げかける
配信の全文(podyの記事より)
東京出張の前日に、事前収録でお届け
この日の配信は、川上さんが東京出張のために事前収録したものです。牛の精液の輸入について話し合う協議会への出席が理由でした。
川上 輸入精液協議会という、牛の種ですね、海外精液とか、輸入の精液をどういうふうに日本に輸入していくかみたいな、そういう話し合いになります。
この評価は5年ごとに見直されるそうで、今年がちょうどその年にあたるため、川上さんが東京へ向かうことになりました。天気が悪く、飛行機が飛ぶか心配だとこぼす場面もあります。
輸入精液 牛の人工授精に使う海外由来の精液のこと。乳量や体格など優れた形質を持つ種牛の精液を輸入し、国内の乳牛や肉牛の改良に活用します。
そんな事情もあって、今回は10〜15分ほどの短めの配信として進めていきますね、と川上さんは前置きします。
牛乳で乾杯する前のお知らせタイム
乾杯の前に、川上さんから2つのお知らせがありました。1つ目は、ブログアプリのnoteで運営している川上牧場のメンバーシップです。
メンバーシップでは、ZOOMで牧場とつないで酪農体験をしたり、実際に牧場に来て体験したりといった試みができるそうです。「こんなことをやってみたい」という提案も歓迎しているとのこと。
2つ目は、Instagramでの「#未来の牛乳」という取り組みです。リスナーが思い描く牛乳や乳製品をAIアートで作り、それをNFTにしているといいます。
NFT デジタルデータに「唯一のもの」という証明を付ける仕組みです。ここでは、AIで作った未来の牛乳アートを販売し、その売り上げを子ども支援に充てる形で活用しています。
このNFTの売り上げは、子ども食堂への牛乳支援や、小中高校生への食育活動の活動費に充てられるそうです。牛乳を通じて子どもたちを支える流れが記録に残る、という趣旨で紹介されました。
納豆菌から生まれた食材「菌粉」って何?
お知らせのあと、川上さんはこの日のメインとなるニュースを紹介します。前日に、あるニュースで見た企業へ問い合わせ、ZOOMで直接話を聞いたという納豆菌を活用した食材の話です。
紹介されたのは「菌粉」という商品。納豆そのものではなく、粉末化した納豆菌を直接食材として使えるという取り組みです。
川上 菌粉っていう商品名なんですけども、これ納豆とは違ってですね、粉末化された納豆菌を直接食材として活用できるという、面白い取り組みなんですけども。
作っているのはフェルメクテス株式会社です。2021年に慶應義塾大学初のフードテックベンチャーとして設立され、本社は山形県鶴岡市にあると紹介されました。
フードテックベンチャー 食と最新技術を掛け合わせて、新しい食材や食品を生み出す新興企業のこと。代替タンパクや培養食品など、食料問題の解決を目指す分野として注目されています。
この菌粉のいちばんの特徴が、タンパク質の多さです。100gあたりのタンパク質は73.8gと、川上さんも驚く数字でした。
タンパク質といえば大豆をイメージする人が多いですが、菌粉はその大豆よりもさらに多く、大豆の3倍近いタンパク質を含むといいます。
60分で倍増、24時間で1600万倍という増殖力
菌粉が注目されるもう1つの理由が、納豆菌そのものの増殖スピードです。
川上 納豆菌約60分で倍増するそうです。24時間で1600万倍に増殖が可能ということで。
1個の菌が1日で1600万倍にまで増える計算です。これによって、少ない資源で大量のタンパク質を生み出せるのが強みだと説明されました。
そのタンパク質含有量は73.8%で、小麦粉や片栗粉よりも圧倒的に高いそうです。唐揚げやパンなどの食品に代用できるといいます。
菌粉の数字で見る特徴
73.8g
100gあたりのタンパク質量
60分
納豆菌が倍増する時間
1600万倍
24時間での増殖量
80億人時代のタンパク質不足という背景
川上さんは、菌粉が注目される背景に、世界的なタンパク質不足があると話します。世界人口が80億人に達し、動物性・植物性ともにタンパク源が足りなくなると予想されているためです。
その文脈で川上さんが挙げたのが、昨年話題になった昆虫食です。コオロギを粉末にして食べる取り組みが物議を醸したことに触れます。
川上 そういうものも食べていかないといけない世の中になってくるわけですよ。
さらに川上さんは、家畜の餌にも危機感を示します。大豆やトウモロコシも人間が食べるようになれば、牛に回すものがなくなる、という指摘です。
川上 大豆もトウモロコシもね、牛に食べさせるものなんてないわけですよ。
畜産と菌粉は「同じこと」だと語る酪農家の視点
川上さんは、環境への負荷が少なく、少ないエネルギーで効率よくタンパク質を作れる点で、納豆菌がとても優れていると評価します。
畜産は大量の水や土地を使いますが、菌粉なら大きなタンクがあれば済むといいます。しかも、菌を育てる材料には、人間が食べられない米ぬかや酒粕などを使えるそうです。
そのうえで川上さんは、菌粉づくりを自身の酪農と重ね合わせます。人が食べられないものを食品に変えるという意味で、畜産と菌粉は何ら変わらないという見方です。
みんなが食べられない草を牛に食べさせて、人間が食べる牛乳やお肉に変えていくのと何ら変わらない。 ── 川上
畜産と菌粉、どちらも「食べられないもの」から食品を作る
畜産(牛乳・お肉)
人が食べられない草を牛に食べさせ、牛乳やお肉に変える
VS
菌粉(納豆菌)
人が食べられない米ぬかや酒粕を使い、納豆菌を食品に変える
パンや唐揚げ、プロテインバーにも使える
菌粉は、すでに試験的に食べられているそうです。パンやお菓子の生地に練り込むと、高タンパクな食品になるといいます。
用途はほかにもあり、唐揚げの粉に使ったり、プロテインバーやスムージーにしたりもできるとのこと。タンパク質だけでなく、他の栄養素も含まれている食材だと紹介されました。
川上さんの関心は、やはり畜産に向かいます。この菌粉を牛の餌として活用できないか、前日の打ち合わせで相談したそうです。
ただ、大量生産にはまだ課題があるようです。牛は食べる量が多いため、まずは鶏や豚から始めていくと説明されたといいます。
川上 ゆくゆくはね、その家畜の方、牛さんにもっていう話には昨日はさせてもらった。
昆虫は無理でも、菌なら食べられる?
川上さんは、リスナーに問いかけます。昆虫食には抵抗があった人も多いけれど、菌はどうですか、と。
菌なんて食べられない、と思った人に向けて、川上さんはキノコを例に出します。すでにキノコを食べているのだから、菌もセーフだという理屈です。
川上 菌なんて食べられないよって思ったでしょ?キノコ食ってんじゃんって思えばね。セーフです。全然。
川上さんが期待しているのは、食料危機の解決だけではありません。新しい食品から料理や文化が生まれることそのものを面白がっています。
新しく料理が出てきたりとか、文化ができたりっていうのがやっぱ面白い。 ── 川上
リスナーと盛り上がる「菌粉、美味しいの?」
ニュース紹介のあとは、コメント欄とのやり取りです。モグラさんからの「菌粉美味しいの?」という質問に、川上さんが答えます。
川上さんは、納豆菌はもともと日本人に親しみのある菌だと強調します。日本の食を支えてきた菌が世界を救う流れになる、という語り口です。
「きな粉より栄養価は高いのか」という声には、きな粉の2〜3倍だと返答。おしゃれな女子向けのきな粉スムージーやプロテインバーとして売り出すのはどうか、とプロモーションのアイデアまで膨らませます。
さらに、キラキラ系のダイエットインフルエンサーが広めればすぐ流行しそう、という話にも。過去にタピオカミルクティーが広まった例を思い出しながら、そうやって売れたらいいと締めくくります。
最後は、東京出張は正直めんどくさくて行きたくない、と本音をこぼしつつ、仕事や学校へ向かうリスナーを「みんな牛乳飲んでね」と送り出しました。
まとめ
島根の酪農家・川上さんが、納豆菌を粉末化した高タンパク食材「菌粉」を紹介した回でした。食料危機という深刻な話題を、酪農との共通点や身近な食べ物にたとえながら、ワクワクした語り口で届けてくれます。
- 菌粉は納豆菌を粉末化した食材で、100gあたり73.8gという高いタンパク質を含む
- 納豆菌は60分で倍増、24時間で1600万倍に増え、少ない資源で大量のタンパク質を作れる
- 米ぬかや酒粕など人が食べられないものから食品を作る点で、川上さんは畜産と菌粉は同じだと語る
- パンや唐揚げ、プロテインバーなどに使え、将来的には家畜の餌としての活用も相談中
- 昆虫食に抵抗があっても、キノコと同じ菌だと思えば菌粉は受け入れやすい、と川上さんは投げかける